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仕事・スキル 介護資格 2023/04/18

#認知症#認知症ケア

認知症介護の主な資格一覧!特徴や選び方・実務経験なしで受験できる資格も紹介

文/山本史子(介護福祉士) thumbnail.jpg

認知症は、主にアルツハイマー型認知症や脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があり、それぞれ出現する症状が異なります。高齢化が進む日本では、今後も認知症の方が増えることが予想されます。それに伴い、認知症の専門知識や技術を持った介護従事者が求められています。実際に、2024年から資格を持たない介護従事者に「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられることになりました。
本記事では、認知症ケアの概要と認知症ケアができる資格の種類や選び方を解説するとともに、キャリアアップを目指せる資格まで詳しく紹介します。

1.認知症ケアとは



認知症ケアとは、認知症の方の自尊心を守りながら、認知機能の低下を防ぐための医療や介護、日常生活の支援を行うものです。認知症の方の精神的な健康を第一に考え、状況に応じた専門的なサービスを提供するとともに、認知症の方の意思を尊重し、他者との絆や感情など状況に応じた対応が求められます。

2.認知症ケアの主な資格の種類



認知症ケアの資格には、公的なものや、民間資格であっても公的機関から認められている資格など、さまざまな種類があります。実務経験の有無によって取得できる資格が異なるため、自身の状況に合ったものを選ぶことが大切です。それぞれの資格の受講条件や受講方法など、詳しく見てみましょう。

実務経験が必要のない資格

まずは、実務経験が不要で、誰でも取得できる資格を4つ紹介します。

  • 認知症介護基礎研修
  • 認知症介助士
  • 認知症ケア指導管理士
  • 認知症ライフパートナー

いずれも資格取得を目指すなかで、認知症の基礎的な知識が得られます。認知症の基本を理解し、適切な対応をするための第1歩となる資格と言えるでしょう。短期間の研修で資格取得できるものもあります。自身の状況やキャリアパスに合った資格を探してみましょう。

認知症介護基礎研修

認知症介護基礎研修は、新任の介護職員などが認知症介護に最低限必要な知識・技能を習得するための研修です。2024年から、介護サービスに関わる介護従事者のうち、医療・福祉関係の資格を持たない人の受講が義務化されます。各自治体で実施されており、3時間の講義を受ける必要があります。
認知症介護基礎研修に資格試験はなく、約150分のカリキュラムを受講すると修了証が発行されます。自治体によって受講方法や受講料が異なるため、受講前に確認しておくとよいでしょう。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症介護基礎研修
対象者 介護保険施設・事業所の介護従事者で医療、福祉の無資格者
受講方法 講義動画視聴150分(※東京都はe-ラーニングで受講)
受講料 自治体によって異なる(※東京都の場合3,000円)

(参考:東京都認知症介護研修の概要|東京都福祉保健局

認知症介助士

認知症介助士は、公益社団法人日本ケアフィット共育機構が認定する民間資格です。認知症の理解を深め、さまざまな場面で認知症の方の希望に添った対応を身につけられる内容となっています。正しい知識を持つことで認知症の方を受け入れ、安心して社会生活が営める場所を提供できるでしょう。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症介助士
対象者 個人、企業、市民(介護従事者以外も対象)
受験方法 ・試験会場での受験(マークシート方式or CBT方式)
・自宅のパソコンからオンライン受験(IBT方式)
上記の2つの受験方法から選択可能
受験料 3,300円(税込)※検定試験のみ
合格基準・合格率 ・全30問(マークシート方式)
・1問1点30点満点
・21点以上合格
・合格率:9割
公式ホームページ 認知症介助士|公益財団法人 日本ケアフィット共育機構

検定試験を受ける前に、認知症介助士セミナーを受講したい場合には、別途、受講料 16,500円が必要です。

認知症ケア指導管理士(初級)

認知症ケア指導管理士は、介護従事者以外でも取得できる資格です。認知症ケアの基本が学べるとともに、介護・医療現場で働く人のスキルアップを目的として実施されています。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症ケア指導管理士(初級)
対象者 資格や実務経験の有無を問わず、誰でも(介護従事者以外も対象)
受験方法 インターネットもしくは郵送による出願後、指定の試験会場にてマークシート方式での受験
受験料 ・一般7,500円
・学生4,000円(大学生・専門学校生・高校生が対象)
合格基準・合格率 ・60問・五肢択一(マークシート方式)
・総得点の7割を基準として、問題の難易度で補正した点数以上を取得
・合格率:59.2%(2010年~2021年平均)
公式ホームページ 認知症ケア指導管理士(初級)|一般財団法人職業技能振興会

