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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/01/26

#社会福祉士

社会福祉士がキャリアアップするために~独立、資格取得などさまざまな方法を紹介~

文/金杉宏敬 pixta_60917579_M (1).jpg

社会福祉士として働いているなかで、キャリアアップしたいと考えることがあるかと思います。
独立、転職、資格取得などさまざまな方法がありますが、自分に合った方法を見つけるために、経験談を聞きたいという方も少なくないでしょう。
本記事では、独立という方法でステップアップを図った筆者が、社会福祉士のキャリアアップの具体的な方法について経験談を交えながらご紹介します。

1.社会福祉士は経験が重視される

福祉業界の大きな特徴は、何より経験が重要視されることです。社会福祉士でもそれは例外ではありません。

資格取得後、初めてとなる就職先は当然ながら未経験として入ることになりますが、大切なことは、仕事を「こなす」のではなく、目の前の1つひとつの業務が自分自身の「経験」として上積みされていくように行うことでしょう。

そのためには、相談を受けたケースに対して真摯に取り組むことはもちろん、相談後の振り返りも重要になります。相談内容は1つとして同じものはなく、本人の背景や取り巻く環境、本人の意思、家族の想いや関係性などすべて異なります。

当然、マニュアル化できるものではありませんが、相談がうまくいった理由、うまくいかなかった理由を振り返ることで、相談員としての相談のあり方を確認します。その作業で「気づき」を得ることにより経験値を上げていくことができます。
そうした作業が、ステップアップの「基本のキ」といえると思います。

2.社会福祉士の資格を活かしたキャリアアップ

上述の基本を踏まえて、社会福祉士の資格をそのまま活かしてさらにキャリアアップを図るには、主に次の3つの方法があります。

転職により職種を変える

一般的に、職場を転々とすることはマイナスのイメージがありますが、相談員の場合、多くの職場や職種を経験することはプラスとなることが多いです。相談業務は「人」が「人」を支援する仕事です。「どこの職場で働いているか」「肩書」などの外見よりも、「どのような支援をするのか」という中身が最も問われます。

相談員が多くの社会資源や制度に精通し、過去にさまざまな相談に乗っている経験が多ければ多いほど相談者は安心できるものです。
筆者は独立前まで2つの法人のみの経験しかなかったため、もっと多くの法人や職種を経験しておけば、今以上に支援の幅が広がったのではないかと少し後悔しているほどです。

施設や事業所の管理職になる

経験を積むと、職場内で信用を得て地位も上がり、新人職員を指導する立場になっていきます。
新人職員は右も左もわからない未経験者なため、自分自身の経験を伝えることで新人職員の悩みや不安が解消されます。また中途採用で入職した職員に対しても事業所内のルールを教えながら組織のリーダーとして活躍することができます。

1つの職場で長く勤める職員は事業所にとって大変貴重な存在です。施設や事業所の規模によりますが、相談員の長の枠を超えて法人の運営に関わることも可能です。
私が勤務していた職場は非常に働きやすい職場だったため、10年以上勤務している職員が数多くいました。長く勤務することは安定した人間関係や仕事のやりやすさにもつながるため、落ち着いた環境で仕事に取り組めるメリットがあります。

社会福祉士として独立する

社会福祉士として実績を積んだ後、一念発起して独立を目指す社会福祉士も増えています。
主な業務内容は、成年後見の受任、講師、行政関係や各団体の外部委員、介護認定審査会委員、専門相談員などで、活躍できるフィールドは幅広くあります。独立することにより自分自身でスケジュール管理を行うことができ、また業務内容の選択ができるなど、魅力が数多くあります。

しかしその一方で、専門職として適切な業務を遂行する必要があり、組織に属していないためすべての行動が自己責任となります。筆者は独立して丸6年が経過しますが、悩みながらも現場で勉強をさせていただいており、非常に充実した日々を送っています。

一方で、業務以外にも労務管理や健康管理も重視しなければなりません。また、休日も休むことなく仕事に没頭してしまうときもあり、あえて意識をしながらオンとオフの切り替えや定期的な健康チェックなどを行うように努めています。独立を目標にしている方はぜひチャレンジしてみて下さい。

3.他資格取得によるキャリアアップ(ダブルライセンス)

社会福祉士の資格以外の資格を取得することで、キャリアアップを図る方法もあります。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれ、社会福祉士資格と相性がよい資格です。社会福祉士は「ソーシャルワーカー」と呼ばれ、社会生活で助言や指導・援助を必要とする方を対象にしているのに対し、PSWは精神疾患の方を対象としています。

