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仕事・スキル 介護施設・職場 2025/06/24

小規模多機能は本当にしんどいのか?働く前に知っておきたいことを解説

文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー) thumb250624.jpg

小規模多機能型居宅介護は、同じ事業者が「通い」「泊まり」「訪問」を一体的に提供する介護サービスです。

小規模多機能型居宅介護はやりがいのある仕事ですが、業務内容が多岐にわたることから、「しんどい」という話を聞くことも事実です。そのため介護職のなかには、「小規模多機能型居宅介護で働いてみたいけれど不安がある」という方もいるのではないでしょうか。

この記事では、小規模多機能型居宅介護の実態と、「しんどい」といわれる理由について詳しく解説します。これから就職や転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1.小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)は、「通い」「泊まり」「訪問」の3つを組み合わせて提供する介護サービスです。1施設における利用者さんの登録人数は29名までで、1日の通いの定員は15人、泊まりの定員は9人と決まっており、24時間365日の体制でサービスを提供します。

小規模多機能のいちばんの特徴は、住み慣れた地域で暮らし続けながら、状況やニーズに応じて柔軟にサービスを利用できることです。利用料は月額定額制のため、範囲内であれば回数を気にせずに利用できます。

利用できるのは、小規模多機能を運営する事業者と同じ市区町村内に住んでいる、要支援や要介護の認定を受けている方で、事業者は以下のサービスを一体的に提供します。

  • 通い(デイサービス):日中、施設に通ってレクリエーションや入浴、食事などのサービスを受ける
  • 訪問(訪問介護):介護職員が利用者さんの自宅を訪問してサービスを提供する
  • 泊まり(ショートステイ):必要に応じて施設に宿泊する

この3つのサービスを同じ職員が担当するため、利用者さんは「なじみのある関係のなかでケアを受けられる」というメリットがあります。

2.小規模多機能型居宅介護の仕事内容

小規模多機能で働く介護職員の主な仕事内容は、以下の通りです。

日常生活の支援

小規模多機能の介護職員は、利用者さんの食事や入浴、排せつなど基本的な生活の介助を行います。食事は利用者さんに合わせた適切な形態で提供し、必要に応じて見守りや介助を実施します。入浴は安全性とプライバシーに配慮しながら、利用者さんの身体を清潔に保つことが大切です。特に足元や背中、髪の毛を洗う際は、支援が必要となるケースが多いでしょう。

着替えや整容の支援は、利用者さんができないことだけを介助して、自己肯定感を高めるように心がけましょう。移動や外出の際には転倒リスクに注意して、利用者さんの自立度に合わせた適切な支援を行います。

レクリエーション活動の実施

利用者さんの心身機能の維持や向上を目的としており、体操や軽い運動も実施します。脳トレや認知症予防のためのアクティビティを取り入れれば、認知機能の低下予防になるでしょう。また、季節の行事や創作活動を通じて人とのかかわりを深めることは、社会性の維持にもつながります。

レクリエーション活動を行う際は、利用者さんの興味や能力に合わせて内容を工夫しましょう。

生活環境の整備

生活環境の整備は単なる作業ではなく、利用者さんの尊厳を守るための重要な仕事です。訪問サービスでは、生活空間の清掃を定期的に行い、清潔で快適な環境づくりに努めましょう。調理は利用者さんの好みや健康状態に合わせてつくり、洗濯や衣類の管理では、利用者さんが季節に合った清潔な衣服を着用できるようサポートします。

送迎

通いや泊まりのサービスでは、利用者さんの送迎業務も行います。乗車時には声かけや姿勢の調整を行い、車椅子使用者には段差や転倒防止を徹底します。車内ではシートベルトの着用確認や体調変化のチェック、会話を通じた様子確認も必要です。

業務の後は送迎記録を作成し、得られた情報をほかの職種と共有しましょう。

記録と報告

日々の支援内容や、利用者さんの状態変化を正確に記録する介護記録の作成は、ケアの質を保つための重要な業務です。勤務交代時の申し送りや、定期的なカンファレンスでの情報共有もきちんと行い、一貫したケアを提供しましょう。加えて、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づくサービスを評価し、計画の見直しや改善につなげるのも大事な役割の1つです。

こうした記録は、法的な裏付けとなるだけでなく、サービスの質向上のための資料にもなります。

3.小規模多機能型居宅介護の1日の仕事の流れ

実際の1日の流れを見てみましょう(日勤の例)。

8:30 出勤、申し送り、朝礼
9:00 通いの利用者さんの送迎
10:00 訪問介護で排せつ介助
11:00 訪問介護で買い物と通院介助
12:00 訪問介護で食事介助、服薬介助、口腔ケア
13:00 休憩
14:00 通いでレクリエーション
15:00 通いでおやつ
16:00 通いの利用者さんを自宅まで送迎
17:00 夜勤への引き継ぎ、記録
17:30 退勤

※仕事内容・スケジュールは、施設や配置によって異なります。

4.小規模多機能型居宅介護がしんどいといわれる理由

小規模多機能での仕事は、「しんどい」といわれることがあります。ここでは、その主な理由を5つピックアップして解説しましょう。

多様なサービスによる業務の複雑さ

「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを一体的に提供するため、介護職員にはさまざまなスキルが必要とされます。デイサービスの知識だけでなく、訪問介護やショートステイの知識も身につけなければなりません。

通いや泊まりでは、利用者さんの送迎サービスもあります。運転に自信がなくても運転しなければならないこともあり、細い道を通る際や雨の日などは、しんどいと思う人もいるでしょう。

少人数での運営による業務量の多さ

小規模多機能は「小規模」という名前の通り、限られた人員で運営されています。1事業所あたりの職員数は約15名程度と少数のため、職員1人ひとりの担当業務量は必然的に増えます。

