介護職のボーナスは上がった?下がった? 2021年夏の傾向と2020年までの推移
文:斉藤 勇 ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士今年もボーナスシーズンが訪れました。コロナ禍で支給される2度目の夏のボーナスです。業績悪化を受けて、ボーナスの支給そのものを見送る企業もある中、介護職のボーナスは昨年より増えているのでしょうか。公開されているさまざまなデータから、その傾向を探ってみましょう。
今年の夏のボーナス・民間企業では2.6%のマイナス
まずは、今夏(2021年)のボーナスの支給状況を見てみましょう。
コロナ禍の影響はさまざまな業種に及んでおり、昨年の冬のボーナスは、多くの企業で支給額の減額が行われました。大きく影響を受けた中小企業では、支給そのものを見送ったケースもあったようです。その結果、昨冬のボーナスは前年比でマイナス2.6%となりました。
こうした傾向は今年も続いています。日本総研によると、民間企業における今夏のボーナス支給額は、前年比でマイナス3.2%の見通し。夏のボーナスとして2年ぶりのマイナスになると予想しています。
介護職のボーナス 過去3年間のボーナスの推移を見てみよう
では、介護職員のボーナスの支給状況はどうなのでしょうか。まずは、過去3年間の支給状況を、厚生労働省が公表している賃金構造基本統計調査から見てみましょう。
介護支援専門員 (ケアマネージャー) |
夏もしくは冬 1回分の支給額 |
---|---|
2020年 | 33万8,050円 |
2019年 | 31万4,000円 |
2018年 | 31万1,800円 |
介護職員 (福祉施設介護員) |
夏もしくは冬 1回分の支給額 |
---|---|
2020年 | 28万6,400円 |
2019年 | 26万5,850円 |
2018年 | 25万9,950円 |
訪問介護従事者 (ホームヘルパー) |
夏もしくは冬 1回分の支給額 |
---|---|
2020年 | 22万2,550円 |
2019年 | 19万3,700円 |
2018年 | 22万150円 |
参考 | |
---|---|
2020年 全体平均 | 45万2,850円 |
昨年(2020年)のボーナス(春もしくは冬1回分)の平均支給額は、ケアマネージャーが33万8,050円、福祉施設の介護職員が28万6,400円、ホームヘルパーが22万2,550円でした。介護職員は待遇改善が進んでおり、2018年と比較すると、ケアマネージャーと福祉施設の介護職員は、それぞれ約2万6,000円増えています。ただ、ホームヘルパーの支給額だけが伸び悩んでおり、2019年よりは約2万8,000円増えているものの、2018年と比較すると、約2,000円増とわずかな上昇にとどまりました。
また、昨年の全職種・年齢におけるボーナス1回の平均額は45万2,850円で、介護職員の支給額を上回っています。
2021年夏・介護職のボーナスの傾向を分析
介護の現場も新型コロナの影響を大きく受け、感染予防のための費用が収益を圧迫しています。また、営業活動の自粛や入居時期の先延ばしなどにより、計画通りに事業を展開できないケースも見受けられました。しかし、積極的に事業を拡大する事業所を中心に、増収増益を達成した企業も多く、介護事業はコロナ禍でも安定成長を続けています。
また、2019年10月には新たに「介護職員等特定処遇改善加算」がスタートし、職員の待遇改善も進んでいます。こうしたことから、今夏の介護職員のボーナスは、全体の支給額が落ち込む中でも、前年並みかプラスで推移したのではないでしょうか。
〇介護職員等特定処遇改善加算とは
介護職員等特定処遇改善加算は、「経験・技能のある介護職員」の処遇改善を目的として、2019年10月より導入された制度。
「勤続年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行うこと」を基本とし、リーダー級の介護職員について、他の産業と遜色のない賃金水準の実現を目指します。
また、介護職員等特定処遇改善加算による収入は柔軟な運用が認められており、他の介護職員などの処遇改善に充てることもできます。
あの企業のボーナスは? 売上高上位企業の平均年収から予想してみる
介護事業を手掛けている会社が、どのくらいのボーナスを支給しているのか気になるところです。
そこで、売上高TOP10社について、ホームページで公表している「有価証券報告書」から、各企業の平均年収を調べてみました。平均年収が高い企業は、ボーナスも多く支給されているかもしれません。気になる企業の平均年収をチェックしてみましょう。
ただ、気を付けてほしいのは、有価証券報告書では親会社の情報が記載されているのが一般的なこと。SOMPOホールディングスやベネッセなどのように、介護以外の事業も手掛けている企業では、他の事業を含めた平均年収や、介護と直接関係のない親会社のみの人員平均年収を公表していて直接的には参考にならないこともあります。また、介護事業を中心に手掛けている企業でも、一部事業所のデータのみを公表しているケースもあります。そのため、データを見るときには、平均年収を算出した従業員の人数(母数)を踏まえ、あくまでも参考値としてチェックしてください。
連結売上高 TOP10社の平均年収 | ||||
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順位 | 企業名・証券コード | 平均年収 | 時期 | 集計(人) |
1 | SOMPOホールディングス 8630 | 1,109万円 | 2021年3月末 | 381 |
2 | ベネッセ 9783 | 934万3,000円 | 2021年3月末 | 37 |
3 | ツクイ 2398 | 409万8,000円 | 2020年3月末 | 14,022 |
4 | セコム 9735 | 591万5,000円 | 2021年3月末 | 16,290 |
5 | 学研HD 9470 | 906万4,000円 | 2020年9月末 | 41 |
6 | ユニマット リタイアメント・コミュニティ 9707 | 424万6,000円 | 2020年3月末 | 2,127 |
7 | セントケアHD 2374 | 488万6,000円 | 2021年3月末 | 184 |
8 | ソラスト 6197 | 609万8,000円 | 2021年3月末 | 24,286 |
9 | ケア21 2373 | 411万円 | 2020年10月末 | 4,308 |
10 | シップヘルスケアHD 3360 | 811万2,000円 | 2021年3月末 | 23 |
まとめ
超高齢社会の日本では、介護業界が重要な役割を担っており、市場規模も拡大を続けています。また、政府も介護職員の待遇改善を進めており、多くの事業所で介護職員のボーナスは安定して支給されています。しかし、一部ではコロナ禍の影響を大きく受け、待遇改善がなかなか進まないケースもあるようです。
今回紹介したデータを参考に、もしも待遇に不満を感じたら、転職も視野に入れてみるといいかもしれませんね。
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