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仕事・スキル 介護士の常識 2022/04/26

医療ソーシャルワーカー(msw)とは?仕事内容・必要な資格・給与事情

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何らかの病気や障がいによって、日常生活に支障をきたす方を対象に、あらゆる社会福祉支援を提供する専門職が「ソーシャルワーカー」です。ソーシャルワーカーは主に介護業界で活躍する職種であり、社会福祉士・精神保健福祉士が代表的な資格として挙げられます。

そして、医療業界において活躍するソーシャルワーカーを「医療ソーシャルワーカー(msw)」といいます。当記事では、医療ソーシャルワーカーの基礎知識から仕事内容、医療ソーシャルワーカーになるための方法、給与事情について徹底的に解説します。身につけた知識を活用してキャリアチェンジを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

1.医療ソーシャルワーカー(MSW)とは?

医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)とは、病院・保健所などの保健医療分野で働くソーシャルワーカーのことです。

一般的なソーシャルワーカーは、国や市町村が実施する相談支援事業所や高齢者施設・児童相談所などあらゆる機関で働くことが一般的ですが、医療ソーシャルワーカーの勤務先は医療機関に限定されています。

医療ソーシャルワーカーは医療機関に常駐し、患者さんやその家族が抱えるさまざまな問題の相談対応・サポートが主な業務です。

(出典:JASWHS|公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会「医療ソーシャルワーカーについて」

医療ソーシャルワーカーと似ている職種との違い

医療ソーシャルワーカーのように、病気や障がいを抱えた方の経済的・精神的・社会的な悩みの軽減・解決を支援する職種には、ほかにも「社会福祉士」「ケアマネジャー」「生活相談員」が挙げられます。では、各職種とどのように違うのでしょうか。下記は、各職種と役割を簡単に示した表です。

職種 役割
医療ソーシャルワーカー 医療機関に常駐して患者さんやその家族が抱えるさまざまな問題の相談対応・サポートを行う
社会福祉士 相談援助を通じてハンディキャップを抱えた方の相談を受け、各関係機関と連携して必要な福祉サービス・支援を提案する
ケアマネジャー 高齢者や要支援者・要介護者からの相談を受け、自立した日常生活を送るための必要な支援の提供・支援体制の構築を行う
生活相談員 介護福祉施設の利用者やその家族からの相談を受け、施設や地域、コミュニティとの連携・調整を行う

上記に挙げている医療ソーシャルワーカー以外の職種は、すべて「ソーシャルワーカー」ともいわれる資格にあたります。ソーシャルワーカーは主に介護現場で活躍するため、支援内容の傾向も大きく異なるでしょう。高齢化が進む近年では、安心して日常生活を営むためにも医療面での支援を必要とする方が増加しており、今後はさらに医療ソーシャルワーカーの需要が高まると予測されています。

2.医療ソーシャルワーカーの仕事内容

医療ソーシャルワーカーの具体的な仕事内容は、下記の通りです。

〇経済的問題の解決、調整援助
患者さんの中には、医療機関を利用することによって生活費や入院費などに関する不安が生じるという方も少なくありません。医療ソーシャルワーカーはこのような経済的問題の解決に向けて、社会福祉サービスとの連携・調整を行い、適切に活用できる各支援制度の提案を行います。

〇療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援護
療養中の患者さんは、「育児や仕事はどうすればよいのかわからない」「病気の告知を受けてから毎日が不安・心配」と感じている方も多くいます。医療ソーシャルワーカーは、このような不安を抱えた患者さんに対し、各問題に応じた必要な援助を提供します。また、患者さんの死亡による家族の精神的苦痛を軽減させることも医療ソーシャルワーカーの重要な役割です。

〇受診・受療援助
医療ソーシャルワーカーは、患者さんやその家族に対して受診・受療援助を行います。具体的には、「主治医から病気のことについて説明を受けたが、知りたいことを質問できなかった」「母親の介護があるため今すぐの入院治療は困難」といった患者さんの悩みを情報として収集し、最終的に医師・看護師へ提供します。患者さんの状況に適切な医療の受け方や利用すべき福祉サービスがわかるヒントとなるため、受診・受療援助も医療ソーシャルワーカーの重要な役割です。

〇退院(社会復帰)援助
医療ソーシャルワーカーは、医師や看護師をはじめとした院内スタッフと調整しながら、患者さんの退院時期や活用可能な社会資源などのあらゆる情報を確認し、退院援助・退院支援を行います。患者さんが自宅に戻る場合は、自宅での生活環境や状態を把握したうえで福祉用具業者と連携し、必要な設備や生活スタイルの提案を行うことも重要な業務です。また、社会復帰を希望する患者さんに対しては、患者さんの職場や学校と調整するなどして円滑な社会復帰を支援します。

〇地域活動
患者さんの細かなニーズに適したサービスが地域で提供されるよう、また地域の保健医療福祉システムが強化するよう、各関係機関と連携しながら地域づくりを進めることも、医療ソーシャルワーカーの大切な仕事です。具体的には、地域のボランティア団体の育成や支援、地域の理解が深まる情報提供などが挙げられます。

(出典:厚生労働省「○医療ソーシャルワーカー業務指針普及のための協力依頼について」
(出典:JASWHS|公益社団法人 日本医療ソーシャルワーカー協会「医療ソーシャルワーカーの業務内容」

3.医療ソーシャルワーカーになるには?

