終末期ケア専門士とは?取得するメリットや勉強方法を解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部高齢者施設などで働いていると、余命がわずかとなった利用者さんのケアを行う機会も少なくありません。終末期ケア専門士は、延命治療の決断や家族のメンタルケアなど、終末期医療特有のサポートに関する基礎知識や倫理観を身に付けられる資格です。
当記事では、終末期ケア専門士の概要や試験内容、対策に加えて、資格取得のメリットやステップアップするための資格についても紹介します。介護職で働いている方やキャリアアップを目指している方は、ぜひ参考にしてください。
1.終末期ケア専門士とは
終末期ケア専門士とは、日本終末期ケア協会によって2020年に設立された認定資格です。主に、医療や介護に関わる方を対象としており、終末期ケア全般の専門知識を身に付け、人生の最期まで利用者さんの尊厳ある生活を支えることを目的としています。
終末期を迎えた利用者さんのケアには正解がないため、介護従事者としてどのようなサポートを提供すべきか悩んでしまうこともあります。また、求められるケアは利用者さんによって異なるため、終末期ケアではそれぞれのニーズを汲み取って、対応できるスキルも必要です。
終末期ケア専門士の資格では、そうした終末期ケアの課題を解決するため、実践的な知識だけでなく、終末期ケアに必要な考え方や倫理観を育成するプログラムが提供されています。加えて、「エビデンスに基づく基本的なケアの実践方法」も身に付くため、これまで以上に引き出しが増えて、一人ひとりのニーズにしっかりと対応できるようになるでしょう。
終末期ケア専門士の試験で問われる内容
終末期ケア専門士の試験は、公式テキストからの出題となります。
以下では、公式テキストに記載されている内容の全体像を紹介します。
概論 | 生と死について、終末期の定義・概念など |
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終末期におけるチームケア | チームケアの概要、より良いチーム作りの方法など |
日常生活を支えるケア | 食事ケア、口腔ケア、排せつケアなど |
身体症状とそのケア | 痛みのケア、呼吸困難の治療とケアなど |
意思決定支援 | 終末期の意思決定支援、終末期にまつわる倫理など |
家族ケア | 家族のアセスメント、終末期における家族への支援など |
スピリチュアルケア | スピリチュアルケアの成り立ち、ケアのいとなみなど |
グリーフケア | 悲嘆反応、悲しみへの配慮など |
看取り期のケア | 看取りケアの実際、エンゼルケアなど |
終末期を取り巻く社会資源 | 社会保障制度、社会保険制度など |
疾患別終末期ケア | 悪性腫瘍の終末期ケア、認知症の終末期ケアなど |
終末期ケア専門士の受験資格・受験方法
終末期ケア専門士の受験には、以下のいずれかの免許と実務経験が必要です。
実務経験2年以上 | 医師、歯科医師、看護師、保健師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、歯科衛生士、管理栄養士、介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床検査技師、公認心理師、救命救急士、放射線技師、介護福祉士 |
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実務経験3年以上 | 栄養士、准看護師、臨床心理士、音楽療法士、介護士(実務者研修の修了が必要) |
介護福祉士としての実務経験が2年以下であっても、介護士としての実務経験と合算して3年以上ある場合には受験可能となります。
受験申込から合格までの流れは、以下の通りです。
受験申込 | インターネットから受験申し込みを行うと、自宅に受験書類が届きます。必要事項を記入し、本人確認書類のコピーを同封して郵送しましょう。 |
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審査 | 協会にて受験資格の審査が行われ、1カ月以内に結果が返送されます。受験資格が認められた場合には、受験会場予約サイトのログイン情報が届きます。 |
受験会場予約 | インターネットにて受験会場予約サイトにログインし、希望の日時と受験場所を予約します。受験会場は全国260カ所に用意されています。 |
受験 | 受験当日は、予約した会場にてパソコン試験を行います。なお、合否結果は郵送での通知となります。 |
終末期ケア専門士の試験対策方法
試験問題は公式テキストからの出題となるため、重要事項を中心に記載内容を覚えましょう。
出題範囲は11分野と幅広く、公式テキストを一読しただけでは対策として不十分です。試験合格を目指すには、公式テキストを繰り返して読み、重要事項を確実に押さえる必要があります。
