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仕事・スキル 介護士の常識 2025/04/14

医療ソーシャルワーカーとは?仕事内容や活躍する場所・必要な資格などを解説

文/鈴木康峻(理学療法士) 3_0408.jpg

病気やけがで治療が必要になると、患者さんはさまざまな問題を抱えます。入院によって仕事ができずに収入がなくなったり、高額な医療費の支払いに困ったりという状況もその一例です。なかなか職場に復帰できないこともあるでしょう。

しかし、療養をきっかけに生じるさまざまな問題は、病気やけがの治療と並行して解決されなければなりません。そうした問題に対し、社会福祉の立場から解決策を提示し、調整する役割を担うのが「医療ソーシャルワーカー(MSW)」という職種です。

本記事では、医療ソーシャルワーカーを目指してみたいと思う方の参考となるように、医療ソーシャルワーカーの仕事内容や活躍する場所、必要な資格などを解説します。

1.医療ソーシャルワーカー(MSW)とは

医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)とは、主に保険医療機関に勤務し、社会福祉の立場から経済的・心理的・社会的問題の解決や調整、社会復帰の支援などを行う職種です。

前述したように、病気やけがで治療が必要になると、収入がなくなって治療費の支払いに問題を抱えたり、職場復帰が難しくなったりと、患者さん自身では解決できないさまざまな問題に直面します。こうした問題を解決することで、患者さんが安心して治療を受けられる環境を整え、早期の社会復帰を支援するのがMSWの役割です。

2.医療ソーシャルワーカー(MSW)の仕事内容

MSWの仕事は多岐にわたり、主に次のようなものがあります。

  • 療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
  • 退院調整
  • 社会復帰の援助
  • 受診・受療援助
  • 経済的問題の解決、調整援助
  • 地域活動(地域の社会資源を生かしたシステムづくり) など

以下では、詳しい仕事内容について紹介します。

療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助

MSWは、病気やけがの療養にあたって、患者さんや家族が抱える不安や課題の解決を支援します。主な支援内容は以下のとおりです。

  • 病気を告知されて不安になっている方への心理的な支援を行う。
  • 療養中の家事や育児、就労・就学などがスムーズに行えるように、利用できるサービスや制度などを紹介する。
  • 公的介護保険サービスなど、さまざまな社会資源を利用して在宅療養ができるように、関係事業者との連携を図る。
  • 療養によって生じる人間関係の問題(家庭内、患者さん同士、患者さんと医療従事者間など)の調整を援助する。
  • 患者さんの死によって生じる家族の精神的苦痛の軽減や、生活の再設計を援助する。

こうしたサポートにより、患者さんや家族が安心して療養に専念できる環境を整えます。

退院調整

院内の関係職種との連絡や調整をしながら、次のような内容の確認をします。

  • 退院時期
  • 在宅療養で利用可能なサービス
  • 在宅介護に必要な条件

なかには自宅退院が困難な方もいるため、転院先の医療機関や介護保険施設、入居施設などの選択肢を提示し、退院先を調整するのも退院援助業務の1つとなります。

社会復帰の援助

退院後の復職や復学などのニーズに対応できるように、社会復帰の援助も行います。

【復職に関する主な援助内容】

  • 体調や病状に応じて、短時間勤務や在宅勤務の導入についての相談や調整をする。
  • 業務内容や担当部署の変更についての相談や調整をする。
  • 体調不良や緊急時の対応方法についての相談をする。

【復学に関する主な援助内容】

  • 車椅子を使えるように、席の位置や移動方法に関する相談をする。
  • 薬の副作用の影響が予測される場合、休憩時間や試験時間に配慮する。
  • 友人関係や勉強の遅れなどに対する不安に配慮する。

復職や復学においては、当事者だけでなく、受け入れる側の不安を軽減するための支援も重要です。

受診・受療援助

けがや病気の治療を円滑に進めるため、以下のような援助を行います。

  • 生活や病状に応じた医療の受け方、医療機関などの情報を提供する。
  • 診断や治療の拒否によって受診・受療につながりにくい場合、課題の把握と解決に努める。
  • 医師の治療方針に不安がある場合、気持ちの理解に努めながら援助する。
  • 診療の参考になる情報を医師や看護師などに提供する。
  • 家庭環境(子どもが小さくて入院できないなど)によって入院が難しい場合の相談や援助を行う。

必要な医療が受けられないことで病状が悪化しないように、すみやかな対処が求められます。

経済的問題の解決、調整援助

療養生活を送るにあたっては、高額な医療費や生活費の支払いに不安を抱える方も少なくありません。患者さんが金銭的な助成を受けて不安を軽減できるように、次のような制度を紹介します。

