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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2020/10/29

#コミュニケーション#介護施設#感染予防#新型コロナ

現役介護福祉士が紹介する、介護施設で実践し成功したコロナ禍での5つの取り組み

鹿賀大資 介護福祉士・ライター upskilling_20201029_1.jpg

散髪は施設内の楽しみの一つ

新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年4月7日~5月25日まで発令されていた緊急事態宣言。介護職の方では、エッセンシャルワーカーとして社会の機能を維持するために勤務を余儀なくされた方も多かったのではないでしょうか。そんな前代未聞の事態の最中でも、ご利用者に暮らしの場を提供するため、現実を前向きに受け入れながら対応に取り組んだ、とある有料老人ホームでの様子を紹介します。

介護職員が徹底して取り組んだ対策

前例のない新型コロナウイルスの感染拡大に、どう対応してよいか戸惑った介護施設は多かったでしょう。どのような状況でも、ご利用者の生活をサポートするのが介護職の役目です。業務は、介護職の健康があるからこそ成り立つもの。そこで、この介護施設では職員の健康管理を徹底させました。

出勤前の検温、手洗い、除菌を徹底

コロナ対策については、厚生労働省の通知にのっとり、対策を練りました。職員は入所直前に検温を実施。37度以上の熱発者は、当日でも欠勤という特別措置をとりました。また、出勤前に体調不良を感じた場合にも報告するよう促しました。その場合も、発熱者同様欠勤扱いになります。

勤務中の手洗い・うがい・除菌の徹底

勤務時間帯は原則として、食事以外マスクを装着したまま勤務にあたります。手洗い・うがいのタイミングは各職員の判断に委ねていましたが、自主的に介助をする度に実施していた職員がほとんど。出退勤時は必ず、手洗い・うがいの徹底を図っていました。これは訪問診療に訪れる外部スタッフが施設を訪れる際も同様です。そのほか、食事後のテーブル、トイレ使用後の便座など、「介助後は必ず消毒」という共通認識で、施設内の除菌にも気を配っていました。

コミュニケーションの手段として、介護職員による散髪を実施

介護職員の健康管理と、施設としての感染症対策を整えた後は、ご利用者への対応について案を巡らせました。その中で上がってきたのが、コミュニケーションの一環としての散髪代行です。万全な感染症対策が実を結んだ結果、実現が可能になりました。

散髪代行の経緯とコンセプト

外部との交流が完全に断たれ、ご利用者にとっての楽しみも奪われていった緊急事態宣言下。それは外部レクリエーションの自粛といったイベントにとどまらず、日常生活にも及んでいきました。
あるご利用者は月に1回の訪問散髪を楽しみにしていましたが、緊急事態宣言や自粛で1ヶ月以上散髪できず、髪も伸び放題。そんな不憫な様子を目にして、職員間で「時間を有効活用して、職員一丸でご利用者のためになることをしよう」という想いが芽生えました。実現へ向けてすぐに取り組みはじめたものの、実際に髪を切る行為にいたるまでは、遠い道のりでした。

安全性と散髪時の決まりをまとめる

散髪代行の目的は、介護サービスではなく、ご利用者と職員が触れ合う日常の一部という位置づけです。
ご利用者には職員同士の協力で同意を得られたものの、ご利用者のご家族から同意を得るまでには時間を要しました。当初はケアマネジャーが1人で窓口を担当していましたが、安全性についての説明を全ご利用者のご家族にするとなると、時間がかかります。そこで事前にカットについてのルールを統一し、管理者やケアマネジャー主任などが電話対応にあたりました。なお、安全性やルールについては、以下のようにまとめました。

・散髪器具の衛生管理のため、散髪を行うごとに消毒を必ず行う
・カット時の損傷対策のため、看護師立ち会いのもと実施する
・カットは基本的に前髪を切る、毛先をそろえるなど簡単な内容にとどめる

職員は、カットや器具の消毒方法について、動画やWEB上の記事を参考にして、実践に臨みました。散髪を希望するご利用者は多く、参加された方は、とても楽しまれていた様子でした。

面会禁止に伴うリモート通話の各種サポート

外部との関わりをシャットアウトした状況下では、面会も自粛を余儀なくされ、ご家族と会えないことに不安や寂しさを募らせるご利用者もいらっしゃいました。そこで、ケアマネジャーがご家族と連携をとり、オンラインによる面会を検討。スマートフォンやパソコンを所有していないご利用者に対し、サポートも実施しました。

9割以上の施設ご利用者がオンライン面会に成功

インターネット端末を持っていないご利用者には、施設専用のスマートフォンを貸し出し、ご利用者のご家族とLINEのビデオ通話などを通してオンライン面会を実施しました。ツールにZOOMを希望されたご家族もいらしたため、施設のパソコンを使用して面会したケースも。一方、スマートフォンを所有するご利用者の中には、LINEの登録方法がわからない方もいらっしゃいます。そうした場合は職員が間に入り、Wi-Fiの設定からサポートにあたりました。
この取り組みの効果は高く、9割以上のご利用者がビデオ通話を介してご家族との面会を果たせました。

まとめ  介護職員とご利用者の検温・手洗い・除菌と、施設内散髪・オンライン面会の成果

新型コロナウイルスの感染が広がりだした当初は、ご家族とお会いできないことで、不安や不満を募らせるご利用者が多くいました。また外部レクなどの相次ぐ中止に、「楽しみがなくなった」と口にするご利用者も。異例ともいえる緊急事態宣言下で、すべてのご利用者から満足を得られるのは難しいかもしれません。それでも幸いにしてコロナ陽性者を出さない環境を保てたのは大きな成果です。その上で、散髪代行やオンライン面会に笑顔を取り戻すご利用者が多くいたことは、職員の団結力があったからこそ。率先したリスク管理の徹底が、今回の結果につながったのではないでしょうか。

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鹿賀大資

介護福祉士・ライター

施設介護で10年のキャリアを持つ現役介護福祉士。介護系WEBサイトにて、介助にまつわるコラムや記事を執筆。自らの介護エピソードはもちろん、同僚スタッフの体験談など、現場の声なき声を発信している。

鹿賀大資の執筆・監修記事

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