介護のアセスメントとは?目的や重要性、実施時のポイントを解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
利用者さん1人ひとりに寄り添ったケアプランを作成するには、ケアマネジャーが聞き取り項目に沿ったアセスメントを行うことが大切です。適切なサービスを提供し、利用者さんの生活をより豊かなものにするためにも、介護における正しいアセスメントの知識を身に付けておきましょう。
当記事では、介護のアセスメントを行うにあたっての目的や重要性、実施のタイミング、聞き取り項目の詳細などについて解説します。
実施する際に気を付けたいポイントや、アセスメントシートの書き方についても紹介していきますので、アセスメントへの理解を深めたいという方は、ぜひご一読ください。
1.介護のアセスメントとは?目的と重要性
介護におけるアセスメントとは、利用者さんが直面している課題や介護サービスに対するニーズを知り、1人ひとりに合ったケアプランを立てるため、面談などをとおして、利用者の情報を収集・評価・分析を行うことです。
介護のアセスメントは、基本的にケアマネジャーが担当し、利用者さん本人とご家族の同席のもとで行われます。アセスメントにおいては、利用者さんの心身状態や生活環境などを聞き取り項目に沿って詳しくヒアリングし、その内容を分析することで、利用者さんが求めていることや解決すべき課題を明確にしていきます。
なお、厚生労働省によるアセスメントの定義は以下の通りです。
課題分析とは、利用者の有する日常生活上の能力や利用者が既に提供を受けている指定居宅サービスや介護者の状況等の利用者を取り巻く環境等の評価を通じて利用者が生活の質を維持・向上させていく上で生じている問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握することであり、利用者の生活全般についてその状態を十分把握することが重要である。
なお、当該課題分析は、介護支援専門員の個人的な考え方や手法のみによって行われてはならず、利用者の課題を客観的に抽出するための手法として合理的な物と認められる適切な方法を用いなければならないものであるが、この課題分析の方法については、別途通知するところによるものである。
(引用:厚生労働省「(主として介護支援専門員による)アセスメントについて」_引用日2022/09/05)
利用者さんにとっての最適なケアプランは、日常生活能力やニーズによって違ってきます。「簡単な家事を自分でこなしたい」「趣味や買い物を楽しみたい」など、介護ケアを通して実現したい理想の暮らしもそれぞれに異なるため、思いに寄り添ったケアプランを作成するには、アセスメントでの情報収集・評価・分析が非常に重要となるでしょう。
アセスメントとモニタリングの違い
アセスメントとモニタリングは、どちらも「ケアプランに関する利用者さんとの面談などをとおして利用者さんの情報を収集・評価・分析を行う」活動ですが、目的に明確な違いがあります。
アセスメントが、今後のケアプランを作成するために行う「情報収集・評価・分析」であるのに対して、モニタリングは、介護サービスの提供が始まってから定期的に行う「情報収集・評価・分析」を指します。
モニタリングの目的は、ケアプラン通りの適切なサービスが提供されているか、当初設定した目標が間違っていないかなどを確認することです。利用者さんの身体状況やニーズは日々変化するため、モニタリングの結果によっては、ケアプランの修正が必要になる場合もあります。
アセスメントは、利用者の状態やニーズを把握するため、モニタリングは、ケアプランの実行確認を目的としていると覚えておくと良いでしょう。
介護のアセスメントを行うタイミング
アセスメントは、介護サービスの利用開始時だけでなく、利用者さんの状況やニーズの変化に応じてケアプランの見直し・再作成を行う際にも実施されます。
たとえば、モニタリングによって当初設定した目標が達成困難だと判断した場合、レベルを下げた新たな目標の設定と、その目標に合わせたケアプランの作成が必要です。厚生労働省の定める聞き取り項目に沿って再度アセスメントをすることで、現状の把握や新たな課題の分析を正確に行うようにしましょう。
介護のアセスメントの聞き取り項目
アセスメントの聞き取り項目には、基本情報に関する9項目と課題分析に関する14項目(全23項目)があります。
基本情報に関する9項目は、以下の通りです。
基本情報に関する項目 | ||
---|---|---|
1 | 基本情報(受付、利用者等基本情報) | 居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法等)、利用者の基本情報(氏名、性別、生年月日、住所・電話番号等の連絡先)、利用者以外の家族等の基本情報について記載する項目 |
2 | 生活状況 | 利用者の現在の生活状況、生活歴等について記載する項目 |
3 | 利用者の被保険者情報 | 利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無等)について記載する項目 |
4 | 現在利用しているサービスの状況 | 介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載する項目 |
