認知症ケア指導管理士とは?試験概要や関連する認知症ケア資格も
構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
認知症ケア指導管理士とは、認知症の症状や具体的なケア方法、認知症ケアの指導・管理について、より高度な知識・スキルを身に付けられる民間資格の1つです。介護職として働くなかで、「もっと認知症ケアの専門性を高めたい」と考え、認知症ケア指導管理士に関心を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、認知症ケア指導管理士について、基本的な情報から資格取得のメリット、資格試験の概要までを詳しく解説します。認知症ケア指導管理士以外の、認知症関連資格も紹介しますので、ぜひご一読ください。
1.認知症ケア指導管理士とは?
「認知症ケア指導管理士」とは、一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人総合ケア推進協議会が認定する民間資格です。認知症ケアに携わる人材の専門性向上を目的としており、認知症の症状や具体的なケア方法に加えて、スタッフの指導・管理についての知識も身に付けられます。
認知症ケア指導管理士は初級と上級に分かれていて、初級で学ぶ内容は、認知症ケアに関する基礎知識が中心です。そのため、現在、医療・介護業界で働いている方はもちろん、今後就職を目指している方、家族の介護に役立てたい方などにも向いている資格と言えるでしょう。
上位資格である「上級認知症ケア指導管理士」では、現場における認知症ケアの専門性を高めるだけでなく、指導者としての人材育成も目的としています。認知症ケアに携わるなかで「スキルアップを目指したい」という方は、初級を取得した後に上級認知症ケア指導管理士を目指すのも良いでしょう。
資格取得のメリット
認知症ケア指導管理士資格を取得するメリットは、以下の通りです。
・認知症ケアに携わる専門職としてスキルアップできる
認知症の方への生活支援やケアに関する専門性が身に付くため、医療・介護の現場におけるスキルアップが期待できます。また、急速な高齢化が進み、認知症を発症する人が増加している日本では、認知症ケア専門スタッフの需要が今後さらに高まると予想されます。認知症ケア指導管理士資格を取得することで、就職・転職の際の選択肢も広がるでしょう。
・受験資格がないため資格取得を目指しやすい
医療・介護系の資格には、ほかの資格の保有や実務経験などが受験要件になっているものが少なくありません。しかし、認知症ケア指導管理士には受験要件がないため、誰でも資格取得を目指すことが可能です。また、スクールなどに通わず独学で試験対策を進められるので、仕事や家事と試験勉強を両立させやすい点もメリットと言えます。
2.認知症ケア指導管理士の試験概要
認知症ケア指導管理士の試験概要は以下の通りです。
試験日程 | 年2回(7月・12月) |
---|---|
試験会場 | 東京・大阪・札幌・仙台・名古屋・福岡・富山など |
受験料 | 一般:7,500円 学生:4,000円 (学生は大学生・専門学校生・高校生が対象です) |
試験形式 | 60問・五肢択一(マークシート方式) |
出願方法 | 1.インターネット出願 2.郵送による出願 |
(出典:資格取得キャリアカレッジ「認知症ケア指導管理士(初級)認定試験」)
試験会場となるのは各地の大学や専門学校で、公式テキストは全国の書店・WEBストアで購入できます。また、認知症ケア指導管理士資格は施設や病棟、学校ごとの団体受験も可能です。
合格基準は総得点の7割が基準となりますが、問題の難易度によって合否の点数が補正されます。
認知症ケア指導管理士の難易度
これまでの累計受験者数と累計合格者数から計算した、認知症ケア指導管理士の合格率は59.9%です。
(出典:資格取得キャリアカレッジ「認知症ケア指導管理士(初級)認定試験」)
受験者のうち6割近くが合格していることから、認知症ケア指導管理士は特別難易度の高い試験ではないことが分かります。
しかし、合格を目指すのであれば、テキストの内容をしっかり理解することが必要です。過去問題を繰り返し解く、不安な箇所は何度も復習するなど、基本的な学習をコツコツと続けた上で、試験に臨みましょう。
なお、2020年12月に実施された合格者の内訳(職業分類)は、以下の通りです。
職業分類 | 割合 |
---|---|