受験者の多くは独学で対策をしていますが、講義を受けたい場合は「試験対策WEB講習会」を受講することが可能です。独学での試験対策に不安がある方や仕事と両立しながら効率よく学習を進めたい方は、受講を検討するのも良いでしょう。
2.終末期ケア専門士を取得するメリット3つ
終末期ケア専門士の資格を取得するメリットは、以下の3つです。
●終末期ケアについて専門的な知識が身に付く
終末期ケア専門士は、生と死を意識しながら、利用者さんの日々のサポートや症状へのケアを行います。一般的な臨床ケアとは異なる性質を持つため、質の高いサービス提供には専門知識が不可欠です。
終末期ケア専門士の資格を取得することで、日常のケアから延命治療に関する意思決定のサポート、家族のケアに至るまで、終末期ならではのケアに関する専門的な知識・スキルが身に付くでしょう。
また、終末期の利用者さんそれぞれのニーズに合わせた柔軟なサポートは、エビデンスに基づくケアを押さえた上で成り立ちます。終末期ケアの基本的な方法や考え方を理解することで、個々の利用者さんに必要なケアを多角的に見極められるようになるでしょう。
●キャリアアップにつながる
介護施設や緩和ケア病棟で働く方は、終末期ケア専門士の取得によってキャリアアップを目指せます。
直接看取りをする機会が多い職場では、資格取得によって専門性の高いスタッフとして頼りにされたり、チームのリーダーなどを任されたりすることもあるでしょう。名刺やネームプレートにも資格保持者であることを記載できるため、利用者さんやその家族も安心してケアを受けられるはずです。
加えて、今後介護や医療の現場に転職しようと考えている方にとっても、終末期ケア専門士の資格は有利に働きます。資格保持者であれば年収が上がるケースもあるため、募集要項を確認しておくのがおすすめです。
●さまざまな人と交流できる
日本終末期ケア協会は、終末期ケア専門士の資格保持者に向けて、「ココリンク」と呼ばれるオンラインサービスを提供しています。
ココリンクでは、SNS機能を通して他の資格保持者と情報交換したり、関連団体のイベントを探したりすることができます。同じ職種の人たちと交流し、多様な考え方に触れることは、利用者さんへのサポートの幅を広げることにもつながるでしょう。
3.終末期ケア専門士のステップアップ資格
終末期ケア専門士の資格取得後、さらなるステップアップを目指せる資格を2つ紹介します。
終末期ケア上級専門士
終末期ケア上級専門士とは、終末期ケアに関する知識・スキルの習得だけでなく、チームマネジメントやスタッフ育成にも力を発揮できる人材を育てる資格です。
終末期ケア専門士が終末期を「支える」人材だとするなら、終末期ケア上級専門士は、終末期ケアに関わる組織や人を「育む」人材にあたります。
終末期ケアを行う際は、医師や看護師、介護士など、医療に関わるさまざまな専門職が連携して動きます。そして価値観が異なるメンバーをまとめて、優れたパフォーマンスを発揮するには、個々のスキルを生かしながら協働させるマネジメント能力が不可欠です。
終末期ケア上級専門士の資格では、スタッフの指導法やコミュニケーションの取り方、チーム管理能力などを身に付けることができます。資格を取得することで、一人ひとりのメンバーに寄り添いながらリーダーシップを発揮し、利用者さんを第一に考えたチームパフォーマンスを提供できるようになるでしょう。
終末期ケア上級専門士を受験するには、終末期ケア専門士の資格保持者であることに加えて、資格取得後からココリンクでの学習を継続している必要があります。
JTCAアドバンスインストラクター
JTCAアドバンスインストラクターは、終末期ケアに関する専門アドバイザーとして、社会に終末期ケアを「伝える」ための人材を育てる資格です。
JTCAアドバンスインストラクターの具体的な仕事内容は、地域や病院、施設における研修・勉強会などの開催です。また、協会内のコアメンバーに昇格すると、学習プログラムの運営や企画にも参加できます。
JTCAアドバンスインストラクターを受験するには、終末期ケア上級専門士の資格が必要です。
まとめ
終末期ケア専門士とは、終末期の利用者さんを支えるための知識・スキルが身に付く資格です。エビデンスに基づいた実践的な知識はもちろん、個々の利用者さんに合わせたケアを判断・提供する際の考え方や倫理観についても学べます。
終末期ケア専門士の資格を取得するメリットは、職場でのキャリアアップを目指せたり、他の資格保持者との交流を通して学びを深めたりできる点です。資格取得後は、ステップアップ資格として終末期ケア上級専門士、JTCAアドバンスインストラクターなどの取得を目指すのも良いでしょう。
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※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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