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高齢者レクリエーション 高齢者レクリエーションのノウハウ 2023/03/22

#認知症ケアの現場から

高齢者向け歌レクリエーションの手順と運営のコツ|認知症ケアの現場から(5)

文・写真/安藤祐介 thumbnail.jpg

歌や音楽を使ったレクリエーションは、多くの介護施設で実施されています。しかし、レクリエーション担当者のなかには、「毎回、準備に手間取ってしまう」「当日の進行方法に迷ってしまう」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方のために、本記事では「みんなで歌おう!グループ音楽会」と題して、施設内で行う歌唱活動の進め方について解説します。歌好きな利用者さんを対象に、小グループ(5名程度)で行うことを想定していますので、ぜひ参考にしてください。

1.歌・音楽レクリエーションで期待できる効果

心身の健康の回復、向上を目指したリハビリテーションの1つに「音楽療法」があるように、歌や音楽には人を癒やしたり、元気にしたりする力があるといわれています。そして、それは利用者さんにも当てはまります。

歌・音楽レクリエーションによって、期待される効果は次の通りです。

① 心身が賦活される
② 声を出すことでストレスが発散される
③ 心肺・口腔機能が改善される
覚醒レベルが高まって生活リズムが整う

特に、歌が好きな利用者さんにとっては、「歌えて楽しかった」「参加できてうれしかった」という体験につながりやすいため、音楽・歌唱活動は、高齢者レクリエーションに欠かせない活動と言えるでしょう。

ここからは、歌レクリエーションの進め方について、準備編と当日の進行編に分けてご紹介します。

2.歌レクリエーションの手順|準備編

歌詞カードの準備

まずは、利用者さんが歌いやすいように歌詞カードを準備しましょう。小グループの場合は、個々に配布できて使い回しがきくような歌詞カードを作成しておくと、準備に時間が取られず円滑に進行できます。

また、全員が手元に歌詞カードを持つことで、場の一体感が高まったり、「活動に参加している」という意識が高まったりする効果も期待できるでしょう。

ただし、数十名の大人数が参加する場合は、全員が見えるようにホワイトボードや模造紙などに大きく歌詞を書き出す必要があるかもしれません。利用者さんの人数や施設の環境に合わせた方法で、準備を進めましょう。

歌詞カードの作り方

① A4サイズのクリアファイル(クリアポケット/穴の開いたもの)を必要な枚数用意します。



② クリアファイルをカードリングでまとめます。



③ いろいろな色の画用紙をA4サイズに切り、クリアファイルに入れます。



④  歌詞が書かれた紙をクリアファイルに入れたら完成です。



歌詞カード作りのポイント

・①でクリアファイルを用意したのは、感染症予防の観点で歌詞カードを消毒しやすくするためです。特にコロナ禍では、歌詞カードを全員に配布したり、冊子にまとめたりすると接触感染のリスクが生じるため、活動のたびに作り直すことになりかねません。

・②のようにカードリングでまとめると、ページをめくったり、開いたまま固定したりすることが容易になるため、手の不自由な利用者さんでも扱いやすくなります。また、ホチキスなどで留めると、ページの入れ替えや差し替えの作業が大変になりますが、カードリングでまとめておけば、利用者さんの反応に応じて歌詞カードを入れ替えたり、リクエストがあった曲を追加したりすることもできます。

・③のように、色画用紙をクリアファイルに入れると、歌詞カードの補強にもなるため、両手で持ちやすくなります。また、参加している利用者さんが、全員同じ歌詞のページを開いているかを、ひと目で確認できるようになるでしょう。仮に、すべての画用紙が白色だったら、歌詞を見ることでしか開いているページを確認できないので、誤ったページを開いている利用者さんへのフォローが難しくなります。

・④の歌詞が書かれた紙は、文字が小さいと利用者さんが見にくくなります。文字数が少なくなるように、歌の題名と1番の歌詞だけを載せて、一文字ずつを大きめに書くのがおすすめめです。

知っておきたい歌詞カードの応用方法

歌詞カードは、グループでのレクリエーションを好まない利用者さんがお一人で使用したり、利用者さんの個人的な練習に利用したりすることもできます。その際、三角イーゼルなどに立てかけておくと、見やすくなるうえに両手も自由になるので、手でリズムを取ったり手拍子を打ったりがしやすくなるでしょう。


2.歌レクリエーションの手順|当日の進行編

進行方法

①歌唱活動に関心がある利用者さん(5名程度)に集まってもらいます。
②一定の距離を取りながら輪になります。
③歌詞カードを配布して活動を開始します。

進行のポイント

司会進行を担当する職員は、「おいくつの頃の曲ですか?」「どんなときに歌いましたか?」「あの時代は〇〇がありましたね」と、1曲歌うごとに場が盛り上がるような声かけをしましょう。それによって利用者さん同士の交流が活発になり、満足度の高いレクになります。

楽曲の著作権について

多くの楽曲には著作権がありますが、福祉施設・医療施設における楽曲の利用は、当分の間著作権の使用料が免除されています。ただし、なかには許可されていない行為もあるので、その点には注意が必要です。

以下に、歌詞カードの制作や楽曲の演奏および複製と著作権の関係をまとめておくので、レクリエーションを実施する際に、目を通してみてください。

歌詞カードの制作と著作権

日本国内では、JASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)が作詞家や作曲家の著作権を集中管理しています。昭和や平成の歌謡曲のように著作権が管理されている楽曲は、通常JASRACに申請しないと歌詞の複製を行えません。そのため、歌詞カードを作成する際は、著作権で保護されている楽曲の歌詞を使用しないように配慮する必要があります。

楽曲の演奏・複製と著作権

カラオケ歌唱やBGMの利用といった「演奏」に関しては、福祉施設・医療施設での利用が当分の間使用料が免除されています。しかし、管理楽曲の「複製」は使用料の免除に該当しておらず、手続きを行う必要があります。

なお、唱歌や童謡の中には著作権保護の期間が終了している曲もあるため、利用者さんが好まれる曲があったらJASRACのJ-WID作品データベース検索サービスを活用して、著作権の状況を確認してみてください。ちなみに、写真④⑤で掲載されている楽曲「叱られて」(作詞:清水かつら 作曲:弘田龍太郎をJ-WIDで検索したところ、作品の著作権の消滅が確認できました(2023年2月18日時点の情報です)。

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

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