ケアマネジャーの役割がすぐにわかる!具体的な仕事内容を徹底解説
文/長谷部宏依(介護福祉士・社会福祉士・ケアマネジャー)
ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、介護の必要な高齢者が自立した生活を送れるようにサポートする専門職です。介護保険制度に基づいて、利用者さんとご家族の状況を把握し、ケアプラン(介護計画書)を作成する役割を担います。
しかし、「介護の現場に必要な存在」というイメージはあっても、「実際に何をする仕事なのだろう」「ほかの介護職とどう違うのだろう」と感じている人は、意外に多いかもしれません。特に、ケアマネジャーに興味を持ち、目指そうと考えている方にとって、具体的な役割や仕事内容は気になるポイントではないでしょうか。
当記事では、ケアマネジャーの役割やできること・できないことについて、詳しく解説します。筆者の体験談も紹介しますので、最後まで読めば、ケアマネジャーがどのような職業なのかが、しっかり理解できるはずです!
1.ケアマネジャーの役割は?
ケアマネジャーは、要介護者やご家族を支援する重要な役割を担う職種です。「介護支援専門員」とも呼ばれ、介護が必要な高齢者が自立した生活を送れるように、適切なケアプランを作成したり、関係機関と連携したりします。
ここからは、ケアマネジャーの主な役割を解説します。
要介護認定の申請サポート
ケアマネジャーの大切な役割の1つが、要介護認定の申請サポートです。要介護認定は、利用者さんがどの程度の介護を必要とするかを判定する制度で、判定結果によって利用できる介護サービスの内容が決まります。
申請手続きは複雑でわかりにくいため、初めてのご家族にとっては大きな不安材料となります。そのためケアマネジャーは、申請書の作成や書類準備、面接調査のアドバイスなど、あらゆる面で手続きをサポートし、ご家族の負担を軽減します。
また、ケアマネジャーは、要介護認定の見直し申請にも対応します。利用者さんの体調の変化に応じた再申請が必要な場合、見直しを促すアドバイスをすることで、スムーズに手続きが進むでしょう。
ケアプラン(介護計画書)の作成
ケアマネジャーの中心的な業務が、ケアプランの作成です。ケアプランとは、介護サービスの内容や頻度、方針などを記した書類のことで、利用者さんの健康状態や生活環境、ご家族の要望をもとに、最適な介護サービスの計画を立てます。
ケアプランを作成する際は、訪問介護やデイサービス、福祉用具の貸与などのさまざまな介護サービスが検討され、最適な介護支援の組み合わせを決定します。
なお、ケアプランは一度作成して終わりではなく、利用者さんの状態が変われば見直しが必要です。ご家族の介護負担や利用者さんの要介護度の変化を考慮しながら、ケアプランを柔軟に変更するのも、ケアマネジャーの大事な役割です。
関係機関との連携
関係機関との連携もケアマネジャーの重要な役割であり、介護施設や介護サービス事業所、医療機関など、多くの機関が関わる介護サービスの橋渡しの役割を担います。
例えば、訪問介護のスケジュール調整や医療機関との情報共有を通じて、利用者さんが適切な介護を受けられる環境を整えるのも、連携業務の1つです。施設の利用に関する不満の解消や、サービストラブルの対応も必須です。
このように、ケアマネジャーは関係機関との連絡調整を行い、迅速な問題解決を支援しなければなりません。
利用者さんやご家族の相談窓口
利用者さんやご家族の「相談窓口」の役目を果たすのも、ケアマネジャーの職務です。初めて介護をするご家族は、何をすればいいかわからないことがよくあります。そうした場合、ケアマネジャーは、介護サービスの選び方や手続きなどについて的確にアドバイスし、不安を解消していきます。
ご家族のメンタルケアも重要な役割です。ご家族は介護の負担やストレスを抱えやすいため、適切なアドバイスや共感が心の支えになります。また、トラブル発生時には、関係者の話し合いを調整する仲裁役になり、ご家族が安心して介護を進められる環境を整えます。
2.働く場所ごとのケアマネジャーの役割
ケアマネジャーは、働く場所によって求められる役割が異なります。ここでは勤務先ごとの役割を紹介します。
介護施設
介護施設に勤務するケアマネジャーは、施設に入所している利用者さんのケアプランを作成するのが、主な業務となります。
施設では入所者が24時間体制の支援を受けるため、生活全般を支える必要があります。それには、介護職員や看護師といった施設職員との連携が重要であり、食事介助や入浴支援、機能訓練などの方法について職員と調整をし、利用者さん1人ひとりの健康状態や生活の質が適切に保たれるよう支援しなければなりません。
また、利用者さん本人やご家族との面談で、生活上の悩みや不安をヒアリングし、適切な解決策を講じるのもケアマネジャーの大事な役割です。ご家族が不安を感じている場合は、利用者さんのケア内容を共有し、安心感を与える役割も担います。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所に勤務するケアマネジャーは、在宅で生活する要介護者を支援する役割を担います。在宅介護は施設介護と異なり、利用者さんごとに異なる生活環境やご家族の支援体制があるため、1人ひとりに合わせた支援が必要です。
ケアマネジャーは、定期的に利用者さんの自宅を訪問し、生活環境や健康状態を確認します。そして、その情報をもとに訪問介護やデイサービスのスケジュールを調整し、利用者さんが無理なくサービスを受けられるように支援します。
さらに、介護の中心的な存在であるご家族へのサポートも重要です。ご家族は介護の負担を感じやすいため、負担がかかりすぎないように的確なアドバイスを行い、メンタル面をケアする必要があります。
つまり、ケアマネジャーがご家族にとっての相談役となることで、孤立感を抱かずに介護に取り組める環境を構築するわけです。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、地域の高齢者やご家族を包括的に支援するための拠点であり、主任ケアマネジャーと保健師、社会福祉士の配置が義務づけられています。
