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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2022/12/09

#みんな知らない高齢者の世界#インタビュー

高齢者の体操は何をすべき?ごぼう先生に聞く効果的な方法と注意点|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー 001.jpg

年を取ると身体を動かしづらくなるため、体操にあまり前向きになれない利用者さんも多いのではないでしょうか。体操は高齢者の身体機能維持に欠かせませんが、様々な状況の方が集まる介護施設では、全員が参加できる体操を考えるのは難しいものです。そこで「健康体操クリエイター」として活動するごぼう先生に、高齢者の体操における効果的な方法や注意点についてお話を伺いました。

1.高齢者が取り組むべき体操は?

――高齢者はどのような体操に取り組むべきでしょうか。

おそらく日本で一番知られているのはラジオ体操だと思うのですが、介護施設の入居者だと少しテンポが速く、ついて行けない方も多数いらっしゃいます。そこで、座ったままできる体操であれば安全性が高く、皆さんが参加できるのではないかと思います。

介護施設には、動ける方から全く動けない方まで様々な状況の方がいますよね。なので個人的には機能訓練と集団体操は分けて考えるべきだと考えていて、まずはできる範囲で身体を動かすことが重要だと思います。

たった1日長時間の体操を行うよりも、短時間でも毎日行う方が圧倒的に有効だというデータがあります。何もしないのが一番ダメなので、音楽を聞く、指先を動かすなど、生活の中で自分ができることを続けるのも体操に繋がっていると言えます。極論、挨拶をするだけでも体操ではないのかなと考えています。

●関連記事:高齢者向けの体操レクリエーション6選! 座ったままできる体操も!

2.高齢者が体操に取り組む目安は?

――体操に取り組む目安はありますか。

運動ができる人からすると、取り組む時間や成果を気にしがちですが、まずは可能な範囲で体操を続けることが重要です。体操や運動と聞くと、どうしても「1日何千歩以上歩くと認知症リスクが低下する」などのエビデンスのある数値を目標としがちです。でも介護が必要な方々は、そのような数値を目標とすると、どうしてもへこんでしまったり、自分には運動はできないと感じたりする方が多いんですね。

なので、自分ができる範囲を知りつつ、その範囲を維持することがポイントです。自分ができる作業範囲や可動域について把握している人は意外と少ないです。例えば自分は肩まで手が挙がると思っていても、実際には全然挙がっていないとか。

まずは自分自身を知ることが機能維持につながるため、できる範囲を知る意味でも体操は非常に大切です。身体をうまく動かせないから意味がないと思わず、まずは参加してもらうことが大事だと思っています。



3.高齢者に気持ちよく体操をしてもらうための注意点は?

――気持ちよく体操をしてもらうためには、何に注意すべきでしょうか。

安心感のある居心地の良い雰囲気づくりが非常に大切なのかなと思います。様々なことができなくて介護が必要になっている方々が多いため、全員ができることをゴールにすると、どうしても辛くなってしまうんですね。

なので僕が体操を指導する際には、「できない方がいいですよ」と伝えています。年齢を重ねると、どうしても失敗してはいけない、失敗は恥ずかしいと考えがちですが、チャレンジに年齢は関係ないと考えています。

そのため全員での体操を目的とする中でも、「できなくても大丈夫」ということを指導者が言えるかどうかは、非常に参加者の居心地の良さに繋がってくるのではと思いますね。居心地が悪いと、どうしても消極的になったり、失敗したらどうしようと萎縮してしまったりしがちなので。指導者側の声掛けによって居心地の良い環境を整えれば、参加者が安心して体操にチャレンジできると思います。



4.多くの方に体操に参加してもらうための工夫

――1人でも多くの方に参加してもらうため、気をつけることはありますか。

身体を動かす前に体操の目的を伝えると、非常に参加率が高まるなと感じています。例えば足を動かす体操でも「どこか行きたいところはありますか」と呼びかけたり、「最近お水飲んでゴホゴホしたことはないですか」と言ってから口腔体操をしたりするなど、皆さんが想像できるキーワードを先に示してから体操をしています。

体操をする前に目的を伝えると、参加する意味が明確になり、「どうしてこの動作をするのか」が明らかになります。高齢者の場合は体操が生活に直結しているので、日常生活を前提に体操をすると、皆さん動きやすそうだなと感じています。

後は声掛けの方法も気をつけていますね。例えば手を挙げて欲しい時に「右手を挙げてください」ではなく、「片手を挙げてください」と左右どちらも挙げやすくなる声を掛けています

片手が不自由な方もいる中で、特定の手を挙げる指示をすると、どうしてもそちらの手を挙げなければと思ってしまいます。でも「片手を挙げてください」と言えば、自分ができる方を挙げてもらえるので、まずは参加することができるんです。

ほんのちょっとした部分ですが、少し気をつけるだけで皆さん居心地が良くなりますし、傷つく方も少ないのかなと感じています。居心地の良い場所を整えることがゴール設定だと、そういった声掛け一つもポイントかなと思いますね。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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プロフィール

ごぼう先生

株式会社GOBOU 代表取締役 簗瀬 寛

大人のための体操のおにいさん。体操クリエイター。鍼灸師。社会福祉主事。LOVOTシニアハッピーライフアンバサダー。

ごぼう先生

1985年愛知県出身。日本福祉大学卒業。座ったままできる集団体操を指導する。全国各地500ヶ所以上、シニアを中心とした4万人以上と一緒に健康体操を行う。3万ヶ所以上の介護施設や地域サロンで、イス体操コンテンツを活用。
著書に「ごぼう先生と楽しむ大人の健康体操」(あさ出版)「介護界のアイドルごぼう先生とみんなを笑顔にする方法」(講談社)など。
2018年にキングレコードからメジャーデビュー。第一興商「DAM」のエルダーコンテンツに導入。YouTubeのチャンネル登録者は3万人(2022年11月現在)

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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