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仕事・スキル 介護士の常識 2023/06/06

介護における「接遇マナー」とは?基本5原則を解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 pixta_77574174_M (1) (1).jpg

接客業で重視されるイメージが強い「接遇マナー」ですが、最近は介護業界においてもその重要性が認識されるようになりました。

利用者さんから信頼され、安心してサポートを任せてもらえる介護スタッフになるには、介護現場で必要な接遇マナーの基本原則を押さえておく必要があります。

当記事では、接遇マナーの概要や介護現場で求められる理由、介護における接遇マナーの基本5原則について詳しく解説します。接遇マナーを身に付けたい介護職の方や、介護現場で働きたいと考えている方は、ぜひお役立てください。

1.接遇マナーとは?介護の現場で求められる理由

接遇とは、相手の気持ちを理解し、ニーズをくみ取った上でサービス提供を行うことです。ホテル、百貨店などの接客業では、特に力を入れている分野ですが、最近では介護業界においても重要性が高まっており、施設によっては接遇研修会を取り入れているところもあります。

介護の現場において求められる接遇マナーは、「おもてなしの気持ちを持って利用者さんに対応すること」です。そのため、介護業務を作業として淡々とこなすのではなく、「利用さんの求めることは何か」を考えながらサービスを提供することが重要となります。また、利用者さんに対しておもてなしの気持ちを伝えるには、表情や話し方、服装なども配慮すべき要素と言えるでしょう。

介護の現場では、コミュニケーションが非常に大事ですが、コミュニケーションは「言語的コミュニケーション」と「非言語的コミュニケーション」の2種類に大別することができます。言語的コミュニケーションに該当するのは、対話や電話に代表される音声言語、手紙、手話など。思いや考えをストレートに伝えたい時には、言語的コミュニケーションを用いるのが有効です。

一方の非言語的コミュニケーションは、直接的に言語を介さないコミュニケーションのことで、先に挙げた表情や話し方、服装などが当てはまります。非言語的コミュニケーションには、声の大きさや話す速度、視線、相手との距離感、接触行動などのさまざまな要素があり、自らの感情や意図、注意などを相手に伝える際に有効です。そして、人間が得る情報は視覚・聴覚によるものが多いため、非言語的コミュニケーションは接遇マナーにおいても重要な役割を果たしています。

出典:厚生労働省「認知症ケア法-認知症の理解」

出典:科学技術振興機構「非言語コミュニケーションの意義」

次の項目では、介護現場で接遇マナーが求められる理由について解説します。

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利用者さんの尊厳を守るため

介護職員の日々の業務は、利用者さんの身体介護や生活援助が中心となります。その際、決められた業務を行うだけでなく、利用者さんが自分らしく過ごせるようにサポートすることを忘れてはなりません。

利用者さんの尊厳を守るには、「利用者さんに敬意を払い、1人の人間として尊重すること」と「その気持ちを言動で示すこと」が重要です。そういう意味では、正しい接遇マナーを身に付けることが、利用者さんの自分らしい生活を支援することにつながると言っていいでしょう。

利用者さんとの信頼関係を構築するため

入浴や排泄のようにデリケートなケアについては、「信頼できるスタッフにしか頼みたくない」と考える利用者さんが多く見られます。また、介助時に利用者さんからの協力が得られないと、けがや転倒につながる恐れもあります。

接遇マナーを身に付けて、利用者さんに思いやりや敬意を伝えることができれば、「安心してケアを任せられるスタッフ」として信頼してもらえるでしょう。けがや転倒を防いで安全性の高い介助を行うためにも、正しい接遇マナーで利用者さんとの信頼関係を構築することが重要です。

2.介護の現場で求められる接遇マナーの基本5原則

利用者さんとの信頼関係を構築するための接遇マナーには、5つの基本原則があります。接遇マナーで重視されるポイントは、施設の種類などによっても異なりますが、基本的にはここで紹介する5つの基本原則が軸になるケースが多いでしょう。

以下では、接遇マナーにおける基本の5原則について、具体的に解説していきます。

あいさつ・声かけ

明るく気持ちの良いあいさつは、良好な人間関係の構築や円滑なコミュニケーションにおいて欠かせない要素です。利用者さんやそのご家族はもちろん、関係するスタッフにもきちんとあいさつすることで、明るく親しみやすい印象を与えることができるでしょう。

あいさつや声かけのポイントは、利用者さんと目線を合わせ、笑顔でハキハキと話すことです。また、あいさつの後に天気の話をするなど、簡単なひと言を添えることで、より親しみやすい印象となります。

