認知症ケア専門士とは?資格取得のメリットを解説
構成・文/介護のみらいラボ編集部認知症とは、認知機能が持続的に低下して、日々の暮らしに悪影響を及ぼしている状態です。認知症の高齢者と関わる際にはプライドを傷つけないように意識しつつ、相手にとって分かりやすい言葉で話したり、できないことをサポートしたりするなど配慮が必要です。
当記事では、資格取得を通じて認知症ケアの知識を深めたい人に向けて、認知症ケア専門士の概要や勉強方法を解説します。家族が認知症になり、関わり方に悩む人・介護の現場で認知症ケアを提供する立場の人は、ぜひ参考にしてください。
1.認知症ケア専門士とは?
認知症ケア専門士とは、認知症ケアに関する高度な知識と技能を備えた人材を養成するために設立された資格です。認知症ケア専門士を取得するためには原則、認知症ケアに関する実務経験を積み、日本認知症ケア学会の主催する認定試験に合格した上で、登録の手続きをする必要があります。
より高度な専門知識を養うためには、認知症ケア専門士の上級資格「認知症ケア上級専門士認定試験」に挑戦するのもおすすめです。認知症ケア上級専門士認定試験に合格すると、ケアチームのリーダーや地域のアドバイザーとして活躍できます。
試験概要
認知症ケア専門士の第1次試験は、試験実施年3月31日から過去10年の間に3年以上、認知症ケアの実務経験を持つ人が受験できます。第1次試験の試験内容は、下表の通りです。
試験内容 |
各分野50問の合計200問を、五者択一のマークシート方式で出題 【1】認知症ケアの基礎 【2】認知症ケアの実際Ⅰ:総論 【3】認知症ケアの実際Ⅱ:各論 【4】認知症ケアにおける社会資源 |
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各分野70%以上の正答率で、第2次試験の受験資格を取得することが可能です。ただし、認知症ケア准専門士の資格取得後5年以内の人は、第1次試験を受験することなく第2次試験へと進めます。
第2次試験の試験内容は原則、論述試験と面接です。論述試験は会場で受験する方式ではなく、第1次試験の合格者に問題が送付され、回答を提出します。第2次試験の合格要件は、論述問題への回答および後日実施される面接において、以下の条件を満たすことです。
【1】適切なアセスメントの視点を有している者
【2】認知症を理解している者
【3】適切な介護計画を立てられる者
【4】制度および社会資源を理解している者
【5】認知症の人の倫理的課題を理解している者
第2次試験の合格後に倫理研修を受講し、所定の書類を作成して提出すると、認知症ケア専門士を取得できます。資格の取得後は全国にある認知症ケア専門士会に参加し、地域の人を支援したり、介護技術の研鑽に努めたりすることも可能です。
資格取得後は更新が必要
認知症ケア専門士は、5年ごとに更新が必要とされる資格です。資格を更新するためには、認知症ケアスキルアップ研修会や講演会に参加して30単位を取得し、以下の書類を提出する必要があります。
・認知症ケア専門士資格更新申請書(様式I)
・認知症ケア専門士資格更新単位申請書(様式II)
・認知症ケア専門士参加・発表申請用紙(様式III)
・認知症ケア専門士施設内研修等修了証明書(様式IV)
認定期間内の取得単位数が足りない場合は「保留申請」を行うと、1年のみ、更新期間を延長できます。保留申請を行える期間をすぎると、認知症ケア専門士の資格を失うため、注意しましょう。
2.認知症ケア専門士の資格を活かせる仕事3選
認知症ケア専門士は介護現場で働く人が、認知症ケアに特化したスキルを身につけるため、取得することも多い資格です。以下では、資格を活かせる職業と担当する仕事内容、認知症ケア専門士に期待される役割について解説します。
・施設介護員
特別養護老人ホーム・グループホームなど認知症高齢者を受け入れる社会福祉施設では、認知症ケア専門士の資格を活かせます。社会福祉施設における認知症ケア専門士の主な役割は、入所者や利用者に対して必要な支援を提供したり、興味関心を引くイベントを企画したりすることです。経験豊富な認知症ケア専門士は管理職ポストに就き、他のスタッフに指導・アドバイスすることもあります。
・訪問介護員(ホームヘルパー)
