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職場・悩み 介護の転職お役立ち 2021/06/10

#ハラスメント#ヘルパー#人間関係#介護業界#新型コロナ#残業#給料#訪問介護

訪問介護のヘルパーに多い5つの悩みと対応策

文:中村楓(なかむらかえで) 介護福祉士、介護コラムニスト 訪問介護員は悩みが多い.jpg

訪問介護のヘルパーは、1人で活動する時間が多いため、不安を抱えがちです。他の介護職に比べると、上司や同僚と交流する機会も少なく、悩みがあっても相談できず、どうしていいのかわからない人も多いのではないでしょうか。今回は訪問介護のヘルパーから聞いた5つの悩みについて、解決策とともに解説します。

悩み1.:現場で業務外の仕事を頼まれてしまい、どうしていいかわからない

「ご利用者のお宅に訪問すると、使わない部屋の掃除や庭の草むしり、同居している家族分の食事の用意など、業務外の支援を頼まれることがあります。介護保険では業務外の仕事はできないことはわかっていても、ご利用者の困っている様子を見ていると、本当に断っていいのか悩んでしまいます。ご利用者から業務外の仕事を頼まれたとき、どう対応すればよいのでしょうか」

介護保険サービス外の業務はできない旨を伝え、きちんと断る

ヘルパーに多い悩みの1つが、「業務外の仕事を頼まれる」ことです。この背景には、ご利用者ヘルパーの役割を誤解していることが考えられます。介護保険において、訪問介護のヘルパーが担う役割は、「ご利用者本人が自立した生活を送れるよう支援する」ことです。具体的にご利用者に提供できるサービスは以下のとおりです。

・ご利用者が生活するスペースの掃除(居室、トイレ、浴室など)
・ご利用者本人のための調理
・ご利用者本人が必要とする生活必需品の買い物
・ご利用者本人の衣服や使用するタオルなどの洗濯
・自分で薬を取りに行けない場合の薬の受け取り

上記のように、ご利用者本人に関わるサービスであれば、介護保険内として提供できます。しかし、ご利用者のなかには「ヘルパー=家政婦」と認識している人もあり、家のことは何でもしてもらえると勘違いしていることも少なくありません。ご利用者からすると、無理な仕事を頼んでいるつもりはないかもしれません。しかし、あくまで介護保険の適用として依頼されたものであり、自身の業務範囲に境界線を引いておくことも大切です。業務外の仕事を頼まれたときには、介護保険ではできない内容であることを説明し、その場できっぱりと断るようにしましょう。

訪問後にサービス提供責任者に相談する。もしくは直接、対応してもらう

直接、断っても理解してもらえない場合や、断りにくい雰囲気で言いづらい時には、所属する訪問介護ステーションのサービス提供責任者に相談しましょう。
サービス提供責任者には、ヘルパーのフォローや技術指導といったヘルパーを支援する役割があります。業務外の仕事を頼まれて困っていることを相談すれば、上手な断り方や対応の仕方などを教えてくれるでしょう。また、サービス提供責任者から、業務外の仕事はできないことをご利用者が納得するまで説明してもらうこともできます。サービス提供責任者が対応しても理解してもらえない場合には、サービス提供者が担当ケアマネジャーに相談し、ケアマネジャーからご利用者に伝えてもらうこともあります。

悩み2.:残業が多く休みも取りにくい。給料が安くて割に合わないと感じる

「1日に担当する件数が多く、書類業務に対応する時間が限られます。終了後に記録を書くことになるため、日常的に残業になってしまいがちです。また、人手不足のため、急な休みに対応してもらえない、希望通りの休みが取れないといったときもあります。毎日の仕事は正社員と同じくらい大変なのに、パートなのでボーナスや手当がつかず、給料が安くて割に合わないと感じています。どうすればよいのでしょうか」

まずは仕事量の見直しをする

訪問介護の現場は、介護サービスのなかでも人手不足が最も深刻であるにもかかわらず、利用希望者が多い状況です。そのため、1人のヘルパーが抱える件数はどうしても多くなってしまいます。できるだけ残業を避けるためには、仕事の優先順位をつけて書類を書く時間を確保するといった業務スケジュールの見直しから始めましょう。
もし、記録を書く時間を確保できないほど大変な場合には、1日の担当件数が多すぎる可能性があります。サービス提供責任者に相談し、1日の担当件数の見直しをしてもらいましょう。訪問件数が1件減るだけで、時間的にも気持ち的にも余裕が持てるようになり、仕事がスムーズに進む可能性があります。

