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仕事・スキル 介護資格 2023/10/23

児発管(じはつかん・児童発達支援管理責任者)とは?仕事内容やなり方も

構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子 thumbnail.jpg

障害のある子どもの支援や、障害者福祉の領域に関心のある方なら、「じはつかん」という言葉を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。「じはつかん」は児童発達支援管理責任者の略称で、漢字で「児発管」と書きます。

児童発達支援管理責任者(以下、児発管)は、2012年の児童福祉法と障害者自立支援法の改正によって新設された職種。「じはつかん」という言葉を知っていても、児発管になるための方法や働き方などについては、「きちんとイメージできていない」という方が多いかもしれません。

そこで本記事では、児発管について、仕事内容や活躍の場、なり方、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。給料相場やサービス提供責任者(以下、サビ管)との違いにも触れますので、関心のある方は、ぜひご一読ください。

1.児発管(じはつかん・児童発達支援管理責任者)とは?

児発管とは、障害のある子どもが福祉サービスを利用する際に個別支援計画を作成し、リーダー的立場でサービスを管理する専門職です。

ここでは、児発管の仕事内容や活躍の場、給与の相場などを紹介します。あわせて、サビ管との違いについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

仕事内容

児発管は、障害を持つ子ども1人ひとりの個性を理解・尊重しながら、障害児支援施設における発達支援を担います。児発管の主な仕事内容は、以下の通りです。

・個別支援計画の作成
障害を持つ子どもの発達段階や能力、適正、保護者の意向などを踏まえた上で、個別の支援計画を作ります。支援計画では、当面の目標(3~6か月で実現できる目標)と到達目標(希望する生活に近づくための目標)を設定し、子どもの発達状況やサービス提供状況を確認しながら、定期的に評価と修正を行います。

・モニタリングとアセスメント
個別支援計画による療育の効果を上げるためには、モニタリング(状況確認)とアセスメントが欠かせません。モニタリングは支援計画の進み具合や効果などをチェックするために、半年に1回以上行います。アセスメントは、子どもの学校や家庭での様子、保護者のニーズ、医療に関する情報などを把握し、必要な支援を検討することを目的に行います。

・保護者の相談・サポート
児発管は、子ども本人はもちろん保護者が抱える悩みにも耳を傾け、専門家の視点からアドバイスを行います。


活躍の場

児発管が活躍できる職場は、障害児の自立支援や療育を行う施設です。児童福祉法関連施設では、1名以上の児発管の配置が義務化されており、主に通所系と入所系のサービスに携わります。

児発管が活躍できる場所の例は、以下の通りです。

通所支援施設 概要
児童発達支援センター 要支援児童・要保護児童に該当する、障害を持つ児童や不登校の障害児を支援する福祉施設(0歳から18歳まで切れ目のない支援を目指している)
医療型児童発達支援 児童発達支援センターに、医療機能のサービスを加えた福祉施設
放課後等デイサービス 障害がある児童や発達に特性がある6歳から18歳までの就学している児童(小学生、中学生、高校生(特別支援学校含む))が利用する通所支援サービス。放課後や休日、夏休みや冬休みの長期休暇を利用して生活能力の向上のための支援を行う福祉施設

訪問支援 概要
保育所等訪問支援 保育所等を現在利用している障害児、または今後利用する予定の障害児が、保育所(保育園)等における集団生活への適用のために専門的な支援を必要とする場合、2週間に1回程度保育所を訪問し、「保育所等訪問支援」を行う。訪問先は、保育所、幼稚園、認定こども園、小学校、特別支援学校、乳児院、児童養護施設など

入所支援施設 概要
福祉型障害児入所施設
(旧第2種自閉症児施設)
入院を要しない自閉症児童を入所させて保護し、自立のために必要な知識や技能をサポートする福祉施設
医療型障害児入所施設 障害のある児童の保護、日常生活の指導、自立のために必要な知識や技能のサポートのほか治療を行う福祉施設
知的障害児施設 知的障害を持つ児童を入所させて保護し、自立のために必要な訓練や教育をサポートする福祉施設

