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仕事・スキル 介護士の常識 2022/08/04

身体整容とは?実施により期待できる効果と具体的な方法を解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 10.jpg

介護現場では、日常生活におけるさまざまな介護サービスを提供します。介護サービスと聞いて、まずイメージするのは、食事介助や排せつ介助、日用品の買い物や調理、配膳などですが、そのほかにも介護職員が行うべきことはたくさんあります。なかでも「身体整容」は、毎日行わなければならない介護サービスの一つです。

今回は、身体整容の概要や効果から、項目別の具体的な方法までを詳しく紹介します。すでに介護業界で活躍している方や、介護業界で働くことを検討している方、あるいはご家族の介護を行う方は、ぜひ参考にしてください。

1.身体整容とは

身体整容とは、訪問介護サービスや介護保険施設などの介護現場で、介護者が提供する生活支援業務であり、身だしなみを整えたり、衛生面のケアを行ったりすることを指します。

整容は、自立生活の指標となる日常生活動作能力(ADL)の一つに数えられており、以下のような項目が挙げられます。

● 洗顔
● 整髪
● 口腔ケア(歯磨きなど)
● ひげそり
● メイク
● 爪切り
● 耳かき

身体整容は、体を自由に動かすことが困難となった高齢者に対して、リフレッシュ効果や生活の質(QOL)の向上を目的に行われます。年齢や身体状態にかかわらず、「身だしなみを整えること」は、モチベーションや生活意欲の向上にもつながるでしょう。

厚生労働省が公表している「訪問介護のサービス類型」では、実施する各介護サービスを「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3つに区分していますが、身体整容は訪問介護のサービス類型区分のうち「身体介護」の一部として位置づけられています。

身体介護 ● 介護サービスの準備・記録
服薬介助
● 排せつ・食事介助
● 身体整容・更衣介助
体位変換
起床介助・就寝介助
● 移動/移乗介助・外出介助
● 自立生活の支援
生活援助 ● 介護サービスの準備
● 家事(掃除・洗濯)
● 調理・配膳
ベッドメイク
● 衣類整理・補修
● 日用品の買い物
通院等乗降介助 ● 乗車・降車介助
● 乗車前・降車後の手続きや移動介助

(出典:厚生労働省「各介護サービスについて」

身体整容の効果

訪問介護をはじめとする介護現場では、身体整容をサポートすることで下記のような効果が期待できます。

●体を清潔に保つ
身体整容の最大の効果は、「体を清潔に保てる」という点です。体を清潔に保てていると、自分に自信がもてるようになり、毎日を意欲的に過ごすことにもつながるでしょう。また十分な口腔ケアを継続して行えば、口腔内を清潔に保てるだけでなく、口腔機能の維持や疾患予防などの効果も期待できます。

●感染症などを予防する
伸びた爪や耳あか、目やになどを放置しておくと、雑菌のたまり場となって何らかの感染症を引き起こす恐れがあります。身体整容を行うことは、汚れや雑菌を防いで感染症を予防することにもつながります。

●生活の質の向上につながる
身体整容で身だしなみを整えたり、衛生面ケアを行ったりすることは、良い気分転換になります。心身ともにリフレッシュすれば、生活の意欲や自立心がアップするほか、他者とのコミュニケーションにも積極的になり、結果として生活の質向上につながるでしょう。

2.【介助項目別】身体整容の具体的な方法

上で紹介したように、身体整容を適切に行うことは、利用者さんの健康や生活の質の向上につながります。適切な身体整容を行うためにも、介助項目別に具体的な方法や実施ポイントを把握しておきましょう。

洗顔

洗顔を行う際は、まず下記のアイテムを用意しておきましょう。

<洗顔に必要なもの>

● 洗顔料
● タオル、蒸しタオル
● ヘアバンド

残存能力を活用するためにも、できることはなるべく自力で行ってもらい、目やにの除去や耳裏の清拭など自力では難しい部分をサポートしましょう。自力で洗顔を行ってもらう場合は、転倒を防ぐために体をしっかり支えることが大事です。なお、目やにが固まってしまっている場合は、蒸しタオルを数秒当て、柔らかくしてから拭き取ってください。

利用者さんの身体状態により洗面所で洗顔ができない場合は、ややぬるめの蒸しタオルを用意し、額から目、鼻、頬、あごの順に優しく拭いていきましょう。ヘアバンドを装着した上で洗顔を行うと、髪の毛がじゃまにならずスムーズに進めることができます。

整髪

整髪を行う際は、下記のアイテムを用意します。

<整髪に必要なもの>

● くし、ブラシ
● タオル
● ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアオイル

髪の毛はいきなり根元からとかすと、くしやブラシに絡まってしまうことがあります。痛みを感じさせないように、毛先からゆっくりとかしていきましょう。髪の毛が長い場合、目の細かいくしだとスムーズにとかすのが難しいため、なるべく目の粗いくしを使用するのがおすすめです。

