介護福祉士とは?役割や仕事内容・資格取得の方法をわかりやすく解説
文/吉田匡和 (社会福祉士・ケアマネジャー・ 社会福祉主事)
2025年に「団塊の世代」と呼ばれる約2,200万人が後期高齢者になり、4人に1人が75歳以上という「超高齢社会」が到来します。
厚生労働省の最新の推計によると2025年までに245万人の介護職員が必要であり、介護人材確保が急務となっています。
介護の中核を担う「介護福祉士」の業務や給与、資格取得方法などを紹介します。
介護福祉士とは
介護福祉士は1987年5月26日に公布された「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づいて制定された国家資格です。高齢者や障害者に対して介護や支援を行う専門職であり、生活上の相談を受けることもあります。
介護福祉士の役割
社会福祉士及び介護福祉士法には次のように定められています。
以下引用
「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの〈厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。〉を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう(第二条2項)。」
介護が必要な方の日常生活におけるお世話や環境整備、レクリエーション、必要に応じて痰の吸引などを行うほか、家族に正しい介護技術を伝える役割も担っています。
介護福祉士の仕事は「人が生きるための全般的な支援」と言えるでしょう。
介護福祉士の仕事内容と一日の流れ
介護職員の一日は「入所施設」と「通所施設」によって異なります。
入所施設の場合は早番・日勤・遅番・夜勤など交代勤務が多く、通所は日勤が基本で、送迎などを行うこともあります。参考例として、それぞれのスケジュールを見てみましょう。
<入所施設(日勤)でのスケジュール1例>
時 間 | 業務内容 |
---|---|
8:30~9:00 | 出勤。仕事の引き継ぎや伝言など、夜間勤務スタッフからの申し送り、朝食の片付け、排泄介助、居室掃除など |
9:30~11:00 | 入浴介助、排泄介助、洗濯、外出介助など |
11:30~13:30 | 昼食準備、食事介助、排泄介助、外出支援、入浴介助など |
13:30~14:30 | 休憩時間 |
15:00~16:30 | おやつの準備、レクリエーションの実施、排泄介助、外出などの支援、入浴介助など |
16:30~17:30 | 夜間スタッフへ申し送り、介護記録作成など |
<入所施設夜勤のタイムスケジュール1例(2交代制)>
時 間 | 業務内容 |
---|---|
16:00~16:30 | 日勤のスタッフから利用者の様子や体調の変化、服薬に関する情報を共有して業務引き継ぎ |
18:00~19:30 | 夕食の準備から食事・服薬介助 |
20:00~21:00 | トイレ介助やおむつ交換、歯磨き、寝間着への着替え、ベッドへの移乗など、就寝に向けた準備 |
22:00~ | 消灯後は1~2時間に1回の夜間巡回を行います。利用者の体調に変化がないか、呼吸状態に問題がないかをチェックし、必要に応じて寝がえりの介助やトイレ誘導、おむつ交換 |
23:00~1:00 | 巡回の合間に介護記録の作成など、庶務 |
3:00~5:00 | 複数のスタッフで夜勤対応している場合は、交代制で夜食を食べたり仮眠室で仮眠したり |
6:00~7:30 | 起床時は、車いすへの移乗、着替えやトイレ、整容の介助。それが済むと、朝食の準備から食事介助、服薬介助。 施設によっては、起床から朝食までの特に忙しい時間だけパートタイマーがサポートに入り、仕事を手分けして行っているところも |
8:30~9:00 | 日勤スタッフが出勤したら、利用者の様子を共有 |
9:00 | 退勤 |
<通所施設でのスケジュール1例>
時 間 | 業務内容 |
---|---|
8:30~9:00 | 利用者の自宅まで送迎車でお迎え |
9:00~10:00 | 検温、脈拍、血圧測定など利用者の健康チェック |
10:00~11:00 | 利用者の生活機能訓練、入浴介助 |
11:30~13:00 | 昼食準備、食事介助(交代で休憩) |
13:00~14:30 | 体操や生活機能訓練、レクリエーションの実施、散歩など |
15:00~16:00 | おやつの準備、おやつの提供 |
16:00~16:30 | 帰宅の準備、トイレ誘導 |
