ユニット型特養とは?従来型との違い、働くメリット・デメリット、向いている人の特徴を紹介
編集/中西紗羅(介護福祉士)
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)には従来型とユニット型の2種類があります。
ユニット型特別養護老人ホーム(ユニット型特養)とは、入居者10人単位のユニットごとに介護サービスを提供する施設です。従来の特別養護老人ホームよりも、入居者一人ひとりに合った介護ケアが求められるため、介護職としてもやりがいを感じられる職場といえます。今回は、ユニット型特養の概要や従来型特養との違い、ユニット型特養で働くメリット・デメリット、ユニット型特養で働くことに向いている人について、それぞれ紹介します。
- 目次
- 1.ユニット型特養とは
- ユニット型特養が新設された目的
- 2.従来型特養とユニット型特養の違い
- 従来型特養の特徴
- ユニット型特養の特徴
- 入居条件はどちらも同じ
- 職員の配置に違いがある
- 3.ユニット型特養で働くメリット
- 入居者との関係性を構築しやすい
- 一人ひとりに合わせたケアを実施できる
- 幅広い介護スキルを身に付けられる
- 設備が新しい
- 4.ユニット型特養で働くデメリット
- 高い学習意欲が求められる
- 時間帯によっては業務負担が大きい
- 5.ユニット型特養で働くのに向いている人の特徴
- ユニットケアを実践したい
- コミュニケーション能力に自信がある
- マルチタスクが得意である
- 今よりも高い介護スキルを習得したい
- まとめ:一人ひとりに合わせたケアを実践できるのがユニット型特養で働く魅力
1.ユニット型特養とは

ユニット型特養とは、従来の特別養護老人ホームよりも少人数の入居者を介護するのに適した施設のことです。概ね10人以下の少人数で生活単位(ユニット(unit))を構成し、職員がユニット単位で入居者へ介護サービスを提供します。ユニット型特養は比較的新しいサービス形態であり、新型特養と呼ばれることもあります。
入居者1人に1つの個室(準個室)が提供され、個室を出ると共同生活室(リビングスペース)という共用部分が設置されているのが特徴です。共同生活室にはキッチン、食堂、リビングなどがあり、入居者同士で食事や歓談を楽しめます。そのため、従来よりも入居者同士が交流しやすく、居室自体は個室のために、プライバシーや衛生面も確保されています。
ユニット型特養が新設された目的
ユニット型特養が新設された主な目的は、「ユニットケア」と呼ばれる介護手法を実現することです。ユニットケアとは、入居者一人ひとりの個性や生活リズムに合わせて、その人らしい暮らしを継続できるように支援することです。
従来型特養のほとんどは多床室タイプであり、入居者間のプライバシーが損なわれやすい特徴があります。また、他の入居者の音や臭いなどもストレス要因になり、長期的な入所に疲れてしまうケースも存在します。
ユニット型特養であれば、プライバシーが守られた個室で生活を送ることが可能です。個室のすぐ近くには共同生活室も用意されているため、他の入居者とも交流できるのが魅力です。
2.従来型特養とユニット型特養の違い

従来型特養とユニット型特養、それぞれの特徴と違いについて解説します。
従来型特養の特徴
- 建物内に複数の部屋があり、1つの部屋には2人〜4人の入居者が生活する。
- 一つの居室(ベッド)はカーテンやパーティションで仕切られている。
- 食堂、トイレ、浴室などは共用で、毎回の食事は入居者全員で囲む。
- 入居者同士での交流はできるが、食事やレクリエーションなどの特定の機会に偏る。
- 利用料は、ユニット型特養と比べると安い。
- 大勢の入居者を、大勢の職員が介護するスタイルである。
ユニット型特養の特徴
- 概ね10人以下のユニットが構成され、一人ひとりが個室を利用できる。
- 個室間は壁で区切られており、個室内には窓が必ず設置されている。
- 個室を出るとリビングなどの共同生活スペースがあり、キッチンや食堂が併設されている。
- リビングや交流スペースなど共同生活スペースを活用することで、入居者同士の交流も盛んになる。
- 従来型特養と比べて、職員の手厚い人員配置が適用される。
- 利用料は、従来型特養と比べると高い。
入居条件はどちらも同じ
従来型・ユニット型は、どちらも「特別養護老人ホーム」として運営されており、入居条件は以下のとおりです。
- 原則65歳以上の高齢者で要介護3から要介護5までの要介護者
- 居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があることによる要介護1又は2の方の特例的な施設への入所が認められる者
また、要介護1から要介護2の方における特定の要件は下記になります。
① 認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
② 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
③ 家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること
④ 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること
(参照:厚生労働省|指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について「2.入所判定対象者の選定について」)
職員の配置に違いがある
介護職員・看護職員の人員配置の基準は常勤換算で3:1以上の介護職員、看護職員の配置です。従来型特養とユニット型特養、どちらの施設にも適応されています。
なお、ユニット型特養では、上記の人員基準に加えて、下記の人員基準を満たす必要があります。
- 昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員又は看護職員
- 夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置
- ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
3.ユニット型特養で働くメリット
介護職として、ユニット型特養で働くメリットを解説します。

