介護現場で英語力は求められる?国際化の現状と職場で英語が活かせるケース
文/中村 楓(介護支援専門員・介護福祉士・介護コラムニスト)
近年、介護現場では外国人介護士の受け入れが進んでいます。社会全体として国際化が進んでいることもあり、日本人も英語が話せる人が増え、英会話によるコミュニケーションスキルが高い介護職もいることでしょう。なかには、自分の英語力を介護現場で活かしたいと考えている人もいるかもしれません。この記事では、介護現場に英語力が必要か、また英語力を活かせる可能性についてお伝えします。
1.介護現場に英語力は必要とされている?介護現場における国際化の現状

まず、介護現場に英語力は必要とされているかどうかを考えてみましょう。その際、知っておきたいのが介護現場における国際化の現状です。2023年に厚生労働省が発表した資料「介護分野における外国人の受入実績等」によると、外国人介護士の受け入れ状況は以下のようになっています。
- EPA介護福祉士・候補者:3,257人
- 在留資格「介護」:5,339人
- 技能実習:15,011人
- 特定技能:17,066人
参照:介護分野における外国人の受入実績等(介護分野における特定技能協議会運営委員会)|厚生労働省
なかでも、特定技能実習生の受け入れ人数は急増しており、前年と比較するとわずか1年間で1万人以上も増えています。介護業界の人材不足は深刻化していることから、今後も外国人介護士の受け入れ数は増加していくことが予想されるでしょう。
介護現場に外国人介護士が増えれば、英語を話す人が増えることも考えられます。では実際に、日本人介護士に英語力は必要とされるのでしょうか?
実際の現場では、主となる利用者さんは日本人であり、日本語によるコミュニケーションとなるため、現場で英語を使う場面はほとんどありません。また、外国人介護士は来日前、あるいは就職前に最低限の日本語を習得することが多く、利用者さんとのコミュニケーションでは、主に日本語を使用します。
介護士同士のコミュニケーションにおいては、英語を使う場面もあるかもしれませんが、現時点において、日本人介護士に英語力が求められることは少ないといってよいでしょう。
2.英語力が活かせる介護の職場はある?

前述したように、現状では英語力が活かせるような介護の職場はほとんどありません。ただし、外国人介護士を受け入れている事業所では、英語を使う機会があるかもしれません。
「令和4年度介護労働実態調査」によると、外国人介護士を受け入れている施設は、全体のわずか12.7%でした。実際に受け入れている事業所のサービス種別を見てみると、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や特定施設入居者生活介護といった入所系施設が多く、訪問系サービスは受け入れがかなり少なくなっています。法人別では社会福祉法人に多く、施設規模では100人以上の施設での受け入れが多いことがわかりました。
ただし、今後においては、13.%の事業所が新たに受け入れを予定しており、少しずつ増加することが予想されます。受け入れ先のサービス種別では、入所系のほかに訪問系や通所介護の割合も増えていることから、今後はさまざまな介護現場で英語力が活かせるようになるかもしれません。
現時点では、外国人介護士の受け入れ数が多い社会福祉法人が運営する大規模な入所施設であれば、英語力を活かせる可能性があると考えられるでしょう。
3.介護の現場で英語が活かせるケース