そのため、精神保健福祉士資格を取得することで援助対象者の幅が広がります。すでに社会福祉士登録を行っていれば、精神保健福祉士養成校の短期通信課程(9か月程度)の入学が可能となり、受験の共通科目が免除になるため、非常に取りかかりやすい資格です。

私は精神保健福祉士資格は持っていませんが、周りの仕事仲間の多くはこの資格とのダブルライセンスで活躍しています。
今、80代の高齢の親が50代の引きこもりの子どもと同居し、経済面を含め世話をしている「8050問題」が社会問題となっています。高齢者担当の相談員が80代の高齢者支援のために自宅訪問した際、50代の子どもの問題を発見して支援につなげるケースもあります。

50代の子どものすべてに障害があるわけではありませんが、何らかの精神疾患を抱えているケースは少なくありません。精神疾患の方は年々増加傾向にあるため、今後はますます注目される資格の1つだと思います。

臨床心理士、公認心理師

公認心理師は国家資格ですが、臨床心理士は民間資格です。公認心理師は心理職初の国家資格で、2018年に第1回の国家試験が行われたばかりです。
両資格とも、心理に関する支援を要する者の、助言・指導・援助や、心の健康に関する普及・情報提供などを行い、扱う業務の内容も大きく異なることはありません。

受験資格は、指定大学院や専門職大学院で指定の科目修了などを要します。大学へ通う必要がありハードルは高いですが、心理職を目指したい方は選択肢の1つとして検討できると思います。詳細は各資格のホームページを確認して下さい。

公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
公認心理師

4.社会福祉士資格の上位資格でキャリアアップ

社会福祉士以外の資格のなかには、社会福祉士よりも上位の資格があり、それを取得してキャリアアップする方法もあります。

認定社会福祉士、認定上級社会福祉士

認定社会福祉士と認定上級社会福祉士は、社会福祉士のキャリアアップを支援するしくみとして創設された制度です。
社会福祉士資格取得はあくまでスタートラインであり、実践がなくても資格維持は可能です。そのため実践力を担保するしくみとして非常に価値のある制度だと思います。
認定社会福祉士の取得ルートは複数ありますが、社会福祉士を教育・サポートなどをするスーパーバイザー登録者ルートのほか、ベテランルートでは相談援助実務経験が10年以上必要となり、その後認証研修の単位取得とスーパービジョン(社会福祉士の教育・サポートなど)の実施が必要です。

人にもよりますが、取得を目指してから最低でも3年から5年程度を要します。すでに社会福祉士として一定の経験を積んだ中堅からベテランの方が目指せる制度で、実践を積んでいることを証明できる貴重な資格といえます。

認定上級社会福祉士は名称のどおり認定社会福祉士のさらに上級の資格となります。この資格は比較的最近創設されたため、取得者数が限られていますが、私の周りには認定社会福祉士を取得している方がおり、その多くは所属組織の長やリーダー的存在で、講師や行政・各団体の外部委員として活躍しています。
認定上級社会福祉士も個人の業務だけでなく、地域や外部機関に対して見解や情報を発信できるため、大きな責任と同時に非常にやりがいを感じられる立場であることは間違いありません。

5.社会福祉士がキャリアアップにより得られること

これまで説明してきたように、社会福祉士の資格取得後にさまざまなキャリアアップの道があります。専門職である社会福祉士は資格取得がゴールではなくスタートです。高い専門性を維持していくためには生涯学習が必要となります。キャリアアップのペースはさまざまですが、それを目指すことで「経験」「人脈」が得られ、結果的に「地位」や「給与(報酬)」にも反映されるのではないでしょうか。

筆者は約20年近く福祉業界で仕事をしていますが、20年前にこの業界に入ったときに福祉業界の知人は、業界に入るきっかけとなった知人1人のみでした。福祉業界に携わる方のなかでも向上心のある方は専門性を高めるために、勤務している事業所の枠を超えて専門職間の交流を求めるようになります。

筆者も地域の専門職の集まりに参加したことで人脈ができ、そこからさらに人脈が広がっていきました。またコツコツと目の前の仕事に取り組んだことで一定の経験を得ることができました。まさに「継続は力なり」です。
筆者は独立の道を選びましたが、専門職としての知識の研さんと向上する取り組みを継続することで、必ずキャリアアップしていくと思っています。

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金杉宏敬

社会福祉士

20代後半に一般企業から福祉業界へ転身。特別養護老人ホーム勤務を経て2006年に社会福祉士資格を取得。その後、地域包括支援センターにて高齢者を対象とした相談員として約10年勤務。2016年に個人事務所「かなすぎ社会福祉士事務所」を立ち上げ、現在に至る。

金杉宏敬の執筆・監修記事

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