介護用ポータブルトイレの機能と特徴|種類・選び方・利用方法も
構成・文/介護のみらいラボ編集部
介護とトイレの問題は、切っても切れない関係にある話題です。高齢の両親を気遣い、和式便座を洋式便座にリフォームしたり、介護用ポータブルトイレの導入を検討したりする人もいるでしょう。介護用ポータブルトイレの導入は、介護者・被介護者の両者にとって望ましい状況を作るための有効な選択肢の一つです。
当記事では、介護用ポータブルトイレの機能と特徴を解説します。支援を必要とする人の同居家族・介護用ポータブルトイレの導入を検討している介護スタッフは、ぜひ参考にしてください。
介護用ポータブルトイレとは?
介護用ポータブルトイレとは、被介護者の寝室・ベッドの付近などに設置して、排泄できる環境を作るための特定福祉用具です。特定福祉用具とは、介護保険を利用して購入することが認められる福祉用具を指します。介護用ポータブルトイレは特定福祉用具にあたるため、要支援・要介護認定者の自宅に導入する場合、一定割合の介護保険給付を受けることが可能です。
介護用ポータブルトイレを導入するメリットは、大きく分けて2点あります。
- トイレまでの移動が難しい人の排泄の自立をサポートできる
- (介護者の)排泄介助の負担を軽減できる
足腰の衰えた人が自力でベッドから立ち上がり、廊下を歩いてトイレに行くことは、大変な行為です。移動介助を必要とする人の場合、何度も家族が起こされて、トイレまでの移動を支援する負担が発生します。介護用ポータブルトイレを導入すると両者の問題を解決でき、理想的な介護環境を整えることが可能です。
介護用ポータブルトイレの機能
介護用ポータブルトイレには、様々な機能を持つ商品が存在します。たとえば、介護用ポータブルトイレの機能は、以下の通りです。
●座面の高さ調整機能
被介護者一人ひとりの体格に合わせて、座面の高さを調整できる機能です。「膝に痛みがある場合は座面をやや高い位置に変更する」など、状態に応じた調整を行えます。
●ソフト便座機能
お尻が痩せている人や筋肉が萎縮している人のため、便座部分にソフトな素材を使用した介護用ポータブルトイレです。
●温水洗浄機能
温水洗浄機能は、ウォシュレットの要領で、お尻を洗う役割を果たします。温水洗浄機能付き介護用ポータブルトイレを使用すると、お尻を上手に拭くことが難しい人の肌トラブルを防ぐことも可能です。
●肘掛け機能
肘掛け付介護用ポータブルトイレは、肘掛け固定式・肘掛け跳ね上げ式に分類できます。肘掛け跳ね上げ式トイレは横移乗を行う際の動作を妨げにくく、スムーズな介助を助けることが可能です。
介護用ポータブルトイレの4つの種類
介護用ポータブルトイレを素材や形状によって分類すると、「プラスチック製標準型」「木製いす型」「金属製コモード型」「スチール製ベッドサイド設置型」に分けられます。それぞれの介護用ポータブルトイレの特徴とメリット・デメリットは、以下の通りです。
●プラスチック製標準型
プラスチック製標準型とは、本体・蓋・便座などが一体化した形状の介護用ポータブルトイレです。プラスチック製の介護用ポータブルトイレであるため、軽量で持ち運びしやすい特徴があります。
メリット | デメリット |
---|---|
・比較的、価格が安い ・掃除の手間がかかりにくい |
・軽量である分、安定性に欠ける商品も存在する |
●木製いす型
木製いす型とは、「家具調」とも呼ばれる介護用ポータブルトイレです。木製いす型はその名前の通り、木目調のいすを思わせる外観で、寝室の雰囲気を壊しにくい特徴を持ちます。
メリット | デメリット |
---|---|
・重量があるため、安定性が高い ・通常のいすとして使用できる商品も存在する |
・(プラスチック製標準型と比較し)掃除の手間がかかりやすい |
●金属製コモード型
金属製コモード型は、アルミなど金属素材から作られている介護用ポータブルトイレです。金属製コモード型には、座面の高さを調整しやすく、軽量で持ち運びしやすい特徴があります。
メリット | デメリット |
---|---|
・横移乗を行いやすい ・掃除の手間がかかりにくい |
・(木製いす型と比較し)寝室の雰囲気とマッチしにくい |
