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仕事・スキル 介護士の常識 2023/06/23

介護予防ケアマネジメントとは?実施の流れもステップごとに解説!

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

高齢者が元気にいきいきと自立した生活を続けられるのは、本人やご家族のみならず、地域にとっても喜ばしいことです。

ところで、みなさんは「介護予防ケアマネジメント」という言葉をご存じですか? 介護予防ケアマネジメントは、高齢者が要介護の状態になるのをできる限り防ぎ、介護が必要な状態になった場合でも、それ以上悪化しないように支援を行うサービスのことです。まさに、「高齢者が元気にいきいきと自立した生活を続けられる」ような社会作りを目指して生まれたサービスなのです。

この記事では、介護予防ケアマネジメントの概要やサービスの対象者、サービスの種類、実施する際の大まかな流れについて解説します。介護予防ケアマネジメントが重要視される背景も紹介していきますので、介護に関する知識を深めたい方は必見です。

1.介護予防ケアマネジメントとは?

先に触れたように介護予防ケアマネジメントは、「高齢者が要介護状態になることをできる限り防ぐこと」や「要支援・要介護状態になっても、その悪化をできる限り防ぐこと」を目的とした支援サービスです。高齢者の状況に合わせて訪問型や通所型など、複数のサービスを組み合わせて提供します。

介護予防ケアマネジメントは、2015年度の介護保険法の改正により始まった「介護予防・日常生活支援総合事業」に含まれており、主な目的は下記の通りです。

● 利用者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるように支援する
● 利用者が自分で立てた目標に沿って、ケアプランを作成して支援する
● 介護予防ケアマネジメント終了後、高齢者が自分で介護予防を行えるように支援する


介護予防ケアマネジメント業務を担当するには、下記の資格が必要です。

● 保健師
● 社会福祉士
● 主任ケアマネジャー
● ケアマネジャー


なお、介護予防ケアマネジメントと混同されやすい「介護予防支援」とは、実施主体や対象者などが異なります。主な違いは下記の通りです。

介護予防ケアマネジメント 介護予防支援
実施主体 ● 地域包括支援センター
● 指定居宅介護支援事業所
● 地域包括支援センター
対象者 ● 介護予防・日常生活支援総合事業のみを利用する要支援1・2の認定者
● 介護予防・生活支援サービス事業対象者
● 介護予防給付を利用する要支援1・2の認定者
内容 ● 利用者の状態、目標設定に応じたケアマネジメント
● 介護予防・日常生活支援総合事業の利用
● ケアプランの作成
● サービス事業所・施設との連絡・調整
● 介護予防給付・介護予防・日常生活支援総合事業の利用

(出典:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)」

介護予防ケアマネジメントの対象者

介護予防ケアマネジメントの対象となるのは、下記に該当する方々です。対象者の分類によってサービスの内容が異なります。

要支援1・2の方 【予防給付】
心身の状態を維持・改善し、要介護状態を回避する必要があると判断された方が対象です。要介護高齢者と同様にケアプランを作成し、介護保険の介護予防サービスを利用できるように支援します。
特定高齢者 【介護予防】
今後、要介護・要支援となる可能性が高いと判断された方が対象です。生活機能低下の早期発見、予防、改善を目指すとともに、要介護高齢者と同様に介護予防ケアプランを作成し、介護予防サービスを利用できるよう支援します。
一般高齢者 【介護予防】
65歳以上の高齢者で、介護の不要な方が対象です。介護予防に関する情報提供や必要な機関への仲介などを行います。

介護予防ケアマネジメントの種類

介護予防ケアマネジメントには、A・B・Cの3種類があります。下記は、ケアマネジメントA、ケアマネジメントB、ケアマネジメントCについての概要です。

ケアマネジメントA 【原則的な介護予防ケアマネジメント】
現行の介護予防支援と同様のケアマネジメントです。最低3カ月に1回以上のモニタリングを実施し、利用者さんの状況に応じて提供するサービスを調整します。
ケアマネジメントB 【簡略化した介護予防ケアマネジメント】
アセスメントからケアプラン原案作成まではケアマネジメントAと同様です。ただし、サービス担当者会議は省略し、利用者さんのモニタリングは必要に応じて時期を設定します。
ケアマネジメントC 【初回のみの介護予防ケアマネジメント】
初回のみ提供する、簡単な介護予防ケアマネジメントです。利用者さんが自分の状況や目標の達成などを確認し、住民主体となるサービス利用の継続を支援します。

サービス担当者会議やモニタリングは行いません。利用者さんからの相談があったり、状況の悪化が確認されたりした場合、地域包括支援センターのケアマネジメントへ移行します。

(出典:厚生労働省「◎訪問型サービスの例(※典型例として整理したもの)」

2.介護予防ケアマネジメントが重要視される背景

日本では高齢化が進行しており、2055年には全人口の40%を65歳以上が占めると想定されています。つまり、このままいけば「1人の高齢者を1.2人の若者で支える」という厳しい社会状況が待っているわけです。

高齢者の割合が増えることで、給付される社会保障費(医療費・介護費など)が増大し、財政が圧迫される点も大きな懸念材料です。高齢化の進行は阻止できないため、社会の変化に応じた対策を取る必要があるでしょう。

そうした観点から言えば、高齢者が元気にいきいきと自立した生活を続けられる仕組みを整え、医療費・介護費を軽減することは、とても重要な取り組みです。そして、そうした取り組みを行うには、個人個人の努力だけでなく地域一丸となった支援が大切です。

