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仕事・スキル 介護施設・職場 2023/12/19

介護施設にeスポーツを導入してみよう!通所リハビリテーション「デイケアさとやま」の取り組み|気になるあの介護施設

取材・文/タケウチノゾミ 編集/イージーゴー 2_thumbnail.jpg

静岡県沼津市にある「デイケアさとやま」では、2023年7月よりeスポーツを導入し、利用者さんやスタッフから高い評価を得ています。eスポーツを導入している介護施設は珍しいですが、導入には一体どのようなメリットがあるのでしょうか。導入メリットや注意点について、医療法人友愛会の柳田礼央氏に話を聞いてみました。

前編はこちら

1.eスポーツ導入のメリット

ーーeスポーツの導入によるメリットを教えてください。

ゲームを通して、新たなコミュニケーションが生まれることだと考えています。eスポーツに取り組んでいると、利用者さんとスタッフとの間に、普段の体操では生まれない新しい会話が生まれることもあります。以前、失語症の方が太鼓の達人をプレイした際に、「難しい」という言葉を発したことがありました。その方は今までお話されたことがなかったため、スタッフは非常に驚いたと同時に、ゲームが良い影響を与えられたのではないかと考えています。

また、利用者さんがご自宅でお孫さんと太鼓の達人をプレイするようになり、家族との会話が増えたといったエピソードを聞いたこともあります。eスポーツの導入には、数多くのメリットがあると感じていますね。

2.前向きにゲームに取り組んでいただくための工夫

ーーeスポーツを利用者さんに楽しんでいただくために、気をつけていることはありますか。

「eスポーツ=日常的な取り組み」という空気感を作ることです。70代〜80代はあまりゲームに馴染みがない世代のため、ゲームに抵抗感がある方や、人前でプレイすることに恥ずかしさを感じる方もいらっしゃいます。そのため、前向きにゲームに取り組んでいただくためには、利用者さんの意識を変える必要があると感じました。

運動機器に取り組むのと同じような感覚でゲームをプレイしてもらうために、誰もゲームに取り組んでいない時間が生まれないよう、ゲームの時間になったら積極的に利用者さんを促すようにしています。特に最初のワンプレイまでのハードルが高い傾向にあるため、職員が見本を見せたり、楽しくプレイしている方の姿を見てもらったりして、チャレンジしてみようかなという気持ちを後押しするようにしています。

和歌山県のデイサービスと行われたeスポーツオンライン交流会の様子

和歌山県のデイサービスと行われたeスポーツオンライン交流会の様子

ーーその他に行っている工夫があれば教えてください。

利用者さんの傾向に合わせて、声掛けの仕方を変えることには気をつけています。どのようにゲームを楽しみたいかは利用者さんによって異なっており、ただ楽しくプレイしたい方もいれば、どんどん上達したいと考える方もいらっしゃいます。例えば太鼓の達人であれば、楽しくプレイしたいだけの方には別の曲を勧めたり、上達したい方にはうまく叩けるようになるコツをレクチャーしたりと、利用者さんの傾向に合わせたコミュニケーションを取るように心がけています。

また、教える立場であるスタッフにもゲームを楽しんでもらうため、先日は職員だけのゲーム大会を実施しました。やはりスタッフがゲームの面白さを理解していないと、利用者さんも楽しさを感じづらいのではないでしょうか。今後も、利用者さんだけでなく、スタッフも一緒に楽しめる工夫を続けていきたいです。

3.利用者さんのモチベーションを保つ方法を考え続けていく

ーー今後の展望をお聞かせください。

利用者さんのモチベーションを保つ方法を考え続けていこうと思っています。eスポーツを導入している高齢者施設はまだ多くありませんが、将来的には、高齢者施設間の県大会や全国大会を行っても面白いのではないでしょうか。これからも、繋がりの輪を広めていく予定です。

また、eスポーツ導入に関するノウハウを広めることも検討しています。eスポーツを導入している高齢者施設は全国的に見ても少なく、情報を集めるのが非常に困難な状態です。当施設でも、eスポーツの導入時には情報が不足しておりさまざまな苦労があったため、スタッフ向けのマニュアルなどを作成し、eスポーツの導入に関するお手伝いができればと考えています。

4.「eスポーツ=日常的な取り組み」という空気感を作ることが重要

ーーこれからeスポーツを導入する施設へ向けてメッセージをお願いいたします。

繰り返しにはなりますが、eスポーツの導入時は利用者さんの戸惑いも大きいため、「eスポーツ=日常的な取り組み」という空気感を作ることがとにかく重要です。職員が一丸となってeスポーツの導入に取り組み、利用者さんにゲームを楽しんでいただこうという強い思いがあってこそ、皆さんに受け入れてもらえるのではないかと考えています。

また、ゲームの使用や大会開催時には、ゲーム会社の許諾な必要な場合があります。高齢者施設にeスポーツを導入するメリットは大きいため、準備をしっかりとしたうえで取り組んでみてください。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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