●スチール製ベッドサイド設置型
スチール製ベッドサイド設置型は、ベッドの脇に設置し、横移乗によって使用するタイプの介護用ポータブルトイレです。
メリット | デメリット |
---|---|
・横移乗用の手すりが付属する ・座面の高さを調整できる |
・キャスターが付属するものの、細かい位置調整は行いにくい |
いずれの種類の介護用ポータブルトイレも一長一短であるため、特徴を正しく把握した上で、適切な商品を選択しましょう。
介護用ポータブルトイレの選び方
「介護用ポータブルトイレ」と一口にいっても様々な種類の商品があるため、利便性や用途を考慮し、適切なものを選ぶことが大切です。以下では、介護用ポータブルトイレを選ぶ際に注目したいポイント2つを取り上げて、詳細を解説します。
●利用者の体格や状態に合わせて選ぶ
便座の高さや幅が利用者の体格に合わないと、介護用ポータブルトイレから立ち座りする際に、不便を感じることがあります。利用者の身体の状態に合わない商品を使用すると、転倒事故を招くことになりかねません。
また、被介護者の身体の状態は日々変化するため、定期的に商品を見直し、排泄介助方法を工夫することも大切です。著しく身体の状態が悪化した場合には、大人用おむつの使用も検討しましょう。
●利用環境に合わせて選ぶ
介護用ポータブルトイレを選ぶ際には、利用環境を考慮することも大切です。まずは介護用ポータブルトイレの設置場所を決めて、スペースに応じたサイズの商品を選択しましょう。排泄介助が必要な場合は介護者の動作スペースも考慮し、余裕を持ったサイズの商品を選択します。
介護用ポータブルトイレの利用方法と処理方法
介護用ポータブルトイレを適切に利用すると、被介護者の暮らしの質向上や介護者の負担軽減を図れます。反対に介護用ポータブルトイレの利用方法を誤ると、十分に効果を発揮できないばかりか転倒事故につながる危険性があるため、注意しましょう。
ここからは、介護用ポータブルトイレの適切な利用方法・処理方法を解説します。
利用方法
介護用ポータブルトイレは、防水マットや防水シーツの上に設置します。体の状態に応じた利用方法で活用しましょう。
●介助が不要な場合
自分自身で介護用ポータブルトイレに座ってもらい、脱衣した後、排泄してもらいます。排泄後はお尻を拭くもしくは温水洗浄機能によって洗い流して、ベッドへと戻らせましょう。
●介助が必要な場合
ベッドに浅く腰掛けさせた状態から身体を支えて立ち上がらせ、介護用ポータブルトイレまで移乗します。介護者が脱衣させた上で便座に座らせ、排泄を済ませてください。排泄後はお尻を丁寧に拭き、衣服を身につけさせた後、ベッドへと移動させます。
処理方法
介護用ポータブルトイレの使用後は極力毎回、便座の下のバケツを取り外してトイレに運び、排泄物を流します。バケツの内側はお風呂場のシャワーで洗うもしくはトイレ用ブラシと洗剤を使用し、磨き洗いを行ってください。磨き洗いの後は水ですすぎ、汚水をトイレに流します。
使用後の処理を負担に感じる場合には、以下のような商品を活用してもよいでしょう。
●ラップ式トイレ
ラップ式トイレとは、排泄物を自動的にラップで包み、密閉した状態にしてくれる商品です。ラップで包まれた排泄物は地域の分別ルールに従って、廃棄しましょう。
●バイオトイレ
バイオトイレは、微生物の力で排泄物を分解し、処理してくれる商品です。脱臭機能付きのバイオトイレを選択すると匂いが部屋に残りにくく、空気をきれいに維持できます。
●水洗トイレ
一般的な水洗トイレ同様、ボタンを押すことのみで排泄物を処理できる商品です。水洗トイレを設置するためには配管工事が必要であるため、様々な部屋に持ち運びし、利用したい人には不向きといえます。
まとめ
介護用ポータブルトイレには様々な種類があり、特徴が異なります。介護用ポータブルトイレを選ぶ際には利用者の心身の状態や設置場所に応じて、適切な商品を見極めることが大切です。
また、介護用ポータブルトイレを安全かつ適切に使用するためには、利用方法と処理方法を理解しておくことも重要となります。
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