資格取得後は、2年ごとに資格更新が行われます。更新希望者は、更新料(5,000円)を振込後、「資格更新申込書」と認定証作成用の写真を添えて送付するなどの手続きが必要です。

認知症ライフパートナー(3級~1級)

認知症ライフパートナーは、認知症の方の生き方や価値観を尊重し、望む生活を送ってもらうために本人や家族を支援することを目的とする資格です。3級~1級の3段階で、3級では認知症の基礎知識やコミュニケーション手法を学びます。2級では、介護・福祉現場の経験者に必要な知識や技術が身につけられる内容となっています。最上位となる1級は、ケアプログラムの立案や実践、運営・評価といった専門職の指導と育成を目的とした資格です。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症ライフパートナー3級 認知症ライフパートナー2級 認知症ライフパートナー1級
対象者 学歴、年齢、性別、国籍による制限はなく、誰でも(介護従事者以外も対象) 認知症ライフパートナー2級合格者
受験方法 インターネット等での出願後、年2回、全国8会場(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・岡山・福岡・熊本)にて、マークシート式での検定試験を実施
※2・3級の併願受験可能
インターネット等での出願後、年1回、全国5会場(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)にて、前半はマークシート式、後半は記述式の検定試験を実施
受験料 3級6,500円 2級10,500円 1級15,000円
合格基準・合格率 ・100点満点中70点以上
・合格率:76.4%(2022年冬季(第28回)結果より)
・100点満点中70点以上
・合格率:62.1%(2022年冬季(第28回)結果より)
・前半・後半で各100点満点とし、いずれも70点以上
合格率:33.3%(2022年冬季(第28回)結果より)
公式ホームページ 検定試験|一般財団法人 日本認知症コミュニケーション協議会

実務経験が必要な資格

続いて、実務経験が必要なものとして、国が推奨・実施している研修や資格を4つ紹介します。

  • 認知症介護実践者研修
  • 認知症介護実践リーダー研修
  • 認知症介護指導者養成研修
  • 認知症ケア専門士

実務経験なしの資格と比べて、より専門的な内容や技能が学べます。さらにキャリアアップも目指せる資格もあるため、まずは基礎資格から取得してみましょう。

認知症介護実践者研修

認知症介護実践者研修は、認知症介護実践者等養成事業実施要綱に基づいて、介護従事者に認知症の方に対する専門知識と技術の向上のために実施されます。認知症の方に充実した介護サービスを提供できることを目的とするものです。資格試験はなく、カリキュラムの受講と実習終了後、修了証が発行されます。自治体によって受講方法や開催時期、受講料が異なるため、受講前に確認しておきましょう。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症介護実践者研修
受講対象者 ・実施される自治体にある介護保険施設などの勤務者で、認知症基礎研修を修了者(あるいはそれと同等以上の能力を有するもの)
・身体介護に関する知識、技術を習得し、実務経験2年程度以上
上記、いずれも満たす者
受講方法 ・オンラインや集合形式など、自治体によって受講方法が異なる
・講義や演習・実習等が行われる
受講料 自治体によって異なる(※東京都の場合、無料。福岡県の場合、32,000円・テキスト代含む)

認知症介護実践リーダー研修

認知症介護実践リーダー研修は、「認知症介護基礎研修」「認知症介護実践者研修」の上位資格です。認知症介護実践者リーダー研修は、介護保健施設・事業所において、認知症の方に対するケアアドバイスができる、リーダー育成を目的としています。資格試験はなく、カリキュラムの受講と実習終了後、修了証が発行されます。自治体によって受講方法や受講料が異なります。自治体のホームページなどで確認が必要です。(2023年3月17日付)

資格名 認知症介護実践リーダー研修
対象者 ・介護保険施設などに従事し、5年以上の実務経験がある者
・チームのリーダーまたは、チームリーダーになることが予定される者
・認知症実践者研修を修了して1年以上経過した者
・従事する法人の所属長等が受講を認めた者 など
受講方法 ・自治体によって、受講方法が異なる
・講義や演習と施設実習を行う
受講料 自治体によって異なる(※東京都の場合、無料。兵庫県の場合、32,000円)

