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学ぶ 介護国試過去問ドリル 2020/05/28

#国家試験#認知症

認知症4つの種類と特徴は?介護現場での症状の見分け方も【国試過去問ドリル第1回】

文:白井孝子(東京福祉専門学校副学校長 看護師 介護支援専門員) 「認知症」という文字の上に立つ医療従事者の人形.jpg

認知症は超高齢社会を迎えたわが国において重要な課題の1つです。認知症患者数は2015年には500万人を超え、2025年には約700万人に達すると予測されています。
認知症は「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能およびその他の認知機能が低下した状態をいう」(介護保険法第5条の2)と定義されています。
代表的な認知症には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があり、それぞれ特徴的な症状がみられます

介護福祉士は介護の専門職として、利用者の尊厳を守りながら、自立した生活を送れるよう支援を行わなければなりません。認知症の診断は医療職が行うものですが、前提として利用者の日常生活の様子を把握する必要があります。そのため、介護福祉士が利用者を観察し、医療職へ共有することが重要です。

介護福祉士国家試験 過去問題 

第30回 午後 問題80 設問

Cさん(70歳、女性)は息子(35歳)と二人暮らしをしている。息子の話によると、1年前から時々夜中に、「知らない人が窓のそばに立っている」などと言うことがある。また、ここ3カ月で歩くのが遅くなり、歩幅が狭くなった。家事は続けているが、最近探し物が目立ち、料理の作り方がわからないことがある。病院で検査を受けたが、頭部MRIでは脳梗塞(cerebral infarction)や脳出血(cerebral hemorrhage)の指摘はなかった。
Cさんの状況から、最も可能性の高いものを1つ選びなさい。

1 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)
2 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)
3 慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma)
4 血管性認知症(vascular dementia)
5 うつ病(depression)

介護福祉士国家試験 解答と解説

正解:2

代表的な4つの認知症の種類と症状、間違えられやすい疾患

代表的な認知症として、主に次の4種類が挙げられます。

1.アルツハイマー型認知症

脳が萎縮する疾患。女性に多く、症状は物忘れ、時間の失見当などから始まり、なだらかに進行していく。

2.血管性認知症

脳梗塞や脳出血などにより脳の血流が障害されて生じる疾患。片麻痺や言語障害などを伴うことが多い。男性に多く、症状は階段状に進行していく。

3.レビー小体型認知症

脳全体にレビー小体という異常な物質が沈着して生じる疾患。認知機能の変動、幻視、歩行障害(パーキンソン症状)などがみられる。

4.前頭側頭型認知症

脳の前頭葉から側頭葉にかけて萎縮する疾患。社会のルールを無視する、性格の変化、同じ行動を繰りかえす(常同行動)などがみられる。



また、認知症と間違われやすい疾患として、うつ病、正常圧水頭症、慢性硬膜下血種、甲状腺機能低下症などがあります。

これらの情報を踏まえてそれぞれの選択肢を見てみると、認知機能障害として「最近探し物が目立つ」「料理の作り方がわからない」、パーキンソン症状として「幻視、歩行障害」といった症状がみられることから、選択肢2「レビー小体型認知症」が正解と判断できます。

選択肢1の正常圧水頭症は、脳室内に髄液がたまる疾患で、代表的な症状には認知機能障害、排尿障害(失禁)、歩行障害があります。脳室からお腹の中へ脳脊髄液を流す「脳室・腹腔シャント術」を行うなどで治療が可能です。頭部MRIで確認できます。
選択肢3の慢性硬膜下血種は、認知機能障害、排尿障害(失禁)といった症状や、既往歴(頭部打撲)から診断可能です。また、頭部MRIで確認できます。

選択肢4の血管性認知症では、発症すると認知機能障害のほかに神経症状として片麻痺や失語などがみられます。頭部MRIで、血管性認知症の発症原因とされている、脳梗塞や脳出血が確認できます。
選択肢5のうつ病は、認知症と間違われやすい疾患とされています。うつ病の発症原因として、身近な人の死、転居といった環境の変化などがみられます。主な症状として朝方に気分の落ち込みがあるが、夕方には回復傾向がみられるなどの日内変動があります。
また、心気妄想、罪業妄想などもみられます。薬物療法で治療が可能な疾患です。頭部MRIでは確認ができません。

認知症疾患知識の介護実務での生かし方

認知症患者のご家族は認知症に対する正しい知識を持ち合わせていない場合も多くあります。
例えば「最近物忘れが多くなっている、もう年だから認知症かしら、しかたがないわね」と諦めてしまったり、「認知症と診断されたら、本人もショックだろうから受診はしない」と医療機関の診断を避けてしまうご家族もいます。
受診を避け、正しい知識を持ち合わせずにいることは、利用者にとっても家族にとっても、その後の生活に支障をきたすことになります。
介護福祉士は家族の不安を理解し、医療につなげるための支援者としての役割も担っています。

たとえば、「認知症は一度発症したら治らない」と諦めてしまう方がいますが、血管性認知症は、生活習慣病を予防することで、発症のリスクを減らすことができます。
さらに、「治る認知症」といわれている正常圧水頭症、慢性硬膜下血種などは、正しく診断されれば治療方法があり、認知症状は改善されます。
介護職はこのような情報を伝えることで、不安を抱えるご利用者やご家族にポジティブな効果をもたらすことができます。

代表的な認知症の症状と治療可能な認知症の症状を理解し、利用者の観察、ご家族への状況確認など情報収集を行い、利用者、そのご家族を適切な支援へ導くことが重要です。

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白井孝子(Takako Shirai)

東京福祉専門学校副学校長/看護師・介護支援専門員(ケアマネジャー)

聖路加国際病院、労働省(現厚生労働省)診療所勤務。小児病棟での終末期看護のあり方から在宅看護に興味を持つ。訪問看護業務に携わる中で、生活支援には保健医療福祉の連携が重要であることを体験する。その思いを形にするため、平成2年から介護福祉士養成に関わるようになる。現在東京福祉専門学校副学校長。

白井孝子の執筆・監修記事

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