介護職が知っておくべき労災のいろは【弁護士とやさしく学ぶ介護の法律ー第13回】
文:中沢信介 弁護士
こんにちは。
弁護士の中沢信介です。
第13回は介護職員の労働災害に関係する事項や判例について勉強をしていきたいと思います。
今回は労働災害保険について基本的なことを勉強していきましょう。
はじめに
A奈美さん 介護職は重労働なんですよね。周りにも腰痛に悩まされている介護職員が少なからずいます。あんまり詳しく勉強する機会ないですよね。
中沢弁護士 まずは労働災害の基本的なことをざっとみていきます。
労働災害とは?認定された場合に給付されるもの
A奈美さん 労働災害保険(以下「労災保険」)ってそもそもなんですか。
中沢弁護士 労災保険とは、業務中や通勤中に労働者が負傷・疾病・障害を負った場合(労働災害)に必要な保険を給付してくれる制度です。
A奈美さん 治療を受けさせてくれたりするんですよね。
中沢弁護士 その通りです。その他にも負傷・疾病・障害の程度によって休業(補償)給付や傷害(補償)給付等がなされることもあります。
労働災害の具体的な事例のイメージ
中沢弁護士 労災となるケースというのはどういったイメージでしょうか。
A奈美さん 介護中に重いものをもって腰痛になった場合とかですかね。
中沢弁護士 そうですね。他にありますか。
A奈美さん あとは結構長時間の時間外労働があったりして、精神的な疾患になる場合とかもあるように思えます。
中沢弁護士 代表的にはその二つですね。いずれも「業務中」の災害に分類されます。そのほかに「通勤中」の災害もありますが。
A奈美さん 通勤中の災害は通勤中に交通事故にあう場合などですよね。
中沢弁護士 その通りです。
労働災害に認定されるかを判断するのにあたって重要なこと
中沢弁護士 では業務災害と認定されるか否かの判断でよく問題となるのはどういうことかわかりますか(要件該当性)。
A奈美さん さすがにわからないですね。
中沢弁護士
①労働者かどうか。後は②業務上の災害といえるかという点ですね。
そしてこの②業務上の災害といえるかは以下の2点から判断します。
㋐業務遂行性:労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。
㋑業務起因性:業務と傷病等の間に一定の因果関係があることが必要です。
A奈美さん 難しそうですね。
中沢弁護士
要件に該当するかは様々な要素が絡むので難しいのですが、各要件に該当するかを検討するにあたって問題となるところのイメージはしやすいと思います。
まず、㋐業務遂行性ですが、問題となるのは休憩中とかに起きた事故です。
A奈美さん 確かに業務を遂行しているといえるか微妙ですね。
中沢弁護士
これに該当するのかは個別具体的な判断を必要としますので基本的なことを学ぶ今回は省略しますね。
次に業務起因性ですが、これが認められることに問題がない例としては、介護職員が人や重いものを持ち上げたときに腰を痛めてしまったケースが挙げられます。
A奈美さん それだと持ち上げたことが原因で腰痛になったことが明らかですものね。
中沢弁護士 そうなんです。他方で問題となる例として慢性的な腰痛などがあります。
A奈美さん 当然労災と認定されてもいい気がしますけどね。
中沢弁護士 介護の現場は本当に過酷でそう判断してほしいという現場の声はよく理解できます。ただ、介護職に就く前から腰痛を持っていた人が介護職員になったケースにおいて常に労災と認定するというわけにはいかず、一定の縛りが必要なんです。
A奈美さん そういわれてみれば、色々なケースがありそうですね。
中沢弁護士 この場合も個別具体的な事情を詳しく調査して該当するかどうかが判断されます。
※当記事は公開時点の法律をもとに作成しています
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。

SNSシェア