認定介護福祉士とは?介護福祉士との違いや取得するメリットなど
構成・文/介護のみらいラボ編集部「認定介護福祉士」は、介護福祉士の上位に位置づけられる比較的新しい資格です。資格取得には、介護に関する高度な専門知識が必要ですが、取得後は介護福祉士のリーダー的存在として活躍できるほか、キャリアアップの実現にも役立つでしょう。介護福祉士と比較すると認知度は低めですが、日本の高齢化が進むなか、今後の発展が期待される資格でもあります。
当記事では、認定介護福祉士の概要や介護福祉士との違い、資格取得のメリットなどを紹介します。認定介護福祉士の取得方法についても詳しく解説するので、介護職として働いている方や認定介護福祉士に興味のある方は、ぜひご一読ください。
1.認定介護福祉士とは?
認定介護福祉士とは、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構によって創設された民間資格です。介護福祉士の上位資格として、2015年より認定が開始されました。
認定介護福祉士の資格取得には、介護福祉士よりもさらに幅広い介護の知識・スキルが必要となります。加えて、介護スタッフ、介護チームを指導するためのマネジメント力も問われます。
認定介護福祉士が創設された目的は、以下の通りです。
● 介護福祉士の資質を高めることで、利用者さんのQOL向上を目指す
● 他職種との連携強化や適切な役割分担を通して、介護サービスの質を高める
● 介護福祉士としての学習継続・自己研さんの促進
● 介護福祉士のキャリアパスの形成
これまでは、介護福祉士の取得後に目指せる資格が少なく、介護専門職としてキャリアアップを目指すための道筋が確立されていませんでした。しかし、介護福祉士の上位資格として認定介護福祉士が創設されたことで、介護福祉士の役割はさらに広がり、スキルアップ・キャリアアップを実現するための道筋も明確化されたと言えるでしょう。
また、介護福祉士として自己研さんを積むことは、介護サービスの質の向上や、利用者さんの生活の充実につながります。
認定介護福祉士と介護福祉士の違い
介護福祉士が国家資格であるのに対して、認定介護福祉士は民間資格です。
介護福祉士を取得するには国家試験に合格する必要がありますが、認定介護福祉士には試験がなく、研修を受講することで認定されます。
資格取得に必要な実務経験についても、介護福祉士は「介護職として3年以上」とされているのに対して、認定介護福祉士では「介護福祉士として5年以上」が要件です。
認定介護福祉士と介護福祉士では、仕事内容にも違いがあります。
介護福祉士の主な仕事内容は、利用者さんの生活援助や身体介護です。一方、認定介護福祉士は利用者さんへの介護業務に加えて、介護スタッフの指導や介護チームの取りまとめ、施設や事業所のマネジメントなど、より幅広い仕事に携わります。
認定介護福祉士の役割
ここでは、認定介護福祉士の役割を具体的に解説します。
現場のマネジメントとスタッフ指導 | 施設・事業所のマネジャーとして、サービス管理やスタッフ教育を行う |
---|---|
他職種との連携強化 | 医師や看護師、理学療法士など、介護現場に携わる他職種との情報共有を通じて連携を強化する |
地域の介護力向上のサポート | 利用者さんの家族をはじめ、地域の施設や事業所、在宅介護をしている方などに指導・支援を行う |
認定介護福祉士は利用者さんへの直接的な介護業務だけでなく、「介護の中核的存在」としてマネジメントやサービス管理にも携わります。また、介護スタッフの教育や他職種(医療チームやリハビリチーム)との連携強化により、介護サービスの質の向上を目指すのも、認定介護福祉士の大事な役割です。
さらに、地域の介護力を底上げするための指導・支援を行うのも役割の1つです。
2.認定介護福祉士の資格を取得するメリット3つ
介護職として働いている方が認定介護福祉士の資格を取得することには、さまざまなメリットがあります。具体的なメリットは、以下の通りです。
● 総合的なスキルが身に付く
● 待遇アップが期待できる
● スキルの証明になる
ここでは、それぞれの内容について詳しく解説します。
総合的なスキルが身に付く
以下は、認定介護福祉士の資格取得者が習得できる、主なスキルの一覧です。
介護に関しての高度な専門知識と実践力 | リハビリや福祉用具、住環境、社会支援などに関する高度な専門知識・実践力 |
---|---|
現場リーダーへの指導方法 | 介護チームリーダーを対象とする根拠に基づいた指導・教育スキル |
介護サービスの管理能力 | サービス管理に必要となるツールの使用方法や整理の仕方 |
地域全体の介護を支える方法 | 利用者さんの暮らしやすさをサポートする視点から、地域全体の介護力向上を支える方法の模索と実践 |
マネジメント能力 | 人材マネジメントやチーム運営などの組織をまとめるスキル |
介護に関する専門的な知識はもちろん、現場リーダーとしてのマネジメント力や実践力、地域介護を支えるためのサポート力など、幅広いスキルを身に付けられるでしょう。
待遇アップが期待できる
認定介護福祉士を取得することで、介護士として大きく成長でき、業務の幅も広がります。業務の幅が広がることで、確実に給料が増えるわけではありませんが、活躍次第で待遇が良くなる可能性はあるでしょう。
現状、認定介護福祉士の資格手当を設けている介護施設は少ないものの、今後、認定介護福祉士が注目されるようになれば、手当がつくことも考えられます。資格取得を機に管理者やリーダーとなった場合は、役職手当をもらえるケースもあるでしょう。
スキルの証明になる
認定介護福祉士資格は、介護における高度な知識・スキルを有することや、高いマネジメント能力を身に付けていることの証明になります。
他の施設・事業所への転職活動を行う際に、認定介護福祉士資格が有利に働く可能性もあるでしょう。
3.認定介護福祉士の資格を取得するには?