寝ぐせや絡まりがある場合は、お湯を含ませたタオルを当てたり、ヘアスプレーやヘアミスト、ヘアオイルを活用したりすると良いでしょう。利用者さんのなかには抜け毛を気にする方も多いため、できるだけ丁寧に扱うことが大切です。

ひげそり/メイク

ひげそり/メイクを行う際は、下記のアイテムを用意しましょう。

<ひげそり/メイクに必要なもの>

● 電気シェーバー
● 蒸しタオル
● ローション
● 化粧水・乳液
● 各種メイク用品

利用者さんの顔を傷つけてしまう可能性もあるため、ヒゲそりでは安全性の高い電気シェーバーを使いましょう。そる前にはローションを塗り、滑りをよくしておくと良いでしょう。

ひげそりを行った後は、肌が乾燥しないように化粧水や乳液で保湿してください。

女性の利用者さんの場合は、顔のうぶ毛そりだけでなくメイクも施すこともあります。化粧水や乳液でお肌を整えた後、利用者さんの希望に添ったメイクをしましょう。その際、残存能力を活用するためにも、できることはなるべく自力でやってもらうのがおすすめです。

口腔ケア

口腔ケアを行う際は、下記のアイテムを用意します。

<口腔ケアに必要なもの>

● 歯ブラシ・スポンジブラシ
● 歯磨き粉
● タオル
● コップ
● ガーゼ
● 洗面器

口腔ケアの際は、利用者さんに姿勢を整えてもらうことが重要です。なるべく自力で行ってもらうのがおすすめですが、口腔内を細かくケアできる方は少ないため、随時チェックやサポートをしながら進めましょう。利用者さん自身に行ってもらう場合でも、最後は必ず介助者がチェックをし、磨きが不十分だった部位を再度磨くようにしてください。

なお、洗面所で口腔ケアが行える利用者さんの場合、洗面器は必要ありません。

体を起こすことのできない利用者さんの場合、歯ブラシでのブラッシングは危険なため、指にガーゼを巻いたり、スポンジブラシを使ったりして口腔内をケアします。歯、歯茎、頬の内側、上あご、舌など、全体を優しく拭いていきましょう。ガーゼ、スポンジブラシのどちらを使う場合でも、常に声かけを行うことが大切です。

●関連記事:口腔ケアとは?要介護高齢者に口腔ケアを行うメリット・実践方法

耳のお手入れ

耳のお手入れを行う際は、下記のアイテムを準備しておきましょう。

<耳のお手入れに必要なもの>

● 耳かき
● 綿棒
● ティッシュ

耳あかを放置すると耳鳴りや難聴の原因となるため、定期的に耳掃除を行いましょう。ただし、耳の中は敏感で痛みを感じやすいため、「よく見える範囲でのお手入れ」が基本です。耳の穴の入り口付近にある乾いた耳あかは耳かきを使って除去し、少し奥側にある湿った耳あかは綿棒で優しく絡め取ってください。

耳のお手入れは、耳あかが湿気を吸収して柔らかくなっている、お風呂上がりに行うと良いでしょう。

爪切り

爪切りを行う際は、下記のアイテムを用意します。

<爪切りに必要なもの>

● 爪切り
● 爪やすり

爪や爪周辺の皮膚に異常がない場合は、介護職員が爪切りを行うことが可能です。加齢とともに爪は硬くなったり、割れやすくなったりするため、お風呂上がりで爪が柔らかくなっている時に行うのがおすすめです。入浴が難しい時は、蒸しタオルで温めると切りやすくなるでしょう。

爪切りのポイントは、どれだけ伸びていても少しずつ切ることです。一気に切るとほかの部分が割れてしまう可能性もあるため、爪に負担がかからないように少しずつ短くすることを意識してください。端の部分に引っかかりがある場合は、爪切りではなく爪やすりを使用して整えましょう。

●関連記事:介護職が爪切りを行える条件とは?正しいやり方も解説

まとめ

身体整容とは、洗顔、整髪、口腔ケア、ひげそり、爪切りといった、日常生活における身だしなみを整えたり、衛生面のケアを行ったりするサービスで、体を自由に動かすことが困難となった高齢者を対象者に実施されます。

身体整容を行う際は、項目別に気を付けるべきポイントがあります。また、どの項目においても「自立した生活を支援するためにも、要介護状態に合わせて自力でできる部分は自力でしてもらう」ことが大切です。身体整容による効果を最大限感じてもらうためにも、本記事で紹介したポイントを意識しながら実践してみてください。

「介護のみらいラボ」では、当記事のほかにも介護業界の有益な情報を豊富に提供しています。実践で役立つ知識を得たいという介護職員の方は、ぜひ他記事もご覧ください。

※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています

●関連記事:身体介護とは?訪問介護における位置づけと3つのサービス内容

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