介護福祉士 | 37.5% |
医療職(看護師・准看護師等) | 19.7% |
介護職(訪問介護員等) | 16.0% |
医療職 | 5.8% |
介護支援専門員 | 3.1% |
学生 | 2.8% |
理学療法士・作業療法士 | 2.7% |
合格者のうち、もっとも多いのは介護福祉士です。また、全体の半数以上が介護職であることが分かります。
試験対策の方法
認知症ケア指導管理士の試験対策は、公式テキストを使用して独学で行うケースが多く見られます。
独学で試験対策をするメリットは、自分のペースで勉強を進められるという点です。しかし、理解できない部分があっても教えてもらうことができなかったり、試験対策として押さえるべき重要項目が分かりにくかったりするデメリットもあります。
試験対策に不安がある場合は、認知症ケア指導管理士の認定機関である職業機能振興会が主催する、短期講座に参加するのが良いでしょう。短期講座では、テキストの内容解説や演習を通して、合格に必要なポイントを学ぶことができます。
参考として、以下に2024年6月に行われる試験対策講座の概要を紹介しておきます。
講座日程 |
6月2日(日)・9日(日)・16日(日) 13:00~17:00 |
---|---|
受講定員 | 15名 |
会場 | 東京 浅草橋教室 |
受講料 | 30,000円(税込/全3回) |
受講資格 |
どなたでも受講できます ※ただし、認知症ケア指導管理士試験の申込が必要 |
(出典:資格取得キャリアカレッジ「認知症ケア指導管理士 試験対策短期講座 概要」)
講座に参加する際は、認知症ケア指導管理士試験の公式テキストが必要です。
合格後の手続き
合否結果は試験から約6週間後に通知され、試験合格後に認定登録を済ませることで、認定証が交付されます。認定登録には登録料として2,000円が必要です。
(出典:資格取得キャリアカレッジ「認知症ケア指導管理士(初級)認定試験」)
また、認知症ケア指導管理士資格では、2年に1度の更新手続きが必要です。更新満了日の約2か月前に案内が届くので、案内に従って更新料の5,000円を納めれば手続きが完了します。
3.介護職におすすめの認知症に関する資格
介護職の方が資格取得を通して認知症ケアに関する専門知識を身に付ける場合、認知症ケア指導管理士のほかにもおすすめの資格が複数あります。ただし、「認知症に関する資格」という点では共通していても、特化している分野や細かな内容がそれぞれ異なるため、自身が学びたい領域にあった資格を選択しましょう。
ここでは、介護職として働く方が認知症のケアに生かせる資格を5つ紹介します。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。資格を取得することで、認知症ケアの理念や実践プロセスから、地域での支援制度、相談窓口に至るまで、認知症に関する幅広い知識が身に付きます。
認知症ケア専門士を受験するには、3年以上の認知症ケアの実務経験が必要です。試験は1次と2次に分かれており、それぞれの試験に合格後、オンラインによる倫理研修を受講し、登録申請を行います。
認知症ケア専門士の資格を取得した後も5年ごとに更新を行う必要があり、更新要件を満たすには、認知症ケア学会や各種セミナーに参加して、更新に必要な単位数を取得する必要があります。
(出典:認知症ケア専門士 公式サイト「第14回認知症ケア上級専門士認定試験」)
認知症介助士
認知症介助士は、日本ケアフィット共育機構が認定する民間資格です。具体的な事例を通して、認知症の方への接遇や関わり方についての正しい知識が身に付くため、「ケアを行う上でこれまで以上に利用者さんに寄り添った対応をしたい」「認知症の利用者さんにも心を開いてもらえるスタッフになりたい」という方におすすめの資格と言えます。
認知症介助士に受験資格はなく、介護職の方以外にも一般企業の方や接客業・サービス業で働く方、身近に認知症患者さんがいる方などが受験することも少なくありません。
(出典:公益財団法人 日本ケアフィット共育機構「認知症の人に寄り添う 認知症介助士」)
認知症ライフパートナー
認知症ライフパートナーは、日本認知症コミュニケーション協議会が認定する民間資格で、認知症の方の「自分らしい暮らし」をサポートするためのコミュニケーション方法や、音楽・園芸などのアクティビティを利用したケアについて学べます。
