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仕事・スキル 介護士の常識 2024/01/10

福祉タクシーとは?利用条件や料金を紹介!介護タクシーとの違いも

文/中谷ミホ(介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士) thumb.jpg

福祉タクシーについて、「名称を聞いたことはあるけれど、詳細までは知らない」「介護タクシーとの違いがわからない」と思っている人もいるのではないでしょうか。

福祉タクシーというのは、車いすやストレッチャーに乗ったまま利用できるタクシーのことで、公共交通機関を使って外出することが難しい方の移動手段として、大きく役立っています。

当記事では、福祉タクシーの対象者や利用条件、料金について解説します。あわせて介護タクシーとの違いも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.福祉タクシーとは

福祉タクシーは、高齢者や障害のある方などサポートが必要な方々の移動を支援するタクシーで、国土交通大臣の許可を受けた一般のタクシー事業者が、福祉車両を使用して運行しています。自治体によっては「ケアタクシー」と呼ぶこともあります。

福祉タクシーを管轄している国土交通省の定義は、以下の通りです。

「福祉タクシーとは、道路運送法第3条に掲げる一般乗用旅客自動車運送事業を営む者であって、一般タクシー事業者が福祉自動車を使用して行う運送や、障害者等の運送に業務の範囲を限定した許可を受けたタクシー事業者が行う運送のことをいう」

(引用:国土交通省「福祉タクシー」

福祉タクシーで使用される福祉車両にはワンボックスタイプが多く、電動リフトとスロープが装備されている車両もあるため、車いすやストレッチャーを利用する方でもスムーズに乗り降りすることが可能です。

2.福祉タクシーを利用できる人 

福祉タクシーは、公共交通機関での移動が難しい高齢者や障害のある方、病気やけがをしている方を対象としたサービスです。しかし、「対象は高齢者や障害のある方のみ」といった利用制限はなく、要介護認定を受けていない方でも利用可能です。もちろん、ご家族や介助者も一緒に乗車できます。

なお、国土交通省の通達「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」では、福祉タクシーの対象者を以下のように定めています。

1. 身体障害者手帳の交付を受けている者
2. 要介護認定を受けている者
3. 要支援認定を受けている者
4. 上記1~3に該当する者のほか、肢体不自由、内部障害、知的障害及び精神障害その他の障害を有する等により単独での移動が困難な者であって、単独でタクシーその他の公共交通機関を利用することが困難な者
5. 消防機関又は消防機関と連携するコールセンターを介して、患者等搬送事業者による搬送サービスの提供を受ける患者

(引用:国土交通省「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」

3.福祉タクシーの利用条件

福祉タクシーには、目的や移動先に関する制限がなく自由に利用できます。ただし、福祉タクシーの利用には、基本的に事前予約が必要となります。タクシー会社が保有する福祉車両の台数には限りがあり、急な要請に対応できない場合もあるからです。

以下は、福祉タクシーの使い方の一例です。

  • 通院
  • 買い物(日用品以外も含む)
  • 食事、観劇、コンサート、習いごと、ドライブなど
  • 駅・空港への送迎
  • 冠婚葬祭、墓参り
  • 入退院、転院
  • 施設入所・退所

なお、タクシー会社によっては、乗り降りする際の介助を行っていない場合があるため、介助を必要とする人は利用前にタクシー会社に問い合わせるか、ホームページで確認しましょう。介助を受けられない場合は、ご家族や介助者と一緒に乗車する必要があります。

4.福祉タクシーの料金

福祉タクシーの運賃制度は、一般的なタクシーと同じで、乗車距離や乗車時間に応じた料金がかかります。また、オプションサービスを利用する場合は、それぞれのオプション料金が追加されます。

以下は、オプション料金が発生するサービスの一例です。

  • 車いす、ストレッチャー、スロープなどの貸し出し(レンタル料金)
  • 車いすやストレッチャーに対応した車両の利用(車両代)
  • 運転手に介助を依頼(介助料)
  • タクシーを貸し切りで利用(貸切料金)など

福祉タクシーの料金は、利用するタクシー会社によって差があります。また、オプションサービスの内容も異なるため、事前にタクシー会社に問い合わせるか、ホームページで確認することをおすすめします。

福祉タクシー利用料の助成制度

お住まいの地域によっては、福祉タクシーの利用料金について助成を受けられる場合があり、一定の条件を満たす方に対して「福祉タクシーの利用券(補助券)」を交付している自治体も少なくありません。

