通院介助の適用条件は?介護保険での取り扱い・外出介助との違いを解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部通院介助は、訪問介護サービスにおける重要な介助の1つですが、複雑で理解が難しい側面があります。そのためみなさんのなかにも、どのような状況であれば適用できるのか、通院介助として認められる介助の範囲はどこまでなのか、詳細に把握できていない方がいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、通院介助の概要や通院介助の範囲内でできること、外出介助との違いなどについて解説します。また、利用者さんとの間でトラブルを招きがちな、移動手段や交通費の扱いについても紹介します。利用者さんと介助者の双方が気持ちよく過ごせるように、通院介助について正しく理解しましょう。
1.通院介助とは
通院介助とは、利用者さんが医療機関に通院するために必要な移動の介助を指す言葉です。厚生労働省の介護保険制度においては、「通院等乗降介助」と呼ばれています。
自宅から通院先までの行き帰りに発生する乗車・降車の介助や、屋内外における移動介助、受診の手続き、薬の受け取りなどの介助が、通院介助に該当します。
通院介助を利用できるケース
通院介助を介護保険のサービスとして利用するには、「介護認定が要介護1~5に該当していること」と「ケアマネージャーが必要と考えてケアプランに組み込まれていること」が条件となります。
そのため、要支援1~2の認定を受けた利用者さんの場合、介護保険制度のサービスとして通院介助を実施することは難しいでしょう。要支援1~2の方は、各市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」のなかで通院介助にあたる支援が受けられますが、この事業は「自立支援」のために実施されているため、サポートなしで外出できる状態だと介助者による通院介助が認められにくいのが現状です。
一方、要介護1~5の認定を受けている場合であれば、通院介助を利用することが可能です。ただし、通院介助は通院時の外出に伴う支援がメインであり、本来の訪問介護の範囲である自宅内でのサービスではありません。したがって、要支援者よりは通院介助のサービスを受けやすいものの、介助の利用にあたってはさまざまな制限を受けることになります。
2.病院内での介助は通院介助に含まれる?
原則として、病院内での介助は院内スタッフが担当するため、介助者による通院介助には含まれません。診察の待ち時間中の付き添いなども通院介助の適用範囲外です。
ただし、院内スタッフでは対応できない場合、ケアマネジャーが院内での介助の必要性を明確にできれば例外的に算定できることもあります。例えば、1つの医療機関で複数の科を受診する際の移動やトイレの介助などは、院内スタッフでは対応できない場合があるため、通院介助の算定対象になるでしょう。
基本的には通院介助の対象外である待ち時間の付き添いなどについても、介助や見守りが必要な状態であると判断されれば、通院介助の算定対象とすることが可能です。介助や見守りが必要と判断できるケースには、利用者さんが目や耳の不自由な場合や、認知症で徘徊する可能性のある場合が挙げられます。また、身体的な要因に限らず、特定の介助者が側にいないと不安になるなど、精神面の変調から院内介助が妥当と判断される場合もあります。
ただし、院内スタッフが対応できない、介助や見守りの必要があるといったことが明らかな場合でも、ケアマネジャーの独断でケアプランに院内介助を組み込むことはできません。そうしたケースでは、主治医などの院内スタッフと調整を行い、アセスメントやサービス担当者会議で必要性を検討した上で、ケアプランに組み込むことになります。
また、会議で院内介助が妥当と判断された場合は、記録を取っておくことが必要です。病院内における通院介助の適用は、あくまでも例外的な扱いであることを覚えておきましょう。
3.通院介助と外出介助の違い
通院介助の比較対象となるサービスに、「外出介助」があります。一般的な議論として、利用者さんの外出を支援するという意味では、通院介助も外出介助も大きく変わりません。しかし、厚生労働省による分類上、両者は別のカテゴリーの介助サービスとされています。
