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仕事・スキル 介護士の常識 2022/06/15

【作業療法士監修】排泄介助の正しい方法と手順―トイレ・おむつなど種類別に解説

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/安藤祐介 2.jpg

排泄介助(トイレ介助)は身体介護の基本であり、高齢者の尊厳にも関わる重要なケアです。排泄介助は高齢者の生活機能の維持・向上や、生活意欲にも大きく関わります。正しい手順とポイントを踏まえて、スムーズで安全な排泄介助を行いましょう。

当記事では、排泄介助の概要を述べた上で、排泄介助の種類別による正しい手順と、排泄介助を行う際の注意点について詳しく解説します。これから排泄介助に取り組む人は、ぜひ参考にしてください。

1.排泄介助とは?

排泄介助とは、排泄の行為や動作が難しい、または排泄機能に問題がある人を介助することです。トイレ誘導やおむつ替えなどを、高齢者一人ひとりの状況に合わせて行います。排泄介助は、高齢者の健康維持や感染症予防の点においても重要です。

排泄介助が必要になると介護量が増え、在宅生活の継続も難しくなります。排泄ケアは歩行介助や移乗介助なども含むため、介護に慣れていない人は難しく感じるでしょう。しかし、高齢者の日常生活動作能力の維持や、介護負担軽減のためには、適切な排泄ケアによる自立支援が欠かせません。排泄介助の重要性を理解し、正しい介助方法を習得しましょう。

(出典:厚生労働省「特別養護老人ホームにおける入所者の重度化に伴う効果的な排泄ケアのあり方に関する調査研究事業」

2.【種類別】排泄介助の方法・正しい手順

排泄方法には、トイレやおむつなどいくつかの種類があります。それぞれの排泄方法の特徴を踏まえた上で、利用者の身体状況や運動能力に合う手段を選択しましょう。

ここでは、厚生労働省の「介護キャリアアップ応援プログラム」をもとに、排泄介助における排泄方法の特徴と種類別による正しい手順を紹介します。

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

トイレ

自力で歩ける人はトイレを使用します。高齢者は足腰が弱いため、洋式トイレがおすすめです。

下記は、トイレの排泄介助方法です。

(1)利用者に手すりなどを握ってもらい、便座に背を向けた状態へと方向転換する

(2)姿勢を安定させたまま、ズボンと下着を下ろす

(3)便座に座る
排泄中、介助者は一旦トイレから出て待機し、排泄終了後に再びトイレへ入る。

(4)トイレットペーパーでお尻を拭き、排泄物を流す

(5)入室時と逆の流れで着衣して、移動する

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

車椅子を使用する場合は、入室前にトイレ内のスペースを確認しましょう。

ポータブルトイレ

ポータブルトイレとは、持ち運び可能な簡易便器です。トイレまでの移動が困難な人や、夜間の排泄回数が多い人に適しています。

下記は、ポータブルトイレの排泄介助方法です。

(1)利用者に手すりなどを掴んで立ち上がってもらい、ポータブルトイレに背を向けた状態へと方向転換する

(2)姿勢を安定させた状態で、ズボンと下着を下ろす

(3)便座に座り排泄後、トイレットペーパーでお尻を拭く

(4)手すりなどを握り立ち上がってもらい、着衣してベッドへ戻る

(5)バケツを取り外して排泄物をトイレに流した後、バケツを洗浄して元に戻す

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

ポータブルトイレに排泄物が付着することもあるため、定期的にトイレ本体の掃除も行いましょう。

●関連記事:介護用ポータブルトイレの機能と特徴|種類・選び方・利用方法も

便器・尿器

便器・尿器とは、ベッドに寝た状態で、尿や便を受ける容器です。移動は困難でも、体位を変えることができる人に向いています。尿器には男性用と女性用があるため、注意してください。

下記は、尿器・便器を使用した際の排泄介助の方法です。

・尿器の排泄介助方法

(1)利用者のズボンと下着を下ろし、男性は仰向けか横向き、女性は仰向けになり、尿器の受け口を陰部にあてる

(2)排尿終了後は介助者が尿器を受け取り、利用者の陰部を拭いて着衣する

(3)排泄物をトイレへ流し、尿器を清潔にする

・便器の排泄介助方法

(1)利用者の上半身を上げて膝を曲げ、足底で踏ん張れるように、座位に近い体勢を作る

(2)利用者の腰の下に防水シーツを敷き、肛門に便器をあてる

(3)排便終了後、お尻を拭き取る

(4)排泄物をトイレへ流し、便器を洗浄する

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

女性の場合は、トイレットペーパーをお尻側に敷く、股間に挟むなどすると、尿の飛散を防ぐことができます。

おむつ

尿意や便意がなく、立位姿勢をとるのが困難な場合はおむつを使用します。大人用おむつには、テープタイプとパンツタイプがあるため、利用者に適した商品を選んでください。

下記は、テープタイプのおむつの排泄介助方法です。

(1)おむつを交換する旨を伝えて同意をもらった後、利用者のズボンを膝まで下ろし、おむつを開く

(2)陰部を拭き取った後横向きになってもらい、パッドを取り出す

(3)古いおむつを丸めて新しいおむつをお尻の下に敷き、新しいパッドをおむつのギャザーの内側に入れる

(4)反対側を向いてもらい、古いおむつを取る

(5)仰向けに戻し、尿取りパッドを陰部にあてておむつのテープをとめ、ズボンを上げて衣服を整える

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

おむつはしわがないように伸ばし、体にぴったりとフィットさせることが漏れを防ぐコツです。おむつ交換はこまめに行い、清潔を保ちましょう。

3.排泄介助を行う際の主な注意点4つ

排泄介助では、排泄を失敗した際の対応や、おむつ交換が課題となっています。排泄介助に心理的負担を感じる介護職もおり、特に失禁時の声かけやシーツ・衣類交換は難しい介助の1つです。

