ADL(日常生活動作)とは? 意味・評価方法・低下の原因と介護予防
構成・文/介護のみらいラボ編集部
要介護者の自立支援や介助を適切に行うためには、ADLの基礎知識が大切です。しかし、介護職に就いたばかりでADLの意味や評価方法がよく分からない人もいるかもしれません。
当記事では、ADLの意味と評価方法について分かりやすく解説します。ADLが低下する原因や低下を防ぐためのケア方法・介護予防のポイントも把握し、要介護者や家族から頼られる介護職を目指しましょう。
1.ADLとは?
ADL(基本的日常生活動作)とは、日常生活を送る上では欠かせない基本的な動作のことです。具体的には、寝返りを打つ・起き上がる・立ち上がる・入浴するなどの動作が、ADLに含まれます。
介護・医療の現場において、ADLは高齢者の動作能力を把握したり、リハビリテーションや機能回復訓練の効果を検証したりするための重要な評価指標です。また、ADLは、要支援・要介護度を判定して必要な介護保険サービスを見極めるための調査項目としても活用されます。
高齢者のADLが低下すると日常生活を自力で送ることが難しくなり、より高度な介護を必要とする状態に陥りかねません。高齢者の介護を予防するためには、リハビリ・機能訓練などによってADLの低下を阻止し、生活の質を保つことが必要です。
ADLの種類2つ
ADLは、「BADL」と「IADL」の2種類に分類できます。「BADL」と「IADL」の違いは、下表の通りです。
BADL |
●日本語では「基本的生活動作」のこと ●日常生活を送るにあたって省略できない基本的な動作 |
---|---|
IADL |
●日本語では「手段的日常生活動作」のこと ●BADLよりも高度で、生活の質を高めるために必要な動作 |
たとえば、食べ物を口に運び、咀嚼して飲み込む動作は「BADL」・自分自身で献立を考えたり調理したりする動作は「IADL」に該当します。移動に関する内容では、単に歩行することや車椅子を操作することは「BADL」・電車やバスを利用して外出し、買い物する行為は「IADL」に分類されます。
●関連記事:IADLとは?ADLとの違い・評価指標・低下要因と4つの予防ポイント
2.ADLの評価方法として用いられる「FIM」の概要
介護施設や訪問介護センターの多くは、ADLを評価する際にFIMを活用します。FIMは、リハビリの専門家でなくても適切にADLを評価しやすい特徴を持つためです。FIMではADLを「運動項目」「認知項目」に分類し、介助の必要度合いを採点します。
FIMの評価項目
FIMの評価項目は、運動13項目と認知5項目の合計18項目で構成されます。FIMの評価項目一覧は、下表の通りです。
運動項目 | セルフケア | 食事、整容、清拭、更衣(上半身)、更衣(下半身)、トイレ動作 |
---|---|---|
排泄 | 排尿コントロール、排便コントロール | |
移乗 | ベッド・椅子・車椅、トイレ、浴槽・シャワー | |
移動 | 歩行・車椅子、階段 | |
認知項目 | コミュニケーション | 理解(聴覚・視覚)、表出(音声・非音声) |
社会認識 | 社会的交流、問題解決、記憶 |
(出典:厚生労働省「(参考)日常生活動作(ADL)の指標FIMの概要」)
FIMでは18項目のそれぞれに対し、採点基準に沿った評価を行います。項目ごとに評価を行うことにより、高齢者の不足している能力の正確な把握が可能です。
FIMの採点基準
FIMでは18項目のそれぞれに対し、1〜7点の7段階評価を行います。1〜7点の基準は、下表の通りです。
7点 | 完全自立 | ・補助具や介助が必要ない |
---|---|---|
6点 | 修正自立 |
・介助は必要ないものの時間が掛かる ・安全性への配慮も必要である |
5点 | 監視 | ・介助者による監視や指示、準備や促しが必要である |
4点 | 最小介助 |
・手で触れる以上の介助は必要ない ・動作全体中75%以上は自分自身で行える |
3点 | 中等度介助 |
・手で触れる以上の介助が必要である ・動作全体中50%以上75%未満は自分自身で行える |
2点 | 最大介助 |
・手で触れる以上の介助が必要である ・動作全体中25%以上50%未満は自分自身で行える |
1点 | 全介助 |
・手で触れる以上の介助が必要である ・動作全体中25%未満のみ、自分自身で行える |
FIMの満点は126点、最低点は18点です。高齢者の能力が日によって変動する場合は、介助量の多い時を基準として点数を決定します。
3.ADLが低下する原因は?
