結城教授が見る(2)介護在宅系 介護報酬改定の注目ポイント 令和3年度
文:結城康博(淑徳大学教授 介護福祉士 社会福祉士)
NHKの介護関連ニュースでおなじみ、結城教授の解説第2弾。2021年4月に実施された介護報酬改定から「在宅系」部門として、デイサービス、訪問介護、ケアマネジャー(居宅介護支援)の3部門をピックアップし、解説します。
デーサービス~実質は入浴介助加算の引き下げ
デイサービスにおける基本報酬は、全体を見ると僅かに引き上がっています。しかし、実際の現場では、入浴介助加算(Ⅰ)が引き下がった点は大きく注目すべきでしょう。入浴介助加算(Ⅱ)といった、従来より高い加算が新設されましたが、この加算はかなり取得することが難しいと考えます。
表1:通所介護等の入浴介助加算の見直し
改定前 | 改定後 | |||
---|---|---|---|---|
項目 | 単位/日 | 項目 | 単位/日 | ステータス |
入浴介助加算 | 50 | 入浴介助加算(Ⅰ) | 40 | ー |
入浴介助加算(Ⅱ) | 55 | 新設 |
※(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定不可
出典:「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成
新設された「入浴介助加算(Ⅱ)」の算定条件として、「医師等が利用者の居宅を訪問し、浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価していること。この際、当該居宅の浴室が、当該利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が、介護支援専門員・福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行うこと」となっています。
つまり、在宅でご利用者が家族介助によって入浴できることが前提です。しかし、デイサービスのご利用者の中には、独り暮らしや老夫婦が多く、自宅での入浴が難しい方も多いのではないでしょうか。デイサービスを利用する大きな目的の1つに「入浴」を挙げるご利用者もいらっしゃると考えます。自宅での入浴介助は、風呂掃除が課題となり、高齢者世帯では大きなハードルとなっているからです。
多くのデイサービスでは、「入浴介助加算(Ⅰ)」のみを算定することが多く、その意味では、実質上の加算引き下げと考えていいでしょう。
訪問介護~認知症専門ケア加算は取得が難しい
訪問介護の基本報酬は1単位しか引き上がらず、厳しい状況です。しかし、新たに介護施設と同様に、今回の介護報酬改定で「認知症専門ケア加算」が新設され、この加算を取得できれば、多少の収益は見込めます。ただし、以下に記すように、条件が厳しいため、取得は難しいかもしれません。
表2:認知症専門ケア加算
改定前 | 改定後 | |||
---|---|---|---|---|
項目 | 単位/日 | 項目 | 単位/日 | ステータス |
ー | ー | 認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 3 | 新設 |
認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 4 | 新設 |
※定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護(Ⅱ)については、認知症専門ケア加算(Ⅰ)90単位/月、認知症専門ケア加算(Ⅱ)120単位/月
出典:「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成
具体的には、「認知症専門ケア加算(Ⅰ)」の取得には、以下のような要件を満たす必要があります。
①認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上。
②認知症介護実践リーダー研修修了者を、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施。
③当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催。
このような要件になっています。
これらの中でも、➁に登場した「認知症介護実践リーダー研修修了者」の雇用が難しいでしょう。本来、このリーダー研修は介護施設の職員が受講することが多く、ほとんどの訪問介護事業所の介護職員は受講していないのではないでしょうか。
ケアマネジャー~基本報酬は引き上げ~
多くの介護報酬項目の中で、ケアマネ部門は比較的恵まれていると言えるかもしれません。19単位もしくは25単位、基本報酬が上がったことで、1件約200円上がったとして30件引き受けたとしても、約6000円以上の収入増となります。2018年の介護報酬改定では10単位弱の引き上げだったため、今回の改訂では、大幅な引き上げとなっています。
表3:居宅介護支援の基本報酬
要介護 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
単位/月 | 単位/月 | |
(一)要介護1または2 | 1,057 | 1,076 |
(二)要介護3、4または5 | 1,373 | 1,398 |
出典:「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」第199回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料/2021.1.18(厚生労働省ホームページ)をもとに作成
さらに言うと、今回の改定で情報通信機器の活用もしくは事務職員が配置されていれば、1人のケアマネジャーにつき、44件まで担当しても基本報酬は下がらないことになっています。つまり、39件担当していた場合、マックスの44件引き受ければ、約5万円以上の収入増も見込めます。情報通信機器の活用など経費上の課題は残りますが、収入増の方策は多々あるように思われます。
報酬請求担当の事務職を雇用している居宅介護支援事業所もあるでしょうから、このような事業所にとっては朗報と言えるでしょう。なお、事務職員は、当該事業所内の配置に限らず、同一法人内の配置でも認められ、例えば、法人内の総務部や、併設の訪問介護事業所の事務職員も条件に含まれています。
■まとめ
今回の改修では、全体的に基本報酬が大幅に引き上がるということはありませんでした。ですから、こまめに「加算」を取得していかないと、事業所の収益にはつながりません。しかし、「加算」算定とスタッフの負担や労力を天秤にかけると、悩ましい側面もあるのも事実です。その意味では、よくよく職場で精査する必要があります。
(関連記事 記事上部#タグでも関連記事の表示ができます)
令和3年度介護報酬改定(上)厳しい訪問介護、まあまあな施設介護
令和3年度介護報酬改定(下)科学的介護と本丸介護データベースLIFE
■参考文献
第199回社会保障審議会介護給付費分科会
「参考資料1:令和3年度介護報酬改定における改定事項について」2021年1月18日
厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議 別冊資料(介護報酬改定)」2021年3月9日
厚生労働省「令和2年度 全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」2021年3月9日
厚生労働省「「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A Vol.3)令和3年3月26日」
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