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学ぶ 介護国試過去問ドリル 2021/07/30

#ご利用者#結城康博#自助#国家試験#地域包括ケア#介護施設

第14回 地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助とは?

文:結城康博(淑徳大学教授 介護福祉士 社会福祉士) 地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助とは?.jpg

「地域包括ケアシステム」というキーワードを聞いたことがあるでしょうか?現在、高齢者介護施策は、「地域包括ケアシステム」という考え方が基になって展開されています。このキーワードを理解するうえで、自助・互助・共助・公助といった支援の枠組みも認識しておく必要があります。

「地域包括ケアシステム」という概念は、1970年代に、広島県の御調町(現在は尾道市)で展開された医療と福祉サービスを連携する実践形態が原形と言われています。ただ、類似した言葉「包括的地域ケア・システム」などのように、「福祉」「保健」「医療」の連携が強化されるべきとの意見もあり、介護保険制度創設以前から論じられてきています。
昨今、政府においては負担と給付の問題が最大の課題となり、「年金」「医療」「介護」といった給付費の伸び率を予測し、財政的な側面も絡めながら「地域包括ケアシステム」の構築が論じられています。

「自助」「互助」「共助」「公助」の考えかた

高齢になっても自立した生活を継続し、住み慣れた地域で暮らしていくためには、「自助=自分」、「互助=家族・地域」、「共助=社会保険(介護保険など)」、「公助=福祉」といった、支援体制が重要となります。介護保険制度に依存したサービス体系に偏らず、「自助」「互助」の組み合わせが重要視されています。
特に、団塊世代が退職を迎え、これらの人達が支え手となる「互助」による支援体制に期待が寄せられています。しかし、現在の地域社会の希薄化によって、地域力の構築にはかなり課題があるとも言わざるをえないでしょう。 いずれにしろ2025年には団塊の世代層が75歳を迎えることから、この世代層がサービスを利用する際には「新しい高齢者」として位置付けられ、多様化するニーズに対応する支援体制として「地域包括ケアシステム」が想定されています。

主に5つの要素から成り立つ

「地域包括ケアシステム」は、大きく5つの要素に分かれており、(1)住まい、(2)医療、(3)介護、(4)生活支援、(5)介護予防となっています(厚労省ホームページより引用。)。
これら5つのキーワードを、筆者なりに解釈すれば、「(1)住まい」の確保が基本と考えられます。要介護高齢者が在宅で最期まで暮らしていくには、安心した「住まい」がなければなりません。例えば、サービス付高齢者住宅の整備促進は1つの方策でしょう。
また、要介護高齢者が在宅で住み続けるには「医療」や「介護」サービスが地域で充実していなければなりません。特に、独居高齢者が増える中で、24時間型の介護や看護サービスは重要な社会資源となります。具体的には「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が1つのサービスメニューでしょう。
なお、「電球を取り換える」「トイレ掃除」「ゴミ出し」といった、現役世代にとっては何ら支障のない生活行動も、心身共に機能が低下している要介護高齢者にとっては、非常に困難をきたします。その意味で、地域住民の助け合い(ボランティア組織の構築)や簡単な「生活支援サービス」が整備されることで、多くの高齢者が在宅で生活しやすくなります。
しかも、高齢者自らがボランティア活動をすることで「介護予防」につながります。65歳~74歳の元気な高齢者が、75歳以上の要介護高齢者を支援するといった世代内の助け合いシステムを構築することで、相乗効果が期待できるというわけです。

地域包括ケアシステムの植木鉢モデル図

地域包括ケアシステムの植木鉢モデル図

出典:平成28年3月 地域包括ケア研究会報告書
厚生労働省ホームページより)

介護福祉士国家試験 過去問題


第32回 午前 問題5

地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助に関する次の記述のうち、最も適切なものを1 つ選びなさい。

1 自助は、公的扶助を利用して、自ら生活を維持することをいう。
2 互助は、社会保険のように制度化された相互扶助をいう。
3 共助は、社会保障制度に含まれない。
4 共助は、近隣住民同士の支え合いをいう。
5 公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。



解答と解説

正答:5

選択肢1「自助は、公的扶助を利用して、自ら生活を維持することをいう。」×

「自助」は、まず困ったら利用者自身が自分で解決する考え方です。いっぽう公的扶助は、生活保護制度を意味するもので、税金を用いた「公助」の枠組みとなる支援システムです。

選択肢2「互助は、社会保険のように制度化された相互扶助をいう。」×

「互助」は地域組織の助け合い、近所づきあいの見守り支援策や、一部、地域住民のボランティア等が該当します。いっぽう社会保険は、「共助」の枠組みであてはまり既述は間違いです。

選択肢3「共助は、社会保障制度に含まれない。」×

「共助」は主に社会保険があてはまり、当該住民が社会保険料を支払い、困窮者が生じたらサービスを利用できる仕組みです。そのため、普段から保険料を支払っていない者は、たとえ困窮してもサービスが利用できない社会保障制度の骨格となる社会保険が「共助」です。

選択肢4「共助は、近隣住民同士の支え合いをいう。」×

近隣住民同士の支え合いは、「共助」ではなく「互助」です。「共」と「互」では意味合いが違いますので、しっかり認識しておく必要があります。

選択肢5「公助は、自助・互助・共助では対応できない生活困窮等に対応する。」〇

生活困窮者当は、「公助」です。社会保険(共助)は、普段から保険料を支払っていないとサービスが受けられません。しかし、「公助」は税金で賄われているため、そのときに困窮状態が認められればサービスが受けられます。



「自助」「互助」の理念が重視

このように「地域包括ケアシステム」という施策には、公的サービスに併せて「自助」「互助」といった理念が重視されています。できるだけ高齢者自身が心身に気を遣いながら「介護予防」をこころがけ、運動や食生活のバランスをとるよう努めていくことが目指されています。 
また、自分ができることは自分で行い、一定の経済的余力があれば公的サービスに頼らず自費でサービスを使うことも、「自助」努力にあてはまるのでないでしょうか。
いわば地域の助け合い組織を強化して、公的サービスに頼らずボランティア組織が活性化されることで、在宅介護のサポートも促進されるのではないかと考えられているのです。実際、各地で自治会役員やNPO法人などの団体が助け合い組織を強化して、「互助」組織の活性化の先進事例として紹介されることも少なくありません。

課題も浮き彫りに

しかし、「自助」や「互助」といった理念に基づくサービス形態、もしくは高齢者の意識変容を、在宅介護施策の中心に据えていくには多くの課題があります。もちろん、「自助」や「互助」に基づく施策は重要でありますが、かなりの個人差や地域格差が生じてしまうのが現状です。
あくまでも「自助」や「互助」に基づく施策は、公的サービスの「補完」であって「代替」にはなりえないという考えもあります。公的サービスがしっかりと整備されてこそ、「自助」「互助」といった形態が活性化されてくるかもしれません。

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プロフィール

結城 康博

淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)、社会福祉士、介護福祉士。

結城康博さん

1969 年生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒業。法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。1994~2006 年、東京都北区、新宿区に勤務。この間、介護職、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護係の仕事に従事(社会福祉士、介護福祉士)。現在、淑徳大学総合福祉学部教授(社会保障論、社会福祉学)。元社会保障審議会介護保険部会臨時委員。『介護職がいなくなる』岩波ブックレット。その他、多数の書籍を公刊。

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