給料相場

続いて、施設や事業所のリーダー的存在として働く児発管の年収相場を紹介します。

施設形態 常勤 非常勤
児童発達支援 3,990,877円 2,753,561円
医療型障害児入所施設 5,983,824円
放課後等デイサービス 3,298,587円
保育所等訪問支援 4,658,940円 5,414,257円
福祉型障害児入所施設 5,662,130円 2,598,236円
医療型障害児入所施設 5,983,824円

(参考:厚生労働省「平成29年障がい福祉サービス等経営実態調査結果」

施設の形態によって年収は異なりますが、福祉型障害児入所施設や医療型障害児入所施設などで働く児発管の給与は、比較的高い水準にあると言えるでしょう。ちなみに、マイナビ介護職をはじめとする求人サイトでは、諸手当込みで月給290,000〜440,000円ほどの募集が多く、経験やスキルなどに応じて給与が決まる傾向にあります。

サービス管理責任者(サビ管)との違い

サビ管とは、障害者福祉サービスを行う施設や事業所において、利用者の特性や環境に応じた個別計画を作成し、スタッフへの指導・助言、関連組織との連携・調整などを行う専門職です。

児発管の支援対象が、障害を持つ子どもであるのに対して、サビ管は障害を持つ18歳以上の成人を対象としています。

サビ管の配置が義務付けられている障害者福祉サービスの種類は、療育介護、生活介護、自立訓練、就労移行支援などです。支援には、利用者さん本人の意思や状況、就労環境などさまざまな要素が関係してくるため、サビ管には高いコミュニケーション能力と調整力が求められるでしょう。

●関連記事:
児発管とサビ管の違いとは?要件や働く場所の違いを解説

2.児発管(じはつかん・児童発達支援管理責任者)になるには?

障害の多様化が進む現在、児発管の需要は高まりつつあります。児発管の資格を取得するためには、次の2つの要件を満たさなければなりません。

・実務経験
・研修の終了


2017年からは「支援の質をより高める」という目的のもとに、実務要件や研修の方式が見直されました。以下でその詳細を解説します。

実務経験の要件

児発管の実務経験に関する要件は、大きく分けると以下の3つです。なお、いずれの場合も、障害を持つ児童・成人に対する相談支援や直接支援業務の経験が3年以上必要となります。

実務経験 概要
5年以上の相談支援業務の経験 地域生活支援事業、障害児相談支援事業、児童相談所、障害児入所施設、教育機関、医療機関などで、相談業務を実施した経験が5年以上
8年以上の直接支援業務の経験 障害児入所施設、児童家庭支援センター、児童養護施設、障害児通所支援事業、教育機関、医療機関などで、身体的介助や教育・訓練の経験が8年以上
国家資格が必要な業務に5年以上従事+3年以上の相談支援・直接支援業務の経験 看護師、介護福祉士、歯科衛生士、管理栄養士などの国家資格が必要な業務に通算5年以上従事し、なおかつ相談支援や直接支援業務の実務経験が3年以上

(出典:大阪府ホームページ「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて」
(出典:札幌市ホームページ「児童発達支援管理責任者の要件となる実務経験年数について児童発達支援管理責任者の要件となる実務経験年数について」

ただし、自治体や都道府県の方針によっては、内容が異なる場合もあるため、自身が住む地域で児発管の実務経験に関する要件を確認しましょう。

研修の修了

児発管の資格を取得するには、実務経験に加えて、相談支援従事者研修と児童発達支援管理責任者研修という2つの研修を修了する必要があります。

相談支援従事者研修は、障害を持つ子どもから成人までを対象とした、生活支援の相談技術・知識を身に付けるための研修です。一方の児童発達支援管理責任者研修は、基礎研修と実践研修に分かれており、下記のフローで2つの研修を終了すると、児発管として活動できるようになります。

