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学ぶ 介護国試過去問ドリル 2021/06/24

#国家試験

介護福祉士ができる医療的ケアの内容について【国試過去問ドリル第13回】

文:馬淵 敦士(まぶち あつし) 「ベストウェイケアアカデミー」学校長。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)。図:イラストワークカムカム 介護福祉士等ができる医療的ケアの内容について.jpg

平成24(2012)年4月より、「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行され、一定の研修を受けた介護職は、認められた一部の医療的ケアを仕事として行うことができるようになりました。

介護福祉士国家試験では、医療的ケアに関する出題が5問あり、法律から現場レベルまで幅広い知識を網羅しておかないと、正解が難しい内容になっています。また、どの行為ができるのか、どのような方法でできるのかを理解しておかなければ、ご利用者に対して適切なケアを行うことができません。

そこで、介護福祉士国家試験に実際出題された問題の解説を通じて、医療的ケアへの理解を深めていきたいと思います。

介護福祉士ができる医療的ケアの内容

大きく分類すると、喀痰吸引と経管栄養の2つです。喀痰吸引については、口腔内吸引・鼻腔内吸引(ともに咽頭の手前まで)と気管カニューレ内部の吸引。経管栄養については、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養を実施することができます。

介護職が医療的ケアをできるようになるまでのプロセス

医療的ケアを行うためには、基本研修(講義・演習)と実地研修の両方を修了する必要があります。基本研修は都道府県に登録された学校(登録研修機関)に通い、実地研修はご利用者がいらっしゃる現場で行います。医療的ケアは、医行為から除外されたわけではありませんので、基本研修や実地研修の指導については一定の研修を修了した医療職が携わることになります。
研修が修了したら、都道府県に登録の手続きをします。都道府県から認定証を交付され、初めて医療的ケアを実施することができます。
注意点としては、医療的ケアの実施には本人の同意も必要となりますので、研修を修了しただけでできるものではありません。もちろん、研修(特に実地研修)についても同様です。

*医行為:医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為

過去問題


第32回 午後 問題110

2011 年(平成 23 年)の社会福祉士及び介護福祉士法の改正に基づいて、介護福祉士による実施が可能になった喀痰吸引等の制度に関する次の記述のうち、正しいものを 1 つ選びなさい。

1 喀痰吸引や経管栄養は,医行為から除外された。
2 喀痰吸引等を行うためには,実地研修を修了する必要がある。
3 介護福祉士は,病院で喀痰吸引を実施できる。
4 介護福祉士は,この制度の基本研修の講師ができる。
5 実施できる行為の一つとして,インスリン注射がある。

解答と解説

正答:2

選択肢1「喀痰吸引や経管栄養は,医行為から除外された。」×

先述したとおり、喀痰吸引や経管栄養は医行為です。ですから「医師の指示」がなければできません。

選択肢2「喀痰吸引等を行うためには,実地研修を修了する必要がある。」〇

こちらも先述したとおり、医療的ケアを行うためには、基本研修(講義・演習)と実地研修の両方を修了する必要があります。正解です。

選択肢3「介護福祉士は,病院で喀痰吸引を実施できる。」×

介護福祉士の資格を持っていても、喀痰吸引などの医療的ケアを実践するには研修を受けたのち、都道府県から認定証を受理する必要があります、また、この認定証は、都道府県から認定を受けた事業者(ヘルパーステーションやデイサービス)や施設(特別養護老人ホームなど)内の業務でしか通用しません。病院は都道府県から認定を受けることができません。

選択肢4「介護福祉士は,この制度の基本研修の講師ができる。」×

基本研修や実地研修の指導は、一定の研修を修了した医療職が行いますので×です。

選択肢5「実施できる行為の一つとして,インスリン注射がある。」×

介護職が実施できる医療的ケアの内容は喀痰吸引と経管栄養です。インスリン注射はできませんので、×となります。

喀痰吸引の「咽頭の手前まで」とは?

図1:咽頭部分

咽頭部分

図2:咽頭付近、気管カニューレとサイドチューブ

咽頭付近

口腔内吸引・鼻腔内吸引には、「咽頭の手前まで」という決まりがあります。咽頭の奧には、命に関わる神経(迷走神経)があり、その部分を刺激してしまう危険があるからです。さらに、気管カニューレを装着されているご利用者に対する、気管カニューレ内部の吸引も大丈夫ですが、気管カニューレを超えての吸引はできません。

医療的ケアに関する知識の実務での活かし方

医療的ケアが必要なご利用者がいるとき、医療的ケアで「何ができるのか?」「どうしたらできるのか?」ということを正しく理解しておかないと、ご利用者の安全を守れないことがあります。

「医療的ケアができる」ということは知っているけれども、具体的に進める方法を知っている介護職員は多くないのが現実です。
社会福祉士法及び介護福祉士法には、介護福祉士の仕事内容が明記されています。当然医療的ケアについても定められていますから、介護福祉士の資質向上において、身体介護や生活援助とともに、スキルアップのために学ぶべき重要な業務といえます。

医療的ケアは命に関わる行為であるのと同時に、一部のご利用者にとっては、生活に欠かせない行為でもあります。介護のプロとして、正しい知識をもってケアに当たってほしいと考えます。これを機に学びを深めてみましょう。

*社会福祉士及び介護福祉士法第2条の2:「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるものを含む)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者」

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白井孝子(Takako Shirai)

東京福祉専門学校副学校長/看護師・介護支援専門員(ケアマネジャー)

聖路加国際病院、労働省(現厚生労働省)診療所勤務。小児病棟での終末期看護のあり方から在宅看護に興味を持つ。訪問看護業務に携わる中で、生活支援には保健医療福祉の連携が重要であることを体験する。その思いを形にするため、平成2年から介護福祉士養成に関わるようになる。現在東京福祉専門学校副学校長。

白井孝子の執筆・監修記事

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