認知症介護指導者養成研修

認知症介護指導者養成研修は、都道府県・政令指定都市が実施する研修です。介護保険施設・事業者などの介護の質の向上と、介護従事者へ指導する人の養成を目的としています。資格試験はなく、カリキュラムの受講と実習終了後、修了証が発行されます。自治体によって受講方法や受講料が異なります。自治体のホームページなどで事前に確認しておきましょう。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症介護指導者養成研修
受講対象者 ・社会福祉士、介護福祉士などの資格保有者、またはこれに準ずる人
・認知症介護実践者研究・実践リーダー研修を修了した人、または同等の能力を有すると都道府県などが認めた人
・地域ケアを推進する役割が見込まれている人
上記、いずれの要件も満たす者
受講方法 所管の都道府県・政令指定都市の担当部署
・仙台センター:北海道地域・東北地域・中国地域・四国地域
・東京センター:関東・新潟地域・九州・沖縄地域
・大府センター:北陸地域・甲信地域・東海地域・関西地域
全308時間の研修を受講
受講料 230,000円(※別途、教材費・災害傷害保険料・宿泊費などの負担が必要)

認知症介護指導者養成研修の修了者は、「認知症介護基礎研修」や「認知症介護実践研修」の企画ができるほか、講師として講義の実施が可能になります。

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士は、認知症ケアに携わる人の自己研鑽と生涯学習の機会を提供できる資格です。(2023年3月17日時点)

資格名 認知症ケア専門士
(第1次試験)
認知症ケア専門士
(第2次試験)
受験資格(対象者) 認定試験実施年の3月31日から過去10年間までで、認知症ケアの実務経験が3年以上の人 A.認知症ケア専門士認定試験の第1試験合格者

B.過去に受けた認知症ケア専門士認定試験の第1次試験の合格者(各分野期限内に限る)

C.認知症ケア准専門士の資格取得後5年以内で、認知症ケア専門士認定試験の受験資格を満たしている人
※Bまたは、Cの方は受験申請前に「論述問題送付希望届」の提出が必要
受験方法 ・第1次認定試験:WEB試験
(マーク式・五者択一)
論述試験
事例3題に対する論述
受験料 4分野あり、1分野3,000円
(4分野合計:12,000円)
8,000円
合格基準 第1次認定試験:各分野50問 / 4分野合計:200問
各分野70%以上の正答率で合格
4分野すべて合格して第1次試験合格とする
・適切なアセスメントの視点
・認知症の理解
・適切な介護計画が立てられる
・制度や社会資源の理解
・認知症の方の倫理的課題の理解
※論述の合格基準は、上記5つの要件を満たしている場合。
公式ホームページ 認知症ケア専門士検定試験|一般社団法人 日本認知症ケア学会認定

認知症ケア専門士の認定試験には、第1次認定試験と第2次認定試験があり、第1次認定試験に合格しなければ第2次認定試験を受験できません。また、認知症ケア専門士には、受験年の3月31日までに満18歳以上の人なら認知症ケアの経験がなくても受講できる「認知症ケア准専門士」の資格もあります。
スキルアップを目指すなら、認知症ケア専門士の上級資格である「認知症ケア上級専門士」がおすすめです。チームリーダーとして介護従事者の指導や地域のアドバイザーの役割を担える人材として活躍でき、認知症ケアのプロとしてのキャリアアップも望めるでしょう。

3.認知症ケアの資格の選び方



どんな資格を取るべきか悩んだら、まず、現時点での経験の有無や、今後のキャリアを考えることが大切です。介護従事者は、認知症の方への対応の向上と専門的な知識が求められます。専門職として働くなら公的資格の取得が望ましいでしょう。最初の一歩として、基礎的な資格から取得し、そのうえで、徐々にランクアップしていくことになります。認知症の基礎知識があれば、ほかの福祉資格を受験する際にも役立ちます。
すでに介護福祉士などの資格を所有している場合には、介護従事者の指導や事業所の運営に関われるように、キャリアアップが望める資格を選んでみましょう。

4.まとめ:認知症ケアの基礎から学びキャリアアップを目指そう!



認知症ケアができる資格と一口に言っても、基礎的な知識が学べるものから、介護リーダーとして他のスタッフの指導ができるものまでさまざまです。今回紹介した認知症ケアの資格のほかにも、自治体や介護・福祉団体等が独自に実施する研修もあります。ただし、基礎の研修が修了していないと受講できない研修や資格があるため、現在資格を持っていない方は、基礎から学び、スキルアップやキャリアアップを目指しましょう。

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山本史子(Fumiko Yamamoto)

介護福祉士

デイサービスで約20年現場職員として経験。2007年に介護福祉士の資格を取得。「この施設にいると楽しい、また行きたい」と笑顔で帰ってもらえるデイサービスにしたいという思いで20年間利用者様のケアをしている。知的障害のある自閉症の息子がいるため、介護現場で働きながら、母親の立場から障がい者福祉にも関わっている。

山本史子の執筆・監修記事

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  • 構成・文/介護のみらいラボ編集部 監修/赤羽克子
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