清拭介助の手順とは?全身清拭で配慮するべき注意点も解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部清拭介助は多くの介護施設で求められるサービスの1つです。初めて清拭を行う際は、戸惑いも多く、スムーズに進められるか不安に感じる方も少なくありません。また、利用者の中には清拭に抵抗を感じる人もいるため、十分な配慮が必要です。
当記事では、清拭の手順や行う際の注意点を紹介します。デリケートな仕事のひとつである清拭を適切に実施することで、利用者との信頼関係の構築にもつながります。当記事で清拭のポイントを押さえ、現場で役立てましょう。
1.清拭の目的・効果
清拭(せいしき)とは、入浴が難しい要介護者や高齢者などの身体を、温かいタオルで拭くことです。入浴に代わって身体の汚れを落とし、清潔な皮膚を維持したり、病気や感染症を予防します。
1日の終わりに清拭を行うと、身体の不快感が軽減され、リラックスできるのがメリットです。また、血流がよくなり身体を温める効果も期待できます。
また、服を脱いだときに、皮膚や爪のトラブルを発見するケースもあるため、身体状況を確認しながら丁寧に清拭を行うことが大切です。
2.清拭の手順
清拭は、利用者の身体に接触して行う「身体介護」の一種です。身体介護には、食事や排泄、移動の介助などがあり、清拭は身体介護の中でも「清拭・入浴、身体整容」に分類されます。
平成27年の厚生労働省による調査では、経験年数が1年未満の訪問介護員が清拭を行うケースはありませんでした。また、訪問介護の場合、経験年数5年以上のスタッフが行う割合が高くなっています。
このことから、清拭に携わるのは、ある程度の経験を積んだ介護職員が中心であることが分かります。はじめて清拭を行う際はしっかり手順を確認し、利用者に気持ちのよいサービスを提供しましょう。
清拭する準備を行う
清拭を行う前に、使用する道具を紹介します。
【清拭に使用する道具】
・タオルやガーゼ
利用者の身体を拭くタオルやガーゼを用意します。汚れの溜まりやすい陰部は、細菌感染防止のため別のタオルを用意するとよいでしょう。
・お湯を入れた洗面器やバケツ
温かいタオルで利用者の身体を拭けるよう、50〜55℃の熱めのお湯を洗面器やバケツにはっておきます。途中で冷める可能性があるため、お湯は最後に用意しましょう。
・石鹸
基本的に石鹸は陰部清拭に使用します。身体を洗う際にも石鹸を使用する施設もあるため、各施設のルールを確認してください。
・ゴム手袋
介護者、利用者双方の感染予防のためゴム手袋を着用して清拭を行います。施設によっては、ゴム手袋に加えてビニールエプロンを着用する場合もあります。
・タオル
清拭中に身体を隠したり、清拭後に身体を拭いたりするのに乾いたバスタオルを使用します。フェイスタオルを含め、多めに用意すると安心です。
・着替えの服
清拭後、身体を冷やさないうちに着替えられるよう、清潔な下着や衣服を手の届く範囲に用意するのがおすすめです。
・ボディークリームやパウダー、軟膏など
利用者の皮膚の状態が気になる場合は、ボディークリームやパウダーを塗ります。また、軟膏など専用の薬剤が処方されているときは、医師や看護師の指示の下、正しく塗布しましょう。
清拭用品の準備ができたら、下記のような流れで清拭の準備を進めます。
【清拭の準備の流れ】
(1)体調のチェックを行う
利用者が清拭を行える状況か、しっかり体調のチェックを行います。
(2)部屋の環境を整える
身体を冷やさないよう、清拭前に室温を23〜25℃前後に保ちましょう。プライバシーに配慮して、カーテンやパーテーションで部屋を囲い、他の人に見られない空間づくりが必要です。
(3)利用者への声かけを行う
「体調はどうですか」「今から身体をきれいにしますね」など、利用者への声かけをこまめに行います。
(4)濡れタオルを用意する
