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仕事・スキル 介護士の常識 2023/12/12

介護用品の役割とは?福祉用具のレンタル方法と手続き方法を解説します

文/山本史子(介護福祉士) thumbnail.jpg

介護用品や福祉用具は、要介護者の生活を快適にするだけではなく、お世話をする家族の負担を軽減させるものです。家族に介護が必要になったときのために「どんな介護用品があるか知っておきたい」という方もいるのではないでしょうか。介護用品のなかには、介護保険が適応される福祉用具がありますが、利用には条件があります。ここでは、福祉用具の役割や対象者、レンタルする際の手続き方法について詳しく解説します。

1.福祉用具の役割とは?



介護用品と福祉用具は、どちらも介護が必要な高齢者や障がいがある方の生活支援を目的とした道具です。介護用品を使うには、購入する方法とレンタルする方法があります。なかでも介護保険サービスを利用して購入・レンタルできる道具や装備を福祉用具といいます。主な福祉用具の役割は次の3点です。

  • 利用者さんの自立を促す
  • 介護者の負担を軽減する
  • 安全で快適な生活を送れるようにする

利用者さんの自立を促す

福祉用具は、利用者さんの身体機能の低下を予防し、自立した日常生活が送れるようにサポートするために使用されます。例えば、車いすや歩行補助杖は、歩行困難な人の移動を助けるものです。こうした福祉用具を使用することで、利用者さんの歩行機能の維持につながるでしょう。

介護者の負担を軽減する

福祉用具は利用者さんの日常生活を支える一方で、介護者負担の軽減する役割もあります。例えば、電動車いすやリフト装置等があれば、介護者が対象を移動させる際に体の負担を軽減できるでしょう。また、福祉用具の使用で、利用者さんの転倒や事故リスクを回避できることで、介護者の精神的な負担も軽減すると考えられています。

安全で快適な生活が送れるようにする

福祉用具は、要介護者の身体の状態や生活環境に合わせて設計されており、転倒や転落などの事故を防止する役割をしています。例えば、手すりの設置は転倒の予防に、またサイドレールは転落を防げるでしょう。

2.介護保険でレンタルできる福祉用具とは



介護保険が適用となる福祉用具は、基本的にはレンタルが可能で、利用できる対象者が決められています。それぞれを詳しく見てみましょう。

レンタル可能な福祉用具は13種

介護保険でレンタルが可能な福祉道具は、以下のとおりです。

レンタルできる福祉用具
車いす・車いす付属品・特殊寝台・特殊寝台付属品・床ずれ防止用具
・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助杖・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(釣り具の部分を除く)・自動排せつ処理装置

介護保険の福祉用具は、レンタルできることを原則としています。しかし、ポータブルトイレや入浴用のイスなど、他の利用者との共有に心理的抵抗が伴う介護用品はレンタルできず、購入が前提となります。また、吊り下げ式リフトの釣り具など、使用により劣化が懸念され、再利用が難しいものもレンタルできません。レンタルできない福祉用具については、購入費が保険給付の対象となります。

また、レンタル費用は福祉用具にかかった額によって保険給付され、主に1割負担(所得に応じて2割・3割負担の場合もある)です。購入費については、原則年間10万円までが支給限度となっています。

福祉用具を使用できる対象者

介護給付を使用して福祉用具を使用する対象者は原則、要介護2以上の高齢者です。それぞれの対象となる福祉用具は以下のとおりです。

対象介護度 対象となる福祉用具
要介護2~5 ・車いす/車いす付属品
・特殊寝台(介護用ベッド)
・特殊寝台付属品
・床ずれ防止用具
・体位変換器
・認知症老人徘徊感知機器
・移動用リフト(釣り具の部分を除く)
要支援1~2・要介護1~5 ・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助杖
・自動排せつ処理装置
※ただし、要支援者・要介護1の方は尿のみを自動的に吸引できるもの
※便を自動吸引できるものは、要介護2・3の方も原則対象外