「医療ソーシャルワーカー」という名称の資格はありません。しかし、医療ソーシャルワーカーを募集している多くの求人では、応募要件として業務に関連する国家資格の取得が求められている傾向です。特に医療ソーシャルワーカーは健康面にもかかわる支援を提供するため、質の高い支援提供に必要なスキルも多く問われます。

ここからは、医療ソーシャルワーカーに求められやすい代表的な資格を紹介します。

(出典:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「医療ソーシャルワーカー」

医療ソーシャルワーカーに必要な資格

医療ソーシャルワーカーとして活躍するために保有しておきたい資格は、「社会福祉士」「精神保健福祉士」の2つです。いずれも、ソーシャルワーカーの代表的な資格でもあります。

〇社会福祉士
社会福祉士とは、日常生活に何らかの支障が生じている「身体面または精神面での障がいを抱えた方」からの福祉に関する相談内容に応じて、指導や助言を行ったり適切な福祉サービスを提供したりする職種です。社会福祉士になるためのルートには、いくつかあります。

福祉系大学等ルート 福祉系大学などで指定科目を修了し、卒業する
短期養成施設ルート 福祉系大学などで基礎科目を修了・卒業後、短期養成施設で6か月以上修学する
一般養成施設ルート 一般大学などを卒業、もしくは相談援助業務に4年以上従事したあと、一般養成施設で1年以上修学する

上記のルートを経ることで、社会福祉士国家試験の受験資格を得られます。社会福祉士の資格を取得するためには、社会福祉士国家試験に合格したのち、登録する必要があります。なお、2021年2月に行われた社会福祉士国家試験の合格率は29.3%と、難易度がやや高く狭き門となるため試験対策は必須といえるでしょう。

(出典:厚生労働省「社会福祉士について」
(出典:厚生労働省「第33回社会福祉士国家試験合格発表」

社会福祉士とは|試験の難易度から資格の取得方法まで

〇精神保健福祉士
精神保健福祉士とは、精神科病棟において精神障がい者の在宅復帰・社会復帰に関する相談支援や、日常生活に適応するための必要な訓練・援助を行う職種です。精神保健福祉士も、ルートがいくつか存在します。

福祉系大学等ルート 福祉系大学で指定科目または基礎科目を修了し、卒業する
短期大学等ルート
(指定科目)
短期大学・専門学校で指定科目を修了・卒業後、相談援助業務に1~2年以上従事する
短期大学等ルート
(基礎科目)
短期大学・専門学校で指定科目を修了・卒業後、相談援助業務に1~2年以上従事し、短期養成施設で6か月以上就学する
一般養成施設ルート 一般大学などを卒業、もしくは相談援助業務に4年以上従事したあと、一般養成施設で1年以上修学する

なお、2021年2月に行われた精神保健福祉士国家試験の合格率は64.2%と、社会福祉士国家試験よりも高いことが特徴です。ポイントを押さえた試験勉強をきちんと行えば、合格はしやすいといえるでしょう。

(出典:厚生労働省「精神保健福祉士について」
(出典:厚生労働省「第23回精神保健福祉士国家試験合格発表」

精神保健福祉士(PSW)とは?取得メリット・合格率・試験概要

医療ソーシャルワーカーに求められるスキル

医療ソーシャルワーカーに求められるスキルは、下記の通りです。

・社会福祉関連の専門知識
・コミュニケーション能力
・リーダーシップ

医療ソーシャルワーカーとして活躍する以上、社会福祉における専門的な知識を有していることは欠かせません。そのため、社会福祉士や精神保健福祉士の資格が必要となります。

また、医療ソーシャルワーカーは患者さんや家族の話を聞き、必要な機関と調整・連携をとる必要があります。患者さんが置かれている環境に寄り添い、かつ関係者に正確に状況を伝えるためには、コミュニケーション能力も欠かせません。

医療ソーシャルワーカーとして患者さんの問題解決のみならず、地域の環境づくりを進めるためには、自身が中心となりネットワークを構築したうえで周囲の協力を得る必要があります。そのため、コミュニケーション能力に加えてリーダーシップも必要です。

4.医療ソーシャルワーカーの給与・労働条件

厚生労働省が発表している就業者統計データによると、医療ソーシャルワーカーの平均年収は約398.8万円です。またハローワーク求人による統計データでは、月収約23.4万円でした。なお、これらの給与データは医療ソーシャルワーカーが属する主な職業分類(社会福祉の専門的職業)から算出されています。

また、医療ソーシャルワーカーの労働時間は全国平均165時間です。月20日出勤の場合、1日の勤務時間は約8時間と、残業のないごく標準的な労働時間であることがわかります。

地域の人々の相談業務が中心となるため、平日の昼間に働くことが多く夜勤はありません。しかし、場合によっては夜間や休日に開催されるグループワークに対応しなければならないことも覚えておきましょう。

(出典:職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag「医療ソーシャルワーカー」

まとめ

医療ソーシャルワーカーは、病院・保健所などの保健医療分野で働くソーシャルワーカーのことです。主な業務は、医療機関を利用する患者さんやその家族が抱えるさまざまな問題の相談対応・サポートであり、高齢化が進み医療面での支援も必要とする方が増加している近年、需要の高まりを見せている職業でもあります。あらゆるシーンで活躍できるため、大きなやりがいも感じられるでしょう。

医療ソーシャルワーカーという資格はありませんが、医療ソーシャルワーカーとして活躍するためには、「社会福祉士」「精神保健福祉士」といったソーシャルワーカーに分類される国家資格が求められます。そのほかにも、コミュニケーション能力やリーダーシップが必要となることも覚えておきましょう。

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※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています

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