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仕事・スキル 介護士の常識 2021/04/13

#食事#食事形態#食事介助#鹿賀大資#嚥下#基礎知識#介護施設

新人介護職が覚えておきたい嚥下、食事形態の段階、食事介助の知識

文:鹿賀大資 介護福祉士・ライター 介護施設の食事.jpg

学校や資格本などで覚えた知識と、リアルな介護現場の日常とは違うのは当然のことです。いざ現場に出てみて、先輩スタッフに何を聞いていいのか分からない、という新人スタッフは意外に多いはず。そこで今回は、介護現場での食事に着目。新人職員が抱えやすい疑問やリスクについて迫ってみました。

ご利用者の中には、時として食が進まない人もいます。それに対し、職員たちは、しっかりと食べてもらえるよう、さまざまな工夫を凝らしています。そうした光景を目の当たりにし、「本人が食べたくないなら、無理に食べさせなくても......」と感じたことがある新人スタッフも少なくないでしょう。一時的なことなら、問題ないのかもしれませんが、食べない期間が長く続くと、点滴や経管栄養などが必要になり、ご利用者の体に負担がかかってしまいます。
起きた途端だったり、日中の活動が足りず便が出ていなくて体調不良、ポジショニングが不適切など、食べられない原因を解明して取り除いていくと、無理なく食べられるようになることも多いです。

食事摂取ができないと点滴に......。だから食べてもらう!

高齢者特有の点滴によるリスクって?

ご利用者の中には、職員が工夫しながら食事を促しても「頑として拒否」する人もいます。その場合は結果的に点滴となりますが、その状態が長く続くことで発生するリスクもあります。

・リスク(1) 経口摂取レベルの低下

口から食事を取らない状態が続くと、咀嚼や嚥下など口腔機能の低下にもつながります。口を動かさない状態が続くことで、噛んだり飲み込んだりする力も衰えてしまうのです。これが、介護用語で言う「経口摂取レベルの低下」です。

・リスク(2) 誤嚥性肺炎

点滴終了後に経口摂取レベルが低下した状態で食事をすれば、喉に詰まらせるだけでなく、そこから「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクも高くなります。
特に高齢者は嚥下機能の低下から誤嚥性肺炎を起こしやすく、介護の現場では死にいたってしまうご利用者が後を絶ちません。

例えば食べ物や水分を口にして、喉元を通過すると、通常は食道に進みます。ところが喉元には、食道とは別に肺へと通じる「気管」という道もあり、何かの拍子に間違って気管に流れ込んでしまうと、特に高齢者の場合は誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなってしまうのです。

これは一般的にいわれる「むせ込み」と同じ症状で、飲食と会話を同時にしようとした場合に、気管が詰まったようになって苦しくなり、咳が止まらなくなる状態と一緒です。高齢者の場合は単なる「むせ込み」では済まず、肺に致命的なダメージを与えてしまうことがあります。

介護職として働く以上、「食事摂取が上手くできないと、命を落とす危険性もある」というリスクを頭に入れておく必要があります。一方で、食事は日々の楽しみや生きがいにも繋がるため、そのバランスを上手に使い分けることも大切です。

点滴から常食まで

ここでは「やむを得ず入居者が点滴になってしまった」ことを想定し、常食に復帰するまでのケアについて解説します。前述した通り、経口摂取レベルが低下しているため、すぐに普通の食事という訳にはいきません。最初は赤ちゃんの離乳食と同じで、ペースト状のものから始めます。

常食になるまでの段階

食事の区分は主に流動食→ソフト食→刻み食→常食といった過程を経ます。

一般の人が普段、口にする料理を、介護や医療の業界では「常食」と呼んでいます。これは医療・介護の世界では、多様な食事形態があるためで、常食は日常の食事と何ら変わりありません。

・流動食

水分摂取を目的とした、水に近い状態の食事形態です。重湯(お粥の上澄み)や、具なしの汁物などが代表的です。

・ソフト食

料理をミキサーなどでペースト状にしたもので、水分が多い場合はトロミをつけて調整します。

・刻み食

ペースト状ではなく、おかずを包丁などで切り刻んだものです。
みじん切りのように細かく刻んだ「ミリ刻み食」から、おかずを半分にぶつ切りした「半刻み食」まで、咀嚼レベルに応じて複数の状態があります。

食事にトロミをつける理由

食事を形態で区分する一番の目的は、安全に栄養を摂取するためです。ここで言う安全とは、「咀嚼」と「嚥下」について。口の中でしっかりと噛め、滞らずに飲み込めるということが肝心です。