濡れタオルは、熱すぎずぬるすぎない適温であるか確認してから使いましょう。自分の手首の内側にあてて、気持ちのよい温度であれば問題ありません。
手際よく準備を行い、利用者とコミュニケーションを取りながら、清拭に取り掛かりましょう。
上半身から身体を拭いていく
清拭は、下記の通り上半身から下半身に向って行います。
【清拭の流れ】
(1)頭・顔
頭は蒸しタオルで蒸らした後、ドライシャンプーを使用して洗髪します。顔を拭くときは清潔なタオルを使い、顔の中心から外へ向かうように優しく拭きましょう。
(2)上半身
腕は指先から腕の付け根に向かって、お腹や胸は円を描くように拭きます。脇の下や指の間は拭き忘れが多いため、注意しましょう。
(3)足・お尻
足首から足の付け根に向かって拭くと、血行促進に効果的だと言われています。膝の裏も忘れずにしっかり拭きましょう。お尻は床ずれしていないか確認しながら、優しく拭きます。
(4)陰部
陰部の清拭は身体と別のタオルを使用します。デリケートな部位のため、可能な場合は利用者本人に任せるとよいでしょう。陰部の後に肛門を拭くようにアドバイスしましょう。
利用者の気持ちを尊重しながら丁寧な清拭を心掛けることが大切です。
3.清拭介助を行う際の注意点
清拭介助の際は、下記の5つに特に注意して行いましょう。
●プライバシーに配慮する
清拭には大切な目的や効果があるとはいえ、誰もが「他人に身体を見られるのは恥ずかしい」と感じます。清拭中はカーテンや窓を閉めたり、パーテーションで見えないようにしたりと配慮が必要です。特に、胸や陰部などデリケートな部分は、拭くとき以外バスタオルをかけるようにしましょう。
●力加減に注意する
血行をよくするためにタオルで強く擦って清拭を行う人もいますが、力加減には注意が必要です。特に、皮膚が弱い人の場合は、強くこすりすぎることで皮膚炎などのトラブルを引き起こす恐れがあります。腕や足はゆっくり持ち上げる、皮膚の弱い利用者には優しく触れるように清拭を行うなど、利用者の状態や好みに合った方法を模索しましょう。
●利用者の体調を最優先する
清拭を行う前に、必ず利用者本人にその日の体調を確認してください。清拭によって、利用者は体力を消耗するため、事前に体調の変化が少しでも見られる場合は、他の介護職員や医師・看護師に相談しましょう。利用者の体調がよくないときは、無理をせず清拭を見送る判断も大切です。清拭中に具合が悪くなる場合もあるため、常に利用者の様子には気を配りましょう。
●食前や食後を避ける
食前・食後は、血糖値や血圧が変化しやすいため、清拭を避けましょう。清拭によって血行がよくなると、血圧・血糖値の変動に影響を与える恐れがあります。具体的には、食前・食後の1時間を避けて清拭を行うのがベストです。
●身体を冷やさないよう配慮する
清拭中は服を脱ぐため、身体が冷えやすくなります。身体を冷やさないよう室内の温度を適温に保つ、10分以内の時間短縮に努めるなどの工夫が必要です。カーテン・窓を閉めたり、バスタオルで身体を覆ったりすると、プライバシーへの配慮だけでなく冷え対策にも効果的です。また、季節によっては冷え込む朝や夜を避け、暖かい日中の時間帯に行うのもよいでしょう。
清拭介助を行うときは、正しい手順を覚えることだけでなく細かな配慮が重要です。利用者の状況を見て、清拭の可否や実施方法を検討しましょう。
まとめ
清拭には、利用者の身体を清潔に保つ、感染症を予防するなど、重要な目的と役割があります。スムーズな清拭を行うため、事前に道具を準備し、清拭方法の流れを把握することが大切です。利用者に配慮しながら、清拭を行いましょう。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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