アセスメントシートとは?様式・書き方・作成の注意点も!
構成・文/介護のみらいラボ編集部ケアマネジャーの仕事の1つに、アセスメントシートの作成があります。介護におけるアセスメントは、利用者さんの現在の状態を把握し、生活ニーズを把握するための重要な業務。そこで用いられるアセスメントシートは、利用者さん一人ひとりに合ったケアプランを作成するのに、必要不可欠なツールと言えるでしょう。
当記事では、アセスメントシートを取り上げて、概要や使用する様式、記入時の注意点などを解説します。シートを書く際のポイントについても紹介するので、これからケアマネジャーを目指す方はもちろん、現職のケアマネジャーの方もぜひご覧ください。
1.アセスメントシートとは?
アセスメントとは「評価・評定・査定」を表す言葉で、介護においては「利用者さんの状況を収集・分析し、利用者さんのニーズや解決すべき課題を明確にするために評価・査定を行うこと」を指します。
アセスメントは基本的にケアマネジャーが行い、そこで得られた情報をもとにアセスメントシートを作成します。つまり、アセスメントシートは、利用者さんの状況やニーズなどから、生活上の問題点や解決すべき課題を抽出するための書類であり、利用者さんやご家族をサポートするケアプランの作成に欠かせないツールでもあるわけです。
アセスメントシートは、利用者さんやご家族との最初の面談時に作成されますが、利用者さんの状態に変化があった場合や要介護・要支援認定の更新時など、介護計画書を見直すタイミングにも必要となります。また、アセスメントシートは他職種との連携をスムーズにするための書類でもあるため、誰が見ても理解しやすいように、客観性の高い情報を記入するようにしましょう。
2.アセスメントシートの様式は決まっている?
アセスメントシートの様式は特に定められておらず、厚生労働省が指定する23の課題分析標準項目を満たしていれば、独自の様式を用いても構いません。とはいえ、実際の現場では、既存の様式から自分たちに合ったものを選択するケースが多いようです。
たとえば、介護老人福祉施設では、要介護認定に使われる認定調査票と連動した「包括的自立支援プログラム方式」が多く利用されており、介護老人保健施設では「包括的自立支援プログラム方式」に加えて、国際生活機能分類(ICF)を用いた「R4」も人気です。
また、居宅介護支援事業所では、利用者さん本人の力を引き出すエンパワメントを重視した「居宅サービス計画ガイドライン方式」が好まれる傾向にあります。
3.【項目別】アセスメントシートの書き方
一般的なアセスメントシートでは、記載すべき項目が「基本情報に関する項目」と「課題分析に関する項目」に分かれています。
ここでは、基本情報に関する項目と課題分析に関する項目について、代表例を挙げながら紹介します。
基本情報に関する項目
基本情報に関する項目としては、次のようなものが挙げられます。
● 基本情報(氏名、性別、住所、電話番号など)
● 生活状況
● 介護保険などの被保険者情報
● 現在利用している介護サービスなどの状況
● 障害を持つ高齢者の日常生活自立度
● 認知症のある高齢者の日常生活自立度
● 主訴(利用者さんやご家族の希望、要望)
● 認定情報
● 課題分析理由
以下では、上記のなかで特に記入に注意が必要な4項目について解説します。
●生活状況
生活状況は、これまでの生活歴や現在の生活状況を記載する項目です。就労状況、現在の生活環境、趣味に至るまでを取りまとめるほか、病歴や介護が必要な状況などについても記載します。単に事実を羅列するのではなく、時系列で記載することで、状況がより正確に把握できるようになるでしょう。
●主訴
利用者さんやご家族の希望・要望である主訴は、アセスメントのなかでも特に重要なポイントです。支援の方針はアセスメントシートに書かれた内容をもとに組み立てますが、希望・要望が不明確な場合、支援の方針が適切かどうかを正しく判断できなくなる恐れがあります。そのため、利用者さんやご家族の希望・要望は、正確かつ明確に記載するようにしましょう。
正確に記載するためには、「誰が主張したものか」を明記することも大事です。同じ希望・要望でも、主張しているのが利用者さん本人か介護を行う家族かによって、提供すべき支援が変わる可能性があるからです。また、聞き取った言葉については、できるだけ言い回しを変えずに記載すると、ニュアンスがくみ取りやすくなります。
●サービス利用状況
介護保険給付の内外を問わず、利用者さんがすでに利用しているサービスについて記載します。サービスの組み合わせを変えることで、介護の質が向上するケースもあるため、「サービス利用状況」の項目は、より良い介護を目指すための重要な情報となります。ショートステイなどの一時的なサービスであっても、利用している場合は漏れなく記入しましょう。
課題分析に関する項目