認知症ライフパートナー資格は、3級・2級・1級の3つに分かれています。3級・2級には受験資格がなく、併願受験も可能です。1級は2級合格者のみ受験可能であり、併願受験は認められていません。
(出典:一般社団法人 日本認知症コミュニケーション協議会「検定試験」)
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、医療・福祉関係の資格を持っていない介護職員のための研修です。介護現場で、認知症ケアを行うために必要な最低限の知識や技術、考え方などの習得を目的としています。
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修は、介護施設・事業所で働く介護職員が、認知症の方に対する実践的な知識や技術を習得するための研修です。研修修了後は、介護現場の中心的存在としてチームをリードし、認知症介護の質を向上させることが求められます。
(出典:東京都福祉保健局「東京都認知症介護研修の概要」)
(出典:大阪府社会福祉協議会「認知症介護実践研修」)
4.認知症ケア指導管理士と認知症ケア専門士の違い
認知症ケア指導管理士と認知症ケア専門士は、名前がよく似ている資格のため、「どちらを取得すればいいのか迷ってしまう」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、認知症ケア指導管理士と認知症ケア専門士の違いや、資格取得のメリットについて詳しく解説します。
受験資格
認知症ケア指導管理士(初級)と認知症ケア専門士の受験資格は、以下の通りです。
認知症ケア指導管理士 | 資格や実務経験の有無に関わらず、誰でも受験可能(施設、病棟、学校など団体での受験も可能) |
---|---|
認知症ケア専門士 | 認知症ケアに関する施設や団体機関などにおいて、試験実施年の3月31日から数え、過去10年間で認知症ケアの実務経験を3年以上有する者 |
認知症ケア指導管理士は、誰でも受験することが可能です。
一方、認知症ケア専門士の資格を取得したい場合は、実務経験が必要です。例えば、2022年に認知症ケア専門士を受験したい場合は、2012年4月1日から2022年3月31日までの間に、認知症ケアの実務経験が3年以上必要になります。
(出典:一般財団法人 職業技能振興会「認知症ケア指導管理士(初級)認定試験」)
(出典:一般社団法人日本認知症ケア学会「試験概要:受験資格」)
試験概要
続いて、認知症ケア指導管理士と認知症ケア専門士の受験方法や試験内容について紹介しましょう。
認知症ケア指導管理士を受験する場合 |
出願はインターネットあるいは郵送にて行います。インターネット出願の場合はクレジットカードなどによる受験料支払いが可能ですが、郵送の場合は別途振り込みや必要書類の提出が必要です。手続きが完了すれば、受験票が送付されます。 認知症ケア指導管理士の試験問題は60問・五肢択一のマークシート式です。合否の通知は、試験終了後約6週間後を目安に郵送されます。 (出典:一般財団法人 職業技能振興会「認知症ケア指導管理士(初級)認定試験」) |
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認知症ケア専門士を受験する場合 |
認知症ケア専門士は、「受験の手引き」を購入してから受験申請を行う必要があります。試験は1次と2次に分かれており、第1次試験は200問・五肢択一のマークシート式です。第1次試験の合格者は、あらためて受験申請を行い、第2次試験に進みます。第2次試験は認知症ケアの事例(3題)に対する論述試験および面接試験です。 第2次試験に合格した後は、倫理研修を受け、登録申請を行うことで資格を取得できます。 (出典:一般社団法人日本認知症ケア学会「試験概要:受験資格」) |
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難易度
認知症ケア指導管理士は、認知症ケアに携わる人材の専門性向上を目的とし、認知症ケア専門士は、認知症ケアに対する優れた知識・技術を備えた専門技術士の養成を目的としています。資格取得の難易度は認知症ケア専門士のほうが高く、2020年に行われた認知症ケア指導管理士の合格率は67.0%、認知症ケア専門士の合格率は56.5%でした。
(出典:一般財団法人 職業技能振興会「過去の受験者情報」)
(出典:一般社団法人日本認知症ケア学会「認知症ケア専門士情報」)
