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学ぶ 介護国試過去問ドリル 2021/02/22

#国家試験

介護現場で生きる意欲が低下したご利用者とのコミュニケーションー原因と解決法【国試過去問ドリル第10回】

文:馬淵 敦士(まぶち あつし) 「ベストウェイケアアカデミー」学校長。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。 うつむいている意欲低下した高齢のご利用者.jpg

介護職として働いていると、意欲が低下したご利用者とのコミュニケーションに苦慮することがあります。しかし、方法を工夫することで、スムーズにコミュニケーションがとれることが多いです。

そこで、介護福祉士国家試験に出題された問題から、意欲低下の原因と解決法について解説。どのようにご利用者に接すればよいか、理解を深めていただければと思います。

高齢者の意欲が低下する要因とは

なにごとにもやる気がなくなる(意欲の低下)という状況は、年齢にかかわらず起こり得ます。高齢者の場合は下記のような要因が考えられます。

要因1 身体機能の低下

今までできていたことが、身体機能の低下によりできなくなると「もうやめてしまおう」と思ってしまう方もいます。例えば、今までは近所のコンビニまで歩いて10分で行けたのに、下肢筋力低下により、20分かかるようになってしまう。このような出来事があると、外出する意欲そのものが低下してしまいます。

要因2 認知機能の低下

年齢を重ねると、さまざまな要因により「覚えられなくなる」「思い出せなくなる」ことが多くなります。新しいことが覚えられない状態が続くと意欲が損なわれ、活動の低下に繋がります。

要因3 喪失体験

例えば親しい友人や配偶者が亡くなってしまった場合、気力が低下してしまいます。それまでは楽しくできていた外出や電話などもおっくうになり、引きこもりに繋がることもあります。

意欲低下による不活動状態が長引くと、筋力や内臓機能が低下する「廃用症候群」の悪循環に陥る可能性があります。介護職には、ご利用者の意欲を引き出す適切なコミュニケーションが求められます。

過去問題

第32回 午前 問題28

問題28 意欲が低下した人とのコミュニケーションの基本として、最も優先すべきものを 1 つ選びなさい。

1 考え方を変えるように促す。
2 早く元気を出すように励ます。
3 意欲が自然に回復するまで待つ。
4 意欲低下の背景を考える。
5 自己決定してもらうのは避ける。

解答と解説

正解:4

意欲が低下したご利用者への適切な対処法

意欲が低下する原因やきっかけは、人それぞれ異なります。誤った対応は相手を不快にさせ、さらに意欲低下を招く可能性があるため、意欲低下の背景を把握することが大切です。
なぜ意欲が低下しているのかを理解すると、何気ないコミュニケーションにも配慮が必要であることがわかります。相手の様子や状況を見極めながら、少しでも活動性を高める働きかけや声かけを行っていきましょう。

選択肢1 「考え方を変えるように促す。 」×

ご利用者の意思を無理やり変えようとすることであり、相応しい対応とは言えません。

対応法1 徐々に活動を増やすように働きかける

意欲が低下している状態で、以前の活動を取り戻すことは難しいと言えます。無理をせず、徐々に活動を回復させていくような働きかけをするとよいでしょう。何もせずに様子を見ることは、さらに意欲低下を引き起こす可能性があり、不適切です。

選択肢2「早く元気を出すように励ます。」×

選択肢1同様、ご利用者の意思を無視しているので、相応しくないでしょう。

対応法2 共に活動してみる

ご利用者と一緒に何か活動をしてみるのもよいでしょう。例えば、デイサービスなどでレクリエーションをしているとき、「○○さんも一緒にしてみませんか?」などという声かけです。もちろん、声をかけても応えてくれるとは限りません。しかし、少しでも興味を持ってくれるような表情をされたときに、「○○さん、こうするのですよ」と声をかけてみると、応えてくれることもあります。また「○○さん、少しお手伝いしていただけませんか?」といった声かけもよいでしょう。

選択肢3「自然に回復するまで待つ」×

意欲が低下しているご利用者を放置することになり、うつ病など、さらなる意欲低下を引き起こす可能性があります。不適切です。

選択肢5「自己決定してもらうのは避ける。」×

誤りです。自己決定を避けてもらうと、ご本人が本当にしたい活動ができなくなってしまいます。

対処法3 自己決定を促す

例えば食べ物などを提示して、「○○さん、どちらがよろしいでしょうか?」と伺うことで、自己決定が促され、意欲の向上が見られることもあります。

実務での活かし方

ここまでで色々な方法を紹介しましたが、やみくもに働きかけることは避けましょう。強制的に意欲を向上させることはできませんが、適切に働きかけることで、ご利用者が前向きになれることもあります。

適切にコミュニケーションをとるならば、その人を知る必要があります。意欲の低下そのものを理解するためには、利用者にアプローチをし、アセスメントする力が求められます。
ご利用者の様子を窺いながら、小さな働きかけや質問を通じて、意欲が低下したきっかけを探っていく必要があります。また、その原因を把握することで有効な対処法が分かることも。

自分なりにコミュニケーションのとり方を工夫し、さらなるご利用者理解を深めていただければ幸いです。

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白井孝子(Takako Shirai)

東京福祉専門学校副学校長/看護師・介護支援専門員(ケアマネジャー)

聖路加国際病院、労働省(現厚生労働省)診療所勤務。小児病棟での終末期看護のあり方から在宅看護に興味を持つ。訪問看護業務に携わる中で、生活支援には保健医療福祉の連携が重要であることを体験する。その思いを形にするため、平成2年から介護福祉士養成に関わるようになる。現在東京福祉専門学校副学校長。

白井孝子の執筆・監修記事

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