仕事の内容や形態が変更できるか相談する

同僚や先輩ヘルパーと同じように働いているはずなのに給料が安いと感じている場合には、生活援助と身体介護の割合の違いが、給料に影響していることがあります。特にパートの場合、生活援助と身体介護では時給が異なります。生活援助が多い場合には、身体介護の仕事を増やせるか、サービス提供責任者に相談してみましょう。
また、フルタイムで働ける場合には、正社員になることで待遇アップを狙うのもひとつの手です。ヘルパーとして働く人はパートが多いものの、事業所によっては希望すれば正社員になれるところや、正社員を募集しているというところもあります。まずは今いる事業所で正社員になれるか、上司に確認してみるとよいでしょう。

給料アップを目指すなら資格取得を視野に入れる

さらなる給料アップを目指すのであれば、上位資格の取得を視野に入れてみるとよいでしょう。多くの事業所では、持っている資格に応じて手当を支給しています。特に、介護福祉士の資格は国家資格ということもあり、初任者研修や実務者研修の修了者に比べると手当の金額も高くなる傾向があります。
また、サービス提供責任者になれば、役職手当がついたり、基本給そのものが上がったりする事業所もあります。サービス提供責任者を目指すには通常介護福祉士の資格が必要であり(事業所によっては実務者研修や初任者研修資格で介護職経験年数が長い人がなれる場合もある)、実務経験が足りない場合は時間がかかるかもしれません。しかし、長い目で見れば介護福祉士の資格を取得しておくと、待遇面で優遇される可能性が高まります。

悩み3.:ご利用者の対応について他のヘルパーと意見が合わない

「私が担当しているAさんが先日、「おかずがもう1品あると本当はいいんだけどね」と話されたので、その日は1品多く作ると大変喜ばれました。ところが、Aさんからその話を聞いた他のヘルパーから、「次から1品多く作ってと言われると、仕事に差し支える。みんなと同じようにして」と怒られてしまいました。Aさんは私が1品多く作ったからといって、他のヘルパーにまでお願いする人ではないし、私も、その1回だけしか作ってないので、みんなに迷惑はかからないと思います。正直、何がいけなくて怒られたのかわからず悩んでいます」

訪問介護は1対1ではなくチームで支援していることを忘れない

ヘルパーはご利用者と1対1で接する機会が多いため、ご利用者が心を許しやすい関係を築きやすいものです。だからこそ、普段は言わないような本音がポロリと出てくることもあるでしょう。
このケースでは、Aさんと相談者の関係性が良いからこそ、「おかずがもう一品あったらいいな」という言葉が出てきたのかもしれません。しかし、本音が聞けたことと、その思いに即時に応えるかどうかは、別モノとして考えなくければいけません。なぜなら、Aさんを担当しているヘルパーは相談者だけではないからです。
訪問介護は、ヘルパーが入る時間だけを見ると、1対1で支援を行っているように感じてしまいます。しかし、実際は、1人のご利用者に対し、複数のヘルパーが訪問してご利用者の生活を支えています。そのため、どのヘルパーが来ても同じような支援を行えるように方向性を統一する必要があります。
今回のようにご利用者から支援内容についての要望があった場合には、その場で自己判断するのではなく、いったん、事業所に持ち帰り、検討する時間が必要です。まずはご利用者の気持ちに寄り添ったうえで、対応可能かどうかを事業所で検討する旨を伝えましょう。ヘルパー同士で話し合ったうえで対応方法を決定することが大切です。

悩み4.:ご利用者の困った行動への対応がわからない

困った訪問介護ご利用者

「訪問先のご利用者は1人暮らしの方が多く、訪問した直後から話しかけられ、話を聞いていると、なかなか思うように仕事が進みません。また、セクハラ発言や暴言があるご利用者の場合、うまく対応できず、仕事が終わるとどっと疲れてしまいます。このような、困った行動のあるご利用者にはどう対応すればよいのでしょうか」