介護予防ケアマネジメントは、高齢者が前向きに生きることに加え、活力ある地域づくりの実現という観点からも重要だと考えられています。

(出典:厚生労働省「第1章 介護予防について」
(出典:厚生労働省「これからの介護予防~地域づくりによる介護予防の推進~」

3.【STEP別】介護予防ケアマネジメントの流れ

介護予防ケアマネジメントを実施する際は、決められた流れに沿って進めます。介護予防ケアマネジメントの概要や重要性を理解したところで、実際にどのような工程で業務が行われるのかについても把握しておきましょう。

ここでは、介護予防ケアマネジメントにおけるプロセスを5つのステップに分けて紹介します。

【STEP1】アセスメント・ケアプラン作成

アセスメントでは、利用者さんの自宅を訪問して利用者さんとご家族に面談などを行い、現状の把握や課題の分析、認識の共有を行います。

【聞き取りの内容】

● ケアプランを利用する目的
● 利用を希望するサービス
● 心身の状況
● 家庭・住居の環境
● 生活様式
● 現在困っていること


【把握すべき内容】

● 生活機能が低下した原因
● 置かれている状況
● 維持・改善すべき課題


アセスメントで把握した内容を踏まえた上で、状況の改善や課題解決に必要な目標を設定し、ケアプランの原案を作成します。その際は、利用者さんが自分で目標を決め、達成への意欲を持てるよう支援することが大切です。

【ケアプランの内容】

● ケアマネジメントタイプの決定
● 目標を達成する方法
● 支援する内容
● 利用するサービス
● 実施期間
● 段階的達成計画
 ○ 達成できる目標設定(目安:3~6カ月)
 ○ 自立生活の目標設定(目安:3カ月~1年)


ケアマネジメントCの場合は、この段階でケアマネジメント結果を作成します。

【STEP2】サービス担当者会議

利用者さんとご家族、利用するサービスの提供担当者、主治医などで会議を行い、下記のような情報を共有します。

● ケアプランのサービス事業者の役割
● 地域の公的サービスの情報
● 利用者とその家族の状況
● サービスを利用する期間
● 経過記録の確認方法
● 連絡体制
● 支援計画の方針


ケアマネジメントBでは、【STEP2】を省略することが可能です。なお、ケアマネジメントCでは実施しません。

【STEP3】利用者への説明と同意・ケアプラン確定

サービス担当者会議で具体化されたケアプランについて説明を行います。

【ケアマネジメントA・B】

● 利用者本人とその家族への説明と同意が必要
● 利用者本人とサービス提供者からの自署もしくは押印が必要


【ケアマネジメントC】

● 利用者本人への説明と同意が必要
● 利用者本人の自署もしくは押印が必要


同意が得られればその内容でケアプランが確定し、利用者さんとサービス提供者に交付され、ケアプランの内容を共有することになります。

【STEP4】ケアプラン実行・モニタリング

サービスの利用開始に伴い、モニタリングを実施します。利用者さんとご家族だけでなく、サービス提供者などからも利用者さんの状況をヒアリングします。

【モニタリングのチェック内容】

● 利用者さんの状況・生活機能・意欲の変化
● 目標の達成状況
● 設定した目標と支援内容の整合性
● 新規目標の有無


【モニタリングの間隔】

● ケアマネジメントA:定期的に実施(月1回以上、少なくとも3カ月に1回は訪問)
● ケアマネジメントB:間隔を空けて実施(必要な時のみ)
● ケアマネジメントC:実施なし


【STEP5】評価

ケアプランで設定した目標が達成されているか、確認と再検討を行います。

【評価の内容】

● 利用者さんの状況・生活機能・意欲の変化
● 目標の達成状況
● 新規目標の有無
● ケアプランの継続・変更・終了の是非


通常は3~6カ月に1回の頻度が目安です。運動器機能向上や口腔機能向上のサービスを利用する場合は、3カ月に1回の頻度で行います。ケアマネジメントCでは実施しません。

まとめ

介護予防ケアマネジメントは、高齢者が介護サービスを必要としない生活を継続できるように自立支援するサービスです。高齢者が生活能力や生きる意欲を保つことは、社会保障費の削減や地域の活性化にもつながるため、介護予防ケアマネジメントには社会的に大きな期待が寄せられています。

「介護のみらいラボ」には、現場で役立つ介護業界の最新情報やスキルアップのヒントなどを多数掲載されています。介護士の方が知っておきたい知識や、介護の現場で抱え込みがちな悩みの対処法・解決法なども紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

※当記事は2022年8月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

介護予防マネジメントは、利用者が住み慣れた地域で、利用者が望む自立した日常生活を送れるように支援するケアマネジメントのプロセスにおいて行われます。
ケアマネジメント実施者は、①介護保険制度の理念や市町村の総合事業の趣旨をしっかりと理解した上で、利用者の状況に応じて、適切な介護予防ケアマネジメントを行う、②介護予防をめざす目的は、利用者本人の自己実現と生きがいのある自分らしい生活を継続させるための支援である、ということを念頭にケアマネジメントしていくことが求められます。
2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本人の4人に1人が後期高齢者という超高齢社会を迎えます。今後ますます社会保障費の増大が予想される中にあって、要介護状態になることを防ぐ介護予防への取り組みは必要不可欠です。

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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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