ADLは、加齢による身体機能・認知機能の衰えによって低下します。また、自宅に引きこもることによる精神的な落ち込みも、ADLを低下させる原因の1つです。
・身体機能の衰え
日常生活における活動性が低下して筋力が衰えると、さまざまな作業を自分自身で行うことが難しくなります。また、加齢は、生活習慣病の発症リスクを高める要素です。生活習慣病によって日常生活が制限されると、ADLの低下リスクが高まります。
・認知機能の衰え
認知症を発症すると「身体の動かし方が分からない」「家事の流れを思い出せない」などの症状が出て、日常生活に不便を感じることがあります。結果として高齢者の活動性が低下することは、ADLを低下させる原因の1つです。
・精神的な落ち込み
高齢者が精神的に落ち込むと、外出や会話に対するモチベーションが低下します。結果として身体機能や認知機能が衰えるとADLも低下する、悪循環に陥りがちです。
4.ADLの低下を防ぐためのケア方法3つ|介護予防の重要性
ADLが低下すると社会と関わる機会が減少し、自分自身の役割を見失うことにより、心身の機能が衰えます。ADLの低下を最小限に留めて高齢者一人ひとりのQOLを高めるためには、適切な介護予防を実施することによって生活機能の向上を図る取り組みが必要です。
生活機能とは、心身機能・ADLを含む活動・家庭や社会に対する参加から構成される、生命活動を維持するために欠かせない機能を意味します。適切な介護予防を実施するためには、生活機能の構成要素それぞれにバランスよく働きかけ、心身機能の向上を図るとともに家庭や社会への参加を促すことが大切です。
(出典:厚生労働省「介護予防の推進について」)
(出典:厚生労働省「これからの介護予防」)
以下では、適切な介護予防の一環として取り組める、ADLの低下を防ぐためのケア方法を紹介します。
要介護者の「できること」を把握する
過剰な介助やサポートは要介護者の「できること」を奪い、ADLを低下させる恐れがあります。ADLの低下を防ぐためには要介護者の状態を適切に把握し、「できること」「できないこと」を見極めた上で、最小限の介護計画を立てましょう。
そもそも、介護保険の目的は要介護者の自立を支援することです。介護職は「要介護者を管理しなければならない」とは考えず、本人の主体性を重視して行動を見守り、自立を支援する気持ちを持ちましょう。
要介護者にとってプラスになる環境を用意する
ADLの低下を防ぐためには、「自分自身で挑戦したい」「努力してみよう」と思える生活環境を提供することもまた大切です。具体的には、適切な歩行補助器具を活用したり自宅をリフォームしたりすることで心身の負担を軽減し、挑戦意欲を引き出しましょう。
要介護者の状態によっては介護保険制度を利用し、歩行補助器具をレンタルできます。「開き戸を引き戸に変更する」などのリフォームにも補助金が支給されるケースがあるため、ケアマネジャーとも相談し、環境整備を進めてください。
要介護者のQOLを高く保つアプローチをする
地域の人と関わり、コミュニケーションを取る機会を持つことは、要介護者のQOLを高く保つための重要な要素です。要介護者の体調の良い日はスーパーやレストランに出掛けて、さまざまな人と関わる機会を提供しましょう。
スポーツに関心がある要介護者には、ヨガやスイミングスクールに通わせる方法が一案です。趣味を楽しむ時間やスクールの仲間とのコミュニケーションが要介護者の心を満たし、QOLを高められる可能性があります。
●関連記事:QOLとは
まとめ
ADLとは、寝返りを打つ・起き上がるなど、日常生活を送るにあたって欠かせない動作のことです。ADLを評価するためには「FIM」を活用することが多く、得点の推移によって心身の状態の変化を把握できます。ADLの低下を防ぐためには、要介護者に対する接し方や介助方法を工夫して「できること」を増やしつつ、QOLを高く保たせるためのアプローチの検討が重要です。
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※当記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています
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