話好きのご利用者は「話す時間」を決めておこう

1人暮らしのご利用者はヘルパーと話すことが唯一の楽しみで、ヘルパーが来る日を心待ちにしているという人も少なくありません。しかし、ヘルパーが作業できる時間は限られています。ご利用者の気持ちがわかる分、話に付き合いたいという思いもあるでしょう。話好きのご利用者を訪問するときには、じっくり話をする時間は5分、もしくは10分程度と事前に決めておき、その時間を超えたら作業をしながら話を聞くようにする、といった対応をしましょう。そうすれば、ご利用者は話を聞いてもらえたという満足感が得られますし、ヘルパーは時間内に仕事を終わらせることができます。

セクハラ発言や暴言などには毅然と対応し、上司へ必ず報告を

セクハラ発言や暴言が見られたときには、まずその場で毅然とした対応を取りましょう。そうした行動が見られる背景には、ご利用者自身の性格や環境、ストレスといった要因に加え、病気や障害などにより感情のコントロールが難しいといったケースが考えられます。
しかし、関わる介護職の対応が変わるだけでセクハラ発言や暴言がなくなることもあるので、上司に報告し対応方法を検討することが大切です。状況によっては、ヘルパーだけでなくケアマネジャーや家族も交えた担当者会議を開催する必要があります。
避けたいのは、その場の雰囲気に飲まれて、曖昧な対応や我慢をしてしまうことです。そうした態度はエスカレートするきっかけになったり、ヘルパー自身の健康状態を脅かしたりする可能性があります。ご利用者とヘルパーの双方が気持ちよく過ごすためにも、必ず上司に相談し、対応を検討しましょう。

悩み5.:ご利用者が新型コロナウイルス感染症対策に協力してくれず不安

「新型コロナウイルス感染症の対策として、換気やマスクの着用をお願いしても、協力を得られないことがあります。また、訪問したときに初めて、県外から家族が帰省した話を聞かされて、驚くこともあります。新型コロナウイルス感染症の感染リスクを思うと、とても不安です。どうしたらよいのでしょうか」

まずは自分が新型コロナウイルス感染症対策をしっかりと行う

ご利用者によっては体調管理の関係で、換気やマスク着用が難しいことがあります。まずは自分ができる新型コロナウイルス感染症への予防対策を行いましょう。具体的には、携帯用の消毒液などを持参してこまめに消毒する、マスクを着用する、可能であればフェイスシールドも併用する、可能な範囲でソーシャルディスタンスを保つなどを実践します。

県外への移動や家族の帰省があったときは上司に指示を仰ぐ

多くの事業所では、ご利用者だけでなく、ヘルパー自身が県外の人や感染リスクの高い人との接触があった場合の規定を設けています。もし、ご利用者から県外移動や家族の帰省があったことを聞いたら、速やかに上司に指示を仰ぎましょう。
ただし、事実が分かった時のタイミングによって、訪問を取りやめたり、サービス提供の途中で退出したりするのは難しいものです。状況に合わせて、今後の利用について事業所からご利用者に説明してもらったり、その日以降のサービス提供ができなくなったりするといった対応になることが多いでしょう。

上司と今後の対応について検討する

新型コロナウイルス感染症への対策は、長期的に行う必要があります。今後どうすればご利用者に協力してもらえるかを上司や事業所内で相談し、対応策を検討しましょう。サービス提供責任者や担当ケアマネジャーからも対策の必要性について、ご利用者に再度説明してもらう機会をつくることも大切です。「新型コロナウイルス感染症に感染しない・感染させない」という気持ちを強く持ち、ご利用者に理解してもらうようにしましょう。

訪問介護のヘルパーの悩みは1人で抱え込まないことが大切

介護中の悩みは相談を

1人で活動することの多い訪問介護のヘルパーは、仕事中に困ったことが起きてもすぐに相談できず、悩んでしまうケースがほとんどです。1人で悩みを抱え込んでしまうと、ストレスも強くなり、仕事にも支障をきたします。仕事を続けていくためには、悩みは上司や同僚などに相談することが大切です。その場でできる対応をした後は周りに相談し、できるだけ1人で抱え込まないようにしましょう。

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参考URL
令和元年度介護労働実態調査|介護労働安定センター

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中村楓(Kaede Nakamura)

介護福祉士・介護コラムニスト

現役介護支援専門員。介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級、認知症介護実践者研修の資格を持つ。病院や通所リハビリ、デイサービスで介護福祉士として働き、生活相談員や介護認定調査員の経験も持つ。「介護の未来を明るくする」をモットーに、現場感ある記事を書く介護コラムニストとしても活動中。

中村楓の執筆・監修記事

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