地域包括支援センターにおける、ケアマネジャーの代表的な業務に、介護保険サービスの利用が始まる前の要支援者のサポートがあります。具体的には、要支援者に対して介護予防プランを作成し、健康的な生活が続けられるよう支援します。
地域包括支援センターは、地域住民の相談窓口としての役割も果たしているため、ケアマネジャーは地域の高齢者やご家族からの介護相談や、支援依頼にも対応する必要があります。それによって、介護が必要になる前の段階からの適切なサポートが可能になるでしょう。
加えて、地域全体の介護予防活動を推進し、地域包括ケアシステムの構築に貢献するのも、大事な役割です。地域包括ケアシステムとは、地域の高齢者が住み慣れた場所で生活を続けられるようにするための支援体制で、介護が必要な高齢者と地域の住民が協力し合う仕組みづくりを目指しています。
3.ケアマネジャーができること
ケアマネジャーには、ほかの介護職にはできない専門的な役割がいくつかあります。
- ケアプランの作成
- 利用者さんやご家族の対応
- 介護サービス事業所との連携や調整
- 介護サービスのスケジュールや介護サービス費の管理
- 入退院や施設入所の支援
- 要介護認定の申請代行
- モニタリング
ケアプランの作成は、ケアマネジャーの独占業務とされているため、ほかの介護職は行えません。また、利用者さんが適切な介護サービスを受けられるように、介護事業者との間でサービス調整を行うのも、ケアマネジャーが担うべき役割です。
要介護認定の申請は、ご家族や利用者さん自身でもできますが、ケアマネジャーが代行することで手続きがスムーズに進むでしょう。
4.ケアマネジャーができないこと
ケアマネジャーには、できない業務もあります。
- 直接的な介護
- 金銭の貸与や管理
- 医療行為
- 身元保証人
食事や入浴、排せつの支援は介護職員やヘルパーの業務であり、ケアマネジャーは直接的な介護は行いません。
金銭の貸し借りや管理もできません。通帳や現金の管理といったお金に関する業務が求められる場合は、成年後見制度を利用するのがよいでしょう。
注射や投薬、採血などの医療行為は、医師や看護師の専門業務です。ケアマネジャーは医療機関と連携して支援をしますが、医療行為自体はできません。
ケアマネジャーは身元保証人になることもできません。入院や施設入所の際に必要な場合は、病院や地域包括支援センターに相談しましょう。
5.ケアマネジャーへの相談事例
ケアマネジャーは、介護に関する相談窓口としての役割を果たし、ご家族や利用者さんの不安や悩みに応えます。ここでは筆者が経験した相談事例について解説し、ケアマネジャーがどのように対応するのかを解説します。
書類の書き方がわからない
介護サービスを利用するにあたっては、要介護認定の申請書や契約書などの書類が必要です。これらの書類は専門用語が多く、ご家族が記入に迷うケースは少なくありません。
そうした場合、ケアマネジャーは書類の記入方法を説明し、ご家族と一緒に記入内容を確認します。要介護認定の申請書は重要で、内容が不十分だと適切な要介護度が認定されない恐れがあるため、ケアマネジャーの支援は不可欠です。
筆者も、介護保険更新申請用紙が市役所からご家族のもとに届いた際、ご家族からよく電話がかかってきて、書類の書き方をアドバイスしました。ときには、介護保険証とともに市役所に代行申請するケースもありました。
最近本人の様子がおかしいので見にきてほしい
「最近、本人の様子が普段と違う」とご家族が気づき、ケアマネジャーに相談が寄せられることもよくあります。
相談を受けたら、ケアマネジャーは利用者さんの自宅を訪問し、体調や行動の変化を観察します。ご家族にヒアリングしたうえで、必要に応じて医療機関や訪問看護師と連携することもあります。
ケアプランの修正が必要な場合は、関係機関を集めてサービス担当者会議を開催し、今後の対応について話し合う必要もあるでしょう。
急にデイサービスに行きたがらなくなってしまった
デイサービスは、利用者さんに日常生活の支援、機能訓練、レクリエーションなどを提供する介護サービスです。利用者さんが急に「行くのを辞めたい」と言い出した場合、ケアマネジャーは利用者さんの不安を解消する方法を検討します。
本人の話をよく聞き、施設自体が合わないようであれば、別のデイサービスを探します。筆者の場合は、本人やご家族と一緒に施設を見学することもありました。デイサービスではなく、ほかの介護サービスを提案することもあります。
このケースでは、無理に続けさせようとせず、原因を把握し、利用者さんの状況に合った方法を見つけることが大事です。
介護に疲れたから施設に入所させたい
ご家族が介護疲れを感じる場面は少なくありません。特に、夜間の見守りや認知症の対応が必要なケースでは、心身の負担が大きくなります。
施設入所を希望された場合、ケアマネジャーはご家族の気持ちに寄り添い、施設の選択肢を提案します。提案にあたっては、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなど施設の違いを説明し、本人に合った施設の選択をサポートすることが大事です。
ショートステイや訪問介護を利用して、一時的に介護負担を減らす方法もあります。その場合は、ご家族が施設入所の流れや必要な手続きを理解できるよう支援し、精神的な負担を軽減するのがケアマネジャーの役割です。
まとめ
ケアマネジャーは、利用者さんの生活の質を高める「縁の下の力持ち」であり、ケアプランの作成からサービスの調整、相談窓口としての役割まで幅広い業務を担当しています。
ケアマネジャーに興味のある人は、この記事を参考にして資格取得に挑戦してみてください。
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