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仕事・スキル 介護士の常識 2024/12/11

生活相談員とは?仕事内容や働く場所・必要な資格を詳しく解説

文/渡口将生(介護福祉士・ケアマネジャー) thumb_1211.jpg

生活相談員は、介護施設や障害者施設などで、利用者さんが安心して生活を送れるようにサポートする専門職です。具体的には、利用者さんや家族の悩みに耳を傾け、適切なアドバイスや支援を提供し、利用者さんの生活の質を向上させることが主な役割となります。

この記事では、生活相談員の仕事内容や働く場所、給料・年収について詳しく解説します。また、筆者の体験をもとにしながら、生活相談員としてのやりがいや、向いている人についても紹介します。これから生活相談員を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

1.生活相談員とは

生活相談員は、主に介護福祉施設で勤務し、介護サービスが必要な方が安心して生活できるように、相談役をつとめます。

サービスに関する説明や契約まわりの相談・調整、他職種との連携のほか、事業所によっては収支管理などの役割を担うこともあり、幅広い知識やスキルが必要とされます。

例えば高齢者施設の場合、利用者さんが快適な日常生活を送れるように、福祉サービスの調整を行ったり、家族とのコミュニケーションを図ったりするのが主な役目です。

ちなみに、「生活相談員」という呼称は、特別養護老人ホームやデイサービスに限られています。相談員としての業務内容はどの事業所も似ていますが、以下の表のようにそれぞれ呼称が異なります。

勤務地 呼称
特別養護老人ホーム、デイサービス、ショートステイ、有料老人ホーム 生活相談員
介護老人保健施設、デイケア 支援相談員
障害者施設 相談支援専門員
病院 医療ソーシャルワーカー(MSW)

2.生活相談員の仕事内容

生活相談員の仕事内容は、働く場所や利用者さんのニーズによって異なりますが、一般的な業務としては以下のようなものが挙げられます。

相談業務

生活相談員の主な役割は、利用者さんや家族からの相談に応じることです。日常生活での困りごとや不安について話を聞き、適切なアドバイスや支援をします。

相談内容は、介護サービスの利用方法、福祉用具の検討、生活環境の改善、介護認定の受け方など多岐にわたります。相談業務では、利用者さんの状況や希望を聞き取りし、最適な解決策を提案することが大事です。

利用者さんの生活支援

生活相談員は、日常生活に必要なサービスを利用する際の調整や、利用手続きなども行います。

また、食事、入浴、リハビリなどのスケジュール管理や、他職種との連携を通じて、利用者さんにとって最適なケアの実現を目指します。

関係機関との連携

医療機関やほかの介護施設、行政機関などと連携し、利用者さんが必要な支援を受けられるように調整を行います。

病院の医師や医療ソーシャルワーカー(MSW)、居宅ケアマネジャーなどと、利用者さんの健康状態・生活環境に関する情報を共有するほか、体調不良のときなどに医療機関や家族に連絡するのも生活相談員の役目です。

また、福祉サービスの提供者や地域のボランティア団体と協力し、利用者さんのニーズに応じた支援を検討・提供するのも大事な業務です。

家族への支援

家族が抱える介護の負担や精神的なストレスを軽減するために、相談に対応したりアドバイスを提供したりすることも求められます。

また、介護方法の指導や介護保険申請の手続きのサポートも、生活相談員の業務です。同じように、介護サービスの利用をサポートする職種としてケアマネジャーが挙げられますが、両者は仕事場や主な役割、資格などに違いがあります。

生活相談員は、家族間のコミュニケーションを円滑にするための助言や、家族全体が協力して介護に取り組むための調整なども行います。

営業活動

新規の申し込みが減った場合や利用者さんが退所する場合に、顧客獲得のための営業活動を行うこともあります。

施設の雰囲気や魅力、強みについて自信を持って伝えられるように、日頃から自分の職場の特徴をしっかりと把握しておくことが大切です。

クレーム対応

事業所の窓口となる生活相談員は、クレームに対応する場面も少なくありません。クレームを受けたときは内容を真摯に受け止め、改善できる点や要望を各職種や部署に伝達します。

場合によっては、無理な要望を出されることもありますが、対応できないことはできないとはっきり伝えることが必要です。そのため、制度の理解はもちろん、常に事業所の現状を把握しておくことが求められるでしょう。

