糖尿病の主な症状と介護現場での注意点【国試過去問ドリル第9回】
文:白井孝子(東京福祉専門学校副学校長 看護師 介護支援専門員)
低血糖状態でクッキーを食べようとした糖尿病のご利用者への正しい対応は?
今回は糖尿病の持病があるご利用者への支援方法について焦点をあてました。糖尿病は、生活環境や社会環境の変化に伴って急速に増加した疾患です。適切な治療を行わず放置しておくと、三大合併症による失明や腎臓機能低下による透析治療が必要になります。糖尿病による三大合併症とは、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害があります。介護保険の特定疾病16疾病としても認定されています。糖尿病性腎症は血液透析が必要になる原因の1位、糖尿病性網膜症は失明する原因の上位です。
2018(平成30)年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)の発表によると、『糖尿病が強く疑われる者』の割合は男性が19.7%、女性が10.8%を占めています。年齢では、加齢に伴って疑われる者の割合も高まると記載されています。糖尿病は脳血管疾患や虚血性心疾患などの発症を促進するので、予防のために生活習慣を見直すことが必要です。
過去問題
第26回 午後 問題76
Bさん(76歳、男性)は、30年以上前から糖尿病(diabetesmellitus)があり、昼食の前に血糖降下薬を服用している。薬剤や用量は5年前から変更はなく、医師からは、インスリン(insulin)の分泌を増やす薬であると説明されている。また、糖尿病(diabetesmellitus)の影響で、だんだんと腎臓の機能が悪くなっているともいわれている。Bさんは「最近、夕方になるとひどくおなかが空き、『ふわふわする』と感じる。今日も同じような感じがあったが、クッキーを1つ食べたら良くなった」と言った。
Bさんへの介護職の対応として、適切なものを1つ選びなさい。
1 クッキーなどの甘いものは食べないように、助言する。
2 早めに主治医に相談するように、助言する。
3 めまい外来を受診するように、助言する。
4 1週間ほど様子をみるように、助言する。
5 午後に運動を増やすように、助言する。
解答と解説
正答:2
糖尿病(diabetesmellitus:DM)があり血糖降下薬を服用しているご利用者への支援方法
糖尿病とは
インスリンというホルモンの不足や作用低下を原因として、慢性の高血糖が持続する疾患です。糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり主な病態等は表のようになっています。
分類 | 病態 | その他 |
---|---|---|
Ⅰ型糖尿病 (インスリン依存型) |
膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊されインスリン生産能力の障害により発症する。 若年者に多い。 |
治療として、インスリン自己注射を必要とする。 |
Ⅱ型糖尿病 (インスリン非依存型) |
インスリンの分泌低下や作用不足により発症する。 中年以降に発症が多い。 |
発症には、遺伝的要因に生活習慣が関与し、食事・運動習慣で治療可能な場合もある。 日本人の全糖尿病患者のうち、約9割がⅡ型糖尿病である。 |
表1:糖尿病の分類
Ⅰ型糖尿病の原因には、自己免疫が関係しているとされています。Ⅱ型糖尿病の原因には、遺伝的な影響、食習慣、運動習慣、肥満などの環境的な影響があるといわれています。Ⅱ型糖尿病は発症すると完治が難しいため、予防が重要な疾患ともいえます。生活習慣病予防として、正しい食生活の習慣、標準体重の維持、身体的活動量に注意したい疾患です。
糖尿病の主な症状
糖尿病の初期には、自覚症状はほとんどありません。高血糖が持続することによる主な症状として、口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少などがあります。
低血糖症
糖尿病の薬物療法を受けているご利用者には、高い頻度で低血糖症状がみられます。低血糖症状は、血糖値が70㎎/㎗以下になると血糖値を上げようとし、50㎎/㎗未満になった時に脳などの中枢神経が糖不足になり、出現する症状をいいます。主な原因には、食物摂取量や炭水化物不足、薬剤使用後の食事時間の遅れ、インスリン注射や飲み薬の量が多い、運動量や入浴の影響があります。主な症状には、強い空腹感、欠神(あくび)、脱力感、発汗、心悸亢進などがあります。低血糖が進行すると意識消失や昏睡になります。低血糖時の対応として意識のある場合には、ブドウ糖や砂糖を摂取してもらいます。
Bさんの症状は、低血糖症状であると推測される状態です。「ふわふわ」した感じに対して、Bさんがクッキーを食べたところ症状が改善。その状態での、介護福祉職の対応が問われています。
選択肢1「クッキーなどの甘いものは食べないように、助言する。」×
低血糖症状がみられたBさんがクッキーを食べたのは正しい対応です。甘いものを食べないように助言することは、次に同じような症状がでた場合の対応を阻害することになります。
選択肢2「早めに主治医に相談するように、助言する。」〇
Bさんに「ふわふわ」した感じがしたときクッキーを食べたら良くなった、という状態を主治医に伝え、何が低血糖の症状につながったのかを判断してもらう必要があります。主治医に相談するよう助言したことは適切です。
選択肢3「めまい外来を受診するように、助言する。」×
Bさんからの訴えは「ふわふわ」した感じで、めまいを訴えているわけではありません。介護福祉職が受診科の助言をすることは不適切な行動です。糖尿病を管理している主治医に相談するように助言することが望ましい対応といえます。
選択肢4「1週間ほど様子をみるように、助言する。」×
Bさんは腎臓機能が低下した状態であり、低血糖症状がみられているので、早めに主治医に状態を相談することが必要です。1週間経過をみるという判断は、介護福祉職として適切ではありません。
選択肢5「午後に運動を増やすように、助言する。」×
低血糖症状が出現した原因が何であるかが不明な状態です。むやみに運動を増やすと、再度低血糖症状を起こすことも考えられるため、適切な助言とはいえません。
糖尿病があるご利用者の介護実務での生かし方
糖尿病のあるご利用者で血糖降下剤を服用している場合には、低血糖症状を起こす可能性があることを知っておく必要があります。低血糖症状を起こした際に適切な対応ができないと、意識消失や昏睡状態という生命の危険につながります。糖尿病があり血糖降下剤を服用しているなら、主治医から低血糖症状に対する指導がされていると思いますが、ご利用者が高齢であることやその重要性を理解していない可能性も考慮しなくてはなりません。関わる介護福祉職が生活の中での状態に注意しておく必要があります。また、ご利用者の様子をうかがいながら、必要に応じて医療職に報告するという姿勢が大切です。もし、低血糖症状で意識を消失している場合には、口から糖分を摂取することが困難なので、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間にすり込み救急車を呼ぶのがよいでしょう。
参考文献
最新「介護福祉士養成講座」12「発達と老化の理解」中央法規出版2019年3月31日
看護大事典第2版医学書院2010年
国際感染症センター長 大曲貴夫先生に聞く(3)感染拡大に備える 介護施設でコロナ感染疑いありのときの対応法
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