介護職員に必要な介護技術とは?介護技術を上げる3つの方法も紹介
構成・文/介護のみらいラボ編集部正しい知識やケア技術がないと、利用者さんと接する際に相手の体を痛めたり、不快な思いをさせたりする恐れがあります。介護職員としてさらに活躍するためにも、より実践的で役立つ介護技術を身に付けましょう。
当記事では、シチュエーション別の介護技術やボディメカニクスの解説に加えて、介護技術を上げるための方法についても紹介します。正しい介護技術を身に付けることは、腰痛防止につながったり、仕事の幅が広がったりと自分自身にもたくさんのメリットがあるので、ぜひ最後までご覧ください。
1.介護技術とは?ボディメカニクスの概要も
介護技術とは、介護者と利用者さんの双方が、負担なく過ごすために必要な技術のことです。介護技術においてはスピードや効率ではなく、利用者さんがより安全に、より自然に動けるようにすることを重視します。
介護技術の一つに、最小限の力で効果を引き出す「ボディメカニクス」があります。ボディメカニクスでは、身体機能の力学的原理を活用するため、無理のない姿勢での動作が可能となり、介護者の悩みである腰痛の防止にもつながります。
ただし、介護技術を駆使して介護職員が何から何まで支援してしまうと、利用者さんがもっている能力の維持・向上にはつながりません。介護施設には認知症高齢者や身体障害者など、さまざまな方が滞在しており、手助けしたくなる場面は少なくありませんが、利用者さんの自立を促すために時には見守ることも大切です。
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介護職員が押さえたいボディメカニクスの原理7つ
ボディメカニクスの原理を押さえると、体に負担をかけず安全に介護することができます。具体的な原理は以下の通りです。
重心を下げる | 膝を曲げて重心を下げると、安定感がアップし、腰にかかる負担を軽減できます。 |
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相手になるべく近づく | 相手に近付くことで、腕だけでなく体全体の力を利用しやすくなります。力が伝わりやすくなる上に安定感も増すので、腰にあまり負担がかかりません。 |
支持基底面積を広くする | 支持基底面積とは、体を支えるために必要な床面積のこと。両足を開くことで支持基底面積を広く取ることができ、安定感がアップします。 |
移動は水平に行う | 重いものを移動させる時、上に持ち上げようとすると腰に大きな負担がかかりますが、水平に動かせば最小限の力で移動することができます。 |
てこの原理を活用する | てこの原理を利用すれば、小さな力で重いものを動かせます。相手の肘や膝、お尻を支点にすれば、楽に持ち上げたり、起こしたりすることが可能です。 |
体を小さくまとめる | 体を小さくまとめてもらうことで力が分散しなくなるため、身体的負担を軽減できます。腕は胸の前で組み、膝を曲げてもらいましょう。 |
体全体を使って介護する | 腕力に頼ろうとすると、体の一部分にばかり負担がかかります。体全体を使って背中や腰、太ももの筋肉を使うことで、負担を分散しましょう。 |
2.【項目別】介護職員に必要な介護技術を紹介!
介護の現場では、利用者さんをベッドから車椅子へ移動させる移乗介助が必要となります。移乗をスムーズに行うためには、①利用者さんにベッドに浅く座ってもらい、②介護者は利用者さんの肩甲骨を支えつつ、支えた部分とは反対側の臀部を浮かせます。③次に、ゆっくりと前方に誘導し、臀部の高さを変えずに一緒に回転して、密着したまま車椅子に座らせましょう。
移乗する際は、介助のスピードが速くなったり、勢いよく座らせたりしないように気を付けてください。利用者さんになるべく負担をかけないことが大切です。
車椅子への移乗以外にも、介護職員にはさまざまな介護技術が求められます。以下では、介護職員が身に付けるべき介護技術を項目別に紹介します。
食事
食事前にメニューの説明などを行ったり、盛り付けを工夫したりして、食べる意欲を引き出しましょう。
食事中は介護者が隣に座り、スプーンは必ず下から口元へ運ぶようにします。食べ物を上から口に入れると誤嚥しやすくなるので注意してください。ひと口の量は多すぎず、少なすぎない適量を心がけ、急がずゆっくりと食事を進めましょう。
食事中の声かけは、飲み込んだことを確認してから行ってください。咀嚼の最中に声かけをすると、誤嚥を招く危険性があります。
排せつ
排せつ介助には、トイレ誘導やおむつ交換があります。トイレで介助する場合は何から何まで手助けするのではなく、利用者さんができることは本人に任せましょう。
排せつ介助で最も重要なのは、利用者さんの羞恥心を理解し、尊厳を傷つけないことです。安全面だけでなくプライバシーにも配慮しながら、利用者さんが自立した生活を送れるようにサポートしましょう。
