療養通所介護とは?項目別の詳細・必要な資格・今後のニーズなど
構成・文/介護のみらいラボ編集部
療養通所介護について、具体的にどのようなサービスを提供しているのか、どのような方が利用の対象になるのかなど、詳細を知らないという方もいるのではないでしょうか。療養通所介護は通所系サービスの一つであり、日常生活の補助だけでなく医療ケアも行っている点に特徴があります。
この記事では、療養通所介護について解説するとともに、療養通所介護の事業所で働くために必要な資格や今後のニーズについて説明します。介護サービスの種類を知り、知識を深めたい方は、ぜひご覧ください。
1.療養通所介護とは?項目別に詳細を解説!
療養通所介護とは地域密着型の通所サービスであり、常に看護師の観察を必要とするがん末期患者や重度要介護者が利用しています。
療養通所介護では、利用者さんができるだけ自宅で療養を続けられるように、入浴、排せつ、食事といった日常生活のサポートや機能訓練を行っており、看護師による健康管理や医療的ケアを受けることもできます。
療養通所介護のサービスを受けるメリットとして、利用者さんの社会的孤独感の解消や心身機能の維持、生活機能向上などが挙げられます。また、普段利用者さんの介護をしている方の負担軽減につながり、在宅介護を継続しやすくなるという点も大きなメリットでしょう。
ここでは、療養通所介護について、さらに詳しく解説します。
人員基準
療養通所介護では、利用者1.5に対して看護職員、介護職員を1以上配置し、なおかつ1名以上は常勤の看護師にすると決められています。また、施設の利用定員も18人以下であり、少人数で手厚い介護を提供しているのが特徴です。
(出典:厚生労働省「療養通所介護」)
ほぼマンツーマンのようなサービスを提供しているため、利用者さん一人ひとりの状態をしっかりと観察できる他、看護師が常駐していることで、医療的なケアが必要な時や利用者さんの容体が急変した時などの緊急事態にも対応できるようになっています。
利用対象者
療養通所介護の利用対象者は、以下の通りです。
要介護1~5の認定を受けた方(常に看護師による観察を必要とする難病等の重度要介護者又はがん末期患者を対象)
(引用:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 療養通所介護」_引用日2022/05/27)
利用対象者は「要介護(1~5)の認定を受けている方」で、具体的には「難病・認知症・脳血管疾患後遺症などの重度要介護者」「がん末期患者」とされています。常に看護師による観察を必要とする方が対象であり、要支援の方は対象になりません。
つまり、療養通所介護は一般の通所サービスでは受け入れることができない、医療的なサポートを必要とする要介護者が利用できるサービスというわけです。
利用者さんの多くは要介護4以上、6割が要介護5であり、日常生活上のほとんどのことを介護の力を借りながら生活しています。なかには重度の麻痺がある方や気管切開をしている方もいます。
なお、療養通所介護は地域密着型サービスのため、原則として居住している市区町村内にある施設しか利用できません。
(出典:厚生労働省「療養通所介護」)
提供するサービス
療養通所介護で行っている主なサービス内容は、以下の通りです。
・健康状態のチェック
利用者さんの健康状態を確認し、体調の悪化を防ぎます。療養通所介護の施設には、介護職員だけでなく看護職員も配置されており、利用定員が少ないため利用者さんに目が届きやすい環境です。そのため細やかな健康管理ができ、利用者さんの小さな変化にも気付きやすくなります。
・食事、入浴、排せつなどの介助
一般的な通所介護と同じような生活の介助を行っていますが、自宅で入浴するのが難しい方も多いため、看護師と介護職員で利用者さんの状態を確認しながら、入浴サービスを実施しています。また食事の際も、経口食であれば介護職員がサポートし、経管栄養であれば看護師が対応するなど、利用者さんの食事の仕方に寄り添ったサービスを提供します。
・医療的ケア
療養通所介護では看護師が常駐しているため、医療行為が行えることが大きな特徴です。どこまでの医療処置ができるかは施設によっても異なりますが、人工肛門の管理や緩和ケア、注射、点滴などを、主治医の指示に基づいて行うのが一般的です。
・機能訓練・リハビリテーション