なお、一般的には大きな声であいさつをするのが良いとされていますが、利用者さんのなかには大声が苦手な方もいます。そうした方の前では声量を抑え、耳が遠い利用者さんに対しては大きめの声であいさつするなど、相手によって声量を調整することも大事です。

言葉遣い

敬語は接遇マナーの基本ですが、介護現場においては敬語が必ずしも正しい言葉遣いであるとは限りません。

プライドを傷付けないように、丁寧な言葉遣いをするのが良いケースもあれば、親しみを込めたフランクな話し方が好まれる場合もあるでしょう。

それぞれの利用者さんにどのような言葉遣いをするのが適切かは、ケアをしている期間や信頼関係、利用者さんの性格に合わせて判断してください。重視すべきポイントは、「相手に不快感を与えないかどうか」です。

また、介護をしていると、安全のために利用者さんの行動を制限しなければならない場面もあります。その場合は、否定や禁止を表す言葉遣いではなく、「○○していただけますか」「○○できそうですか」といった具合に、尋ねるように声かけを行うのが良いでしょう。

表情・笑顔

利用者さんと会話する際には、にこやかで明るい表情を心がけましょう。目元、口元は印象を大きく左右するパーツであるため、目を大きく開くことや、口角を上げて話すことを意識するのがおすすめです。

また、利用者さんとの会話中だけでなく、勤務時間内はできるだけ笑顔でいるのが理想です。介護職は体力勝負の仕事であり、忙しい時間帯も少なくありませんが、疲れが顔に出ると「話しかけにくい」という印象を持たれる恐れがあります。気を付けましょう。

相談事や悩みがある時など気軽に声をかけてもらえるように、介助中・業務中にも明るい笑顔を意識すると良いでしょう。

態度

利用者さんと接する場合は、立ち振る舞いや話を聞く際の姿勢なども重要です。普段の態度が相手に与える印象は大きいため、勤務中は特に意識する必要があります。

例えば、片足に重心を乗せて立っているとだらしがない印象を受けますが、背筋をピンと伸ばして姿勢よく立てば、それだけで好印象を与えることができます。

利用者さんの話を聞く際には、上半身を常に利用者さん側に向けることを意識しましょう。顔だけでなく身体ごと話し手側を向くと、「しっかり話を聞いてくれている」という印象につながります。

また、お辞儀や物の受け渡しなどの何気ない動作においても、注意すべきポイントはたくさんあります。利用者さんへのおもてなしの心を常に忘れず、利用者さんが話しかけたくなるような態度を心がけましょう。

身だしなみ

介護現場における身だしなみは、接遇面だけでなく事故防止の観点からも重要なポイントです。清潔感のある身だしなみや動きやすい服装を心がけつつ、介護現場ならではの注意点を押さえておきましょう。

介護現場では、利用者さんに直接触れることも多いため、爪は短く切っておくのが基本です。利用者さんや器具類に服が引っかかると事故につながる可能性もあるため、装飾の少ないシンプルな服装を選ぶのもポイントの1つでしょう。

また、誤嚥防止の観点から、アクセサリー類を禁止する施設も少なくありません。結婚指輪のみ可としているケースもあるため、職場の規定をチェックしておきましょう。

まとめ

介護における接遇とは、「利用者さんへのおもてなしの心を持って介護サービスを提供すること」です。接遇マナーを身に付けることは、利用者さんの尊厳を守るとともに、お互いの信頼関係を構築することにもつながります。

介護現場で求められる接遇マナーは、あいさつ・声かけ、言葉遣い、表情・笑顔、態度、身だしなみの5つが基本となります。それぞれの内容を十分に理解し、実践することで、介護スタッフとしてのスキルアップを目指しましょう。

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※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

接遇マナーは、利用者さんに不快な思いをさせないことです。こうしなければならない、ああしなければならないということではなく、不快な思いをさせないために利用者に思いやりの心(気持ち)を持って接することです。利用者の立場に立って考え、言動する必要があります。特にあいさつや声かけは人間関係の潤滑油です。笑顔で声をかけるときに「あなたに関心を持っていますよ」といった心の声をプラスするといいでしょう。 人の第一印象は7.7秒以内で決まるといわれています(メラビアンの法則)。清潔感や雰囲気、服装、表情などの視覚情報が55%、声の大きさや話すスピード、間のとりかたなどの聴覚情報が38%、話す内容などのその他など、利用者さんは職員の態度や行動によって10秒以内に察知し、判断しているのです。自分自身の言動を振り返り、長所や短所に気づき、接遇マナーをスキルアップしていきましょう。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

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