(参考:介護保険における福祉用具の貸与・販売の概要|厚生労働省

要支援と要介護1(軽度者)は、介護保険による福祉用具レンタルの対象外です。ただし、厚生労働省が定めた条件に該当する方や市区町村が判断した場合は、例外で介護保険が使えます。

軽度者が原則使用できない福祉用具は以下の6点です。ただし、条件によって使用できるケースがあります。

軽度者が原則給付対象外となる福祉用具 条件により使用できる際の判断例
車いす/車いす付属品 ・日常的な歩行が困難
・日常生活範囲で移動介助が必要
特殊寝台/特殊寝台付属品 日常的に寝返り・起き上がりが困難
床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に起き上がりが困難
認知症老人徘徊感知機器 ・意見の伝達、介護者への反応や理解などに支障があるが、移動の全介助は必要ない
移動用リフト(つり具の部分を除く) 日常的に立ち上がり困難で移乗に介助が必要。かつ、生活環境に段差の解消が必要
自動排泄処理装置 排便・移乗の全介助が必要

(参考:軽度者に対する福祉用具貸与の判断について|厚生労働省

上記6点のうち、自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するものは除く)は、要介護2~3の方も原則給付の対象外です。福祉用具の使用については、主治医の所見とサービス担当者会議によって判断されます。

3.福祉用具をレンタルするまでの流れ



では実際に福祉用具をレンタルするにはどうすればよいのでしょうか。具体的な流れは、次のとおりです。

1. 介護支援専門員による居宅サービス計画書の作成
2. 利用者さんや家族と相談し、福祉用具貸与事業者を選定
3. 福祉用具専門相談員による計画書の作成と貸与契約
4. 利用者さんや家族への使い方の説明と調整
5. 福祉用具のレンタル開始

福祉用具を利用する際、まずは介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談することから始まります。相談後、居宅サービス計画書の作成が行われます。その後、本人や家族の希望をはじめ、本人の身体機能や生活環境・既往歴などの情報から、必要な福祉用具と福祉用具貸与事業者を選定します。「福祉用具貸与事業者」とは、市区町村の指定を受けた福祉用具のレンタル業者です。指定事業者には、専門知識を持った「福祉用具専門相談員」が配置されており、居宅サービス計画書に基づいて福祉用具貸与・販売計画を作成します。

用具の利用が決まったら、指定業者とレンタル契約を行います。利用者本人に合わせて福祉用具の調整を行い、本人や家族に使用方法を説明したあと、いよいよレンタル開始です。福祉用具のレンタル中は、使用状況のモニタリングやメンテナンスを行い、不具合があれば交換や修理が可能です。レンタル開始後でも、身体に合わないときや不具合が発生する場合には、違うものと交換することが可能です。

4.介護用品や福祉用具のレンタル・購入はどこでできるの?



介護用品や福祉用具をレンタルしたい、もしくは購入したいと思っても、どこに行けばよいのか悩むことがあるかもしれません。基本的にはケアマネジャーに相談することになりますが、利用方法が分かっていると安心です。福祉用具等のレンタルや購入は、主に、次のような方法があります。

  • 介護用品・福祉用具専門のカタログを利用する
  • インターネットによるオンライン契約
  • 薬局やスーパー・ホームセンターなどの販売店

それぞれ詳しく解説します。

介護用品・福祉用具専門のカタログ

介護用品や福祉用具が紹介された専門のカタログがあります。カタログには、さまざまな用品が並んでおり、介護保険に適用していないものもあるため注意が必要です。カタログから用品を選ぶ際には、まず介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談しましょう。
専門カタログは、一般的なものから専門的なものまで品ぞろえが豊富な点がメリットです。一方で、用品の種類が多く、どれを選べばよいのか迷ってしまうかもしれません。市区町村の指定する「福祉用具貸与事業者」を頼れば、利用者の体調や環境に合った介護用品が選べるでしょう。