5 | 障害老人の日常生活自立度 | 障害老人の日常生活自立度について記載する項目 |
6 | 認知症である老人の日常生活自立度 | 認知症である老人の日常生活自立度について記載する項目 |
7 | 主訴 | 利用者及びその家族の主訴や要望について記載する項目 |
8 | 認定情報 | 利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額等)について記載する項目 |
9 | 課題分析(アセスメント)理由 | 当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院退所時等)について記載する項目 |
(引用:厚生労働省「「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正等について(介護保険最新情報Vol.958等の再周知)」_引用日2022/09/05)
また、課題分析に関する14項目は、以下の通りです。
課題分析(アセスメント)に関する項目 | ||
---|---|---|
10 | 健康状態 | 利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛み等)について記載する項目 |
11 | ADL | ADL(寝返り、起きあがり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)に関する項目 |
12 | IADL | IADL(調理、掃除、買物、金銭管理、服薬状況等)に関する項目 |
13 | 認知 | 日常の意思決定を行うための認知能力の程度に関する項目 |
14 | コミュニケーション能力 | 意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目 |
15 | 社会との関わり | 社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)に関する項目 |
16 | 排尿・排便 | 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目 |
17 | じょく瘡・皮膚の問題 | じょく瘡の程度、皮膚の清潔状況等に関する項目 |
18 | 口腔衛生 | 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目 |
19 | 食事摂取 | 食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)に関する項目 |
20 | 問題行動 | 問題行動(暴言暴行、徘徊、介護の抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動等)に関する項目 |
21 | 介護力 | 利用者の介護力(介護者の有無、介護者の介護意思、介護負担、主な介護者に関する情報等)に関する項目 |
22 | 居住環境 | 住宅改修の必要性、危険個所等の現在の居住環境について記載する項目 |
23 | 特別な状況 | 特別な状況(虐待、ターミナルケア等)に関する項目 |
(引用:厚生労働省「「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正等について(介護保険最新情報Vol.958等の再周知)_引用日2022/09/25)
アセスメントでは、23項目のすべてについて詳しくヒアリングを行い、収集した情報をもとに課題分析を行います。
2.介護のアセスメントを行う際のポイント3つ
アセスメントを行う際は、利用者さんの現状の課題とその原因、解決策、リスクについて具体的に把握しなければなりません。質の高いアセスメントを行うためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
ここでは、介護のアセスメントを行うにあたって、押さえておきたい3つのポイントについて解説します。
多職種・他機関から事前に情報収集する
アセスメントを実施する前に、利用者さんについての情報(これまでの病歴や家族構成、生活歴、入院中の状況など)を収集することで、スムーズに進めることが可能です。
情報収集先として挙げられるのは、利用者さんの主治医や看護師、地域包括支援センターなどです。また、理学療法士、作業療法士などとも連携を図れば、利用者さんの日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)の状態をより正確に把握できるでしょう。
多方面からの情報収集は、アセスメントの時間短縮にもつながるため、事前準備として重要な役割を果たします。
現状の課題と原因・対策を明確にする
利用者さんの悩みや課題についてヒアリングする際は、「日常生活にどのような支障があるのか」について細かく確認し、原因・対策を明確にすることが重要です。
たとえば、転倒についてヒアリングする場合は、転倒した場所や時間帯、何をしている時に転倒したのか、手には物を持っていたかなどを掘り下げて聞き取ります。
夜中トイレに行く際に転倒した場合と、段差につまずいて転倒した場合では、必要な対策が異なります。利用者さんが抱える課題やリスクの見落としを防いで、適切なケアプランを作成するためにも、丁寧なヒアリングを心がけましょう。