16:30~17:30 | 利用者の自宅まで送迎車でお送り |
17:30~18:00 | フロア清掃、明日の準備、1日の記録とチームミーティング |
※勤務時間・業務内容は事業所によって異なります。
介護福祉士になるには
介護福祉士を目指すには、いくつかのルートがあります。資格取得の方法について見てみましょう。
現在介護福祉士国家試験は移行期にあり、変更が頻繁に行われるため、受験を考えた際は常にニュースや試験を行う「社会福祉振興・試験センター(SSSC)」の最新情報をチェックしましょう。
2020年6月5日の参院本会議の決定により、養成施設を2026年度末までに卒業する場合、卒業後5年の間は、国家試験を受験しなかったり、合格しなくても、介護福祉士になれるよう経過措置が延長されました。
この間に国家試験に合格するか、卒業後5年間続けて介護等の職について働いていれば、5年経過後も介護福祉士の登録を継続することができます。
2027年度以降に養成施設を卒業する方からは、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることはできません。
介護福祉士を取得するには、社会福祉振興・試験センターが実施する介護福祉士国家試験に合格した上で同センターに登録しなければなりません。また、国家試験を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
※参考:「社会福祉振興・試験センター(SSSC)」
実務経験ルート
すでに介護職員としての勤務経験がある人が、介護福祉士を取得するためのルートです。実務経験(3年以上介護等の業務に従事)並びに介護福祉士実務者研修修了の2つ、または、実務経験(3年以上介護等の業務に従事)並びに介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修の3つが受験条件となります。
このルートかEPA(経済連携協定)ルートで実務者研修修了済の場合には、実技は免除されます。
養成施設ルート
大学・短期大学・専門学校など、指定された学校または養成施設で定められた教科目 (2年間1,850時間)を履修して受験資格を得るルートです。
在学中の介護施設実習が必須であり、実技試験は免除されます。
2026年度末までに卒業する場合、卒業後5年の間は、国家試験を受験しなかったり、合格しなくても介護福祉士になれますが、2027年度以降に養成施設を卒業する方からは、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることはできません。
福祉系高等学校ルート
福祉系高等学校か福祉系特例高等学校を卒業し、受験資格を得るルートです。
・福祉系高等学校
定められた教科目・単位数(53単位)を修め、卒業した方が対象で、実技試験が免除になります。旧カリキュラムの方はコース別で異なります。
・福祉系特例高等学校
定められた教科目・単位数(35単位・34単位)を履修し、卒業した方が対象です。9か月以上介護等の業務に従事した方が実技試験の免除を申請する場合は「介護技術講習」を修了する必要があります。
EPAルート(経済連携協定ルート)
日本以外の国の方のためのルートです。インドネシア、フィリピン、ベトナムからの介護職の方が日本国内で介護士や看護師として働く場合に使います。
介護福祉士資格取得にかかる費用
養成校ルートは2年間でおよそ200万円以上の学費、実務者ルートは介護福祉士実務者研修を受ける必要があるなど時間と費用を必要とします。
また介護福祉士試験に合格した際は、登録免許税(9,000円)および登録手数料(3,320円)も必要です。
しかし多くの企業が合格後その企業で一定の年数働くことなどを条件に奨学金や補助を出しています。
以下は学費の一例ですが、居住地や学校によっても違いますので、希望先に問い合わせてみましょう。
<養成校の学費 (1例)>
1年次
入学金 | 授業料 | 教育充実費 | 合計 |
---|---|---|---|
200,000円 | 710,000円 | 200,000円 | 1,110,000円 |
2年次
授業料 | 教育充実費 | 合計 |
---|---|---|
710,000円 | 200,000円 | 910,000円 |
※その他教科書代、・教材費等 約97,200円/保険料・各種検査等 約7,400円/諸経費 約57,000円/検定料 約2,200円などが必要。
<実務者研修の費用(1例)>