特に流動食では、噛む行為が伴わないことから、どうしても食事のスピードが速くなり、嚥下が追い付かなくなってしまいます。これを防ぐために加えるのがトロミです。トロミをつけることで、飲み込む工程に時間を設けさせ、嚥下障害を予防します。

なかでもお粥は、もともとトロミがあり、調理しやすいため、病院食や介護食の定番として知られているのです。

ちなみに、お粥にも複数の状態があり、水分量によって呼び方が変わります。流動食と同じ形態とされるのが、お粥の上澄みの重湯で、そこから水分が減る毎に「三分粥→半粥→七分粥→全粥」と区分します。あまり一般には聞き馴染みのない全粥ですが、風邪などの時に食べる「お粥」と変わりありません。

介護職は「ご利用者の日々の変動を観察する」ことが大切

一口に食事介助と言っても、見守りレベルや全介助など、一律ではありません。常に変わるご利用者状態を日々読み取り、柔軟に対応することが、介護職には求められます。以下の2点を頭に入れておくことで、より食事介助の幅も広げられるでしょう。

胃はとってもデリケート

よく食欲がない状態で、それでも栄養補給のためにと無理に食事をした場合、返って不調をきたしやすいものです。また空腹時に暴飲暴食をしてしまうと、胃がもたれやすくなります。胃は老若男女を問わず、非常に繊細な器官の1つです。

特に高齢者の場合は、加齢に伴い胃の消化能力が低下していくため、日々の状態と向き合わざるを得ません。典型例としては、「多量を食べられない」「脂っこいものは食べたくない」といった症状が挙げられます。

ご利用者の食事の内容は持病や容態によって異なる

介護施設で暮らすご利用者の食事は、糖尿病や高血圧、腎機能障害など、それぞれが抱える持病によっても、変わってきます。また病後は即常食という訳にもいかない一方で、日々の経過観察から食事介助の方法が変わるご利用者も少なくありません。

そこで食事介助に役立つ「ワンポイントアドバイス」を一覧にまとめてみました。

・食事の拒否対策は「一緒に食べる」

このケースは介護の現場では、主に認知症のご利用者に見られる傾向の1つです。その原因として、食べ物と認識していない、食べ方が分からない、体調不良などが挙げられます。特に体調不良による食事拒否の場合は、便通や水分摂取量のチェック、病院受診での内蔵検査などが代表的な対策方法です。

一方、食べ物と認識していなかったり、食べ方が分からなかったりする場合は、本人に「食事であることを理解してもらう」ことが大切です。食事介助の時に「これはご飯ですよ、味噌汁ですよ」と料理名を声に出して説明します。また「安心して口に入れられる」という観点から、一緒に食事をするのも有効な対策です。

・誤嚥性肺炎対策は「食べる姿勢に気をつける」

むせ込みを起こしにくくさせるトロミ食の提供はもちろん、食べる姿勢も重要です。必ず顎を引いた状態で食べてもらうのがポイント。首が上向きになった状態で食べると、気管が開くため、食べ物が肺に向かい誤嚥しやすくなります。

そのためベッド上で食事介助をする場合は、タオルを頭の下に挟んで顎を引いた状態に調整するのがコツです。食堂などで食事介助をする場合は、足裏が床面に着いていることを確認した上で、後ろにのけ反らいない姿勢を保ちます。また食前にリハビリの一環として、口腔体操を実施するのも有効です。歯ブラシを使い、頬っぺたの内側で円を描くように1分ほど回すだけでも、嚥下や咀嚼がしやすくなります。

・持病がある人への対策は「専門スタッフと連携」

腎機能障害を抱えている場合、食事には「塩7」や「塩5」など塩分調整が伴います。これは、提供する食事全体の塩分量を7および5グラム以下にするという意味です。規定量以上の塩分を摂取してしまうと、腎臓に負担がかかるため、制限がかけられます。

特に看護師や管理栄養士は専門分野である以上、そのリスクに対する意識も高いです。食事介助に入る際は、事前にそうした専門スタッフからレクチャーを受けることで注意点を把握できます。これは糖尿病の糖分制限や、高血圧症の塩分制限などのケースでも同様です。

こうした多様なケースに柔軟に対応しつつ、最終的には「楽しく食事をしてもらえる」ように心がけてみてください。

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プロフィール

鹿賀大資

介護福祉士・ライター

施設介護で10年のキャリアを持つ現役介護福祉士。介護系WEBサイトにて、介助にまつわるコラムや記事を執筆。自らの介護エピソードはもちろん、同僚スタッフの体験談など、現場の声なき声を発信している。

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