基礎研修→2年以上の実務経験→実践研修→児童発達支援管理責任者


基礎研修は2日間にわたって行われ、個別支援計画の作成、アセスメント、モニタリングといった児発管の基本業務や、サービス提供のプロセスについて学びます。基礎研修終了後に、相談支援事業または直接支援業務で2年以上の実務経験を積むことで、サービス提供のポイントや人材育成、多職種・地域連携の方法などを学ぶ2日間の実践研修講義が受けられます。

なお、実践研修を終了した後も、5年ごとに更新研修を受講し、児発管としての知識やスキルをアップデートすることが必要です。

(出典:大阪府ホームページ「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて」

3.児発管(じはつかん・児童発達支援管理責任者)になるメリット・デメリット 

児発管の資格を取得し、キャリアアップを目指したいと考える方のために、児発管になるメリットとデメリットも紹介します。今後のキャリアプランを検討する際の材料にしてください。

【メリット】

やりがいがある
障害を持つ子どもに寄り添いながら個別支援計画を実施すること、あるいは目標を達成することにやりがいを見出す人も多いでしょう。子どもの成長過程を見守ることができるため、充実感や達成感につながる場面も多く見られます。

手当が増える
児発管は知識やスキルを生かせる仕事であり、責任も大きいことから、手当がつく職場が多い傾向にあります。そうした点もモチベーションアップにつながるでしょう。

【デメリット】

資格を得るまでに時間がかかる
5年以上の相談支援業務経験や8年以上の直接支援業務経験が求められるため、児発管になるには時間がかかります。目標をしっかり設定し、計画を立てて資格取得を目指す必要があるでしょう。

まとめ

児発管(じはつかん)は、障害のある子どもをサポートする専門職で、「児発管(じはつかん・児童発達支援管理責任者)」とも呼ばれます。児発管の業務は、個別支援計画の作成、モニタリングとアセスメント、保護者の相談支援などで、児童発達支援センター、知的障害児施設といった通所施設や入所支援施設が主な職場となります。

なお、児発管になるには、実務経験や研修が必須であるため、計画的に目指すことが大切です。

「介護のみらいラボ」では、介護福祉系職種に関する有益な情報を多数掲載しているため、これから介護職を目指す方も、現職でスキルアップを目指す方も、ぜひお役立てください。

※当記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています

▼監修者からのアドバイス

児童発達支援管理責任者(児発管・じはつかん)は、障害がある児童が通う通所支援や障害がある児童の入所支援を行うなど、児童福祉の現場で活躍できる資格です。
児発管は、障害がある児童の個別支援計画を作成し、その計画のモニタリング、再アセスメントを行いますが、法の枠組みに沿って計画を立てるのではなく児童の生活のコーディネートができなければなりません。つまり、障害がある児童及び家族、障害がある児童を取り巻く環境まで広い視野を持って関わる必要があります。保護者の相談やサポートも大切な仕事ですが、親の意に沿ったプランではなく、あくまでも障害がある児童に向き合うことが大切です。
ですから、児発管はコミュニケーション能力や協調性、課題解決能力、チームリーダーシップなどが求められます。
児発管の資格を取得するためには、実務経験や研修などハードルはかなり高いと思われますが、それだけにやりがいもある資格だと思います。資格取得を考えていらっしゃる方は計画を立ててしっかり準備していきましょう。

●関連記事:
児童発達支援管理責任者の仕事は大変?
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赤羽克子(Katsuko Akaba)

元聖徳大学心理・福祉学部社会福祉学科教授

社会福祉施設勤務を経て教育の世界に入る。現在はマーシーハンディキャップサポート協会理事として障害者に対する理解の啓蒙活動・障害者スポーツの支援や松戸市シルバー人材センターのアドバイザーなどを行っている。

赤羽克子の執筆・監修記事

介護のみらいラボ編集部(kaigonomirailab)

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