3.生活相談員が働く場所

生活相談員は、さまざまな施設や機関で働けます。代表的な勤務先は以下の通りです。

介護施設

特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなど、さまざまな介護施設で活躍できます。

障害者施設

障害者施設では、障害を持つ方や子どもたちが安心して生活できるようにサポートします。

障害を持つ利用者さんが必要な支援を受けられるように、福祉サービスとの調整や連携を図り、支援計画の作成を行うこともあります。

デイサービス

デイサービスでは、生活相談員が介護職を兼務しているケースも多く見られます。加えて、自宅と事業所間の送迎業務や、送迎ルートの管理を行うこともあります。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの連携も求められ、利用者さんの自宅で行われるサービス担当者会議に出席する場合もあります。

4.生活相談員になるために必要な資格

生活相談員として働くためには、特定の資格やスキルが求められます。ここでは、代表的な資格やスキルについて説明しましょう。

生活相談員の要件は自治体ごとに定められていますが、一般的に以下の資格を求められるケースが多く見られます。

社会福祉士

社会福祉士は、日常生活に支障をきたしている方の相談に応じ、助言や指導を行う職種です。また、福祉サービスの利用をサポートし、必要な調整も行います。業務内容は幅広く、福祉・医療の各種機関やサービスとの連携も求められます。

社会福祉士は、年に1回実施される試験に合格することで取得できる国家資格です。受験資格を得る方法には、福祉系大学を卒業するルート、短期養成施設を利用するルート、一般養成施設を利用するルートの3つがあります。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神障害を持つ方の支援や相談業務を行う福祉の専門職です。社会福祉士と同様に国家資格であり、受験資格を得るためには複数のルートがあります。

具体的には、保健福祉系大学や短大で指定科目を履修するルート、福祉系大学で基礎科目を履修するルート、一般大学や一般短大卒業ルートなどがあり、履修科目によっては実務経験が必要になる場合や、短期養成施設・一般養成施設の卒業が要件に含まれる場合もあります。

すでに社会福祉士の資格を持っている人や、実務経験が4年以上ある人にも受験資格が与えられるため、社会人でも目指しやすい資格といえるでしょう。

社会福祉主事任用資格

社会福祉主事任用資格は、社会福祉士や精神保健福祉士と異なり、国家資格ではありません。都道府県や市町村の福祉事務所で福祉業務に従事する際に、社会福祉主事任用資格が必要とされます。

資格を取得するための試験はありませんが、一定の要件を満たす必要があります。資格取得のルートは複数あり、大学で社会福祉に関する3科目以上を履修して卒業した人や、中央福祉学院・日本社会事業大学の通信課程(1年間)を修了した人が取得可能です。さらに、指定の養成機関や都道府県が実施する講習会で、特定の科目を履修することでも資格が得られます。

講習会や研修を受けることで取得できるため、国家資格の社会福祉士や精神保健福祉士に比べて、取りやすい資格だといえます。

その他

生活相談員として働く際には、前述した3つの資格のいずれかが必要とされますが、介護福祉士や介護支援専門員などを「同等以上の能力を有すると認められる者」として、要件に加えている自治体もあります。

なかには「無資格でも可」としている自治体もあるため、生活相談員として働きたい人は、事前に事業所がある自治体の要件を確認してください。

5.生活相談員になるために必要なスキル

生活相談員として働くためには、以下のようなスキルが求められます。

コミュニケーション能力

利用者さんやその家族との信頼関係を築くには、コミュニケーション能力が必要です。特に、相手の話を傾聴し、共感する力は不可欠といえるでしょう。また、どのような内容の相談にも対応できる理解力や判断力も重要です。

調整力

関係機関との連携や、家族間の調整をスムーズに行うための調整力が求められます。また、他者と連携する際は、こまめに連絡・報告を行う姿勢が大事です。自分自身のスケジュールやタスクを管理する能力も必要でしょう。

ストレス管理能力

生活相談員は、利用者さんやその家族、他の医療・福祉関係者といった多くの人と関わるため、ストレスがたまりやすい職業といえます。クレーム対応を求められることも多く、ストレス管理能力はとても重要です。

6.生活相談員の給料・年収

生活相談員の給料や年収は、勤務先や地域、経験によって異なりますが、厚生労働省が行った「令和5年賃金構造基本統計調査」では、平均年収が425.8万円となっています。

同調査によると、介護福祉士の平均年収が371.4万円となっており、夜勤の必要がない生活相談員のほうが給料は高い傾向にあります。

場合によっては、利用者さんの利用率(稼働率)によって手当を出す事業所もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

