「ここなら通えるかもしれない」勇気の一歩から訪れた変化と「Bouquet(ブーケット)」を支えるスタッフ教育
取材・文/高橋みゆき 編集/イージーゴー岐阜県岐阜市にある「Bouquet(ブーケット)」は、代表の野原良平氏が祖母の介護をきっかけに立ち上げた美容特化型デイサービスです。一般的なデイサービスに抱くイメージとはかけ離れたおしゃれなカフェのような施設の中では、美容やアートを楽しむ利用者の姿が見られます。
笑顔で、あるいは真剣な表情でプログラムに取り組める、その秘訣はどこにあるのでしょうか。後編では、同施設に通う利用者の声や、人気の背景にある運営の工夫、施設を支えるスタッフへの教育についてお伝えします。
1.利用者さまは年齢や介護度も幅広い
ーーご利用者さまにはどのような方が多いですか?
当施設のご利用者さまは、年齢も介護度も幅広く、本当にさまざまな方がいらっしゃいます。基本的には、65歳以上の女性が対象です。介護度は限定しておらず、要支援1から要介護5の方もご利用いただけます。
プログラムの内容や実施時間は介護度やご利用者さまの状態に合わせて変更可能です。介護度が高い方にも、負担なく楽しめるよう工夫しています。
2.利用者さまがリラックスして楽しめるための工夫
ーーご利用者さまがリラックスして楽しめるように、どのような工夫をされていますか?
当施設は地域密着型事業所のため、一日の利用者数はおおよそ30人と定められていますが、さらに少ない10名を一日の受け入れ限度としています。
30名まで受け入れてしまうと、どうしても特定のグループが形成されてしまい、新しく利用される方の心理的ハードルになってしまうことがあるためです。また、一日の利用者数を少数に絞ることにより、それぞれが自分なりに楽しめるプログラムを見つけ、広々とした空間の中、スタッフの手厚い支援を受けながら集中して作業に取り組めます。
3.Bouquet通うことで変わった利用者さまのエピソード
ーー各種プログラムを通して、ADL(日常生活動作)の維持・向上、認知症の予防などの効果が期待できるとのことですが、実際に通われている利用者さまにはどのような変化がありましたか?
当施設に通所されている方の多くが、認知症を含む精神疾患をお持ちです。中には、通所前には自宅や自室からほとんど出られなくなってしまっていた方もいらっしゃいます。
今からお話するのは、私の想像以上の変化が現れた、ある利用者さまのお話です。
施設を開設して間もないある日の早朝、「Bouquet(ブーケット)に通いたい」という内容の電話が入りました。その方には重度の精神疾患があり、いわゆる引きこもりの状態で、それまで家族やケアマネージャーがデイサービスを利用するよう勧めても「絶対に行きたくない」と頑として動かなかったそうです。
ところが、Bouquet(ブーケット)に関する新聞記事を見て、なんと自分から電話をして通われるようになったんです。ご家族に確認したところ、「本人が電話をすることは考えられない」と驚かれていたのですが、とにかく一度お伺いしますと言ってお迎えに上がったことを覚えています。
それから週に2回の利用を半年ほど続けたところ、症状が軽減して投薬の必要がなくなり、引きこもりがちだった生活も大きく変化したそうです。ご家族も大変喜ばれていて、症状軽減から1年ほど経過した現在も、積極的に通われています。
このようなメンタル面の変化に加え、多くの利用者さまは見た目にも変化が出てきます。表情や服装の変化は化粧療法の効果によるものと思われます。
4.化粧療法や芸術療法に携わるスタッフの教育
ーー化粧療法や芸術療法に携わるスタッフには、どのような教育を実施されていますか?
第一に、利用者さまに安心してもらえる接遇を心がけるよう教育しています。化粧療法や芸術療法においては、技術やサービスの提供方法などについての研修を実施しています。
私や役員が「一人でもサービスの提供ができるようになった」と判断できるまで、一人で現場に出ることはありません。各種プログラムに関する研修期間は、3週間から1ヶ月程度になることが多いです。ただしプログラムの内容は適宜変更しているため、研修後も新しいプログラムについて学ぶ必要はあります。
単に見守るのではなく、利用者さまが安心して各種プログラムを楽しめるようしっかりとしたサポート体制を構築するためにも、スタッフ教育は重視している事柄です。
5.新規性の高いサービスにおいて重要なものは「思いやりの心」
ーー最後に、これから介護職を目指す方や美容介護に興味のある介護職の方に向けて、一言メッセージをお願いします。
当施設の求人には、まったく異なる業界から転職を希望される方が多く、一般企業の営業職から当施設に転職した者もいます。
「美容・アート×介護」という新規性の高いサービスにおいて重要なものは、これまでに培った介護に関する知識や経験よりも、「思いやりの心」だと考えています。
利用者さまへの声のかけ方ひとつ、触れ方ひとつに思いやりの心が表れるような接遇が、安心感や継続利用につながります。
これから介護職を目指す方は特に、はじめて就職する施設は給与などの待遇だけでなく「どのようにして介護を行っているのか」を見て選んでほしいと願っています。
取材・文/高橋みゆき 編集/イージーゴー
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