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仕事・スキル 介護資格 2025/03/05

#精神保健福祉士

精神保健福祉士になるための勉強法とは?合格ポイント3つなどを解説

文/久木田みすづ(精神保健福祉士・社会福祉士・心理カウンセラー) 250305_thumb.jpg

現代の日本において、生涯のうちにうつ病を経験する人の割合は、約15人に1人といわれています。それだけに、メンタルの不調を抱える人への心理的・社会的サポートの必要性は、非常に高いといえるでしょう。

この記事では、メンタルに問題を抱える人を支援する「精神保健福祉士」の資格を取得したい人のために、試験の勉強方法や合格のポイントを解説します。精神保健福祉士である筆者の体験も紹介しますので、どのように試験勉強をすればいいか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

1.精神保健福祉士国家試験とは?

精神保健福祉士とは、精神に何らかの障害や病気を抱えている人が社会復帰などを目指す際に、さまざまな側面からサポートする専門職です。精神保健福祉士法に基づく名称独占の資格であり、専門的な知識・技術を使った助言や指導、日常生活に適応するための訓練、援助などを行います。

精神保健福祉士は、医療・障害者福祉・行政分野などで活動するのが一般的です。医療分野で働く場合は、精神障害者への生活支援が中心となり、病院での受診や入退院の援助、医療機関から社会生活へ移行するためのサポートなどを行います。

一方、障害者福祉分野では、障害者福祉施設でのサポートや日常生活を送るための訓練施設における家事・会話などのサポート、就労訓練施設における就労アドバイスなどを行います。

また、行政分野では、地域をつなぐネットワークの構築や就労支援事業、地域移行支援活動の分析、将来計画の立案、住民への普及啓発活動など、幅広い支援を担当します。

試験科目

精神保健福祉士国家試験は、以下のとおり全部で18科目です。

1. 精神医学と精神医療
2. 現代の精神保健の課題と支援
3. 精神保健福祉の原理
4. ソーシャルワークの理論と方法(専門)
5. 精神障害リハビリテーション論
6. 精神保健福祉制度論
7. 医学概論
8. 心理学と心理的支援
9. 社会学と社会システム
10. 社会福祉の原理と政策
11. 社会保障
12. 権利擁護を支える法制度
13. 地域福祉と包括的支援体制 14. 障害者福祉
15. 刑事司法と福祉
16. ソーシャルワークの基盤と専門職
17. ソーシャルワークの理論と方法
18. 社会福祉調査の基礎

受験資格

精神保健福祉士国家試験の受験資格は、次のとおりです。

  • 福祉系の4年制大学で指定科目を修めて卒業した人(卒業見込みも含む)
  • 福祉系の2年制(または3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(3年制の場合は1年以上)相談援助の業務に従事した人(従事する見込みの人も含む)
  • 精神保健福祉士短期養成施設(6か月以上)を卒業(修了)した人(見込みも含む)
  • 精神保健福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した人(見込みも含む)

受験手数料

受験手数料は、精神保健福祉士のみを受験する場合は24,140円です。一方、精神保健福祉士と社会福祉士を同時に受験する場合は36,360円(精神保健福祉士:19,520円、社会福祉士:16,840円)、精神保健福祉士の共通科目免除により受験する場合は18,820円となります。

合格率

精神保健福祉士国家試験における2024年の合格率は、70.4%でした。すべての年度を平均すると、63%程度の合格率となっています。

2.精神保健福祉士試験の勉強方法

精神保健福祉士試験の平均合格率は60%を超えており、計画的にしっかりと勉強すれば十分合格を狙えるでしょう。ここでは、効果的な勉強方法を紹介します。

模擬試験で自分の実力を知る

精神保健福祉士試験の問題はさまざまな方面から出題されるので、自分の実力を把握しながら、効率的に勉強を進めることが大事です。まずは、模擬試験で自分の得意分野と不得意分野を知り、得意分野だけに知識が偏らないようにしましょう。

模擬試験は、実際の受験と同じような体験ができるので、本番に対するシミュレーションにもなります。

精神保健福祉士国家試験対策講座を受ける

以前は、スクールに通って試験対策をするのが一般的でしたが、現在はオンライン講座なども充実しており、国家試験に向けた集中講座を受講できるコースは増えています。

試験対策講座は効率的に学習できるだけでなく、わからない部分を直接講師に質問できるため、「範囲が広いため、どこから手をつけていいのか悩んでいる」といった場合におすすめです。

友人同士で定期的に勉強会を開く

精神保健福祉士国家試験を受験する友人が近くにいる場合は、一緒に勉強する機会を持つのがおすすめです。知識を共有したり、勉強の進み具合を確認したりすることがお互いの刺激となり、モチベーションが維持しやすくなります。

わからないところを教え合えるのも、大きなメリットといえるでしょう。

3.独学での勉強方法は?

