社会福祉士とソーシャルワーカーの違いは?仕事内容などを徹底解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子ソーシャルワーカーとは、介護や医療、福祉などさまざまな分野で活躍している「相談員」のことです。一方、社会福祉士は、日常生活に困難を感じている人に対して、専門的に相談や援助を行うための国家資格です。2つの言葉は似たような意味で使われることも少なくありませんが、福祉の現場で働くにあたっては、それぞれの違いをきちんと理解しておく必要があるでしょう。
当記事では、社会福祉士とソーシャルワーカーの違いや、社会福祉士の資格取得方法、ソーシャルワーカーとしての働き方などについて詳しく解説します。「福祉の現場で活躍したい」「困っている人たちの助けになりたい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
1.社会福祉士とソーシャルワーカーの違い
社会福祉士とソーシャルワーカーの違いは、社会福祉士が福祉に関連する国家資格(あるいは資格を取得した人)であり、ソーシャルワーカーは職種の名称である点です。
具体的に言うと、ソーシャルワーカーは福祉や医療、介護、教育などの現場において、「相談員」としてさまざまなサポートを行う職業の総称であり、そこには、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格取得者や、社会福祉主事、生活相談員なども含まれています。
つまり、資格の有無に関わらず、ソーシャルワーク(福祉的なサポートを必要とする方に向けた相談業務)を行う人たちがソーシャルワーカーであり、社会福祉士はソーシャルワーカーの枠組みの一部というわけです。
2.社会福祉士とは?
社会福祉士とは、1987年に「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づいて制定された国家資格で、その役割は「福祉、高齢者、児童、家庭などについての専門的知識と技術をもって、支援が必要な方への相談援助を行うこと」です。社会福祉士が支援するのは、身体上、精神上に障害を持った方、高齢者、生活困窮者、ひとり親家庭など幅広く、福祉・医療の相談援助の場における重要な役割を担っています。
(出典:厚生労働省「社会福祉士・介護福祉士等」)
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士の主な仕事は、支援対象者にあった公的支援制度や福祉サービスの提案、助言を行うことです。福祉サービスを提案するだけでなく、サービスを提供している事業所と連絡をとり、適切なサービスが受けられるよう手配することもあります。
例えば、高齢者施設への入居を希望している方がいる場合、社会福祉士は現在抱えている生活上の問題点や要望をヒアリングし、その方に合った福祉施設などを紹介します。また、利用できる介護保険について説明したり、施設入所後に悩みがないか相談援助を行ったりすることも、社会福祉士の大切な業務です。
社会福祉士の資格取得方法
社会福祉士の資格を取得するには、社会福祉士国家試験に合格しなければなりません。社会福祉士国家試験は年に1度、毎年2月頃に実施されており、合格率は約30%前後となっています。
(出典:厚生労働省「社会福祉士国家試験の受験者・合格者の推移」)
福祉系の国家資格には、介護福祉士や精神保健福祉士などがありますが、そのなかでも社会福祉士は難易度が高めだと言われています。
社会福祉士国家試験の受験資格例として、以下に「第35回社会福祉士国家試験」の概要を紹介しておくので、興味のある方はぜひご覧ください。
(1)4年制大学で指定科目を修めて卒業した方(令和5年3月31日までに卒業見込みの方を含みます)
(2)2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した方(令和5年3月31日までに従事する見込みの方を含みます)
(3)社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方(令和5年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます)
(4)社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方(令和5年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます)
(出典:社会福祉振興・試験センター「社会福祉士国家試験」_引用日2022/09/30)
また、試験科目は下記の通り19科目あり、試験は2日間かけて行われます。
筆記試験の科目(19科目) |
---|
1.人体の構造と機能及び疾病 2.心理学理論と心理的支援 3.社会理論と社会システム 4.現代社会と福祉 5.社会調査の基礎 6.相談援助の基盤と専門職 7.相談援助の理論と方法 8.地域福祉の理論と方法 9.福祉行財政と福祉計画 10.福祉サービスの組織と経営 11.社会保障 12.高齢者に対する支援と介護保険制度 13.障害者に対する支援と障害者自立支援制度 14.児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度 15.低所得者に対する支援と生活保護制度 16.保健医療サービス 17.就労支援サービス 18.権利擁護と成年後見制度 19.更生保護制度 |
(引用:厚生労働省「社会福祉士・介護福祉士等」_引用日2022/09/30)
社会福祉士国家試験の合格基準は、問題総得点の約60%を取得することです。ただし、試験科目のなかに1つでも0点の科目があると不合格となるため、バランスよく学習し、しっかりと試験対策をする必要があるでしょう。
3.ソーシャルワーカーとは?資格の必要性
前述したように、ソーシャルワーカーとは、日常生活を送る上で困難を抱えている人に対して相談援助を行う職業の総称です。また、ソーシャルワーカーとして働くにあたって、必須の資格などは定められていません。
ただし、多くの医療機関が社会福祉士や精神保健福祉士の資格を募集要件にするなど、実際の現場では関連資格を求められるケースが少なくありません。「ソーシャルワーカーとして、より専門的なサポートを行いたい」という方は、社会福祉士、精神保健福祉士といった資格取得を目指すのが良いでしょう。
ソーシャルワーカーは、勤務先によって主に5つの種類に分類され、支援対象や名称が変化します。ここからは、ソーシャルワーカーの種類について確認していきましょう。