  • 高額療養費制度
  • 難病医療費助成制度
  • 傷病手当金 など

経済的な問題によって、必要な医療が受けられないなどの問題が起こらないように、MSWはさまざまな制度を理解しておくことが大切です。制度の利用にあたり、申請方法をわかりやすく伝える力も求められます。

地域活動

地域の保健・医療・福祉のシステムづくりに参画し、次のような活動をします。

  • 関係機関や行政などと連携し、患者会や家族会の支援を行う。
  • 地域の保健・医療・福祉に関するボランティアの支援を行う。
  • 保健・医療・福祉サービスのネットワーク構築に努める。
  • 高齢者や精神に障害がある方などの在宅療養・社会参加を促進するため、地域住民に向けた講座や啓発イベントを開催する。

患者さんのニーズに合ったサービスを地域で提供するためには、さまざまな職種や関係機関、地域住民などの理解も欠かせません。

3.医療ソーシャルワーカー(MSW)が活躍する場所

MSWが活躍する場所には、医療機関や保健所などがあります。それぞれの活躍場所について、詳しく見ていきましょう。

医療機関

MSWの多くは、医療機関にある「医療福祉相談室」や「地域連携室」などの部署に勤務しています。ただし、勤務する病院や診療所によって規模や機能、患者さんのニーズなどが違ってくるため、MSWの役割も異なります。

以下は、医療機関の種別に応じたMSWの主な仕事内容と役割です。

医療機関の種別 仕事内容・役割
大学病院や総合病院 ・高度な治療によって生じる高額な医療費の助成制度の紹介、手続きの支援など
・介護保険制度や障害者手帳の申請などに関する支援
・他の職種・職員との連絡調整(多くの診療科があるため)
一般病院 ・急性期治療を終えた方の退院援助や、転棟・転院・施設入所などの調整、他院からの受け入れ調整など
・ベッドコントロールを円滑に行うための他職種(医事課や看護職員など)との連携
精神科病院 ・精神に障害がある方やその家族、他院などからの治療相談
・精神科医療の情報提供、退院援助
訪問診療クリニック ・退院後に在宅医療が必要になる方の受け入れ
・訪問診療サービスの調整
・在宅の介護保険サービス事業者(訪問看護、地域包括支援センター、ケアマネジャーなど)との連携

上の表に示したとおり、医療機関の種別によってMSWに求められる役割が異なります。どのような活動をしたいかによって、勤務する医療機関を選ぶとよいでしょう。

保健所

公的機関である保健所で、公務員として働くMSWもいます。主な仕事内容は次のとおりです。

  • 医療相談窓口における医療・福祉サービス利用の相談対応
  • 周辺の医療機関やサービス事業所との連携
  • 難病や感染症など、専門性の高い病気に関する相談
  • 周辺地域のMSWとのカンファレンス

保健所で働くMSWには、患者さんや家族への相談援助、地域の関係職種との連携など、幅広い活躍が期待されています。

4.医療ソーシャルワーカー(MSW)として働くための資格

MSWになるための資格は、特に定められていません。ただし、医療・介護・福祉の幅広い知識を求められるため、「社会福祉士」や「精神保健福祉士」などの国家資格者を採用の条件としている職場が多く見られます。

ここでは、それらの資格の概要と取得方法を解説していきます。

社会福祉士の資格を取得する

社会福祉士とは、心身の障害または環境上の理由で、日常生活に支障をきたしている方を支援する職種です。対象者の相談に乗って助言・指導を行ったり、医師や関係機関と連携してサポートしたりするのが主な役割となります。

社会福祉士の資格を取得するには、年に1回実施される国家試験に合格しなければなりません。試験を受けるまでのルートと条件は、以下のとおりです。

ルート 条件
福祉系大学等ルート 指定科目の履修+卒業
福祉系短期大学等ルート 指定科目の履修+卒業+相談援助実務を1~2年
短期養成施設等(6か月以上)ルート ・福祉系大学等で基礎科目の履修+卒業+短期養成施設等
・福祉系短期大学等で基礎科目の履修+卒業+相談援助実務を1~2年+短期養成施設等
・社会福祉主事養成機関を卒業+相談援助実務を2年+短期養成施設等
・特定の実務を4年+短期養成施設等
一般養成施設等(1年以上)ルート ・一般大学の卒業+一般養成施設等
・一般短期大学等の卒業+相談援助実務を1~2年+一般養成施設等
・相談援助実務を4年+一般養成施設等

(出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「社会福祉士国家試験」

国家試験は、例年2月上旬に実施されており、合格率の平均は29.5%となっています。

精神保健福祉士の資格を取得

精神保健福祉士とは、精神科病院やその他の医療施設で治療を受けている方や、社会復帰施設を利用している方を支援する職種です。具体的な支援内容は以下のとおりです。

  • 地域での相談支援の利用に関する相談
  • 社会復帰に向けたサポート
  • 精神に障害がある方の相談に乗り、助言や指導を行う
  • 日常生活に適応するための訓練や支援を行う