ホームヘルパー2級修了者及び初任者研修修了者 | 基礎研修修了者 | ホームヘルパー1級修了者 | 無資格 |
---|---|---|---|
96,250円 | 32,000円 | 69,000円 | 135,500円 |
※いずれも税込み
介護福祉士の受験要件
介護福祉士国家試験は、毎年1回、1月下旬または2月上旬に実施されています。
筆記試験は総得点125点中77点(6割)が合格ラインで、「人間の尊厳と自立」「介護の基本」など11科目群すべてを得点しなければなりません。
筆記試験に合格した人は実技試験に進むことができ、今年の場合総得点100点中約47点以上の得点に、難易度の補正で合格が決まりました。なお、第32回試験(2020年)の合格率は69.9%でした。
資格取得のメリット
介護福祉士は、医師や看護師のような「業務独占資格」でないため、資格を保持していなくても介護の仕事に就くことができます。
しかし国家資格を有することで必要な知識や技術が担保されることや、処遇改善加算を算定している事業所に10年以上勤務している場合は特定処遇改善加算の対象となり、月額8万円が支給されること、勤務先によっては資格手当が付いたり、リーダーや主任などへのステップアップが見込めたりするなどの理由によって、毎年多くの人が受験しています。
※資格手当の金額及び支給の有無については事業所により異なります。
介護福祉士の給与
厚生労働省が2018年に公表した資料によると、介護福祉士の年収割(ボーナス込み)の平均給与(モデル:平均勤続年数8.4年)は、前年の調査結果より平均で9,290円アップの313,920円でした。
平均勤務年数が異なるため正確な比較は難しいですが、介護福祉士と他の資格保有者の月給では、実務者研修(モデル:平均勤続年6.5年)が288,060円で約2万5千円、介護職員初任者研修(モデル:平均勤続年6.5年)が285.610円で約3万円、無資格者(モデル:平均勤続年5.2年)の261,600円とでは、約5万円もの差があることも明らかになりました。
介護福祉士の魅力
公益財団法人
介護労働安定センターが調査した平成28年度「介護労働実態調査」の結果によると、介護の仕事を選んだ理由は、「働きがいのある仕事だと思ったから」が最も多く、「資格・技術が活かせるから」「今後もニーズが高まる仕事だから」と続いています。
介護福祉士の仕事には学歴や転職のハンデが少なく、性別・年齢に関係なく広く間口を開いています。介護業界は人材不足なため求人数は非常に多く、一度資格を取得すると景気に左右されずに安定して働くことができるのは大きな魅力といえるでしょう。
介護福祉士を取り巻く課題と対策
公益財団法人 介護労働安定センターが2018年に実施した調査によると、介護サービスに従事する従業員の不足感は 67.2%であり、2013年から5年連続して増加していることが分かりました。
国は介護職不足解消に向けて、介護職員の処遇改善や離職防止・定着促進・生産性向上など、総合的な介護人材確保の対策を行っています。
介護人材確保に向けた施策
国は人材確保のために要件を満たした事業所に対して「介護職員処遇改善加算」を設定しています。
厚生労働省が2018年に発表した資料によると、介護福祉士の平均給与(モデル:平均勤続年数8.4年)は313,920円であり、前年の調査結果より平均で9,290円アップするなど効果が表れています。
その他では、介護福祉士を目指す学生に就学資金の貸し付けや、ハローワークと協働した介護職を希望する人向けには初任者研修、実務者研修、介護福祉士の講座の開催、介護ロボットやICTの活用及び推進、介護施設・事業所内の保育施設の設置・運営の支援、キャリアアップのための研修受講負担など、多岐に渡り支援が行われています。
介護福祉士には高いスキルが求められる
介護は家族が行うこともあるため「誰でもできる仕事」と思われがちですが、介護技術だけでなく、認知症高齢者への理解や、同僚や他職種とのチームワークなど、高いコミュニケーション能力が必要です。
「採用の間口が広い」ことと「誰にでも務まる」ことをはき違えると、自身が困惑するだけでなく、ストレスが溜まって虐待行為に発展するなど、利用者にも事業所にも不利益を生じさせることになります。個人によって合う・合わないがあると思いますので、パートから開始してみるのもよいかもしれません。
介護職として自分に合ったキャリアアップを目指しましょう。
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