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仕事・スキル 介護職のスキルアップ 2023/02/14

#みんな知らない高齢者の世界#インタビュー

「生きていてごめんね」高齢者に多いネガティブ発言の真意|みんな知らない高齢者の世界

取材・文/タケウチ ノゾミ(イージーゴー) main.jpg

「私なんていても邪魔でしょう?」「生きていてごめんね」など、高齢者のネガティブな発言にドキリとした経験はありませんか。年を取ると思考がネガティブになりがちなため、周りの人まで落ち込むような発言をする人も多く見られます。

では、高齢者はどのような意図でネガティブ発言をしてしまうのでしょうか。高齢者のネガティブ発言の真意や周囲の人がすべき対応について、『老人の取扱説明書』著者の平松先生にお話を伺いました。

1.ネガティブ発言には意図がある?

――「生きていてごめんね」などと言う高齢者は、どのような意図でネガティブな発言をしているのですか。

そもそも高齢者は意図があってネガティブに発言しているのではなく、思考がネガティブになっているため、後ろ向きな発言が多くなってしまうのです。周囲の人はなるべくネガティブな発言はして欲しくないと感じるでしょうが、高齢者の状況を考えると、ネガティブになってしまうシーンはあまりにも多いです。

例えば、若い頃は必要とされていたのに、年を取るにつれて必要とされなくなった、複数人いた友人が病気などで減ってしまった、年を取るごとに趣味に取り組めなくなった、伴侶が先立った、病気になり気持ちまで暗くなってしまった、などが挙げられますね。

そして悲しいことに、若い人とは違って先々に希望がある訳でもありません。そのため思考がどんどん暗い方に傾いてしまい、結果としてネガティブな発言をする様になってしまうのです。

2.ネガティブ発言をする高齢者に対して、やってはいけないこと

――ネガティブ発言をする高齢者に対して、やってはいけないことはありますか。

やってはいけないのは、ただ黙ってネガティブな話を聴き続けたり、「ネガティブな発言はしないように」と注意したりすることです。どちらも一見良さそうに感じるかもしれませんが、解決には至らない可能性が高いだけでなく、逆に悪化してしまうこともあります。

やらない方が良い理由は、いくら話を聞いても何も返事をできずにいると、高齢者は更に落ち込んでしまい、結果としてネガティブな発言が増えていってしまうことがあるためです。ではネガティブ発言を肯定すれば良いのかと言えば、そうではありません。「私のことが邪魔なんでしょ」などと言っている高齢者に「そうだね」と言ってしまった場合も、ネガティブ発言は悪化してしまいます。

またネガティブ発言をしないよう注意することもやりがちですが、人間は「ネガティブ発言をするな」と言われた方が、ネガティブなことを考えてしまうものです。よって黙って話を聴き続けたり、注意したりするのは避けるべきですね。

3.ポジティブな言葉を投げかけるのは効果がある?

――では、逆にポジティブな言葉を投げかけるのは効果があるのでしょうか。

いいえ、ポジティブな言葉を投げかけるのも効果的な方法とは言えません。例えば鬱が原因でネガティブ発言をしている場合は、「頑張ろう!」といった声をかけて励ますと、本人を追い込んでしまうことになります。

さらに「まだまだ先があるよ」といった発言をして気持ちを前向きにさせようとしても、本人からすると「もう年だし先なんてある訳がない」と感じるため、こちらもネガティブ発言を減らすことは難しいです。



4.ネガティブ発言をする高齢者にすべき対応

――ネガティブ発言をする高齢者にすべき対応を教えてください。

ネガティブな発言が多くなってきたら、簡単な家事や仕事をお願いしてみましょう。依頼する際のポイントは、失敗してしまった際の被害が少ない仕事を頼むことです。例えば植物の水やりや、簡単な掃除などが適していますね。

ネガティブな発言をする高齢者は、自分が役に立たない人間のように感じているケースが多いです。そのため危険性の少ない仕事を頼み、自分が必要とされているとの実感を得られるようにする事が重要だと感じています。満足感や充足感を得ることで、ネガティブな発言は自然と減っていきますよ。

また周囲の人の対応としては、距離を取りながら定期的な接触をすることが効果的です。「私なんて早く死んだほうがいいよね」などとネガティブ発言を繰り返している高齢者にずっと付き添っていると、周囲の人の心も疲れてしまいます。

なのでネガティブ発言をする高齢者とは、つかず離れず適当な距離を取りながらも、定期的な接触をすると良いでしょう。特に伴侶に先立たれた高齢者は、鬱になってしまうケースが非常に多いです。定期的に連絡を取り、やや距離を取りながらも見守ることがおすすめです。

取材・文/タケウチ ノゾミ 編集/イージーゴー

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プロフィール

平松類先生さん

愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。

平松類先生さん

現在、二本松眼科病院副院長・眼科専門医。のべ10万人以上の老人と接してきており、老人が多い眼科医として勤務してきたことから、老人の症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事。主な著書に『老人の取扱説明書』『人生が変わる緑内障の新常識』など。
専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評で、連日メディアの出演が絶えない。NHK『あさイチ』、TBSテレビ『ジョブチューン』、フジテレビ『バイキング』、テレビ朝日『林修の今でしょ! 講座』、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう一直線』、『読売新聞』、『日本経済新聞』、『毎日新聞』、『週刊文春』、『週刊現代』、『文藝春秋』、『女性セブン』などでコメント・出演・執筆等を行う。

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タケウチ ノゾミ(Nozomi Takeuchi)

ライター・編集者

福岡市在住のフリーライター・編集者。介護、医療、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。

タケウチ ノゾミの執筆・監修記事

EGGO(イージーゴー)

イージーゴーは東京・九州を拠点にWEBコンテンツ、紙媒体、動画等の企画制作を行う編集制作事務所です。ライターコミュニティ「ライター研究所」も運営しています。

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