高齢者に塗り絵がおすすめな理由は?塗り絵を実施する際のポイントも
構成・文/介護のみらいラボ編集部
介護施設で定期的に実施するレクリエーションのなかでも、幅広い利用者に楽しんでもらえるレクリエーションが「塗り絵」です。当記事では、高齢者向けのレクリエーションとして塗り絵がおすすめな理由と塗り絵を楽しんでもらうためのポイントを解説しています。
介護施設・高齢者施設では、利用者が楽しめるレクリエーションが定期的に開催されます。レクリエーション内容には体をつかうものや頭をつかうものなど、さまざまなものがありますが、どのような利用者でも楽しめるといわれるレクリエーションが「塗り絵」です。
当記事では、高齢者向けのレクリエーションとして塗り絵がおすすめな理由から、塗り絵を楽しんでもらうためのポイント、準備すべきものまで徹底的に解説します。介護施設で働いているスタッフや、これから働こうと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
1.高齢者に塗り絵が推奨される3つの理由
塗り絵は、介護施設において人気のある高齢者向けレクリエーションです。また全国の書店では、高齢者向けの塗り絵の絵本が多く発売されており、高齢者にとって塗り絵は重要な楽しみ・機能訓練の1つといえるでしょう。色鉛筆と何らかの絵が描かれた紙さえあれば気軽に楽しめるため、介護施設で働くスタッフの負担も軽減できるプログラムでもあります。
では、なぜ高齢者にとって塗り絵はよいとされているのでしょうか。ここからは、高齢者に塗り絵が推奨される3つの理由を紹介します。
脳の活性化が期待できる
塗り絵は、紙に描かれた絵柄の形を認識し、全体のバランスを計算した上で色を考えます。そして、考えた色と同色の色鉛筆を手に取り、指先の筋肉を器用に使って細かく色を塗ります。これらの動きは、脳を活発に活動させることとなるため、結果として脳の活性化が期待できるでしょう。
脳を活性化することで、ボケにくくなる、つまり認知症予防にもつながるといわれています。そのため、高齢者にとって塗り絵は毎日を健やかに過ごすためにも重要なプログラムであるといえるでしょう。
手指のリハビリにつながる
塗り絵をすると、「色鉛筆をつかむ・握る」「線に沿って握りながら塗る」など、手の指先を細かく動かすこととなります。絵柄の全体像や色を把握・認識することに対しては脳のリハビリにも効果的ですが、指先の細かな動きは単純に手指のリハビリにも大きくつながります。
日常生活を行う上で、指先を細かく器用に動かすことはさほどありません。塗り絵は、ケガなどによって指先の機能が損なわれてしまった高齢者はもちろん、指先を細かく動かすような生活をしていない高齢者に対しても効果的な訓練となるでしょう。
ストレス解消につながる
高齢者にとって塗り絵は、主に脳の活性化が期待でき、手指のリハビリにつながるレクリエーションです。期待できる効果はそれだけでなく、リフレッシュ効果・ストレス解消にもつながるといわれています。
塗り絵によって脳全体を活性化させられれば、緊張がほぐれ自律神経も整いやすくなり、ストレスの緩和につながります。また塗り終わったあとの達成感、さらに完成した作品の仕上がりを見ることで、日常では感じる機会が少ないやりがいも感じられるでしょう。
2.高齢者に塗り絵を楽しんでもらうためのポイント4つ
塗り絵の効果を十分に得るためには、高齢者が自主的に楽しみながら取り組むことが重要です。高齢者が自主的に楽しみながら取り組めるかどうかは、塗り絵を実施する介護施設のスタッフや家族の万全な準備が重要となります。
ここからは、介護施設や家庭で塗り絵を実施する際のポイントを4つ紹介します。
適切な絵柄や難易度の塗り絵を選ぶ
介護レクリエーションやプログラムとして塗り絵を楽しんでもらうためには、適切な絵柄や難易度の塗り絵を選ぶことが重要です。
なかには、高齢者向けの絵柄を使用せず子ども向けの絵柄を選んでしまい、高齢者の自尊心を傷つけてしまった・以降塗り絵を楽しんでもらえなくなったというケースも珍しくありません。そのため、基本的には大人向け塗り絵・高齢者向け塗り絵を選択しましょう。
多くの高齢者に受け入れられやすい絵柄は、「季節の絵柄」です。レクリエーションを行うときの季節が春なら「ひなまつり」、夏なら「花火大会」、秋なら「ハロウィン」、冬なら「お正月」など、その時々に合わせた季節の絵柄を選ぶとより盛り上がるでしょう。
