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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2022/08/18

行動援護従業者養成研修とは?研修を受けるメリットも解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 1.jpg

知的障害や精神障害があっても、できるだけ自立して生活したい方や外出を楽しみたい方は、決して少なくありません。そして、そうした方たちの外出をサポートする職種の一つに「行動援護従業者」があります。障害について豊富な専門知識を持つ行動援護従業者は、障害者ご本人はもちろんのことご家族などにとっても、非常に頼れる存在です。

当記事では、行動援護従業者養成研修の基礎知識や概要、研修を受けるメリットなどについて解説します。

1.行動援護とは

行動援護とは、知的障害、精神障害などのために、1人で行動することが困難な方の外出をサポートする仕事のことです。障害支援区分が区分3以上であり、かつ認定調査項目のうち行動関連項目等(コミュニケーション、説明の理解、不安定な行動などの12項目)の合計区分が、10点以上となる方が行動援護の対象となります。

行動援護従業者の主な仕事内容は外出時の危険回避、移動中の介護、排せつや食事の介護などで、具体的には次のようなサービスを行います。

●予防的対応
利用者さまが、初めての場所で不安定になって不適切な行動を起こさないように、事前に目的地での行動などについて説明し、理解してもらいます。また、行動障害が発生しやすい条件を知って、予防的対応をすることも重要です。



●制御的対応
利用者さまが、行動障害および危険を認識できないことが原因で不適切な行動を起こした場合に、適切に対処します。



●身体介護的対応
外出中の食事や排せつ、外出前後の着替えの介助などを行います。

(出典:福祉医療機構「行動援護」

2.行動援護従業者養成研修とは

行動援護従業者養成研修とは、行動援護に必要な知識やスキルを得るための研修です。なお、新たに行動援護従事者として就業するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。

・行動援護従業者養成研修の修了者
・知的障害者、精神障害者または障害児の直接支援業務に1年かつ180日以上の従事経験がある者

(出典:厚生労働省「行動援護に係る報酬・基準について」

ただし、以下のいずれかに該当し、かつ知的障害者、精神障害者または障害児の直接支援業務に2年以上かつ360日以上の従事経験がある方は、2024年3月末まで経過措置を受けることができます。

・介護福祉士
・実務者研修修了者
介護職員基礎研修修了者
・居宅介護従業者養成研修(旧1級ヘルパー)修了者
・居宅介護職員初任者研修(旧2級ヘルパー)修了者 他

(出典:厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」

行動援護は、利用者さまがスムーズに外出できるように支えるだけでなく、利用者さまや周囲の方の安全を守るためにも重要なサービスです。行動援護従業者になるためには、豊富な知識と素早い判断力を身に付ける必要があり、特別な研修を受けて専門性を高めることが欠かせません。

研修で学べる内容

次の表は、行動援護従業者養成研修のカリキュラムの一例です。

講義および演習内容 時間数
(合計24時間)
強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義 1.5
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識に関する講義 5
強度行動障害がある者へのチーム支援に関する講義 3
強度行動障害と生活の組み立てに関する講義 0.5
基本的な情報収集と記録等の共有に関する演習 1
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解に関する演習 3
行動障害の背景にある特性の理解に関する演習 1.5
障害特性の理解とアセスメントに関する演習 3
環境調整による強度行動障害の支援に関する演習 3
記録に基づく支援の評価に関する演習 1.5
危機対応と虐待防止に関する演習 1

(出典:埼玉県「指定養成研修事業者」
(出典:埼玉県「新行動援護従事者養成研修カリキュラム」

なお、研修内容およびカリキュラムは、実施する自治体やスクールによって異なることがあります。年度によって研修内容が変わることもあるため、研修を受けたい場合は管轄の自治体の最新情報を確認しましょう。

研修の受講資格・費用

行動援護従業者養成研修の受講資格要件は、特に定められていません。障害者福祉分野のプロとしてスキルアップしたい方はもちろん、これから障害者福祉についての知識を深めたい方や障害のある家族を支えたい方なども受講可能です。

受講料はスクールによって異なり、3〜4.5万円程度が相場となっているようです。また、一部のスクールでは講義と演習の両方が完全オンラインとなります。勤務先によっては研修費用を補助してもらえる場合もあるので、事前に相談してみると良いでしょう。