これまで説明してきたように、介護士が英語力を直接活かせる介護現場は少ないのが現状です。それでも、介護現場で介護を活かしたいと思っている人のために、英語力が活かせる可能性があるケースを2つ紹介します。
外国人介護士の指導係として英語力を活かす
外国人介護士は最低限の日本語を習得して職に就くとはいえ、日常のコミュニケーションは母国語や英語の方が使いやすいと感じていることでしょう。そのため、同じ職場で働く介護士に英語力があれば、外国人介護士とのコミュニケーションが取りやすくなり、連携が取りやすくなるかもしれません。また、英語力がある介護士が指導係になれば、仕事面での指導が行いやすく、悩みなども聞き取りやすくなる可能性があります。英語力が高い介護士が現場にいれば、通常の連絡事項以外の複雑なやり取りがあっても、円滑にコミュニケーションができ、スムーズな業務が可能になります。このように外国人介護士のいる職場では、英語力がある介護士は貴重な人材として活躍できる可能性があります。
国際交流基金でEPA日本語講師として働く
介護現場ではないものの、介護の知識と英語力を活かして働きたい人には、EPA日本語講師を目指すのも一案です。EPA日本語講師は、国際交流基金が行っている事業で、EPAに基づき来日を希望するインドネシア人やフィリピン人の候補者を対象に、現地で日本語を教える仕事です。
EPA日本語講師は、現地語や介護に関する専門知識は問われません。しかし、介護の知識があれば候補生に日本における介護の仕事の魅力を伝えることができ、来日する候補生にとっても良い影響を与えることができるでしょう。
EPA日本語講師の採用要件は、大卒以上で日本語教育能力検定を取得している等、条件が厳しいものの、要件を満たしており、英語を活かしながら外国で働きたい人にとっては、選択肢の1つになるのではないでしょうか。
4.英語以外に持つべき介護の資格4選

英語力を介護現場で活かしたいのであれば、英語以外にも役立つ介護資格が必要です。この項目では、英語力とともに取得しておきたい介護資格を4つ紹介します。
介護職員初任者研修、実務者研修
介護職員初任者研修は、取得要件がなく誰でも取ることができる介護資格です。初任者研修は介護職として必要な基礎知識を学ぶ研修で、最短1か月という短期間で資格が可能です。実務者研修は、より実践的な介護の知識と技術を学びます。資格を取得すれば、訪問介護のサービス提供者になることができるほか、実務経験を積めば介護福祉士国家試験の受験資格を得ることもできます。将来、介護福祉士を目指すのであれば、初任者研修より実務者研修の取得がおすすめです。
どちらの資格も、取得しておくと未経験でも介護職に就きやすいため、介護の現場で働くなら取得しておきましょう。
介護福祉士
介護福祉士は、介護職唯一の国家資格です。さまざまな介護現場で活躍することができ、訪問介護のサービス提供責任者や、介護サービス事業所の管理者などの役職等に就くことも可能です。
介護福祉士になるには、実務者研修と3年以上の介護経験が必要となるものの、合格率は約70%と高いため、難易度はそれほど高くありません。介護の仕事を長く続けていきたいのであれば、取得しておきたい資格といえるでしょう。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護保険サービスの要ともいえる資格が、介護支援専門員です。介護支援専門員は、利用者や家族からの相談を受けてケアプランを作成したり、介護サービス事業所や自治体と連絡や調整などを行ったりします。介護職のなかでは身体的負担が少なく、待遇もよいのが魅力的な資格といえるでしょう。
ただし、国家資格取得から5年以上の実務経験が必要であり、直近5年の合格率は20%前後と低いため、難易度は高い資格です。しかし、これまでの介護経験を活かしてキャリアアップしたい人は目指す価値があるでしょう。
5.介護士の転職に英語力は活かせる?

介護士の転職においては、今のところ英語力が直接活かせる場面は、残念ながらほとんどありません。ただし、英語力を身に付けるまでに至った経緯は、自分の強みとしてアピールできるでしょう。また、場合によっては、外国人介護士が多い職場に適応しやすいといったアピールをすることも可能です。
面接の際には、英語力が自分の強みであることや介護職への熱意を伝えることで、自分の人柄や性格を表現できることでしょう。英語力を間接的に活用するという意味では、介護職の転職に英語力が活きる部分があるかもしれません。
まとめ:介護現場において英語力の優先度はまだ低いのが現状
外国人介護士が増加している介護現場において、まず求められているのは介護の知識や技術です。介護士同士のコミュニケーション等を考えると、英語力があるに越したことはないものの、現場における能力としての優先度は低いのが現状です。
介護士にとって英語力は必須ではないものの、自分のスキルアップとして役立つ部分は大いにあるでしょう。また、外国人介護士の受け入れ数は今後も増えていくため、英語力が活かせる現場も増えてくる可能性があります。先を見据えたスキルアップの1つとして、英語を勉強するのもよいのではないでしょうか。
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