認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士の勉強方法は、テキストを購入し独学で行うのが基本です。どちらの資格にも公式テキストがあるため、テキストの内容をしっかり理解した上で試験に臨みましょう。
上級資格
認知症ケア指導管理士と認知症ケア専門士には上級資格があります。
「上級認知症ケア指導管理士」は、介護現場における認知症ケアの専門性を高めるだけでなく、指導者としての人材育成も目的としています。
(出典:一般財団法人 職業技能振興会「上級認知症ケア指導管理士認定試験」)
一方の「認知症ケア上級専門士」は、認知症ケアチームにおけるリーダーや、地域の方に対するアドバイザーとして活躍できる認知症ケア専門士の養成を目的とした資格です。
(出典:一般社団法人日本認知症ケア学会「認知症ケア上級専門士」)
どちらの資格を受験する場合も、初級資格の保有をはじめ、規定の受験資格をクリアする必要があります。認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士を取得した上で、さらにキャリアアップ目指したい方は、ぜひ上位資格に挑戦してみてください。
取得のメリット
認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士を取得するメリットとして、「認知症の専門知識・技術を身に付けた人材としてスキルアップが見込める」という点が挙げられます。認知症ケアに関する専門性を身に付けることで、チームリーダーなど、ほかのスタッフを指導する役割を任される可能性も高まるでしょう。
また、前述したようにこの2つの資格は、認知症ケアに関する知識・技術を持っていることの証明となります。そのため、認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士の資格所有者は、転職の際に有利となる可能性があるでしょう。介護職員として活躍の場を広げたい方や、スキルアップを目指したい方は、認知症ケア指導管理士や認知症ケア専門士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
認知症ケア指導管理士は、認知症の症状や具体的なケア方法、認知症ケアの指導・管理について、高度な知識・スキルが身に付く民間資格です。資格は初級と上級に分かれていますが、初級を取得すれば介護職としてのスキルアップにつながるほか、家族の介護にも役立つでしょう。
認知症ケア指導管理士には、特別な受験資格が必要ないため、これから認知症についての知識を深めたい方にもおすすめです。受験にあたっては、出願方法などの試験概要をよく確認し、しっかりと対策した上で臨みましょう。
「介護のみらいラボ」では、認知症関連情報を含めた介護の専門的な情報を幅広く掲載しています。自身が関心を持つ領域の知識を深めたい方は、ぜひご活用ください。
※当記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています
▼監修者からのアドバイス
認知症ケア指導管理士は、認知症を発症している人やその家族に対して、適切なケア(介護)やサポートを提供するための資格です。認知症ケア指導管理士は、その資格取得で得られた認知症に関する知識や関わりの技術(スキル)を活かして、認知症の方やその家族のよりよい生活を送るための支援を行います。
具体的には、認知症の症状や進行の理解、家族への情報提供、また、日常生活での認知症の方の特性を理解しながら効果的なケアを提供します。
例えば、日常生活での認知症に関するトラブルや困りごとへの対応、暴力的な行動(BPSD:行動・心理症状)などに悩む家族へのアドバイスなどです。
日本は超高齢社会となり、認知症高齢者数はますます増加していくと予測されています。認知症に特化した認知症ケア指導管理士は、介護施設や地域の支援機関、病院などで活躍できる資格として、その需要は高まっています。
認知症ケア指導管理士は、2年ごとに更新する必要がありますが、これは、認知症に関する最新の知識や研究されていることにも目を向けるなど、学び続けることが重要だからです。更新があるからといって資格取得を躊躇したりせず、認知症がある方への介護の質を高めるためにも、資格取得を目指してくれることを望んでいます。
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