福祉タクシー券の助成内容や対象者、申請方法などは自治体により異なるため、お住まいの地域の役所に確認してみてください。

5.福祉タクシーと介護タクシーの違い

介護タクシーは、福祉タクシーとよく似ていますが、この2つにはいくつかの違いがあります。なかでも、介護保険が適用されるかどうかは大きな違いです。

福祉タクシーは、原則として介護保険が適用されません。一方、介護タクシーは条件を満たすことで介護保険が適用されます。厳密にいうと、介護タクシーは介護保険の訪問介護サービスの一部で、正式には「通院等乗降介助」と呼ばれます。

福祉タクシーと介護タクシーの主な違いは表の通りです。

福祉タクシー 介護タクシー
対象者 公共交通機関での移動が難しい高齢者や障害のある方、病気やけがをしている方 要介護1〜5の方
利用料金の自己負担 全額自己負担
目的や移動先に合わせて自由に利用可能
条件を満たせば介護保険が適用される
ケアマネジャーによるケアプランへの記載が必要
介助サービス 原則なし あり(乗務員による乗り降りの介助、病院の受診の手続きなど)
利用目的の制限 なし あり(私的な用事や急ぎの用事は全額自己負担)
家族の同乗 原則不可

以下では、各項目の違いについて解説します。

対象者の違い

介護タクシーを利用できるのは、要介護認定で「要介護1〜5」の認定を受けていて、かつ自宅や有料老人ホームなどで在宅サービスを利用して生活を送る方です。

また、自分1人で公共交通機関を利用できないことも条件となります。

要支援1・2の方や、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設などの介護施設に入所している方は対象外となるため注意が必要です。

なお、要介護1以上の認定を受けていても、1人で公共交通機関を使って外出できる方は対象外となります。

利用料金の自己負担の違い

介護タクシーでは、「乗降介助」または「身体介護」の介助費用(介護サービスの利用料)に対して、介護保険が適用されます。自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、3割のいずれかです。

運賃や車いす、ストレッチャーなどのレンタル料金は自費負担となります

利用条件の違い

介護タクシーは、条件を満たせば介護保険が適用されます。そのため、利用するにはケアマネジャーが作成するケアプランに、「介護タクシーの利用」が組み込まれている必要があります。介護タクシーを利用しての外出を希望する方は、ケアマネジャーに相談してケアプランに記載してもらいましょう。

介助サービスの有無

介護タクシーの乗務員は、「介護職員初任者研修」を修了しているか、介護関連の資格を取得しています。そのため、介護タクシーを利用すると乗務員による乗り降りの介助や、病院での受付・会計・薬の受け取りなどの介助を受けられます。

利用目的の制限の有無

介護タクシーの利用目的には制限があり、「日常生活上または社会生活上必要な行為にともなう外出」と定められています。これは、介護タクシーがあくまでも訪問介護サービスの一部だからです。

具体的には、以下のような場合に介護タクシーを利用でき、介護保険が適用されます。

  • 通院
  • 補聴器や眼鏡など本人が現場に行かなければならない買い物
  • 預貯金の引き出し
  • 選挙への投票
  • 役所に届け出をする場合など

なお、ケアプランに組み込まれていない私的な用事や急ぎの用事で介護タクシーを利用した場合は、介護保険適用外となるため、タクシーの利用料が全額自己負担となることを覚えておきましょう。

家族の同乗の可否

介護タクシーは、訪問介護サービスの一部となるため、乗車できるのは原則利用者のみとなります。

介護タクシーは、乗務員による介助を前提としたサービスであり、家族や介助者が乗車すると、乗務員による介助サービスを受ける必要がなくなります。そのため、家族や介助者の同乗は、原則として認められていないのです。

家族や介助者の同乗を希望する場合は、介護保険が適用されない福祉タクシーを利用するとよいでしょう。

まとめ

福祉タクシーは、福祉車両を使って、体の不自由な方や1人で公共交通機関を使った外出が難しい方などの外出をサポートするタクシーです。

利用に制限はなく、通院や買い物などの日常的な外出から旅行・レジャーまで、目的や移動先に合わせて自由に使えます。

ただし、介護保険が適用されないタクシー
であるため、利用料は全額自己負担です。

一方、介護タクシーは、条件を満たせば利用料の一部に介護保険が適用されるため、経済的な負担を軽くすることができます。また、介護の資格をもつ乗務員による介助を受けられるのも大きな特徴です。

ただし、利用目的に制限がある点や、家族や介護者が一緒に乗車できない点には注意が必要です。

福祉タクシーと介護タクシーは、要介護認定の有無や利用目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

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中谷ミホ

介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士

福祉系短大を卒業後、介護職員、相談員、ケアマネジャーとして、障害者支援施設、介護老人保健施設などの介護現場で活躍。現在は介護業界での経験を生かしながら、ライターとして活動しており、介護・福祉に関わる記事を数多く手がける。保育士、福祉住環境コーディネーター3級も取得。

中谷ミホの執筆・監修記事

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