強度行動障害従業者養成研修との違い

行動援護従業者に似た仕事として、強度行動障害従業者が挙げられます。

強度行動障害従業者の仕事内容も、知的障害や精神障害などのために、1人で行動することが困難な方の日常生活や外出をサポートすることですが、行動援護従業者の仕事が外出時および外出前後のサポートに特化しているのに対し、強度行動障害従業者は日常生活のあらゆる場面でのサポートを前提としています。つまり、行動援護従業者と強度行動障害従業者とでは「関わる場面」が異なるわけです。

ここでは、強度行動障害従業者養成研修の一例を紹介します。

受講対象者 ・障害福祉サービス事業所などで行動障害を持つ方の支援業務に携わる方、あるいは今後携わる予定がある方

・障害福祉サービス事業所の連携医療機関などで治療業務に携わる医療従事者
研修時間 ・基礎研修(講義、演習合計12時間)
・実践研修(講義、演習合計12時間)

各研修の科目名は行動援護従業者養成研修とおおむね共通していますが、日常生活の支援に関する内容により重点が置かれています。

(出典:埼玉県「埼玉県強度行動障害支援者養成研修実施要綱」
(出典:埼玉県「強度行動障害支援者養成研修カリキュラム」

受講対象者やカリキュラムなどの詳細は、実施する自治体やスクールによって異なる場合があります。また、一部の自治体では研修修了者向けのフォローアップ研修も開催されています。

3.行動援護従業者養成研修を受けるメリット3つ

行動援護従業者養成研修を修了すると、次のようなメリットを得ることができます。

・スキルアップにつながる
行動援護についての知識を増やすことで、知的障害や精神障害を持つ方だけでなく、認知症を患う高齢者などのサポートにも役立ちます。行動援護従業者養成研修は介護関連の経験がなくても受講できるため、高齢者介護に興味がある方にもおすすめです。

・就職や転職のアピールポイントになる
精神障害者などを対象とした地域生活支援拠点の整備促進により、居宅介護への需要は増加しつつあります。そのため、今後は行動援護従業者の需要も増えていくと考えられます。研修を修了することは、行動援護従業者として働くための必須条件となっているため、居宅介護事業所や訪問介護事業所への転職や就職を目指す方は、アピールポイントになるでしょう。

・キャリアアップに役立つ
行動援護従業者養成研修は、就職・転職したい方だけでなく、現在の職場で経験を積んで管理職などを目指したい方にもおすすめです。行動援護に関する実務経験があっても、仕事環境によってはスキルを発揮しにくいことが少なくありません。しかし、研修を修了することで自身のスキルを証明することができれば、キャリアアップにつなげやすくなるでしょう。

4.行動援護従業者養成研修の修了者が活躍する場所

行動援護従業者養成研修の修了者の多くは、次のような場所で活躍しています。

・移動支援事業を行っている居宅介護事業所
障害者の自宅を訪問し、身体介護サービスや生活支援サービスなどを提供します。移動支援事業を行っている事業所では、外出支援も重要なサービスの一つです。

・移動支援事業を行っている訪問介護事業所
サービス内容は居宅介護事業所と似ていますが、障害者ではなく高齢者が対象になることが特徴です。なお、近年は訪問介護事業と居宅介護事業の両方を行う事業所も増えています。

移動支援事業を行う施設に加えて、次のような施設にも行動援護従業者の活躍のチャンスがあります。

・重度訪問介護事業所
・障害者支援施設
・障害者グループホーム(共同生活支援)
・障害者デイサービス
・児童発達支援・放課後等デイサービス
・障害者就労移行支援事業所 他

仕事のためにスキルアップしたい方はもちろん、障害や認知症症状のある家族を支えたい方や福祉系ボランティアに従事している方にも、行動援護従業者養成研修が役立つでしょう。

まとめ

行動援護従業者は、1人で行動することが難しい精神障害者や知的障害者などの外出をサポートする職種です。現在は、各地で行動援護従業者養成研修が開催されており、オンライン受講が可能なスクールも多いため、行動援護従業者としてスキルアップやキャリアアップを図りたい方は、チャレンジしてみると良いでしょう。

「介護のみらいラボ」では、障害者福祉分野や高齢者介護分野で働く時に役立つ情報を数多く掲載しています。専門性の高いコラムはもちろん、気分転換に役立つコラムなども随時更新しているため、お気軽にご覧ください。

※当記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています

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