インターネットによるオンライン契約

多くの福祉用具事業者が、インターネットを通じて介護用品・福祉用具の購入・レンタルの提供を行っています。オンライン上でカタログが見られる販売事業者もあり、時間や場所を問わず、用品を探せるのがメリットです。また、一部の事業者ではデモ機を借りて、使用することも可能です。ただし、多くの業者があるため、業者選びに迷うことがあるでしょう。

薬局やスーパー・ホームセンターなどの販売店

薬局やスーパー・ホームセンターでも、一部の介護用品の購入が可能です。一般的に、介護保険適用外のものを取り扱っており、なかにはアフターサービスが実施されているものもあります。ただし、レンタルを取り扱っているケースはほとんどなく、あくまで介護保険適用外の商品を購入する場合に利用できる場所です。

5.福祉用具はレンタルと購入どちらがいいの?レンタルするメリットとデメリット



介護保険が使えるとしても、レンタルより購入したいと考える人もいるかもしれません。また、どちらがお得に利用できるのか悩むこともあるでしょう。ここでは、レンタルで利用する際のメリットとデメリットを紹介します。

レンタルのメリット

福祉用具をレンタルするメリットは次の3点です。

  • 初期費用にかかる負担が少ない
  • 状況に応じて交換ができる
  • 不要になれば返却できる

介護用品は高額なものも多く、購入すると大きな費用負担となる可能性もあります。レンタルなら初期費用が安くすむため、利用負担が抑えられるでしょう。

また、利用者さんの身体状況や生活状況の変化により、使用していた福祉用具が変える必要が出てくる可能性も考えられます。レンタルでは、定期的に担当者がモニタリングを行うため、必要であれば修理や交換にも対応可能です。また、福祉用具が不要になった場合、購入すると処分の手間や費用がかかります。その点、レンタルは返却できるので安心です。

レンタルのデメリット

一方で、レンタルのデメリットは以下の3点です。

  • 返却を前提に、丁寧に扱う必要がある
  • 故障や汚れにより、買い取りになる可能性がある
  • 基本的には、中古品の利用となる

福祉用具のレンタルは初期費用が抑えられるというメリットがありますが、最終的に返却するものとして丁寧に取り扱う必要があります。また、レンタル中に故障や汚れが発生した場合、程度によっては、買い取りになる可能性があります。そのため、長期間のレンタルになれば、購入よりも割高になる可能性もあるでしょう。

一方で、購入すれば、自分専用として使えるため、気遣いなく取り扱いができます。加えて、レンタルの場合、必ずしも新品が使えるわけではないため、中古品を使うことに抵抗がある方は購入を検討した方がよいでしょう。

6.医療費控除の対象になる介護用品とは?



日常生活の介護だけでなく、看護や医学的な管理が必要な場合もあります。介護保険サービスは医療と連携しており、そのうち看護師や保健師によって受けられる「医療サービス」は、医療費控除の対象です。

一方で、福祉用具のレンタルは医療費控除の対象外の居宅サービスとなるため、医療費控除は受けられません。ただし、おむつ代については、医師が発行する「おむつ使用証明書」がある場合、医療費控除の対象になります。

まとめ:福祉用具を利用する際は、まずはケアマネジャーに相談を



介護用品や福祉用具は、身体機能の低下や病気により日常生活や社会生活に制限された高齢者が、自立した生活が送れることを目的に利用するものです。福祉用具を使用したいときは、まず担当のケアマネジャーに相談してみましょう。一部の福祉用具はレンタルできない場合があり、購入した方が良いケースも見られます。福祉用具のレンタルには、メリットとデメリットがあるため、利用者さんの希望や生活環境を考慮して検討しましょう。

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山本史子(Fumiko Yamamoto)

介護福祉士

デイサービスで約20年現場職員として経験。2007年に介護福祉士の資格を取得。「この施設にいると楽しい、また行きたい」と笑顔で帰ってもらえるデイサービスにしたいという思いで20年間利用者様のケアをしている。知的障害のある自閉症の息子がいるため、介護現場で働きながら、母親の立場から障がい者福祉にも関わっている。

山本史子の執筆・監修記事

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