7.生活相談員のやりがい

利用者さんと深く関わりながら、さまざまな相談業務をこなす生活相談員は、やりがいの大きな職業です。

ここでは、筆者の経験をもとにしながら、生活相談員のやりがいを具体的に紹介します。

利用者さんの笑顔と感謝

生活相談員が大きな喜びを感じるのは、利用者さんの笑顔と感謝の言葉を受け取る瞬間です。

介護サービスの調整や日常生活のサポートを通じて、快適に生活できるように手助けできた際、「ありがとう」という言葉をいただいたり、満足そうな笑顔が見られたりすることは少なくありません。そんなときは、生活相談員としての役割が実感でき、大きな達成感が得られるでしょう。

そうした小さな成功体験の積み重ねは、仕事に対するモチベーションにもなります。

社会貢献に対する実感

生活相談員の仕事は、「支援が必要な人をサポートする」という社会的意義が大きいものです。自分の働きかけによって、他者の人生がよくなる瞬間に立ち会えるのは、生活相談員ならではのやりがいといえるでしょう。

また、生活相談員は、地域社会における「つなぎ役」としての役割も担っています。地域の福祉資源やサービスを結びつけ、利用者さんが必要な支援を受けられるよう調整することで、地域全体の福祉向上に貢献する。そうした活動も、大きなやりがいにつながります。

昇給とキャリアパス

生活相談員のキャリアパスには多くの選択肢があり、昇給の機会も十分にあります。経験を積むことで管理職などに昇進した際には、年収が向上するだけでなく、大きな責任とやりがいも感じられるはずです。

特に、社会福祉士や介護支援専門員などの資格を取得している場合は、専門知識やスキルを生かしてキャリアアップすることが可能です。キャリアアップすると相談業務だけでなく、福祉サービスの質を高める役割も担えるため、より長期的なキャリアを構築できるでしょう。

8.生活相談員に向いている人

生活相談員は、多くの人と接する仕事のため、向き不向きが分かれることもあります。ここでは、生活相談員に向いている人の特徴を紹介します。

人と接するのが好きな人

くり返しになりますが、生活相談員は利用者さんやその家族、他の医療・福祉関係者など、さまざまな人と接する職業です。また、利用者さんが抱える悩みや不安に寄り添い、適切な支援を提供するには、良好な人間関係を築く必要があります。そのため、人と接するのが好きなことや、相手の話に耳を傾けて共感できることは、生活相談員にとって不可欠な資質といえます。

利用者さんとコミュニケーションを取る際は、話すスピードに配慮したり、ジェスチャーや筆談を使ったりすることもあり、そうした場面では相手の立場に立って話を聞き、理解しようとする姿勢が求められます。相手が安心して話せる環境をつくれる人は、生活相談員に向いているでしょう。

協調性がある人

利用者さんに最適なケアを提供するには、施設内でのチームワークが重要です。それを踏まえるなら、ほかのスタッフや関係機関と連携できる協調性も、生活相談員にとって大事な要素といえます。

忍耐強く、柔軟な対応ができる人

生活相談員の仕事は一筋縄ではいかないことも多く、さまざまな課題や困難を乗り越える必要があります。利用者さんの要望に対してすぐに解決策が見つからないことや、予期せぬトラブル・クレームが発生することもあるでしょう。そのような場面で必要なのが、忍耐強さと柔軟な対応力です。

利用者さんや家族のなかには、コミュニケーションが難しい方や感情の起伏が激しい方もいるため、「事業所の窓口」の役割を担う生活相談員には、さまざまな状況に対して冷静に対応できる能力が必要とされます。

計画通りに進まない状況でも、焦らずに最適な方法を検討できる人は、利用者さんや家族からの信頼を得やすいでしょう。

社会貢献に興味がある人

生活相談員は、社会的に支援が必要な人をサポートし、よりよい生活を送れるように支援する役割を担います。そのため、社会貢献に対する強い関心や意欲を持っている人も、生活相談員に向いているでしょう。

まとめ

生活相談員は、高齢者や障害者などの生活を支える役割を担っており、やりがいや魅力が大きい職種です。仕事内容は多岐にわたり、利用者さんや家族とのコミュニケーション、生活支援の調整、関係機関との連携などが主な役割となります。

生活相談員になるためには、特定の資格やスキルが必要になりますが、取得しておけば今後のキャリアアップに役立つはずです。興味のある人はこの記事を参考にして、ぜひ挑戦してみてください。

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渡口将生(Masaki Toguchi)

介護福祉士・ケアマネジャー

20歳で介護福祉士の資格を取得後、施設の介護士や訪問介護のヘルパーとして従事。その後、介護資格取得のスクール講師を経験し、3つの事業所で管理者を務める。現事業所で相談員を経験後、ケアマネジャーとして勤務する。

セミナー講師やライターとしても活動しており、主に介護・医療メディアの執筆や講義を行っている。

渡口将生の執筆・監修記事

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