利用者の立場に立って考える
身体状況・生活環境が似ているケースがあったとしても、利用者さんのニーズによって提供すべき介護サービスの内容は異なります。また、質問の仕方によっては、利用者さんやご家族が自分の考えを正しく伝えられないこともあります。
ケアマネジャーとしての意見を伝えることが必要なケースもありますが、基本的には利用者さんやそのご家族の意向に沿って、ケアプランを作成することが大事です。
なかには、入浴・排泄介助などを嫌がる利用者さんもいるかもしれません。そうした場合は、利用者さんの立場に立って「ともに考える」という姿勢を示しながら、「介助を同性スタッフが行う」「声かけの内容に配慮する」などの解決策を見つけましょう。
3.介護のアセスメントシートの書き方
アセスメントを通じて聞き取った内容は、「アセスメントシート」と呼ばれる専用の書式にまとめます。アセスメントシートは、ケアプランの作成時だけでなく、利用者さんやそのご家族、他の専門職などと情報を共有する際にも使用されるツールです。
ニーズに合ったケアプランを作成するためにも、アセスメントシートには利用者さん本人から聞き取った情報を中心に記載してください。
また、情報共有の際には、利用者さんやそのご家族もアセスメントシートに目を通します。「現状の問題→原因→リスク→対策という流れで情報を整理する」「5W1Hを明確にする」など、誰が見ても分かりやすい書き方を心がけましょう。
介護のアセスメントシートの様式と選び方
アセスメントシートには7種類の様式があり、それぞれに特徴やメリットが異なります。各アセスメントシートの書き方や記入例は、インターネットなどでも調べることができるので、興味のある方は事前にチェックしておくと良いでしょう。
以下では、アセスメントシートの様式と選び方について、簡単に解説しておきます。
アセスメントシートの様式 | |
---|---|
包括的自立支援プログラム | 要介護認定を受ける際に必要となる「認定調査票」と連動したシートです。介護老人福祉施設で利用されることが多い傾向にあります。 |
居宅サービス計画ガイドライン | 利用者さん自身の生きる力を支える「エンパワメントサポート」の考え方が採用されたシートです。主に居宅介護支援事業所で利用されています。 |
ケアマネジメント実践記録様式 | 調査・分析の項目が非常に幅広いシートです。質の高いケアの提供が期待できる一方、他のシートよりもアセスメントに時間を要します。 |
日本介護福祉士会方式 | ホームヘルプサービスの活動をベースとして開発されたシートです。利用者さんの衣食住に加え、心身の健康、家族関係、社会関係などから課題を分析します。 |
日本訪問介護振興財団方式 | 成人から高齢者まで、幅広い世代の利用者さんを対象としたシートです。複数回分のアセスメントを記録でき、これまでの経緯を確認しやすいことが特徴となります。 |
R4 | 介護老人保健施設向けのシステムである「R4」と連動したシートです。介護老人保健施設で利用されることが多い傾向にあります。 |
MDS-HC方式 | 施設介護と居宅介護を併用する利用者さん向けに作られたシートです。介護サービス提供の際に必要な情報を幅広く把握できます。 |
(出典:厚生労働省「介護予防マニュアル改訂版」)
アセスメントシートの様式には特別な定めがないため、利用者さんの状態、施設の特性などに合わせて使い分けると良いでしょう。
まとめ
介護におけるアセスメントとは、利用者さんが直面している課題や介護サービスに対するニーズを知り、1人ひとりに合ったケアプランを立てるため、面談などをとおして、利用者の情報を収集・評価・分析を行うことです。厚生労働省が指定する聞き取り項目に沿ってケアマネジャーがヒアリングを行い、得られた情報を評価・分析することで、利用者さんに最適なケアプランの作成につなげていきます。
介護のアセスメントを行う際は、「事前に情報収集する」「課題と原因・対策を明確にする」「利用者の立場に立って考える」という3つのポイントを押さえると良いでしょう。
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※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
介護におけるアセスメントとは、情報を収集し、その情報を統合し解釈する、生活課題の明確化というプロセスを指しています。情報収集は主観的情報と客観的情報から総合的に評価・分析し、個々人の自己実現を図るためにはどのような可能性があるのかなど環境因子や個人因子なども含めた、1人ひとりに合ったケアの視点がとても重要です。このアセスメントはケアプラン作成において、非常に重要なプロセスで、専門的な視点でケアプランに結び付けることができるかの鍵になります。
たとえば食事の場合、「自分で食堂に行き、着席し、自分で食事ができる」までの一連の動作としてアセスメントする必要があります。
介護を必要としている人が、それぞれの能力を活かしながら、尊厳を持ってその人らしく生きられるようにすることが大事です。そのためには、アセスメントを正しく理解し、QOLの向上を目指したアセスメントの視点を持つことが必要になりきます。
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