訪問介護員(ホームヘルパー)の主な仕事は、ケアマネジャーの決定に従って認知症高齢者などの自宅を訪問し、身体介護・生活援助などのサポートを行うことです。訪問介護員(ホームヘルパー)として働く認知症ケア専門士は、認知症高齢者や家族に対する精神的なケアを担当することもあります。
・施設管理者
認知症ケア専門士は、認知症高齢者を受け入れる社会福祉施設に就職し、施設管理者として活躍することもできます。施設管理者とは、社会福祉施設の管理・運営を担当する責任者です。施設管理者自身が高齢者と関わる機会は少ないものの、現場の状況を正しく把握するためには、認知症ケア専門士として働いてきた経験や実務スキルが役立ちます。
3.認知症ケア専門士の資格を取得する2つのメリット
厚生労働省によると、「2025年には認知症高齢者が約700万人になる」と言われています。厚生労働省は「65歳以上の高齢者のうち認知症高齢者が占める割合は、将来的に増加する」とも見込んでおり、認知症ケア専門士の重要性はより一層高まるでしょう。
また、認知症ケア専門士は、以下のメリットを魅力に感じる人にもおすすめの資格です。
●認知度が高く職場での評価につながる
認知症ケア専門士は国家資格ではないとはいえ、介護・福祉業界において、高い信頼度を誇ります。認知症ケア専門士を取得した努力が職場で評価されると、給与アップを狙えるケースもあるでしょう。
また、介護福祉・医療業界に就職・転職する際には、履歴書や面接で認知症ケア専門士の資格をアピールすることが可能です。認知症ケアに関する専門人材を募集している職場では、認知症ケア専門士の資格が評価されて、内定を得られる可能性が高まることが期待できます。
●正しい知識を持ってケアを行える
認知症ケア専門士の資格を更新するためには定期的に講習会などに参加し、認知症ケアに役立つ実践的な知識を養う必要があります。養った知識を日々の業務に応用すれば、自信を持って認知症ケアにあたれます。
また、認知症ケア専門士は認知症に関する正しい知識をもとに、認知症高齢者家族の相談に乗ることも可能です。相談に乗った家族から「ありがとう」の言葉を聞くと、仕事のやりがいを実感できます。
4.認知症ケア専門士の資格を取得するための勉強方法
介護士や社会福祉士・看護師・精神保健福祉士などが専門性を高めるために、認知症ケア専門士を取得することも多くあります。確実に資格を取得するためには、公式テキストである「認知症ケア標準テキスト」を丁寧に読み込み、正しい知識を身につけましょう。
「公式テキストを丁寧に読み込むのみでは不安」と感じる人は、一般社団法人日本認知症ケア学会などの主催する受験対策講座を受講しても良いでしょう。受験対策講座では公式テキスト内の特に重要なポイントを講義形式で説明してくれるため、効率的に勉強できます。
受験対策講座は模擬試験を通じて、実力試しを行うことが可能です。模擬試験の終了後には問題の意図や解答のポイントを解説してくれるため、認知症ケアに関する理解が深まります。
認知症ケア専門士の受験対策講座の参加費は、15,000円です。受験対策講座に申し込むと参加費の振り込み方法などを通知するハガキが郵送されるため、期日内に手続きをしましょう。
第1次試験に向けてより多くの問題に触れたい人は、市販の問題集を購入して勉強する方法がおすすめです。問題集を解いている最中につまづいたポイントは公式テキストで復習し、内容の理解を深めてください。
第1次試験の合格の可能性を高めるためには「問題集を解く・公式テキストで復習する」を3回以上、繰り返しましょう。問題集の答え合わせを行う際には解説を丁寧に読み、解答の根拠を他人に説明できるレベルまで理解を深めると、合格の可能性が高まります。
まとめ
認知症ケア専門士とは、認知症ケアに関する高度な知識と技能を身につけて、介護福祉や医療の現場で活躍できる人材を育成する目的から設立された資格です。高齢化社会において認知症対応スキルを持つ人材の担う役割は大きく、各種専門職で働く人がスキルアップするために資格取得を目指すことも多くあります。認知症ケア専門士を取得するためには、公式テキストや受験対策講座を活用し、十分な知識と技能を身につけましょう。
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※当記事は2022年3月時点の情報をもとに作成しています
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