ソーシャルワーカーの主な種類5つ
代表的なソーシャルワーカーの種類は、以下の5つです。勤務先によって支援対象は異なるものの、「相談業務を行う」という基本的な仕事内容は共通しています。
医療ソーシャルワーカー |
---|
医療ソーシャルワーカーとは、医療機関で働くソーシャルワーカーのことです。病気によって困難を抱えている方の相談に乗り、課題解決に努めます。医療ソーシャルワーカーが対応する事案は、「入退院の手続き」「入院中の相談援助」「退院後の相談援助」などです。 医療ソーシャルワーカーは、医療機関内の相談室に所属していることがほとんどですが、入院中だけでなく退院後の社会復帰への支援も行います。 |
精神科ソーシャルワーカー |
---|
精神科病院や心療内科クリニック、精神保健福祉センターなどで勤務するソーシャルワーカーのことで、精神障害者とその家族などに対する相談援助が主な業務となります。 具体的には、精神科病院に通院または入院する患者さんから、現在の病状や不安に感じていることなどをヒアリングし、支援対象者が適切なサービスを受けられるように、関連機関への連絡・調整を行います。 |
スクールソーシャルワーカー |
---|
スクールソーシャルワーカーは、学校生活を送る上で何らかの問題を抱えている児童・生徒やその家族に対して、相談援助を行います。主な勤務先は、小学校や中学校、高校といった教育機関、児童養護施設、児童福祉施設などで、学校で起こるいじめ問題や不登校、家庭内で生じる虐待、育児放棄など、子どもたちに関わるさまざまな問題に対応します。 スクールソーシャルワーカーとして働く場合、社会福祉士や精神保健福祉士、公認心理師などの資格を取得しておくと、より信頼性を高められるでしょう。 |
コミュニティ・ソーシャルワーカー |
---|
コミュニティ・ソーシャルワーカーは、地域のなかで問題や悩みを抱えている方の相談を受け付け、地域の方や関係各所と連携をとりながら、問題解決に取り組みます。 具体的な業務内容としては、安否確認や見守り、生活課題の発見、相談援助、サービスの提案や専門機関の紹介などが挙げられます。 |
生活相談員 |
---|
生活相談員は、特別養護老人ホームやデイサービスといった介護施設で活躍するソーシャルワーカーです。介護老人保健施設では、「支援相談員」と呼ばれることもあります。 生活相談員の主な役割は、施設入退所時の手続き、施設利用者とその家族への相談援助などです。なお、生活相談員として働いている方には、社会福祉士や精神保健福祉士の資格保有者が多く見られます。ただし、実務経験があれば、生活相談員として働ける自治体もあります。 |
4.社会福祉士・ソーシャルワーカーともやりがいのある仕事
社会福祉士を含むソーシャルワーカーは、日常生活に困難を感じている人に対して、専門的な相談・援助を行う職業です。ソーシャルワーカーは、支援対象者が抱える幅広い問題に対応する必要があり、なかには問題解決が容易でないケースもあるでしょう。
また、関連機関と連携し協力を得る場面も多いため、自分のペースや考え方だけで業務を進めることが難しい場面も多く見られます。そのため、経験が少ないうちは大変な仕事だと感じるかもしれません。
しかし、支援対象者に適切なアドバイスができたときや課題(問題)が解決したときには、大きな達成感を得られるため、その点に魅力を感じる方も多いでしょう。また、支援対象本人だけでなくその家族に感謝される機会もあり、人に感謝されることでやりがいを感じられる人にはおすすめの職業と言えます。
ただし、ソーシャルワーカーは、利用者さんとコミュニケーションを取りながら、うまく悩みやニーズを聞き出す必要があるため、コミュニケーション能力や、相手の立場に立って物事を考える姿勢がとても大事です。そうしたスキルを身に付ければ、ソーシャルワーカーとしてより活躍できるでしょう。
まとめ
ソーシャルワーカーは、福祉的な支援を必要とする方の相談に乗り、適切なサポートをする職種です。ソーシャルワーカーの仕事には大変な場面も少なくありませんが、「困っている方の助けになれる」という意味では、非常にやりがいのある仕事です。
ソーシャルワーカーと社会福祉士が混同されるケースも多く見られますが、ソーシャルワーカーは職種の名称、社会福祉士が福祉に関連する国家資格である点に違いがあります。ただし、ソーシャルワーカーとして働く場合に社会福祉士の資格を持っていると、高い専門性を証明できるでしょう。
ソーシャルワークを含めた介護・福祉の仕事に興味がある方は、ぜひ「介護のみらいラボ」をご覧ください。「介護のみらいラボ」では、介護の現場で活躍する方のために、さまざまなお役立ち情報を提供しています。
※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
社会福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法において、「社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術を持って、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者をいう」と定義されています。
社会福祉士は名称独占の国家資格であるため、社会福祉士国家資格を取得していない方は「社会福祉士」と名乗ることはできません。なお、社会福祉士は通称「ソーシャルワーカー」と呼ばれています。
日本では、少子高齢化、地方の過疎化など、社会の状況は徐々に変化しています。このようななかにあって、社会福祉士(ソーシャルワーカー)は、社会福祉施設や地域での福祉サービスの提供や利用者の支援、社会福祉ニーズの調査や分析など、ソーシャルワークの役割はますます期待されています。
例えば、児童相談所のソーシャルワーカーには、増加する児童虐待への素早い対応が求められます。社会的な問題が増えれば増えるほど社会福祉士(ソーシャルワーカー)の必要性が高まっていくことは間違いありません。
実は、社会福祉士が活躍する領域はかなり広く、高齢者や障害者福祉の領域だけでなく、都道府県、市町村などの行政や一般企業でも働いています。
近年では、東京地検や大阪地検などの地方検察庁や防衛省、自衛隊でも社会福祉士を「社会福祉士」枠で採用しています。
社会福祉士は、多様なニーズに対応することが求められますので、活躍する領域は今以上に広がると思われます。
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
SNSシェア