厚生労働省による「訪問介護のサービス類型」によれば、訪問介護は次の3つに分類されます。
●通院等乗降介助:通院介助に相当するサービス
●身体介護:入浴や排せつなど、利用者さんの身体に直接触れて行うサービス
●生活援助:調理、洗濯、掃除など、利用者さんの日常生活を支援するサービス(ただし、身体介護は除く)
外出介護は、訪問介護のなかでは身体介護の一部に分類されており、一方の通院介助は身体介護とは異なる区分となります。
外出介助に関する介護保険の適用範囲
介護保険が適用される外出介助の範囲は、自治体によって異なりますが、基本的には生活に必要な目的かつ必要最低限の範囲でのみ適用を認められるケースがほとんどです。
例えば、日用品の買い出しは、外出介助に当てはまりやすい項目ですが、認められるのは近くの店で生活に必要なものを買った場合のみ。目的地が必要以上に遠い場合や、生活に必要のない買い物をした場合は認められません。
日用品の買い出し以外には、金融機関や役所などでの手続き・選挙の投票なども介護保険の適用範囲として認められます。
一方、趣味や娯楽など不要不急の目的での外出や、生活に必須ではない場所への外出の場合は、介護保険の適用が難しいと考えたほうが良いでしょう。ちなみに、散髪は訪問理美容などの利用が推奨されているため、美容院に行くための外出介助は介護保険適用外とされています。
新型コロナウイルスのワクチン接種で通院介助・外出介助は利用可能
新型コロナウイルスのワクチン接種に伴う外出が目的の場合、緊急性や見守りなどの視点から、特例的に通院介助や外出介助を利用して外出することが可能です。ただし、ワクチン接種会場までの移動手段によって扱いが異なるので、注意しましょう。
介助者などが運転する車で移動する場合は、通院介助の対象となります。また、次の条件のいずれかを満たすことで、通院介助ではなく身体介護として扱うことが可能です。
・要介護4~5の居宅要介護者で、乗降車介助の前後に、移動・移乗介助、身体整容、更衣、排せつなど外出に伴う身体介護を連続して20~30分程度以上行った場合
・要介護1~5の居宅要介護者で、入浴や食事など、外出に直接関連しない身体介護を30分~1時間程度以上行う場合(ただし、運転時間は所要時間から控除する)
なお、バスやタクシーなどの公共交通機関を利用する場合は、通院・外出介助を利用することができます。
4.通院介助における移動手段・交通費の扱い
介助者の交通費については、基本的に利用者さんの自己負担です。ただし、これは介護保険制度で定められているわけではないので、訪問介護の事業者がそれぞれに対応方法を定め、書面などによる説明を行うのが一般的です。利用者さんにかかるバスやタクシーなどの交通費も、原則的に利用者さんが負担します。
通院介助の移動手段として、介護タクシーをイメージする介護職の方も少なくないと思いますが、介護タクシーの場合は介護保険が適用されるのでしょうか。
すでに介助者がついているケースにおいて、介護タクシーの必要性は高くないため、運賃に介護保険は適用されません。また、介護タクシーは装備が充実している分、料金が一般的なタクシーよりも割り増しになるケースがあります。タクシーで移動する場合は、介護タクシーにこだわらず、通常のタクシーを利用することを検討しましょう。
移動手段や交通費について、利用者さんと事業者・介助者の間に認識の食い違いがあると、トラブルに発展しやすくなります。事業者・介助者側は費用の扱いをしっかりと把握し、利用者さんへの事前の説明を欠かさないようにしましょう。
まとめ
通院介助は、原則として要介護状態の利用者さんに適用できるサービスです。提供範囲は通院に関する病院外での介助に限られるものの、利用者さんの状況によっては、通院介助を院内での介助に適用できる場合もあります。
通院介助に際しては交通費がかかる場合が多く、介助者の交通費については、基本的に利用者さんの自己負担となります。この点を事業者や介助者が正しく理解し、トラブルを招かないように利用者さんの理解を得ることも大切です。
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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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