スクールや講座などを利用せず、独学で合格を目指す場合は、「独学ならではの勉強方法」を身につけることが大切です。1人だと不安なこともあるかもしれませんが、コツコツと続ければ、きっと手ごたえを感じられるでしょう。

以下に、独学で勉強する際のポイントを紹介します。

約3年分の過去問をこなす

国家試験の勉強をするにあたって、「過去問を可能な限りこなす」という方法は、絶対に外せません。過去問を解くことで、国家試験の出題傾向がつかめるほか、自分にとって集中的に勉強すべきポイントも把握しやすくなります。

医療や福祉関連の法律・制度は頻繁に変わるため、約3年分の過去問をこなし、情勢の移り変わりを見ておくと安心です。

参考書などを活用する

参考書には、試験で覚えるべきポイントがバランスよく記載されています。わからない箇所があれば辞書がわりに使い、繰り返し目を通しておくのがよいでしょう。

最近では、精神保健福祉士国家試験の勉強ができるWebサービスやアプリなども登場しています。自分のライフスタイルや学びやすさに合ったものを選んで、効果的に活用してください。

施設などでボランティアをする

参考書やWebサービスなどを活用すれば、ある程度の知識は頭に入ります。しかし、机の上で学んだことよりも、体験を通じて身につけた知識のほうが圧倒的に心に残ります。

そのため、時間が取れて訪問してみたい障害者施設などがある場合は、定期的にボランティアをするのもおすすめです。ボランティアという客観的な立場で現場に入ると、さまざまな事例が見えやすくなるでしょう。

みなさんの中には、精神保健福祉士の仕事内容について、演習や実習で理解できている人も多いかもしれません。しかし、いくつものケースを実際に体験しておくと、国家試験の事例問題がより解きやすくなるはずです。

4.合格するためのポイント

最後に、精神保健福祉士国家試験に合格するためのポイントをお伝えします。独学かどうかにかかわらず、以下のポイントを押さえながら勉強を進めてみてください。

毎日2時間は勉強時間を確保する

効率よく学習するためには、日常生活の中で勉強を習慣化することが大切です。たとえば、必ず行う物事とセットにすると(朝の支度時や夕食後など)、習慣化しやすくなります。

また、2〜3時間続けて勉強できないような場合は、30分ずつに区切りながらでも大丈夫です。とにかく、勉強しない日を作らないようにしましょう。

私は毎日少しでも勉強時間を確保するために、「食後は必ず勉強をする」と決めて習慣化していました。前述した「わからない箇所があれば、参考書を辞書がわりにして知識を定着させる」というやり方も効果的だったと思います。

不得意科目のみに力を入れすぎない

精神保健福祉士国家試験の出題範囲は広いため、まんべんなく勉強する必要があります。試験対策では、つい不得意科目を重点的に勉強したくなりますが、精神保健福祉士国家試験の場合は、不得意科目のみを頑張るのではなく、得意科目で多くの点を取れるように進めるほうが効率的です。

1科目でも0点を取らないように気をつける

精神保健福祉士国家試験では、1科目でも0点があると不合格になります。受験生には1人ひとり得意・不得意科目があるので、0点を取ってしまうことも珍しくありません。どの科目でも1点以上取れるように、学習を進めましょう。

モチベーションを維持する

試験勉強は決して楽ではありません。おそらく挫折しそうになることもあるでしょう。そんなときは、精神保健福祉士の資格を目指したきっかけを振り返ってみてください。初心に戻れば、きっとモチベーション維持につながるはずです。

ちなみに私は、メンタルヘルスに関する仕事に就くのが夢で、勉強中は精神保健福祉士として働く自分の姿を常にイメージしていました。そして、そのことがモチベーション維持につながっていたと感じています。

まとめ:精神保健福祉士は何歳からでもチャレンジできる

経済問題や環境問題、少子高齢化、子どもたちの教育問題......。さまざまな課題を抱える現代社会は、ストレスが溜まりやすい環境にあります。その傾向は、今後も続くでしょう。そのため、メンタルの不調を抱える人をサポートする専門職は、ますます重要になっていきます。つまり、精神保健福祉士は「社会に必要とされる資格」といえるわけです。

私は精神保健福祉士として職に就き、初めて支援した方の笑顔を見たときは、本当にうれしく思いました。また、私たちのサポートやアドバイスによって金銭的負担、精神的負担が減った方から「ありがとう」といわれると、「この資格を取ってよかった」と大きなやりがいを感じます。 

国家試験の受験生には現役の学生はもちろんのこと、社会人経験を積んだ人も多くいます。何歳からでもチャレンジできる点が、精神保健福祉士の仕事の魅力でもあります。今からでも遅くはありません。あなたも、精神保健福祉士を目指してみませんか。

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久木田みすづ(Misuzu Kukita)

精神保健福祉士・社会福祉士

福祉系大学卒業後、カウンセリングセンターの勤務を経て、心療内科クリニック・精神科病院で精神保健福祉士・カウンセラーとして従事。うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんと家族に対する相談や支援に力を入れる。現在は、主にメンタルヘルスの記事を執筆するライターとして活動中。

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