認定介護福祉士を取得するには、「認定介護福祉士養成研修」を受講する必要があります。認定介護福祉士研修にはⅠ類・Ⅱ類の2種類があり、それぞれで目的や受講条件が異なるため、受講前に内容を把握しておくことが重要です。
ここでは、認定介護福祉士養成研修について詳しく紹介します。
認定介護福祉士養成研修の種類
認定介護福祉士養成研修は、Ⅰ類とⅡ類の2つに分けられます。
それぞれの研修の目的は以下の通りです。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
介護福祉士養成課程では学ばない新たな知識(医療、リハビリ、福祉用具と住環境、認知症、心理・社会的支援等)を修得し、他職種との連携・協働を含めた認定介護福祉士としての十分な介護実践力を完成させる。
利用者の尊厳の保持や自立支援等における考え方にたった介護過程の展開を、介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダーに対して指導するために必要な知識を獲得する。
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
Ⅰ類で学んだ知識をもって、根拠に基づく自立に向けた介護実践の指導をする力を獲得する。
認定介護福祉士に必要な指導力や判断力、考える力、根拠をつくりだす力、創意工夫する力等の基本的知識に基づいた応用力を養成する。
サービス管理に必要なツールを整理、改善し、それらから根拠を導きだし、その根拠に基づいた指導をする力を獲得する。
生活支援の視点から、地域の介護力を高める力を獲得する。介護サービスという特性のもと、チーム運営、サービス管理、人材育成等について必要な専門的な理論に基づき、チーム、サービス、人材マネジメントを実践し、利用者を中心とした地域づくり(地域マネジメント)に展開できる力を獲得する。
認定介護福祉士養成研修の受講要件
認定介護福祉士養成研修の受講要件はⅠ類・Ⅱ類で異なります。以下は、具体的な要件の内容です。
認定介護福祉士養成研修Ⅰ類
1.介護福祉士としての実務経験(5年以上)
ただし、科目によっては実務経験を問わない場合がある。
2.現任研修受講による内省や学習習慣の獲得
・実務と現任研修への受講経験をつうじて、的確な判断や対人理解に基づいた尊厳を支える。
・ケアについて、常に考え内省する習慣、学習する習慣を獲得している。
・研修受講歴とレポートの提出によって研修実施機関が確認する。
※評価が客観的に認められること(修了証等)
3.介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー(ユニットリーダー、サービス提供責任者等)としての実務経験を有することが望ましい
4.居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
認定介護福祉士養成研修Ⅱ類
1.認定介護福祉士養成研修Ⅰ類を修了
2.介護職の小チーム(ユニット等、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー(ユニットリーダー、サービス提供責任者等)としての実務経験を有すること
3.居宅、居住(施設)系サービス双方での生活支援の経験をもつことが望ましい
認定介護福祉士養成研修のカリキュラム
認定介護福祉士養成研修のカリキュラムは、以下の通りです。
Ⅰ類 | 領域名 | 科目名 | 単位 | 時間 課題学習を可とする時間) |
形態 |
---|---|---|---|---|---|
認定介護福祉士養成研修導入 | 認定介護福祉士概論 | 1 | 15(7) | 講義・演習 | |
医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 2 | 30(30) | 講義 | |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 2 | 30(15) | 講義・演習 | ||
リハビリテーションに関する領域 | 生活支援のための運動学 | 2 | 10(10) | 講義 | |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20(8) | 講義・演習 | |||
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 2 | 30(8) | 講義・演習 | ||
福祉用具と住環境に関する領域 | 福祉用具と住環境 | 2 | 30(0) | 講義・演習 | |
認知症に関する領域 | 認知症のある人への生活支援・連携 | 2 | 30(15) | 講義・演習 | |
心理・社会的支援の領域 | 心理的支援の知識技術 | 2 | 30(15) | 講義・演習 | |
地域生活の継続と家族支援 | 2 | 30(15) | 講義・演習 | ||
生活支援・介護過程に関する領域 | 認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 2 | 30(0) | 講義・演習 | |
個別介護計画作成と記録の演習 | 2 | 30(0) | 講義・演習 | ||
自職場事例を用いた演習 | 1 | 30(20) | 講義・演習 | ||
Ⅰ類 計 | 345(143) | ||||
Ⅱ類 | 医療に関する領域 | 疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 2 | 30(15) | 講義・演習 |
心理・社会的支援の領域 | 地域に対するプログラムの企画 | 2 | 30(15) | 講義・演習 | |
マネジメントに関する領域 | 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 1 | 15(7) | 講義・演習 | |
チームマネジメント | 2 | 30(15) | 講義・演習 | ||
介護業務の標準化と質の管理 | 2 | 30(15) | 講義・演習 | ||
法令理解と組織運営 | 1 | 15(7) | 講義・演習 | ||
介護分野の人材育成と学習支援 | 1 | 15(7) | 講義・演習 | ||
自立に向けた介護実践の指導領域 | 応用的生活支援の展開と指導 | 2 | 60(40) | 講義・演習 | |
地域における介護実践の展開 | 2 | 30(0) | 講義・演習 | ||
Ⅱ類 計 | 255(121) | ||||
合計 | 37 | 600(264) |
まとめ
認定介護福祉士は介護福祉士の上位資格であり、介護サービスの質の向上、介護福祉士のキャリアパスの確立などを目指して、2015年に創設されました。
認定介護福祉士の取得により、介護業務に関する高度な専門知識・スキルはもちろん、マネジメントやサービス管理についての能力も身に付きます。また、将来的な給与アップを目指せる可能性もあるでしょう。
なお、認定介護福祉士には試験がなく、養成研修の受講によって認定されます。
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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
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