課題分析に関する項目としては、日常生活に必要な身体能力や認知能力などを評価する項目が並び、次のようなものが挙げられます。
● 健康状態
● ADL(日常生活動作)
● IADL(手段的日常生活動作)
● 認知
● コミュニケーション能力
● 社会との関わり
● 排尿・排便
● 褥瘡(じょくそう)・皮膚の問題
● 口腔衛生
● 食事摂取
● 問題行動
● 介護力
● 居住環境
● 特別な状況(介護者による虐待や終末期ケアに関する状況など)
以下では、上記のうち用語への理解や記入に、注意が必要な4項目について解説します。
●ADL
ADLは、日常生活動作に関わる身体能力を確認する項目です。日常生活動作の例としては、寝返り、起き上がり、移乗、歩行、着衣、入浴、排せつなどが挙げられます。ADLでは、各日常生活動作について「自立」「一部自立」「全介助」の3段階で評価を行いますが、3段階では細かい評価が難しいケースも少なくありません。たとえば、介助なしで歩行できるが、つえや歩行器を使用している方などは、どの評価に当てはまるかの判断が難しい事例です。その場合は、備考欄に詳細を記入することで、より正確性の高い支援につながるでしょう。
●IADL
IADLは、基本的な身体能力を指すADLよりさらに複雑な、手段的日常生活動作について評価する項目です。具体的には、調理、掃除、買い物といった家事、金銭や薬の管理、電話、交通機関の利用などがIADLに当てはまります。
ADLと同様に3段階で評価しますが、利用者さんによっては家族内での役割分担などの兼ね合いから、自力で行ったことのない動作もあります。そのため、該当の動作を行っていない場合は、実情に沿って「もとからできない」「家族が管理」などの補足を備考欄に記入する必要があります。
●認知
認知は、日常的な意思決定を行うための能力で、利用する介護サービスを選ぶ際や、施設側が受け入れの可否を判断する際の指針となる重要な項目です。物忘れ、被害妄想、暴言、暴力、徘徊などの有無や程度を記載しましょう。アセスメントの際は、利用者さん本人だけでなく、ご家族や主治医からの正確な聞き取りを行うことが重要です。
●コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、意思の伝達、視力、聴力などの能力を問う項目です。ここには、言語による意思の伝達だけでなく、身振り手振りや表情などの能力も含まれます。
4.アセスメントシート作成における注意点
最後に、アセスメントの実施およびアセスメントシートの作成時における注意点を解説します。
●1時間程度で終わらせる
特に初回の面談でアセスメントを行う場合、聞き取りに加えて介護保険制度の説明なども行わなければならず、どうしても時間がかかる傾向にあります。しかし、高齢の利用者さんやご家族を長時間拘束すると、相手の心身に負担をかけかねません。そのため、1時間程度で面談を終えられるように、効率的に実施しましょう。また、アセスメントの際は、相手に寄り添った姿勢を持つことも大切です。利用者さんやご家族が話しやすい雰囲気を作ることで、正確な情報収集だけでなく時間の短縮にもつながるでしょう。
●他職種との連携を重視する
アセスメントシートには、ADL、IALD、認知能力など、当事者からの聞き取りだけでは把握しきれない項目も少なくありません。そのため、事前に介護相談員やソーシャルワーカー、作業療法士、理学療法士などの他職種と連携し、各方面から正確な情報を収集するようにしましょう。その際、最も重要になるのが「主治医意見書」です。一般的に、健康状態に関わりのある項目は主治医意見書から転記することになるので、早めに取り寄せる必要があります。
●客観的な内容を心がける
聞き取りやアセスメントシートへの記載は、具体性・客観性を重視して行いましょう。「5W1H」を意識する、主語を明確にする、客観的な記載を行う、略語ではなく正式名称で記載するなどを心がけると、より把握しやすい内容となって、他職種との連携もスムーズに進むでしょう。
まとめ
アセスメントシートは、ケアプランを作成する際の土台となる大切な書類です。基本的には、ケアマネジャーが利用者さん本人やご家族からの聞き取りをもとに作成しますが、最適なケアプランにつなげるためには、より正確で客観的な情報を記載する必要があります。
アセスメントシートの作成時には、利用者さんやご家族の信頼を得られるように工夫したり、他職種と連携して多角的な情報を収集したりすることで、より良いケアプランを目指しましょう。
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※当記事は2022年7月時点の情報をもとに作成しています
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