入居者との関係性を構築しやすい
ユニット型特養では、入居者が10人程度のユニットごとに固定の職員が担当します。従来型のような「大勢の職員で、大勢の入居者を介護する」体制よりも、入居者一人ひとりに費やせる時間が多くなり、関係性の構築がしやすくなるのが特徴です。また、入居者の家族との距離も縮まりやすく、信頼関係を築き上げながら仕事がしたい場合には最適といえます。
一人ひとりに合わせたケアを実施できる
ユニット型特養の勤務では、入居者と深く関われるため、入居者の生活リズムや、介護ニーズに合わせたケアを考え、一人ひとりに合わせた介護ケアを実施しやすくなります。入居者やその家族から直接感謝を伝えられることもあり、仕事のやりがいを感じる場面も多くあるでしょう。
幅広い介護スキルを身に付けられる
介護スキルを幅広く身に付けられることも、ユニット型特養で働くメリットの1つです。特養には、要介護度の高いさまざまな入居者がいます。一人ひとりの入居者が求めていることを考え、実践していくことで、おのずと幅広い介護スキルの習得に繋がります。また、観察力や行動力、コミュニケーション力などの向上も期待できるでしょう。
設備が新しい
ユニット型特養は、2000年代以降に新設された施設(建物)が多い傾向にあります。そのため、働く環境としても比較的新しく、綺麗な職場で勤務できるといえます。入居者一人ひとりに個室が設けられているため、個人のプライバシーに配慮しやすいことも特徴です。
4.ユニット型特養で働くデメリット
ユニット型で働くことはメリットがある一方で、デメリットも存在します。

高い学習意欲が求められる
入居者一人ひとりへの個別対応が求められるため、職員にも高い能力やスキルが必要です。入居者がどのようなケアを求めているのか、その入居者のことを一番理解している、そのユニットを担当している職員自身がしっかりと汲み取る必要があります。
また、入居者のケアで困っても先輩や上司にも頻繁に確認できないこともあるため、常に自主的な学習意欲が求められます。向上心を持ち、高い能力やスキルを身に付けることが、ユニット型特養で働く心得といえます。
時間帯によっては業務負担が大きい
ユニット型特養では、昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員又は看護職員、夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置する基準が設けられています。そのため、より職員数が少なくなる夜間帯では、職員1人あたりの業務負担が大きくなることも考えられます。
夜勤のワンオペや、マルチタスクが求められることもあり、業務量が負担と感じることも少なくはないでしょう。
5.ユニット型特養で働くのに向いている人の特徴

ユニット型特養で働くのに向いている人の特徴を解説します。
ユニットケアを実践したい
ユニット型特養は、ユニットケアを実践したい人には、最適な職場といえます。ユニットケアを実践するには、入居者の生い立ちや経歴、これまでの生活様式、趣味・嗜好など、これまで歩んできた人生観を理解することが大切です。入居者一人ひとりとの関係性を構築し、寄り添ったケアを提供したい場合には、ユニット型特養で働くのに向いているでしょう。
コミュニケーション能力に自信がある
ユニットケアを実践するには、入居者や、その家族との会話、コミュニケーションが欠かせません。コミュニケーションは、ただ会話をするのではなく、相手のニーズを引き出す力や、相手との信頼関係を構築する力などが求められます。
ユニット型特養の入居者のなかには、話好きの方もいれば、認知症で会話がなかなか成り立たない方もいます。そのため、一人ひとりに合わせたコミュニケーションが実践できる自信がある人は、ユニット型特養でも活躍できるでしょう。
マルチタスクが得意である
マルチタスクが得意な人は、ユニット型特養で働くのに向いているでしょう。ユニット型特養では、入居者の介護ケアはもちろん、入居者に関する情報収集や家族との連絡、職員間での情報共有、記録記入など、必要な業務は多岐にわたります。そのため、業務のなかから優先順位をつけて、マルチタスクをこなすことが得意な人は、ユニット型特養で働くのに適しています。
今よりも高い介護スキルを習得したい
入居者一人ひとりに合わせた介護ケアを提供するには、介護の専門知識から、介護技術、観察力、コミュニケーションスキルなど、幅広いスキルが求められます。ユニット型特養の入居者は年齢や要介護度が異なります。また、なかには認知症の入居者もいるため、入居者の状態や疾患特性に合わせた対応なども必要です。そのため、さらに介護スキルを高めたい場合には、一つの選択肢として最適な職場環境といえるでしょう。
まとめ:一人ひとりに合わせたケアを実践できるのがユニット型特養で働く魅力

ユニット型特養では、入居者との関係性を構築しやすいのが特徴です。そして、一人ひとりに合わせた介護ケアを実践できることが、ユニット型特養で働くことのメリットの一つといえます。一方で、夜勤時の業務負担が大きかったり、常に自主的に学ぶ姿勢が求められたりと、ハードな一面もあります。
「ユニットケアを実践したい」「マルチタスクやコミュニケーション能力に自信がある」「さらなる介護スキルを身に付けたい」という方は、ユニット型特養での仕事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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