療養通所介護の利用者さんのなかには、1日中ベッドで過ごさなければならないような身体状況の方もいます。それでも、本人のできる範囲でレクリエーション・機能訓練を行うのは、気分転換や身体機能の改善につながる大切な活動です。療養通所介護の施設ではそうした機能訓練も、利用者さんの状況を確認しながら提供します。
・付き添い送迎
一般的な通所介護でも利用者さんの送迎サービスは行っていますが、療養通所介護では利用者さんの自宅から施設までの送迎に看護師が付き添います。そのため、送迎中の利用者さんの体調変化にも適切に対応できます。
このように療養通所介護の提供サービスには、一般の通所施設にはない特徴が複数あり、それぞれの利用者さんに合ったサポートを提供しているのがポイントです。また、上記のサービスを提供することは、ご家族の介護負担を減らすことにもつながっています。
利用料金
療養通所介護の利用者負担は時間によって異なります。利用者負担が1割の場合、1回の料金は以下の通りです。
サービス費用の設定 | 利用者負担(1割)(1回につき) |
3時間以上6時間未満の場合 | 1,007円 |
6時間以上8時間未満の場合 | 1,511円 |
(引用:厚生労働省「どんなサービスがあるの? - 療養通所介護」_引用日2022/05/27)
食費やおむつ代などの日常生活費、レクリエーションで道具を使用した際の実費相当額は、別途負担が必要です。なお、介護施設の規模や看護師の人数によって、料金が変わることもあります。
2.療養通所介護施設で働く場合に必要な資格はある?
介護職員として働く場合、特別な資格要件は必要ありません。ただし、利用者さんに寄り添ったサービスを提供することから、療養通所介護施設では以下の資格を求められることが多いでしょう。
・介護職員初任者研修
療養通所介護を利用しているのは重度要介護者であり、介護職員は主に利用者さんの身体介護を行うことになります。そのため、「介護職員初任者研修」を修了し、介護についての基礎知識と技術を持った介護職員が求められる傾向にあります。介護職員初任者研修は厚生労働省が認定する公的資格で、介護ケアの専門知識や、実技演習による介護のノウハウが身に付く資格です。介護業界で働く際、最初に取得する資格としてもおすすめです。
・普通自動車運転免許
療養通所介護では、利用者さんを自宅から施設まで送迎するサービスを行っており、職種にかかわらず、普通自動車運転免許の取得を求める施設は多いでしょう。送迎では介護サービスの一つとして運転業務を行い、利用者さんから直接送迎料金を受け取らないため、第一種運転免許があれば問題ありません。
3.療養通所介護のニーズは今後高まる可能性がある
療養通所介護の利用者数は2019年から増加傾向にありますが、事業所数はここ数年ほぼ横ばいとなっています。また、療養通所介護施設を運営していく上での課題として、「介護職員の確保が困難」を挙げている事業者は60.4%に上ります。
(出典:厚生労働省「療養通所介護」)
療養通所介護には、退院直後の利用者さんの在宅療養を支えたり、他のデイサービスでは受け入れられない重度の要介護者を受け入れたりするニーズがあります。現状、療養通所介護の事業所は多くありませんが、今後高齢者の数が増えていくなかで、療養通所介護のニーズはますます高まっていくことが予想されます。それに伴って、療養通所介護事業に関わる介護職員も、今以上に求められるでしょう。
まとめ
療養通所介護とは、常に看護師の観察が必要な重度の要介護者を対象としたサービスです。療養通所介護の施設では、少人数で手厚い介護を提供することで、利用者さんの心身機能の維持・回復やご家族の負担軽減などを目指しています。現在、施設数自体はそれほど多くありませんが、高齢者の数が増えていくなかで、そのニーズは徐々に高まっていくでしょう。
「介護のみらいラボ」では、他の介護サービスのことや、今後介護士として活躍するために役立つ資格のことなど、介護の現場に関わる方に有益な情報を多数提供しています。ぜひ参考にしてください。
※当記事は2022年6月時点の情報をもとに作成しています
【日本全国電話・メール・WEB相談OK】介護職の無料転職サポートに申し込む
スピード転職も情報収集だけでもOK
マイナビ介護職は、あなたの転職をしっかりサポート!介護職専任のキャリアアドバイザーがカウンセリングを行います。
はじめての転職で何から進めるべきかわからない、求人だけ見てみたい、そもそも転職活動をするか迷っている場合でも、キャリアアドバイザーがアドバイスいたします。

SNSシェア