介護記録で避けるべき禁止用語は?避けるべき理由と言い換え例も解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部多くの利用者さんをサポートする介護の現場では、各介護職員が一人ひとりの状態を把握するために「介護記録」をつけます。介護記録は介護職員間や医師、看護師、ケアマネジャーといった他職種と確実に情報を共有し、質の高いケアを実施するための貴重なツール。だからこそ、禁止用語や書き方のポイントを把握して、誰が読んでも分かりやすい内容にする必要があります。
当記事では、介護記録において避けるべき禁止用語と言い換え例、避けるべき理由について解説します。介護職として働いている方は、介護記録をつける際の参考にしてください。
1.介護記録を書く際に避けるべき禁止用語
介護記録とは、利用者さんの生活記録をつけ、複数の介護職員や他職種(医師、看護師、ケアマネジャーなど)との間で情報を共有するためのコミュニケーションツールです。介護記録をつけることで、各職種のスタッフが利用者さん一人ひとりの直近の健康状態を把握し、それぞれに適したケアや介護サービスを提供できるようになります。
また、介護保険制度のもとで介護報酬を得ている介護事業所にとって、介護記録は支援をきちんと行っていることの証明であるほか、事故・訴訟時の証拠として提出できる資料でもあります。所轄の自治体や利用者さんから記録の開示を求められることもあるため、利用者さんの様子に変化がない場合でも、「特変なし」などと具体性のない記述をするのは避けたほうが良いでしょう。
なお、現在の介護業界では、1990年代以降に医療分野で実施されている「エビデンスに基づく医療」の手法を取り入れた、「科学的介護」という考え方が重視されています。
■医療分野における「根拠(エビデンス)に基づく医療」
「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと」と定義できる実践的な手法。
科学的介護というのは、蓄積した介護記録の情報を活用し、客観的事実に基づいた根拠や情報(エビデンス)を利用者さんに提供すること。そして、科学的介護の取り組みを実践するには、情報の収集や分析、現場へのフィードバックが不可欠となります。つまり、介護記録は科学的介護を実践するにあたっても、重要なツールなのです。
介護記録は利用者さんやその家族など、介護職員以外の人も読む可能性があるため、記載する際は最大限の注意が必要です。以下では、利用者さんや家族が読んで不快な思いをする可能性のある言葉について解説します。
人格を否定する言葉
介護記録でもっとも使用してはならないのが、人格を否定する言葉です。人格を否定する言葉は、たとえ介護職員同士の情報共有でも使用するべきではありません。介護には客観性が求められますが、「ボケ症状」や「勝手にトイレに行く」といった言葉は担当職員の主観となるため、使用は避けましょう。
前述の禁止用語は、次のように言い換えます。
・ボケ症状→数分間〇〇を見つめたまま、穏やかに過ごしていた
・勝手にトイレに行く→自発的にトイレに行く
命令するニュアンスを含む言葉
命令するようなニュアンスの言葉も、介護記録では避けるべきです。例えば、利用者さんに何かしらの行動を促す声掛けをした際、「〇〇させた」といった指示や命令を連想させる言葉は使わないようにしましょう。上記のような指示用語は、上下関係にあるようなイメージを与えるため、利用者さんの家族が介護記録を読んだ際、不安や不信感を抱く可能性があります。
介護記録に記入する際は、対等な立場で寄り添っている様子が伺える表現を心がけてください。「〇〇させた」「促した」という表現は、「○○を勧めた」「○○してはどうですかと声がけした」と言い換えると対等な印象になります。
日常生活では使われない専門的な言葉
利用者さんやその家族に理解しにくい専門的な言葉も、介護記録に適切ではありません。専門用語や略語は、知っている人には伝わりやすいのですが、知らない人が読んだ場合に誤解や不安を与える可能性があります。専門用語や略語を一般的な言葉に置き換えて表現すると、専門用語が分からない人にも理解できるうえに、安心感も与えられるでしょう。
使用を避けたほうがいい専門用語・略語と、言い換えの例は以下の通りです。
・Ns.→看護師
・PT→ポータブルトイレ
・ADLが低下→歩行が難しかったため車椅子を使用した
・排せつ介助→トイレでズボンの上げ下ろしを手伝った
・徘徊→10分間○○から○○まで往復されていた
医師の判断なしに使用した医学的な言葉
介護をするなかで利用者さんの体調が変化した際、「腹痛」「頭痛」といった状態を示す言葉を使用するのは問題ありません。しかし、「骨折」や「肺炎」といった医学的用語は、容易に使用しないのが介護記録の鉄則です。
例えば、熱が高くてせきをしているからといって、「肺炎」だと断定することは医師ではない介護職員にはできません。医師の診断がない場合は、医学的用語の使用は避けましょう。
傷などのけがなら「擦り傷」や「刺し傷」といった具合に、外見上の状態をありのままに記載します。
食事後に胃腸炎の症状が見られた→食事後に腹痛の症状が見られた
2.介護記録の書き方のポイント5つ
介護記録は、介護職員同士の意見交換のクオリティを上げるだけでなく、介護知識や専門性を高めることにもつながります。そのため、介護記録は誰が見ても理解できる内容であることが大事です。
介護記録を書くときは、以下の5つのポイントを押さえましょう。テンプレートを用意しておくと、記録しやすくなります。
5W1Hを明確にする
介護記録を書く際は、「5W1H」を意識して分かりやすい文章構成を心がけます。5W1Hは、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(どうして)、How(どのようにしたか)の頭文字を取った言葉で、伝えたい情報を分かりやすく、シンプルにまとめたいときに使われます。
5W1Hを明確にして、誰が読んでも伝わる記録を残すことは、次に読む介護職員の誤解や伝達ミスの防止にもなります。特に「Why(どうして)」と「How(どのようにした)」の部分を書き足すことで、文章はより具体的になるでしょう。
客観的に書く
介護記録は記録者の感情や憶測を排除して、客観的事実を正確に書く必要があります。「〇〇さんがうれしそう」ではなく「〇〇さんが笑顔を見せた」など、利用者さんの発言や様子、起こった状況を客観的にありのまま記載しましょう。また、年月日、時刻表記の統一や場所、数値の記載も、客観的で正確な記録を残すうえで重要なポイントです。
常体(だ・である調)で書く
介護記録は公的な文書にあたります。そのため文末は、「笑顔を見せました」といった敬体(です・ます調)ではなく、「笑顔を見せた」という常体(だ・である調)が適しています。
簡潔にまとめる
介護記録は報告文であるため、読みやすいように簡潔にまとめることが重要です。コツは、最初に結論を書き、次に詳しい解説を記載すること。一文が長くなると読みづらいため、なるべく短く区切ると良いでしょう。
また、記録する際に、フォーカス(焦点)、データ(情報、状態)、アクション(行為、ケア、介入)、レスポンス(結果、反応)の4項目を意識すると簡潔にまとめやすくなります。
思いやりをもって記録する
介護記録は、利用者さんの家族にも開示されることがあるため、思いやりの気持ちが伝わるように記録することが大切です。次に記録を読む介護職員にも気持ちが伝わるように記録すると、より良いケアやサービスの提供につながります。実施したケアだけでなく、それぞれの利用者さんの「らしさ」が垣間見えるような記録を残しましょう。
まとめ
介護記録は、利用者さんの日々の情報を複数の介護職員や他職種で共有するツールであり、事故や訴訟時の際に証拠能力を持つ資料でもあります。介護記録では、禁止用語の使用を避ける、客観的事実をもとに簡潔にまとめる、思いやりをもって記録するなど、適切な記述を心がけることが大切です。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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