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学ぶ やさしい介護法律講座 2021/02/09

#働き方#割増賃金#時間外手当#残業#法定労働時間#中沢信介#介護の法律

弁護士とやさしく学ぶ介護の法律 第8回 「介護施設でもある残業代のイロハ―残業代ちゃんともらってる?」

文:中沢信介 弁護士 残業と法定残業の違いを若手男性に説明する女性.jpg

こんにちは。
弁護士の中沢信介です。
今回と次回は、昨今の働き方改革などで話題となっている労働問題のうち多くの皆様に関係があるであろう残業代(時間外手当)のことを取り上げたいと思います。今回は、残業代に関する基本的な知識について具体的なケースを想定して学んでいきたいと思います。
なお、次回は残業代に関する裁判例を見ていきたいと思います。

そもそも残業ってなに?

中沢弁護士 A奈美さんは、割増の残業代が発生する労働というのはどのようなものだと理解していますか。

A奈美さん 私の施設では定時を過ぎると「割増になるから早めに帰って」と施設長からよく言われたりします。だから、私の印象だと、定時過ぎの労働が割増の残業代が発生する労働だと理解しています。

中沢弁護士 結果的にはそうなることはあるのですが、法律的には必ずしもイコールではありません。
割増の残業代が発生するのは、法定労働時間という1日に8時間、週に40時間の制限時間を超えた分の労働(法定外労働時間といいます)となります。

A奈美さん だから定時が9時6時(18時・実働8時間・休憩1時間)と定めている施設・病院が結構あったりするのですね。

中沢弁護士 そうなんです。
逆に言うと休憩を含まない労働時間が1日8時間より短い場合には、働いた時間が8時間に達するまで割増のつかない残業代が支払われることになります。
例えば、9時5時(17時・実働7時間・休憩1時間)と定めている施設・病院で19時まで働いたとします。そうすると、17時から18時までの1時間分の労働は、通常の賃金と同様の方法で計算された金額の残業代が支払われて、18時以降(8時間経過)は、割増の残業代が支払われることになります。

A奈美さん 結構複雑ですね。

残業代っていくらもらえるの?

中沢弁護士 それでは次に法定外労働時間においてどの程度割増となった残業代が発生しているのでしょうか。

A奈美さん 私が飲食店とかでアルバイトをしていた時というのは、時給が1.25倍になっていました。

中沢弁護士 それで大体正解です。これは正社員の人も同様です。詳しい計算方式は省きますが、月給を時給相当に換算し、それに1.25倍して算出をします。

A奈美さん でも、深夜のバイトの時は時給の1.5倍になっていた気がするのですが。

中沢弁護士 良いところに気が付きましたね。実はそれは別の制度と併用されています。夜10時から朝5時までの労働は深夜労働といい、さらに2割5分増しとなります。
このほかにも、休日労働をすると、その労働時間は3割5分増しの賃金を、それがさらに深夜だったりすると6割増し(休日:2割5分増し+深夜:3割5分増し)の賃金を支払わなければなりません。

固定で残業代を払われている場合残業代は一切請求できない?

中沢弁護士 裁判でも施設側からよく出てくる主張が、一部の手当が残業代に相当するという主張です。
この主張に関する制度を導入している施設・病院は一度しっかりと専門家などに見てもらった方が良いと思います。というのも不適切に運用されているせいで、ただ残業代の支払いとして認められないだけでなく、残業代をより多く支払わなければならなくなる場合が多いです。

ケース1 月20時間分のみなし残業代をもらっているけど、月30時間時間外労働を行っている場合

中沢弁護士 このケースでは、残業代を請求できるでしょうか。

A奈美さん 素直に10時間分残業代を請求できる気がします。

中沢弁護士 この場合はさほど難しくありませんね。基本的な考え方はそれでOKだと思います。ただ、しっかりとした制度設計になっていないと、20時間分についても払いがなかったものとして、30時間分支払わなければならないとなる場合もあるので、施設・病院側は注意が必要です。

ケース2 月20時間分のみなし残業代をもらっているけど、月10時間時間外労働を行っている場合

中沢弁護士 ではこのケースではいかがでしょうか。

A奈美さん 20時間働く約束なのに、10時間しか働けていないのだから、請求できないはずですよね。

中沢弁護士 これが先ほどから言っている難しいところなのですが、制度設計がしっかりとなっていないと、施設・病院側は20時間分の時間外労働の賃金として支払ったと認められない結果となり、20時間分として支払った手当も基本給に算定され、さらにそれに割増賃金率を乗じた割増賃金を支払わなければだめになるケースもあります。

A奈美さん そんなことがあるんですね。

中沢弁護士 そうですね。以下裁判例の要件(アクティリンク事件)を挙げておきます。
1.実質的に見てその手当が時間外労働の対価としての性格を有していること
2.支給時に時間外労働の時間数と残業手当の額が明示され、超過した場合には別途精算する合意または取り扱いが存在すること

A奈美さん 何やら難しい要件ですね。

中沢弁護士 先ほどから繰り返し言っていますが、ほんとにしっかりやっておいた方がいいところですので、導入している施設・病院は一度専門家に見てもらってください。
次回は裁判例を見ながら残業代を検討していきましょう。

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プロフィール

中沢信介

弁護士

中沢信介さん

弁護士。1984年生まれ。2013年弁護士登録。 明治大学経営学部会計学科卒業後に弁護士になることを決意。明治大学法科大学院修了。法教育にも力を入れており年間十数件程度の小・中学校や高校を訪問している。 多数の医療関係の法人の顧問も務め、病院の第三者委員会の委員としての経験も有している。
所属
セブンライツ法律事務所 https://sevenlights-law.com/
東京弁護士会 https://www.toben.or.jp/

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