多様な福祉ニーズに対応する社会福祉士に対し、精神保健福祉士は精神障害に特化した支援を行います。

国家試験は社会福祉士と同様に年1回実施されます。精神保健福祉士の試験を受けるまでのルートと条件も見ていきましょう。

ルート 条件
保健福祉系大学等ルート 指定科目の履修+卒業
保健福祉系短期大学等ルート 指定科目の履修+卒業+相談援助実務を1~2年
短期養成施設等(6か月以上)ルート ・福祉系大学等で基礎科目の履修+卒業+短期養成施設等
・福祉系短期大学等で基礎科目の履修+卒業+相談援助実務を1~2年+短期養成施設等
・社会福祉士を取得+短期養成施設等
一般養成施設等(1年以上)ルート ・一般大学等を卒業+一般養成施設等
・一般短期大学等を卒業+相談援助実務を1~2年+一般養成施設等
・相談援助実務を4年+一般養成施設等

(出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験」

こちらも、例年2月上旬に国家試験が実施されており、合格率の平均は63.4%となっています。社会福祉士と比較すると合格率は高めです。

5.医療ソーシャルワーカー(MSW)のやりがい

業務内容が多岐にわたるMSWのやりがいには、どのようなものがあるのでしょうか。順番に見ていきましょう。

人の役に立っているという実感が得られる

MSWは、対象者の治療に参加するわけではありません。しかし、社会資源を活用し、対象者が安心して退院できるように調整することで、自身の仕事が「人の役に立っている」と実感できるでしょう。

さまざまな事例に触れて知識や価値観が広がる

さまざまな生活背景の方、さまざまな課題を抱えた方と接するなかで、日々新しい知識を得られます。対象者が持つ価値観はそれぞれに異なるため、多くの事例に触れるなかで、自身の価値観も広がり、成長を実感できるはずです。

達成感を得られる

困難なケースにおいて、多職種や関連事業者などと連携し、支援の方向性が決まったときは達成感を得られます。多くの人の助けを借りて、よりよい支援に結び付けられれば、さらに大きな達成感・やりがいにつながるでしょう。

6.医療ソーシャルワーカー(MSW)に向いている人

最後に、MSWに向いている人の特徴を紹介します。これからMSWとして働いてみたいと思う方は、自身の適性を知るための参考にしてください。

コミュニケーション力が高い人

MSWは、次に示すようなコミュニケーションスキルを持つ人に向いています。

  • 傾聴力:相手の悩みを丁寧に聞きとる能力
  • 洞察力:言葉にされていない潜在的な課題を察知する能力
  • 言語化能力:潜在的な課題をわかりやすい言葉で伝える能力
  • 提案力:適切な解決策や支援制度を提示する能力

たとえば「退院したい」という希望があっても、その先の金銭や人間関係の課題に、患者さん自身が気づいていない場合もあります。そのためMSWには、対象者のニーズを正確にとらえて言語化し、適切な支援を提供するスキルが不可欠です。

柔軟性のある対応ができる人

MSWには、以下のように柔軟性のある対応が求められます。

  • イレギュラーな状況への対応力:患者さんの退院が急に決まった場合などのスケジュール調整能力
  • 患者さんと医師の意見の相違を調整する能力:患者さんの意思を尊重しつつ、医師の診療方針にも配慮する能力
  • 他職種や関係者との調整能力:関係者に必要なタイミングで過不足なく情報を伝える能力

予測しない事態に対応したり、関係者と必要に応じて情報共有を行ったりと、常に柔軟に動く必要があります。

幅広い知識を学び続けられる人

MSWは、医療・介護・福祉についてのさまざまな制度を取り扱うため、幅広い知識を身につける必要があります。また、そうした制度は随時改正されるため、継続的に勉強しなければなりません。

知識や情報を常にアップデートし、意欲的に学習を続けられる人はMSWに向いているでしょう。

●関連記事:医療ソーシャルワーカーに向いているのはどんな人? 実際の仕事内容や必要なスキルを紹介

まとめ

MSWは、主に医療機関において、経済的・心理的・社会的問題を抱えたさまざまな方を支援する福祉の専門職です。

対象者が抱える問題は多岐にわたるため、MSWには幅広い知識や高いコミュニケーションスキル、イレギュラーな状況に対応できる柔軟性などが必要とされます。

「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の国家資格を取得していることが採用の条件になっている職場が多いため、これらの資格取得を目標にすることが、MSWとして活躍するための近道といえるでしょう。

MSWを目指したいと思っている方は、本記事の内容を参考に、ぜひ資格取得に挑戦してみてください。

●関連記事:
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