人員不足の状況にある場合、各職員の負担はさらに大きくなり、身体的・精神的ストレスの原因になることも少なくないでしょう。そうした環境では、効率的な業務分担とお互いを支援する体制の構築が課題となっています。

利用者さんの状態変化への対応

利用者さんの状態は日々変化するため、常に柔軟な対応が求められます。また、在宅生活と施設利用を組み合わせるにあたっては、1人ひとりの状況に応じた個別性の高いケアが必要です。

訪問介護では介護職員が単独で訪問する場合が多く、突発的なトラブルやイレギュラーな事態に対して、迅速に判断し対処する能力が問われます。それらの状況が精神的負担となり、しんどいと感じる場合もあるでしょう。

24時間体制による夜勤・シフト勤務

小規模多機能では泊まりのサービスを提供するため、24時間体制での運営が必須となり、介護職員は夜勤を含む交代制シフト勤務になります。そうした不規則な勤務形態によって生活リズムが乱れると、身体的疲労が蓄積する原因にもなりかねません。夜間の業務は体内時計に影響を与えるため、長期的には健康面への負担も考えられます。

家族や友人と休日を合わせるのが困難な仕事でもあるので、社会生活のバランスを保つことも課題の1つといえます。

記録業務の多さ

「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスそれぞれに記録が必要となるため、事務作業の量が多くなります。介護の質を担保するためには欠かせない業務ですが、負担に感じる職員も少なくありません。

5.小規模多機能型居宅介護で働くことに向いている人

大変なこともある小規模多機能ですが、次のような考え方や特性を持つ方は、向いているといえます。

介護のスキルを上げたい方

「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを経験できるため、幅広い介護スキルを身につけたい方に適しています。業務を行うなかで、トイレ介助や食事介助、入浴介助など、利用者さんが生活するうえで必要な介護技術が身につくでしょう。

コミュニケーション能力や問題解決能力など、総合的なスキルを高めたい方にとっても、小規模多機能はよい環境といえます。さまざまな場面での介護経験は、キャリアアップを目指す際にも生きてくるでしょう。

利用者さんとの関係性を大切にしたい方

同じ利用者さんに継続的にサービスを提供する小規模多機能は、利用者さんとの深い関係性を構築できる職場です。

「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを通じて、自宅での暮らしぶりから施設での様子まで生活全体を見守れるため、利用者さんの人生や価値観が深く理解でき、より適切な介護が提供できるようになります。

チームワークを重視する方

小規模多機能では、少人数のチームで業務を行うため、職員間の密接な連携がケアの質に直結します。そのため、チームワークを重視する方は、小規模多機能に適任です。

業務を進めるなかでは、利用者さんの状態変化を共有する申し送りや緊急時の協力、シフト調整など、職員同士が支え合う場面が多く見られます。コミュニケーション能力が高く、ほかの職員と協力しながら責任感を持って行動できる方が、小規模多機能で活躍できるでしょう。

柔軟な対応力がある方

利用者さんの身体状況や生活環境は常に変化するため、小規模多機能では状況に応じた臨機応変な対応が求められます。例えば、予定していた訪問時に利用者さんの体調が急変した場合や、自宅環境に突発的な問題が生じた場合でも、冷静に判断して適切な対応ができる能力が必要です。

柔軟性を持ち合わせた方は、変化の多い小規模多機能の環境に適応しやすく、質の高いケアを提供できる人材といえます。

6.小規模多機能型居宅介護の職場を探すうえでのポイント

小規模多機能の職場を探す際に、しんどさを感じにくい職場を選ぶためのポイントを紹介します。

職員の配置状況をチェック

施設選びでは、職員の配置状況の確認が重要です。法定の人員配置基準を上回る職員を配置している施設では、職員1人あたりの業務負担が軽減される傾向があります。

職場環境の実態は、見学時に現場での職員数や忙しさを観察することで把握できます。職員の表情や利用者さんとのコミュニケーションの質なども、働きやすさを判断する重要なポイントとなるでしょう。

研修制度や教育体制を確認

研修制度や教育体制が整っていることも、施設選択の重要なポイントになります。小規模多機能は「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスを提供するため、経験が少ない方でも安心して働けるよう、体系的な教育体制が必要です。

施設によっては、初任者向けの基礎研修から始まり、サービス形態ごとの専門研修、認知症ケアや緊急時対応などの実践的な研修まで、段階的に学べるプログラムが整備されています。入職したい施設が見つかったら、研修制度があるかを確認するとよいでしょう。

まとめ:小規模多機能型居宅介護はやりがいの大きい職場

小規模多機能は、同じ介護事業者が「通い」「訪問」「泊まり」の支援を行うサービスです。顔見知りの職員が介護することになるため、利用者さんにとっては心強いでしょう。

小規模多機能は、「しんどい」といわれる場合もありますが、その分やりがいも大きい仕事です。利用者さんの生活全体を支える重要な役割を担っており、さまざまな介護スキルを身につけられるでしょう。

小規模多機能への就職・転職を検討する場合は、自分の適性や希望する働き方を考慮したうえで、職場環境をよく確認し、長く働ける施設を選んでください。介護の仕事は決して楽ではありませんが、利用者さんの笑顔や「ありがとう」の言葉は大きな喜びにつながります。誇りとやりがいを持って仕事に取り組みましょう。

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長谷部宏依(Hiroe Hasebe)

介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー

介護職員として介護老人保健施設に入職。その後介護福祉士を取得し訪問介護や訪問入浴、デイサービスで働く。ケアマネジャーは20年の実績があり、100名以上の高齢者を担当。認認介護・老老介護・介護拒否など困難事例も多く経験。現在はWebライターとしてさまざまな記事を執筆している。福祉住環境コーディネーター2級も取得。

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