なお、おむつ交換をする場合は、清潔かつ、手際よく終わらせるように心がけてください。
入浴
入浴の前には、利用者さんの体温・血圧は正常か、体調は悪くないかなどを確認します。お湯の温度は38〜40度に設定し、ヒートショックを防ぐために脱衣室と浴室は温めておきましょう。
入浴する際は、やけど防止のためにシャワーとお湯の温度を確認します。入浴方法は基本的に半身浴で、体を洗う時は心臓に負担がかかりにくい手足の先から洗うようにします。
入浴は体の健康状態を確認できる機会でもあるので、皮膚が乾燥していないか、傷やあざがないか、床ずれなどがないかなども観察しましょう。
衣服の着脱
衣服の着脱をスムーズに行うために、伸縮性があって着脱しやすい衣服を選ぶようにしましょう。まひがある利用者さんの着脱を行う場合は、「患側(まひ側)から着て、健側(非まひ側)から脱ぐ」のが基本です。着脱する時は声かけをし、不安感を与えないように注意してください。
着替えが終わった後は、衣服やシーツ、タオルなどのしわを伸ばしておきましょう。しわを伸ばすことで床ずれ防止につながります。
歩行
歩行介助は、転倒防止のための介護技術です。介護者の立ち位置は利用者さんの斜め後ろで、利用者さんが右利きなら左側に、左利きなら右側に立ちましょう。その際、密着しすぎないことと、利用者さんの動きを妨げないことがポイントです。
歩く時は重心を意識し、利用者さんが右に動いたら自分も右に、左に動いたら自分も左に動くという具合にリズムを合わせます。また、利用者さんは歩くことに精一杯で周囲の状況に気づかないこともあるので、介護者が周囲に気を配ることも大切です。
3.介護技術を上げるための方法3つ!
介護技術を高めれば、サービスの質が向上するだけでなく、利用者さんの安心感や満足度の向上にもつながります。加えて、介護者自身にも自信が付き、充実した気持ちで仕事ができるようになるでしょう。
以下では、介護技術を上げるための方法を3つ紹介します。
勉強会・セミナーなどに参加する
スキルを磨きたい場合は、勉強会やセミナーに参加するのがおすすめです。スムーズな介助方法や新たな知識を学び、介護技術についての理解を深めましょう。また、勉強会・セミナーに参加すれば、他の参加者と悩みを共有したり、他の施設の情報を得たりすることもできます。
勉強会やセミナーは、講演会型や体験型などさまざまな種類があります。直接足を運ぶことが難しい場合は、オンラインセミナーに参加するのが良いでしょう。オンラインセミナーは自分の都合に合わせて受講できるので、スケジュール調整がしやすいというメリットもあります。
コミュニケーション能力を磨く
円滑な介助を行うためには、コミュニケーション能力が欠かせません。きちんとコミュニケーションを図ることで、利用者さんの言葉や表情から喜怒哀楽を読み取ることができるでしょう。利用者さんの要望をくみ取って適切なサービス提供につなげれば、信頼関係も築きやすくなります。
コミュニケーションを図る際は、友だち口調や若者言葉を控えて正しい言葉遣いやマナーを心がけることが大切です。利用者さんに不快な思いをさせないように、十分注意してください。
資格を取得する
代表的な介護資格に「介護福祉士」があります。資格を取得するには3つの方法があり、それぞれの詳細は下記の通りです。
1.3年以上の介護等の業務に関する実務経験及び都道府県知事が指定する実務者研修等における必要な知識及び技能の修得を経た後に、国家試験に合格して資格を取得する方法
2.都道府県知事が指定する介護福祉士養成施設等において必要な知識及び技能の修得を経た後に、国家試験に合格して資格を取得する方法
3.文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定する福祉系高校において必要な知識及び技能を修得した後に、国家試験に合格して資格を取得する方法
資格を取得すれば、正しい介護技術が身に付くだけでなく、仕事の幅も広がります。介護福祉士以外にも、福祉用具や住環境、レクリエーションなどの分野に特化した資格もあるので、興味のある資格から取得してみましょう。
まとめ
介護を実践する上で重要なポイントは、利用者さんが動作しやすいよう安全にサポートすることです。ボディメカニクスを活用すれば、最小限の力で介助でき、介護者自身の負担も減らせます。介護技術が上がればキャリアアップも目指せるので、積極的にスキルを身に付けましょう。
「介護のみらいラボ」では、介護用語の解説や各資格の詳細など、介護の現場で活躍する方に有益な情報を掲載しています。介護知識を増やしてスキルアップするためにも、ぜひ「介護のみらいラボ」をご活用ください。
※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
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