また、より積極的に塗り絵を楽しんでもらうためにも、複数の絵柄を用意して自分で選んでもらうといったアイデアも有効です。初級者版から上級者向けまで、あらゆる難易度を揃えておくとよいでしょう。
好みの色・使う色をピックアップする
選択できる色鉛筆の数が多すぎると、「どれを使えばよいのだろう」「似た色がたくさんあるけど、どれが正解なのだろう」とかえって高齢者が悩んでしまう可能性があります。
一度悩み始めると集中力が途切れる原因にもなりかねないため、高齢者本人の好みの色だけを抽出してあげたり、限られた色の鉛筆のみを用意してあげたりしましょう。
否定せず褒める
高齢者本人が好みで抽出した色鉛筆が塗り絵の絵柄と合っていなかった・完成した絵の色が実際の色と異なっていたとしても、そのことを否定してはなりません。
塗り絵の目的は正しく色を塗るのではなく、脳の活性化やリハビリ、ストレスの緩和であるため、本人の感性を尊重することが重要です。否定は避けて、「何を思ってこの色をチョイスしたのか」を聞いて、理由を聞いた上で適切に褒めてあげるとより有効です。
塗り絵ができない人・苦手な人に配慮する
手指を何不自由なく動かせる人にとって、塗り絵は簡単に楽しめる行事ですが、身体機能の低下により塗り絵ができない高齢者や、塗り絵が苦手な高齢者もいます。
「他の利用者はできているのに、自分だけできていない」といった喪失感を抱かせせないためにも、色鉛筆を使わない手形ペイント・貼り絵を作ってもらう・裁縫や折り紙などその他の得意分野を代替案とするなど細かな配慮が必要です。
その際、子ども扱いをしているかのような対応をすると、自尊心を傷つけてしまう可能性があるため避けましょう。
3.介護施設で塗り絵を行う際に準備すべきものとは?
介護施設のレクリエーションで行う塗り絵には、大掛かりな準備が必要なく、比較的低コストで始められます。レクリエーション当日から準備を始めても十分間に合いますが、気軽に準備ができると気を抜いていると必要なものが揃えられなくなる可能性もあるため、なるべく早めに準備しておきましょう。
最後に、介護施設で塗り絵を行う際に担当者が必要最低限準備すべきものを2つ紹介します。
塗り絵の図案
レクリエーションとして塗り絵を実施することが決まった際は、まずどのような絵柄にするかを決めたのち、必要枚数を揃えておきましょう。塗り絵の図案は、全国の書店だけでなくネット上からも簡単に探すことが可能です。ネット上には、無料ダウンロードのできる塗り絵素材・イラスト素材を多く揃えた専門サイトもあります。一人ひとりに絵柄を渡すため、ネット上で探して1枚ずつプリントアウトするほうがおすすめです。
また、図案の線が細すぎると見えにくいため、印刷後に線を太くしたり、あらかじめ線の太い高齢者向けの絵柄を選択したりするなどの工夫も必要です。印刷に使用するプリンターやコピー機のインクがきちんと足りているかもチェックしましょう。
色鉛筆
塗り絵の図案を用意したあとは、適切な色鉛筆を用意します。最もおすすめなのが、一般的な木製の色鉛筆です。色に対して強いこだわりを持つ高齢者もいるため、なるべく多色展開の色鉛筆セットを購入しておきましょう。
色鉛筆を使用して塗り絵を行う際は、鉛筆削り器の準備もおすすめです。よく使用される色鉛筆は使ううちに削れて塗りにくくなってしまうため、なるべく鉛筆削り器も準備しておきましょう。
また、これまで数回色鉛筆での塗り絵レクリエーションを実施してきた介護施設の場合は、飽きを感じさせないためにも水彩色鉛筆を用いてみるとよいでしょう。難易度は少々高まるものの、一般的な油性色鉛筆に比べて幅広い表現ができ、より美しい塗り絵が完成させられるため、盛り上がりも期待できます。
まとめ
塗り絵は、高齢者にとって脳の活性化が期待でき、手指のリハビリやストレスの解消にもつながります。さらに、介護施設で働くスタッフにとってもレクリエーション開催の負担が軽減できるため、人気の高齢者向けプログラムといえるでしょう。
高齢者向けレクリエーションとしての塗り絵の効果を十分に得るためには、高齢者が自主的に楽しんでもらうための準備が必須です。適切な絵柄・色鉛筆を準備したり、決して本人の感性を否定しないなど、あらゆる角度から工夫を取り入れましょう。
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参考
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