しかし、いくつかのポイントを押さえることで、介助者と利用者、双方のストレスを軽減することができます。ここでは、排泄介助を行う際の注意点を4つ紹介します。

(出典:厚生労働省「平成29年度介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業 排泄介護の各プロセスにおける効率的な支援を実現するための介護技術開発に関する検討 」

利用者の自尊心を大切にする

利用者の多くは排泄を介助されることに抵抗を感じており、情けなさや恥ずかしさを感じています。排泄に失敗したときはなるべく時間をかけずに処理を行い、責めるような発言は控えます。排泄に成功した際は、一緒に喜ぶことも大切です。

また、失禁や排泄の回数が増えて介助が大変になった場合でも、立位姿勢がとれたり、車椅子移動可能な状態であったりすれば、可能な限りトイレの使用を続けましょう。介助者の都合だけでおむつの使用を始めると、利用者の自尊心を傷つけるだけでなく、運動量や筋力の低下にもつながります。

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

●関連記事:現役介護士が語る 私が許せなかった排泄介助とその改善

安全面に配慮し環境を整備する

トイレでの転倒・転落を防ぐため、排泄介助では安全面に注意しましょう。トイレ内では、必ず手すりや介助者の身体に掴まりながら動いてもらいます。介助の動作に合わせて声かけを行い、利用者と意思疎通を図ることも大切です。

トイレ環境を整えることは安全を確保するだけでなく、本人が自力で排泄行為を行うためにも重要です。手すりや踏み台など、利用者一人ひとりに適した福祉用具の導入を検討しましょう。

排泄介助では、カーテンを利用する、下半身にバスタオルをかけるなど、プライバシー保護に努めることも大切です。ほかの利用者が集まる場所でトイレへ誘う際は、周囲に気づかれないように伝えるとよいでしょう。

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

利用者の排泄のパターンを掴む

利用者の排泄パターンを掴むと、適切なタイミングでトイレ誘導ができるため、排泄介助をスムーズに進めることが可能です。食事前や入浴前など決まった時間にトイレへ行くことで、排泄リズムも安定します。高齢者の健康管理のためにも、排泄記録をつけるとよいでしょう。

排泄の失敗が続くと、排泄を減らすために水分を摂らなくなる人もいます。しかし、水分保持能力が低下している高齢者が、水分摂取を控えることは危険です。水分不足は脱水症や便秘の原因となるほか、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まるため、積極的に水分を摂取してもらいましょう。

(出典:厚生労働省「介護キャリアアップ応援プログラム」

観察を適切に行い異常の発見に努める

排泄回数や排泄物の状態は、利用者の健康状態を反映しているため、日頃から確認することが大切です。排泄物の状態観察により、病気の早期発見や生活習慣の改善につなげることができます。

下記のような状態である場合は、注意してください。

・尿に刺激臭や、変なにおいがする
・尿が濁っている
・尿や便に血が混ざっている
・尿が泡立っている
・尿の排泄回数が極端に多いもしくは少ない
・便秘、水様便、下痢、異物混入など、便の状態がいつもと異なる
・便の色が黒っぽい、白っぽいなど、いつもと異なる
・排泄時に痛みや不快感がある
・排泄時に普段より時間がかかる

普段と異なる状態を発見した場合は、医師や看護師に連絡し、スタッフ間でも情報共有を行いましょう。

まとめ

排泄介助とは、排泄が困難な人をサポートする介助です。排泄介助の種類には、トイレ、ポータブルトイレ、便器・尿器、おむつがあるため、利用者の身体状況に合わせて適切な手段を選んでください。

排泄介助を行う際は、利用者の自尊心を尊重し、安全面に配慮することが大切です。また、排泄パターンを掴むことで介助がスムーズに進むでしょう。

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※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

俗に3大ケアと言われる食事・入浴・排泄ケアのなかで、食事や入浴はこれまでの人生のなかで誰かと一緒に行う機会も多くあったと思いますが、排泄だけは常に1人きり行ってきた方がほとんどなのではないでしょうか。

排泄介助の難しさは、パッド類の交換や移乗・下衣の着脱介助だけではなく、こういった1人で行ってきたことを誰かと共に行う必要が出てきたことへの強い抵抗感ややるせなさ、置かれている状況に葛藤し受け入れる難しさなど、ご本人の心理面への配慮も挙げられると思います。

私たち介護に携わる職員は「どう介助すればいいか?」「どうすれば漏れないか?」などに目がいきがちになる瞬間もあるかもしれませんが、記事にあるように羞恥心を気にかけた排泄環境づくりや尊厳を大切にする声かけなど、利用者さん側に立てるような介護を改めて心がけていければと思います。

きっとその意識が利用者さんの安心感や心身のリラックスにつながり、排泄ケアにも好ましい影響を及ぼしていくのではないでしょうか。

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安藤祐介(Yusuke Ando)

作業療法士

2007年健康科学大学を卒業。作業療法士免許を取得し、介護老人保健施設ケアセンターゆうゆうに入職。施設内では認知症専門フロアで暮らす利用者47名の生活リハビリを担当し、施設外では介護に関する講演・執筆・動画配信を行っている。

安藤祐介の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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